イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

新春テレビ放談 ~ベスト20を何も見てない~

2020-01-04 19:17:38 | テレビ番組

 正月恒例の特別番組の中でここ数年落としていない『NHK 新春テレビ放談』、2020年も1月2日PM10:00~の放送。

 女優松本まりかさんのローで熟で微ハスキーなナレのおかげで?今年は心なしかアンニュイに、ミスティな雰囲気でスタートしましたが、個人的に振り返れば2019年は本当に近来稀にみる、テレビ番組をしっかり見なかった年でした。

 同番組の人気コンテンツランキングでも「あぁ、これは毎回もしくは、ほぼ毎回、見てたわ」と思うタイトルが“話題になったベスト10”の中にひとつもない。

 辛うじて、2位『相棒』はいまだ見てるか。Season17ぐらいから録画溜めては足かけ三日か四日がかりで再生視聴が多くなってるけど。

 自分でも信じられないんですが、放送前かなり期待していた『仮面ライダーゼロワン』も3週、2月からの『騎士竜戦隊リュウソウジャー』にいたっては1週でダウンしました。

 2018年度の『快盗戦隊ルパンレンジャーvs.警察戦隊パトレンジャー』に、関連書籍を含めて精も金も尽くし果てたということもあるんですが、ここへ来てテレ朝スーパーヒーロータイムの朝9時台移行というのが、2017年10月からの2年あまりで、ジャブ累積のようにこたえてきたなぁと正直思います。7時台のほうが、早起き身支度が確かにちょっと大変だけれど、家族や世の中がフル回転する前に自分だけの時間としてポケットに入れられた。

 9時からだと、『リュウソウジャー』が終われば10時です。日曜の10時、特に日没の早い11月頃以降の感覚だと、すでにお昼待ちです。もう自分の時間ではなくて、家族の時間、ひいては社会・世の中の時間です。あぁいま放送してるな・・と思っても、すでに“社会的”にエンジンかかっちゃってるものを、個人の享楽のポケットに滑り込ませるのはすごいエネルギーがいる。

 編成としてもどうなんでしょう。より感覚的でシンプルで明朗な就学前向けスーパー戦隊の前に、主知的でSFっぽく小劇場的でもある、コンプリケーテッドな令和ライダーが来るというのは。枠移動して2年そのままということは、特にクレームの嵐も、視聴率や玩具・お菓子等の売り上げ落ち込みもなく受け入れられているんでしょうかね。

 まぁ、最近の右肩上がり(下がりか)の少子化の流れからみて、ドンズバ小学校中~高学年のお兄ちゃんと、幼稚園の弟くんがテレビ前の特等席をタッチ交代する家よりも、二次元何でもオーライな大きなお友達がひとりで8時半の『プリキュア』シリーズからまるっと1時間半かじりついてる世帯のほうが優勢で、制作側もそういうお客さんを想定して作っているかもしれない。

 こんな、とっくに既定の現実になった状況が、いま頃になってこたえてきてテレビ視聴が仮死状態化するのは、なんだか“テニスの二日後に筋肉痛”のようでもあり、要するに個人の加齢変化にすぎないのでしょう。自覚症状がくるのに時間がかかる。

 アナログ人間でおウチ志向の月河でさえこんなに摩擦係数高まっているんだから、テレビ番組、特にスポーツイベントや時事ネタ、災害やアクシデントのニュースでブーストの恩恵のない、連続モノの制作者の皆さんは苦心惨憺でしょうね。

 ・・・・とはいえ、こんな中でも、完走したタイトルはちゃんとあるから我ながらしぶとい。「忙しい」「時間がない」は「やる気がない」とイコール。テレビ番組においては「面白くない」「興味がない」とイコール。おもしろいと思えば、寝る時間削ってでもやっぱり見るんです。続きは『テレビ放談2020』の感想も含めてこの次。

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『あさイチ』引継ぎ ~「いい加減にしろー!」

2018-03-30 23:20:35 | テレビ番組

 NHK『あさイチ』のMC“創立”メンバーも本日(3月30日)をもって卒業となったようです。2010年4月、8:00スタートに放送時間を移した連続テレビ小説(『ゲゲゲの女房』)の第1話とともに始まった番組なので、月河もほぼ“朝ドラと地続き”な受け容れ方で見てきました。

