イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

はるばる北ぜロンドン

2012-08-01 01:18:26 | スポーツ

3連覇、世界記録もさることながら、マスコミは北島康介選手には「チョー気持ちいい」「なんも言えねぇ」に続く決めゼリフ、と言うより“流行語大賞候補”を期待していたのではないでしょうかね。最初の種目100平は5位、シロウト目にもくっきりはっきりの完敗では、インタヴュアーも水を向けにくいし名セリフも引き出しにくい。

「(気持ちを切り替えて)200(メートル)も頑張ります」と答えてすぐ「200“も”じゃなく、200“は”ですね」と言い直したように、北島さん自身、アスリートには稀な言語感覚、言霊(ことだま)力をそなえた人です。

前半の30メートルぐらい行ったところで、こりゃどこの国の誰選手が勝つにしても世界レコードでなきゃ勝てないレースだなとわかったし、優勝争いは終始、北島選手のだいぶ先で運んでいて、そこに一枚加わる場面が一度もないままゴールに着いてしまいました。ああいうときは、スタンドやTVなんかで観ている者より、泳いでいる本人がいちばん早い段階で「コレは自分のレースではないな」と直感するのでしょうね。目標の金メダルは無理そう、表彰台も無理そうとほぼ見切りがついてしまって、そこから気持ちを掴み直して5位に踏ん張るのだから、やはり伊達にオリンピック2連覇はしてないわけです。

アテネから8年、名実ともに“負けて騒がれる横綱”になってロンドンに乗り込んだ北島さん。かつて、柔道60キロ級でアトランタ~シドニー~アテネと3連覇した野村忠宏選手が、北京で4連覇挑戦か?引退か?と騒がれていた頃、「金メダルをとるたび、とった直後は“完全燃焼した、これ以上の稽古は二度とできない、オレの柔道人生これで終わり”と思うんだけど、1日たち2日たちして、道着着て道場に立って後輩と組んでみると“あぁやっぱりオレ強い、まだ柔道やりたい、またオリンピックに出たい、勝ちたい、勝てる”と思う」「(アトランタから8年以上)その繰り返しです」と語っていました。

競泳の中でもコンディションやフォームの維持が他泳法に比して抜きん出て困難と言われ、世界レコードクラスの選手でもちょっとした体調の波、微細なフォームの崩れで、悪夢のように記録が出なくなってしまうことがままある平泳ぎで、2連覇でもどえらい偉業なのに、敢えて3連覇に挑むモティベーションは、もう北島選手にしかわからないし掴めないと思います。挑戦するかしないか、北島さんに「そういうときは、こうすればいいんだよ」と経験に裏付けられた助言をできる人は、この世に存在しないのです。

ひとり分しか立つスペースの無い頂上に、いま北島さんはひとりで立って、ひとりしか見ることのかなわない風景を見ながら、さらに高い頂上を見上げているわけです。

200のスタート台に、北島選手がいたら、いるというそのことが何よりの決意表明ではないでしょうか。行って帰って、もう1回行って帰ってくる200。最後の復路のそのまた最後の20メートル、実況解説の「落ち着いてけ落ち着いてけオチツイテケーッ!!」(←日本全国「オマエが落ち着け」とツッコみ)の声、また聞きたいですね。

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例のあの人

2012-07-30 00:19:00 | スポーツ

ロンドン五輪開会式では、ローワン・アトキンソンさんがロンドン交響楽団の一郭にちゃっかり加わっての『Mr.ビーン、炎のランナーになる』妄想小芝居も良かったですね。アトキンソンさん1955年生まれ、今年57歳。日本流に言えば昭和30年の早生まれで、永遠の冬彦さん=佐野史郎さんや、シングルアゲインで幸せ太り?の春風亭小朝師匠、この夏は熱中症対策広報マンとしてもご活躍の所ジョージさんなどが同級生。大西洋の向こうのUS映画界ではブルース・ウィリスさん、ケビン・コスナーさんも同年、早生まれです。なんとなく、「いま、年幾つだっけ?」と一瞬悩み、正解聞いて「あー…」と微妙な反応になる系のキャラが多いような気がします。

