イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

もうこの辺でいいんじゃないですか

2010-12-02 15:02:42 | 夜ドラマ

1週遅れになりますが、陣川くん(原田龍二さん)の事件吸引力は相変わらずすごいですね(@『相棒 season 9)。

彼個人としてはそんなに、当たるを幸い!とばかりオンナにがっついているわけでもなくて、相手が美人、それも、チャラくなくお仕事頑張っている系の女性だとなるとちょっぴりガードが甘いだけなんですけどね。かかわった女性が全員(season 3で居酒屋バイト遠藤久美子さん、season 6でファンドマネージャー高橋ひとみさん、season 8SNS管理スタッフ原史奈さん)、フタを開けてみれば事件関係者だったという。

先週放送(1124日)の“運命の女性”は、O・ヘンリーの短編や池波正太郎さんの作品にも複数ある“更生したい元・常習犯が、義のために再度、封印した腕をふるう”エピソード。京野ことみさんが、『ショムニ』や『大奥~第一章~』での、気弱めウジウジキャラの印象があるせいか、がらっぱちで侠気のある誇り高き一匹狼女スリ役は、ちょっと台詞回しがカクカクして“らしく”ないかな?と思いましたが、そこがかえっていい感じのいっぱいいっぱい感を醸し出して、一周回ってナイスキャスティング。朝ドラ『だんだん』での男衆さんと恋愛してしまう先輩芸妓役でもそうでしたが、京野さんって何かしら“困りごと抱え性”が似合う。本当に余裕でオットコマエタイプの、たとえば昔の山口智子さんとか、現代なら松下奈緒さん辺りがこの役では、対・陣川くんで圧倒してしまいますからね。

O・ヘンリーの元・金庫破りは、銀行金庫に閉じ込められた子供を“指”で助けてあげて、ひそかに追跡していた刑事が「どなたでしたっけ?」と見逃してくれたんじゃなかったかな。ちょっと再読してみたくなりました。

んで1週後(121日)の“暴発”は一転、久々に鬼気迫る右京さん(水谷豊さん)を見ることができました。スーパー戦隊で言えば“グリーン主役回”、あるいはいっそデータスくん(@『ゴセイジャー』)、ボンちゃん(@『ゴーオンジャー』)かスモーキー(@『マジレンジャー』)主役回のような、ユーモア&(大人の)童話チック先行の前週の次に、たとえばデカマスターとデカスワンが摩擦して、デカレッドとデカブルーも対立する(@『デカレンジャー』)みたいなゴリゴリのエピソードをやってしまうのが『相棒』のすごいところ。

「銃口の側から、こう掴まなければ、上着の袖に火薬残渣が残るはずはないんです!」と容疑者の両手をつかんで揺さぶる場面は、その容疑者・後藤(大柴隼人さん)になった気分で心底ゾクゾクしてしまいました。

麻薬密売組織構成員でありながら、厚労省麻薬取締部潜入捜査員・鎌田(山口祥行さん)の協力者、つまり“麻取の手先”を仲間に隠れてつとめていた後藤は、鎌田の正体が仲間に露見しそうになる寸前で「一緒に逃げよう」と持ちかけたように、身の危険を冒して一斉摘発に賭けてきた鎌田へのリスペクトや忠誠心も、50パーセントぐらいは持っていたのだと思う。しかし、潜入捜査を企画コントロールしていた麻取の課長・五月女(尾美としのりさん)に「心配するな、殺人で立件はさせないから」とありがたい話を持ちかけられ、他方では思いも寄らぬ“真実原理主義者”の右京さんに「本当は殺人じゃないのか、鎌田から要求された自殺幇助ではないか」と責め立てられて、結局は出所してからの仲間の報復を怖れて「ただの売人として送検してくれ、頼むよ」と五月女にすがり泣きつく命乞いの保身に崩れてしまった。

かかわった誰もが“義”と“情”と“立場”とに引き裂かれて、自分の心の中での勢力分布が、45分のエピソードの中で何度もいろいろに塗り分けられては塗り変えられ、あっちに引っ張られこっちにほだされした挙句、結局は“現行法の範囲内で公的捜査機関がいちばん汚名を着ないですむ決着”に全員殉じることとなった。右京さん、神戸くん(及川光博さん)はもちろん、警察上層部も現場も、もちろん麻取も「これでよかった、万々歳めでたい、メシがうまい」と勝ち誇っている人が誰もいないという、いまの日本のTVドラマでこれができるのは、『相棒』のほかはNHK土曜ドラマぐらいしかないでしょう。

『仮面ライダーカブト』のゼクター田所役の記憶が新しい山口祥行さんの、天涯孤独の潜入捜査員役もよかったけれど、中村吉右衛門さん版の『鬼平犯科帳』第4シリーズ(本放送1992年~93年)の“密偵(いぬ)”での本田博太郎さんをちょっと思い出しました。本田さんは『相棒』ではseason 3(本放送2003年~2004年)で朱雀官房長官として出演(退場)済みですが、黒幕ではなく手先的な役ができたお若い頃に、今回の鎌田的な役で出てほしかった気もしますね。

手先と言えば哀れな協力者・後藤役の大柴隼人さん。“大柴邦彦”時代に朝ドラ『すずらん』(1999年)のヒロイン幼なじみ(←片思い)役で見た後、昼帯『新・愛の嵐』(2002年)の要潤さん子分役、『愛しき者へ』(2003年)の気弱彼氏役を経て、2008年『瞳』で飯島直子さんの部下役として久しぶりに見かけたときに、あまりの“質感”の変わらなさに軽く驚いたものです。1976年生まれ、『すずらん』の頃22歳、現在34歳で、ここまで一貫して“手先感”を全身から表出し続けられる人も珍しい。自分の欲求や欲望、上昇志向のままに行動しているつもりでいながら、実は自分も知らない背後の大きな力に、いつの間にかおどらされ翻弄されている役を演らせたら、実は地味に大柴さん、いま日本のドラマ界で第一人者の域かもしれません。鎌田の鉄壁の意志を振り切れず発砲してしまった後の“こんなつもりじゃなかったのに”顔は出色の出来でした。

コメント
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