 始まった当初は、コーナー多いし全国に中継局のあるNHKの強みに乗り過ぎてやたらローカルアナのローカルレポートが多いし、落っち着かない番組だなぁという印象でしたが、何だかんだで朝ドラへの体温が高いときは迷いなくチャンネル据え置きで、死ぬほど興味のないテーマでもそのまま流して、意外にウケられるなと思ったポイントはウケていましたし、逆に朝ドラから醒めているときはまったく視聴意欲がわかないので、この時間に視聴できる環境にいても、もっぱらラジオでした。

 残念ながら昨年後半からは近来いちばんの低体温状態だったので、今朝も「そうだ年度末金曜だし何かサプライズあるかな?」と途中から視聴。

 何が笑ったって、有働由美子アナがすでに声シャガシャガなのね。理由は聞きもらしましたが、どうも、昨夜、軽くプレ打ち上げみたいのがあって、酒豪の有働さんとしては活躍過剰だったらしい。新年度からのMC近江友里恵アナと博多華丸・大吉さんも加わり、テーマも『年度替わりもろもろ引継ぎの極意』で、情報番組内の情報セルフサービスみたいにうまいことまとめました。

 後任の一郭が華丸・大吉さんとの情報はだいぶ前に流れていたし、月河は『爆笑オンエアバトル』常連だった頃からこのコンビは好きでも嫌いでもない(どっちかに傾きそうになると“博多ローカル”というレーゾンデートルのあるコンビだし・・ってことで自分内で放免されてしまう)ので、新年度あさイチも「この人たちになったから改めて見てみよう」とも「コイツらならますます見る気しなくなった」とも思いません。たぶん今後も八割がた朝ドラ次第でどっちにもなるでしょう。

 ただ、NHK総合の、娯楽を主体としない“まじめな”情報番組でも、当たり前のようにお笑い芸人さんがレギュラーMCをつとめることに誰も疑問を持たない時代になったんだなぁという、感慨のようなものはあります。NHKに限らず、娯楽に甘々な民放各局でさえも、情報番組においては、少なくとも昭和50年代ぐらいまでは芸人さんが出演するとしたら“ゲスト”、あるいは“取材対象”でした。笑いという“娯楽”を提供することを生業とする芸人が、中立を旨としなければならない番組メインMCの側に立つというのは、反則でもあるし、生業を封印することですからある意味、ご当人たちにとっても客(=視聴者)にとってももったいない話でもある。

 今般卒業したほうの井ノ原さんにしても、言わずと知れた大手どころのアイドルグループメンバーで、歌って踊って演技して、やはり“娯楽”“おもしろおかしいこと”を提供する仕事の人でした。

 もう、“おもしろおかしい必要はない”番組の、おもしろおかしい必要のない役回りのポジションに、何の恩着せもスペシャル感もなく“おもしろおかしさのプロ”が、レギュラーで毎日顔を出し声を出すことがまかり通る世の中になったんですね。華大さんだけではない、有働アナの後輩の近江アナ辺りすら、本来なら“おもしろおかしさの必要性”からいちばん遠いところにいるはずのNHK社員アナウンサーでありながら、すでにヴィジュアルや話し方、声質、キャラも含めてアイドル目線で消費されています。

 これはもう時計を逆回しにするのは不可能でしょう。昔なら盆と正月が一緒に来たような“おもしろおかしさ”の飽食、大安売りの時代に、私たちは暮らしている。

 慣れは鈍感を招きます。必要のないところにまでおもしろおかしさが満ち満ちていることに鈍感になれば、人間はもっと過激な、露骨なおもしろおかしさを求めてやまなくなります。逆に、おもしろおかしい必要のないところが、必要のない通りにおもしろおかしくなかったら、まるで必要なものがなかったかのように、「おもしろおかしくなかった、つまんねえ」と罵倒するでしょう。

 アイドルとベテランアナのコンビが卒業して、お笑いコンビとアイドルっぽいアナが引継ぎ。ほかならぬNHKの情報番組だけに、かえってあからさまに時代を映し出す鏡になりました。昨日今日始まった時代ではないですけどね。