1990年代後半、NHKMr.ビーンシリーズが放送されて、98年頃にはアトキンソンさんみずから来日してスタジオインタヴューも放送されていたように思いますが、制作当時は40歳前後だった計算で、昨日の開会式ご出演姿と比べると、変わっていないにもほどがあると言うべきか、当時が老け見せ過ぎだったんだなと言うべきか。ロン響のマエストロ=サイモン・ラトルさんもよく付き合ってくれた…と思ったら、ラトルさんもアトキンソンさんと同い年だそうで。あー…(微妙)。

あと、実況のNHK武田真一アナがハリー・ポッター好きだったという、役に立たない情報もなにげに微笑をさそいました。「ヴォルデモート卿ですね!」「子供たち危ないですね!」「助けは来るんでしょうか!」息子のお供で戦隊ショー見てるお父さんみたいになってて、サブ実況の広瀬智美アナも“武田先輩ったら♪”的な空気になってました。全国の男子アナウォッチャーが早朝からTVの前で萌え倒したことでしょう。

ヒーローものとファンタジーって基本、地続きです。妖精さんやもの言う生き物が活躍する、一見無邪気で夢々しい世界であっても底がダークで、皮肉や諧謔や不条理に満ち、意地悪の針も隠れているメイドイン英国ファンタジーは、むしろバトル好きの男の子にファンが多いのかも。月河も子供の頃は、メアリー・ポピンズのキツおばちゃんヒーローっぷりをこよなく愛し、『オズの魔法使い』よりは『不思議の国のアリス』が、『トム・ソーヤー』よりは『ナルニア国ものがたり』が好きだったクチです。武田アナは『魔法戦隊マジレンジャー』は未見かな。お薦めしたいな。

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ヘイ柔道

2012-07-29 01:49:31 | スポーツ

やはりフィナーレはサー=ポール・マッカートニーさんで『ヘイ ジュード』で締めますか。ロンドンオリンピック開会式。

直球で“落ち込み励ましソング”ですから、内戦・テロと経済混乱にあっちもこっちも揺れて傷ついている時期に開催される五輪の、スタートアップ景気づけには最適の楽曲かもしれない。今年満70歳のマッカートニーさん、それなりに声も出ているようで、天国のジョン・レノンさんとジョージ・ハリスンさんも応援してくれていたことでしょう。そう思いましょう。

しかし、世代と国境を超えて“誰もが知っていて、旋律ぐらいは歌えて、リスペクトしている曲”を“国産”として持っているということはとにかくこういうセレモニーにおいては強力ですね。日本もこの次の次だか、そのまた次だかの大会開催地に東京が、と言うより東京都知事が立候補をぶちあげているわけですが、かりに実現したとして、華々しい開会式も大盛り上がりのうちにフィナーレを迎えたとして、『ジュード』くらい文句なく締めの楽曲にどんぴしゃの“国産曲”ってあるでしょうか。

『上を向いて歩こう』しか思いつかないのだが。オリジナル歌唱の坂本九さんは物故しておられるし。数え切れないくらい多くのアーティストが後追いカヴァーしているので、かえって人選が厄介です。平井堅さんなんかどうかな。政治力と物量力でEXILEかな。久保田利伸さんは元気かな。

さて、同枠前作に比べると、わりとふわふわゆとり進行かなと思っていた『梅ちゃん先生』ですが、先週=716日からの第16週いっぱいで松岡さん(高橋光臣さん)が渡米留学したかと思ったら、今週17週には坂田先生(世良公則さん)がまさかの犬死に退場。昔、酒に負けかけて、立ち直って良き酒飲みになったはずの坂田先生が、自分が酔っぱらってじゃなくて酔っぱらい運転の車にはねられるとは皮肉なこと。ときに設定昭和30年、都内がマイカーであふれ交通戦争と称される時代はまだ10年は先のはずで、こんなところだけ時代を先取りしてどうするんだという、理に合わないにもほどがあるお別れでした。

梅子(堀北真希さん)の喪失感さめやらぬうちに医院近隣で連続泥棒事件発生するわ、過労発熱をきっかけに信郎(松坂桃李さん)と急接近するわ、寂しがっている暇もない急展開。竹夫兄さん(小出恵介さん)までが坂田の死で取り残されたわけあり看護婦静子(木村文乃さん)に大告白、建造お父さん(高橋克実さん)入院中の俄か女所帯下村家に、泥棒用心を口実に陽造叔父さん(鶴見辰吾さん)が居ついたりと、なんだかもうほとんど最終回1週前くらいの風速、振り幅です。

医師の資格も思いのほかすんなり取得、大学病院での実戦経験もちゃらっと切り抜け、開業にも大して難儀せずこぎつけたし、終盤までにもうひと声、梅子に何か大きなイベントがあるとしたら結婚と出産ぐらいしかなさそうなのですが、このまま信郎との気運を一気に高めて行って、ご近所にもやんやと祝われてのハッピーゴールとなったら、松岡さんはまるっきりの悩み損、照れ損、建造お父さんからのプレッシャー背負わされ損、ドーナツの穴問題思案のし損、『完全なる結婚』の読み損になってしまうわけでなんだかかわいそう。坂田先生の最期の不条理っぷりからすると、松岡さんもあっさりアメリカでナマ水飲んで当たって死んでたことにされかねないのではと気が気じゃありません。

折れない梅子を折れないままの若木で育たせてあげるために、言わば身を引いた松岡さん、研究者としてノーベル賞級の成果を上げていつか帰国してきてください。羽田のタラップを降りるときはアメリカチックになって、テンガロンハットにフリンジつき革の上下にヒゲとか希望。いやもう、がっつり外見までネタっぽくなってでもくれないと、つらいんだもん、再会が。

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“休”“休”“言”

2011-08-30 20:10:24 | スポーツ

公示からこっち、えらく間のない、ばたばたした代表選でしたが民主党、野田佳彦さんに決まりましたな。第2ラウンド、「“小沢まみれ鳩山まみれ”でないヤツなら誰でもいい」みたいな流れになって、砂鉄クズ鉄が磁石に集まるように、野田さん票が2倍に膨らんだのがおもしろかった。

海江田万里さんも「“小沢票の受け皿”役になるんなら出るんじゃなかった」とある時点から思っていたんじゃないでしょうか。今後政治活動を続ける限り、“小沢鳩山まみれ”の記憶は有権者について回るでしょうし、菅さんには何度頼んでも経産相辞めさしてもらえなかったし、疲れ損の汚れ損。どうせなら2回めの演説辺りで、もう1回泣いて見せればよかったのに。

閣僚としてもカンロク不足なのに…と思うような顔触れが揃いも揃った候補者5人、第1ラウンドでいきなり誰かが過半数ゲットはないだろうなと最初から思っていましたが、前誠司さん江田万里さん田佳彦さん渕澄夫さん鹿野道彦さんと、立候補届出順に並べて見ると(たぶん日本人の大半が気づくと思うけど)鹿がクツワを並べておる。

いまは遠い日々となった『霧に棲む悪魔』かと思ってしまいました(漁師の“対馬”さん、運送屋の“鹿野”さん、、全登場人物中でも数少ない“純・善人”ふたり合わせてホースとディアー)。

しかも、候補者中の他のお3方を眺めると“”“”“”と、あたかもイメージの韻を踏むがごとくどこまでも限りなく果てしないものの陳列ショーケース。

さらに“万里”なんていう、これでもかと駄目押しの字句もあったりして。

これらが束になって“馬”“鹿”を修飾しているわけです。なんと絵に描いたような。

このメンバーに“”とか“”とか“”とか“”の字を持つ名のかたが加わって、下の句の“馬”と“鹿”に乗っかったら、イメージが広がってもっとよかったのに(よくないか)。