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いまこそドラマ最強論

2018-01-28 12:22:12 | テレビ番組

 放送から一か月近く過ぎて月もあらたまろうというところでいまさらですが、ちょうど改編期でもあるしもう一回くらい話題にしてもいいでしょうNHK『新春TV放談 2018』(1月2日放送)。全編正味78分の前半33分を“ドラマ”に充ててくれたのは嬉しかった。

 33分過ぎからは“ワイドショー”、休憩と名刺交換(何だそれ)をはさんで41分過ぎから“バラエティ”、66分過ぎからAbemaTVや動画配信サービスといった“インターネットテレビ”、73分過ぎから地上波テレビの“未来”、最後の2分で今年の期待とまとめ、という構成の中でこれだけ“ドラマ”に費やす熱量が高いのは、皆さん「詰まるところテレビに求められているのはドラマだ」ということがわかっておられるからではないかと思うんですね。

 脚本があって俳優が演じるドラマだけがドラマではない。ワイドショーの政局ネタや不倫ネタに食いつく客も、バラエティの芸人の体当たりやアイドル・俳優のトークに興じる客も、女子アナの抜擢・降板に興味津々の客も、見たいのは“ストーリー”“裏話”“人間関係、人と人の好悪、衝突、絡み合い”・・要するに“ドラマ”なんじゃないでしょうか。

 AbemaTV代表のサイバーエージェント藤田晋社長が、(地上波ドラマ苦戦の)いま敢えて連続ドラマを制作する動機は?と訊かれて「ドラマは一発当たる(=ヒットする)と大きいから」「(ドラマは)キラーコンテンツ、キラーコンテンツってみんな、ボクもずっと言ってるんだけど、ドラマが当たるっていうのは、サッカーW杯やオリンピックぐらいの価値がある」と答えていましたが、この発言、“ドラマがキラーコンテンツとしてW杯・オリンピックに匹敵する”ではなく“W杯・オリンピックがキラーコンテンツなのは、ドラマだからである”と読み替えるべきでしょう。

 W杯にせよオリンピックにせよ、大勢が引きつけられ夢中になり、次の展開が見逃せないと釘付けになるのは、個々の試合や競技ではないのです。どことどこが対戦して何対何でどっちが勝ったとか、ドコソコ国の何某選手が何秒ナンボで走ったとかだけに集中するなら活字媒体の数行で足り、こんなつまらんものはありません。一斉に何百万人何千万人もの人が熱狂する中には、競技のルールも戦術戦法もよくわかってない向きも相当比率いるはずで、それでも熱狂するのは、実はサッカーやフィギュアスケートや柔道や100メートル走に熱狂しているのではなく、そこに期せずして湧きあがるドラマに熱狂しているのです。

 スポーツにはあらかじめの台本がありませんから、画面で起きたことには客が自由にドラマを読み放題、膨らませ放題盛りつけ放題です。新人選手の抜擢キラキラシンデレラストーリーでもいいし、国境を越えた男と男の萌え萌え友情物語でも、汗と涙の師弟愛物語でも、メダルを争う美人選手同士の嫉妬と意地のドロドロ劇でもいい。ワイドショーやバラエティがオフの選手を争奪してトークスタジオでお手盛りに仕上げるよりずっと先に、客が自分で好みのストーリーを自由奔放に織り上げて、好きなタイミングで歓声をあげヤジを飛ばすことができるから、大きなスポーツイベントはキラーコンテンツたり得るのです。

 逆に言えば、近年のドラマにヒットが少なくなっているのは、客の想像力の贅沢さに、既存の地上波ドラマ枠がついていけなくなっているからとも言える。スポンサー圧力やら放送コンプラやら芸能事務所とのしがらみやらに二重三重に縛られた窮屈な脚本キャストでは、先の展開を誰も知らないスポーツイベントの無色透明開放スペースに自由にストーリーを読み出し彩色していく楽しさに到底勝てません。

 ドラマで高視聴率をコンスタントに取っている数少ないタイトルが『ドクターX』『相棒』など軒並み数年~十数年以上続くシリーズものに限られてきたのも「TVのドラマに“想定外”を期待しなくなった」→「いつも同じパターンで先がわかっているから安心して視聴できる」という、言わば客側からの主体的な逆張り均衡策と言える。