ついでに、せっかく“”“鹿”が揃っているのだから、“”“”もいるといいですね。

”“使”もほしいし、“”“”“”もいたほうがいい。

襤褸”“”“”も欠かせないし、もちろん“”“”もいてもらうべき。

………どんだけ珍名さんばっかりの代表選だ。

馬渕さん、鹿野さん、今回は届きませんでしたが、この後、リベンジで再立候補を考えるようなことがあったら、ぜひお2人揃って出てください。いや揃って出るべきです。揃わなきゃ。クツワ並べなきゃ。

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問題が残った残った

2011-04-07 16:34:28 | スポーツ

震災後にここで「(被災者慰問チャリティと復興支援というエクスキューズができて)相撲協会がひそかにホッとしてそう」という意味のことを書いた記憶がありますが、どすこい…いやどっこいそう簡単にはいかなかったようです。

サッカーJリーグやプロ野球、個人競技のオリンピック選手までがおカネを出し顔を出し汗をかいて行動を起こす中、「大相撲も手をこまねいているわけにはいかない」「て言うか、何か動ける地合いに早くしないと」とばかり一気大量処分に出たものの、拙速に過ぎて、処分された当事者の力士や親方衆から「調べが不十分だ」「納得行かない」との声が続出、勧告受けても退職届を出さず、さらに厳しい“解雇”を甘んじて受けた親方もいて、もやもや感はさっぱり払拭されないまま。

結局、“どこからどこまでが八百長で、そこをきれいに切り取ったから、あとに残ったのは八百長に染まっていない、一度も染まったことのないキレイな大相撲、どうぞ安心してご覧下さい”なんていうわけにはいかないし、いかないことを観るほうもわかっている。要は落とし所をどこにするかであって、相撲協会としては時間との戦いで無理やり作った落としどころがココ、という23人処分だったのでしょうね。

あと、盗っ人にも三分の理じゃないけど処分された力士たちにも言い分はあるのと同じくらい、観るほう、見せられるほうにもプライドというものがあるということ。なんだかドサクサと処分と言うか、「“処理”だけしました」みたいな状態で、そんなにホイホイ待ってましたと相撲に興じる気分にはなれない。さなきだにすでに、野球のナイトゲームなど、大施設での大量電力消費は自粛ムードだし、チャリティだ激励だと恩に着せられたって「そう?」ってくらいの体温の、被災なんか何もしてない場所、人口が日本の半分以上はあるわけです。今般、医療や物資・仮設住宅など焦眉の急がわんさかで、まだそれどころじゃないという実態はあるものの、特に被災地から「早く相撲を見たい、見せて」という声があまり聞かれないのは、月河としては「まだ日本も捨てたものじゃない」と胸のすく思いでした。相撲に限らず、世の中“ファン”“贔屓”ばかりじゃない。あまり世間というものを舐めないほうがいい。

正規の5月場所に代えて、入場無料の“技量審査場所”なるものが設けられるそうですが、ジタバタする相撲協会~「やっぱり相撲はいいな」「元気をもらえる」と喜ぶひと握りの“ファン”~おおかたしらけた目で遠巻きに見る世間一般…という構図はもう少し続いたほうがいいと思います。確かにメガ災害だし国家的な難局かもしれないけど、何でもかんでも敷居が下がって、目尻が下がって、涙もろく“感動乞食”みたいになるのには絶対反対です。

一昨日だったか、横綱白鵬らが被災地を訪問してちゃんこ鍋をふるまったというニュースが流れていましたが、こんなとき、斯界を代表する横綱が外国人ひとりで、逆にラッキーだったなと思いました。なんか“キレイ”という幻想、フィクションに、辻褄を合わせやすいですもんね、外国人ならね。

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