 日本テレビの小田Pが『放談』最後の今年2018年の展望と抱負で「(スマホ世代の若者でもそれ以外でも)誰でも入って来れる、誰でも楽しめる“極上の暇つぶし”を、一生懸命作っていきたい」と語っておられましたが、テレビ制作者、特にドラマに携わる人は自信を持っていいし肝に銘ずるべきだと思います“テレビはドラマがあるから、ドラマになるから面白い”

どんなにバカバカしい動画だろうと不埒な情報だろうと、“意味”が一分一厘もない、腑に落ちるところが微塵も無いものならば人間はそんなに暇つぶしできません。若い人が友人とのコミュニケーション中にお手上げになるとよく「イミわかんね」と言いますが、人は“意味”が大好きで“意味”なくしては生きていけないのです。意味があって腑に落ちるものには、すべからくドラマがある。ドラマになるタネ(ネタではなく)が宿っている。政治も外交も経済もさっぱり先行きが見えない、腑に落ちない時代は、実はいちばん熱烈に“ドラマを求めている時代”なのではないでしょうか。

  もひとつ最後にこれは訂正。前の前の記事でテレビ東京伊藤P「池の水毎週抜くかどうか前向きに考える」と書きましたが、月河の聞き違い。正確には「毎週抜くかどうかはわかりませんが、毎週(局上層部に)怒られるとは思います」と仰ったのでした。抜いても抜かなくても怒られる。辛いね。でも冥利に尽きますね、バラエティPとしてね。

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餅も電波も活動も

2018-01-15 23:05:11 | テレビ番組

 『新春TV放談 2018』(NHK総合、1月2日放送)の中で、もうひとつ、特に個人的に刺さった話題に“ドラマ最終回いきなりメディアミックス”の件があります。

 昨年7月期の日本テレビ地上波のドラマ『愛してたって、秘密はある。』の最終回の後、有料配信サイトHulu(フールー)の「本当の結末はこちらで」という意味の告知が流れ、視聴者から抗議の電話やメッセージが殺到して大荒れ・・という事案が昨年実際あったらしいのです。

 月河はリアルタイムで見てないのですが、このドラマは基本、事件真相究明・真犯人捜しのサスペンスに恋愛ラインの成否もからむ作品だけに、結末が「いま見終わったテレビで完結しない」というのは、客にはかなりショックです。テリー伊藤さんに言わせれば「キャバクラ行ってさ、“次のサービスは別室(別料金)で”って言われる様なもんだよ。これしか金持ってないのにちょっと待ってって」。

 ・・例えるに事欠いてという話ですが。オレぁそんくらいキャバクラにカネつぎ込んでんだよと、個人消費活性化貢献自慢をしたかったのか。

 ・・それはともかく、このたぐいでいちばん先に思い出したのが、2009年8月の『仮面ライダーディケイド』最終回です。ものすごく“着地感”の少ないラストシーンだった上に、同年12月公開予定の劇場版の告知が間髪を入れず流れたため「“結末は映画館で”ってことか」「映画館に連れてってくれる親の居ない子供や貧乏な子供は結末を見られないのか」と非難の嵐で、バラエティのやらせ演出や差別発言事案の際におなじみの放送倫理・番組向上機構(BPO)が審議出動する騒ぎにまでなりました。

 制作側としては『愛ある』も『ディケイド』も、地上波放送の最終回でドラマとしてはきっちり完結していて、ディケイド劇場版はドラマ世界観と旧作諸ライダー+次作『仮面ライダーW(ダブル)』を包括してプレゼンするための全く独立した作品、愛あるHulu配信続編は“ストーリー性のある特典映像”みたいなものだったのだけれども、“映画館に行かなければor有料サイトに加入しなければ本当の結末は見られない”かのような誤解を招く広報のし方に問題があった・・という認識を示しています。

 “誤解を招く”とは言い条、半分は確信犯で“狙って”誤解させたふしも大いにあるとニラんでいるのは月河だけではないと思いますが、テレビという自宅のお茶の間から入場料払う映画館へ、月額定額払う配信サイトへという“おカネ”の敷居の高低をどう評価するかは別として、“テレビでやる事はテレビの中で完結させる”ほうが仕事として綺麗ではないだろうか、と改めて思ったのでした。

 たとえば東映製作の子供向けアニメ、特撮ヒーロー等は昔から夏休み春休みに『東映マンガまつり』と銘打って劇場版オバQやサイボーグ009を公開し「テレビのお気に入りキャラを大スクリーンで見たい」という小さなお友達の夢に対応していましたが、月河の記憶する限り、大スクリーンに映って、尺もいつもの放送より拡大してはいてもやっぱりテレビのアニメでありヒーローでした。ウツワが違っただけでテレビ番組でした。劇場版制作に携わったスタッフも、あくまでテレビ番組のキャラであり世界観なんだということを尊重して、小さなお客様がお茶の間に帰ってまたチャンネルを合わせてくれることを願って作ってくれていたと思います。

 「餅は餅屋」じゃありませんが、テレビ番組はテレビで見てこそいちばん輝くように、いちばん魅力的になるように作ってほしい。テレビを見る以外の時間を捻出して映画館に行く、ネットをつなげて配信ソフトを買うをプラスしなければ輝きが十全にならないのであれば、それはもうテレビ番組であることをやめた別の何かです。

 逆に言えば、ネットでできる、映画館でできるのと同じ事はテレビでやるべきではないと思います。べきではないと言うより、やっても仕方がない。

 『新春TV放談』の中で日本テレビの小田Pが「若い子に訊くと“テレビっていつも途中からやってる”“アタマから見たいのに何で見れないの”と言う」とご自身の新鮮な驚きをまじえて話していましたが、完全に自分の生活サイクルで、自分の恣意で再生したりリピートしたりできる動画サイトは“見たいものだけを、見られる時、見たい時に”という利便性があるのに対して、テレビは逆に言えば“見るつもりではなかったのにたまたま見てしまう”“見せられてしまう”というチャンス、糸口がたくさんある媒体です。

 ちょうど、電子辞書だと調べたい単語・言葉“だけ”がピンポイントで調べられるが、紙の辞書だと目指す言葉の前後の言葉にも自然と目が行って、調べるつもりではなかった言葉の意味まで覚えてしまうようなもの。見る気で見た番組のあと何となくつけっぱなしにしていたら、次の枠で思いがけない面白い番組やってた、という経験は誰にもあるはず。NHKなどは民放の様な時間帯スポット販売のCMがありませんから、レギュラー番組の合間に自局の番宣をとっかえひっかえ流すことができ、ここで相当な客をつかんでいるはずです。

 “テレビでしかできないこと”“テレビだけができること”は、原点に帰ればまだまだ数多あるはずです。「テレビに“テレビ以外の何か”を継ぎ足したり抱き合わせたりしないとスマホに太刀打ちできない、少子高齢化市場を生き延びられない」なんて事は、テレビの作り手に努々思ってほしくない。何かをプラスすることでテレビが輝きを増すとすれば、ネットでも映画でもない、まだこの世に存在しないまったく新しい何かだと思います。

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脳味噌ぜんぶ抜く

2018-01-04 19:46:42 | テレビ番組

 NHK総合『新春TV放談 2018』(1月2日22:55~)、毎年、年末年始仕様の“おせち番組”に飽きて「もういいやテレビは当分」となった頃、「まだまだ!」と叩き起こす様に放送されるこの番組、数えてもう10年目だそうです。そんなんなるんだ。

 テレビを愛する面々が局の垣根を越えてぶっちゃけトーク78分(半端だ)!と銘打たれても、所詮テレビが職場で、テレビで衣食して、テレビの盛り上がりが収入に直結する生活の人たちがテレビを語るのを聞いてもなぁ・・と毎年思うのですが、やってるとやっぱり見てしまうし、やはり“テレビ汁(じる)”のしみ込んだメンツが揃うだけに、見れば必ず誰か彼かが、面白い事の一つや二つや三つは言ってくれるんですよね。

 今年はテリー伊藤さんカンニング竹山さん“内幕も知るご意見番”に高橋真麻さん“同じく内側にも居たミーハー”に、テレビ界マスコミ界のデータバンク担当として日経BP研究所の品田英雄さん、“いままさに作ってる人”として日本テレビお仕事ドラマP小田玲奈さん、ニッチを行くテレビ東京バラエティP伊藤隆行さんに、ネットドラマフロンティア最前線サイバーエージェント藤田晋社長(月河の認識としては奥菜恵さんの元旦那さん)、音楽プロデュースのヒャダインさんも加わってMCが千原ジュニア、首藤奈知子アナ。 

 総合すると今年は前向きで、聞いてて腑にも落ちる話が多かった。

 

①    テレビの視聴率が伸びない、ヒット番組が出にくい原因を“視聴者がインターネット・スマホゲームやSNSに時間を取られているから”と、ネットを仮想敵視しパイを奪い合う思考の時代は終わった。

②    もう「なんとかしてスマホを置いてテレビの画面に集中してもらおう」と悪戦苦闘してもはじまらない。視聴者はスマホを持って、スマホを見ながらテレビの前に来る、そういう種族がすでに日本に相当比率いるんだということを前提に番組を作る必要がある。

③    テレビを見ながら内容やセリフや展開についてツイッターでつぶやく、実況がバズって盛り上がるという興じられ方が一般的になっているのに、依然としてテレビ番組の人気度・成功度は“リアルタイムの視聴率”でしか測られず評価されないのもすでに時代に合わない。新しい指標を編み出す時期に来ている。

④    たとえば月曜9時からのドラマを、月曜9時に帰宅してテレビの前に座って見なくても、録画して深夜や休日、自分の都合のいい時間に見ている視聴者も多い。若い人たちに「テレビどう?」と訊くと「テレビっていつも途中からやってる。アタマから見たいのに」と答える。パッケージ映像ソフトや動画サイトに慣れた層は、テレビの放送タイムテーブルに自分の生活を合わせるのではなく、生活にテレビ番組視聴を合わせるのが当たり前。

⑤    とは言えリアルタイム視聴ならではの、たとえば見ている人同士が同時進行でネット上で感想やリアクションをつぶやき合い、共感し合うという楽しみ方も、放送局は意識していったほうがいい。昔からテレビの前で「何言ってんだよ」とブツブツツッコんだりする見かたはあった。同じ番組を見ている他の人はどんな所にブツブツ言ってんだろう、自分のブツブツと同じ人はいないかな?あ、いたいたここにも・・と共感したい人は多い。もちろん、送り手主導でお膳立てしすぎると逆に引かれてしまうけれども。

⑥    動画サイトの普及で、若い人は3分から5分、長くても10分未満の短い動画を幾つも、スマホでずーーっと見続けている、一本が長いものだと途中で飽きられる。1話3~5分の動画を毎日配信して、新しい朝ドラのような形にできないかいま考え中(お仕事ドラマは「4話でキスさせて引っ張る」日テレ小田さん)。

⑦    バラエティ企画はとにかく保険をかけないこと。実績タレントを引っ張ってくるとか過去に当たった演出手法とか“これなら数字が見込める”と局の上層部が納得するような後付けがないと前に進めない、こういう思考ではいつまでたってもダメ(池の水ぜんぶ抜き続けるテレ東伊藤さん)。企画書が1行で済む、これも重要(テリー伊藤さん)。

⑧    凋落低迷続くフジテレビだが、2014年の『いいとも』に続き『めちゃイケ』『みなおか』の2大看板バラエティを終了させたことで局内の危機感の念押し共有はできた。いまだに80年代から90年代初頭までの成功体験を払拭できない上層部が生き残っているが、若いスタッフは優秀な人がいるしこれからは期待できる。

⑨    テレビに関しては、タレントは出てナンボ。とにかくテレビに出続ける、数多く出る。「あいつ去年全然見なかったけど正月に(この番組に)出てきてテレビがどうだらこうだら言ってる」って言われたら終わり(カンニング竹山さん)。

⑩    新しい年のテレビへの展望としては、とにかく大谷と清宮に活躍してほしい。彼らが活躍すればテレビ見たいという気になるから(テリー伊藤さん)。

⑪    池の水を(4月からレギュラー番組にして)毎週抜くかどうか前向きに考える(テレ東伊藤さん)。

 

 ・・・ほかにももう少しあったかな。ここ数年の中ではポジティヴなトークの多い新春TV放談だったと思います。少子高齢化で、モノ売り業サービス業どこでもどん詰まり感が漂う中、テレビの皆さん依然懲りていないというかめげていないし、猫も杓子もスマホスマホならスマホも込みでテレビの娯楽に取り込んでしまおうという姿勢に、「オレらが、ワタシたちが、負ける気がしないわ!」という、いい意味で傲岸な、したたかささえ感じました。ネットテレビ、ネットドラマと言っても製作スタッフは既存の局・制作会社から来ているし、サイバーエージェント藤田社長が満を持してこの1月から配信するアベマTVオリジナルドラマ第一弾の脚本は小劇場の人だそう。

 ドラマ、バラエティに続いて2017年のワイドショーを振り返るコーナーでは、暴言音声、不倫動画などの素材を週刊誌や写真誌が撮影録音して、それがテレビに朝・昼・晩と番組ごとに貸し出されていちいちお金になるので、ここのところ書籍が売れない雑誌が休刊したと低調を託っていた紙媒体が、実は昨年いちばん儲けたのではないか?という話も出ました。「暮れのボーナスも相当出たと思いますよ」(テリーさん)

 ・・・・・昔ほど見なくなったとは言え月河もスマホと未だ無縁なテレビだけっ子なので、テレビに携わる人たちがネガティヴなよりはポジティヴなほうがいいですが、ちょっと気になったのは⑥の“若い人たちが長時間のものを見続けることに耐えられなくなっている”という話。要するに、幼児化してるってことじゃないですかね。そのわりには人気ドラマベスト10に大河『おんな城主 直虎』や月~土帯の朝ドラ『ひよっこ』という日本を代表する長尺タイトルが堂々ランクインしているのは、NHK番組だからか。

 日テレ小田さんのアイディアの様に、短時間の動画をつないで連続モノにして提供するというのは、こういうご時世のひとつの突破口かもしれませんが、“長尺に耐えられない脳”の客ばかりが量産されるのもまた由々しき事態ではないかと、かつての昼帯ドラマウォッチャー月河は懸念するものです。

 長尺を敬遠する客、長尺を見せても消化できない客が増えた結果、長尺の話を書ける脚本家、長尺のシリーズをコントロールできるPが育たなくなった。月河が昼帯をレギュラー視聴していた14~5年前でもすでに「後半になるといつもヒロインの子供たちの進路やら恋愛結婚話になっちゃってテンションダダ下がり」としらける声がよくBBSで上がっていました。年頭の大河ドラマスタート時、前期後期の朝ドラ交代時には“前作より数字どうだ”“前作が高かった(or低かった)影響がどうだこうだ”というお決まりの比較が必ず出ますが、長いとついてきてくれない客に作り手が合わせて行く流れが続く限り、大河も朝ドラも“良くて横這い”でおさまってしまうのではないでしょうか。大河や帯の作り方、半年~一年にわたる本の書き方をわかっている人が減って行く一方なのですから。もう朝ドラも10年以上前から“一週6話で1エピソード”“土曜に問題解決”を半年続けるのが精いっぱいになっています。

 いちばんゾッとしたのが⑤。そんなに“共感”ってしたい、されたい人多いのか。たかがテレビ放送見てての時々刻々の所感で。自分が面白い、自分が泣けた、自分がハラハラドキドキしたキュンとしたでいいじゃない。なんで自足できないの。ここに居もしない、どこかしらの見も知らない不特定多数の人がどう思ってるかどう感じてるか、そんなに気になるのか。自分と似た感想持ってる人がどこかに何人かいたら、大勢いたら、そんなに嬉しいのか。

 普通に気持ち悪いよ。思ったんですけど、こういう“共感乞食”みたいな感性の人ばかりの日本だったら、いま“安倍一強”なんて言われてますが、誰かヨコシマなやつが、いや、すごく高潔な人でもいいけど、うわーっと独裁政治に持っていこうと思ったら、もう簡単ですね。赤子の手をひねる様だね。わかっててそこまでやってないんだとしたら、安倍さんもまだ全然人がいいよ。小池百合子さんがそれに近い事をやりかけたけど途中でポシャっちゃったし。おもしろうて、やがておぞましきTV放談でした。

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