イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

見てんじゃねえよ

2010-12-11 19:40:16 | 夜ドラマ

最近、『劇場版Ⅱ』の宣伝がいささか賑やか過ぎて鼻白みますが、『相棒 season 97話(実質6話)“9時から10時まで”は、サブタイトルから容易に読める通り、放送時間に合わせリアルタイム進行に設定した『24(トゥウェンティフォー』方式のエピソードでした。

脚本徳永富彦さん、season 8“怪しい隣人”以来の登板ですが、この人は今回の阿藤快さんの骨董道楽のような“安心して笑える、わかりやすい笑かしキャラ”を入れると、ゲーム感覚なお話に精彩が出る。同じseason 8“消えた乗客”などは、冒頭、メリー・セレスト号事件の再来か!はたまたオリエント急行殺人事件方式か!とゲーム、パズラー魂をバリバリ刺激しておきながら、こういう道化ないしトリックスターが配置されず、根暗で陰性な犯人たちのべちょべちょの怨恨の輻輳だけにとどまったため。好エピになり損ねました。今回はスイートスポットにミートした様子。

神戸くん(及川光博さん)がたまきさん(益戸育江さん)からの映画デートのお誘い(←右京さんには興味なさそうな血みどろホラー映画だったので、神戸くんに声かけたらしい。しかしたまきさんも意外な趣味てんこもりの人だ)で早い退庁、午後820(←放送開始=劇中時制スタートの40分前)に銃声通報で現場急行し米沢さん(六角精児さん)と合流したのは右京さん(水谷豊さん)ひとり。しかし右京さんの検証する現場と、神戸くんがたまきさんとともにアフター映画の熱冷まし(て言うか吐気覚まし)に寄ったコットンクラブの怪しい男客たち&怪しい骨董商談とは、分刻みでみるみるうちに接点を持って行き…

本家『24』の「あざとさ?何それ」と言わんばかりの確信犯的ジェットコースターには及びもつかないものの、接点(=景徳鎮の絵皿)ができてからの、真相がどっち方向にあるのか読めそうで読めない羅針盤のミスリード振らしっぷりは、全体の登場人物数の少なさもあってなかなか小洒落ていました。

阿藤さんの、惜しげもない陽気な土建屋チックおバカ全開(←「不動産業」と自己紹介してましたが)もさることながら、若々ツルツルお肌、端整すぎて怪しい美術商役・黄川田将司さんも、前々回“運命の女性”の京野ことみさんを思い出させる“一周回ってナイスキャスティング”だったと思います。骨董知識、歴史知識バリバリ武装して身なりも一分の隙もなく、金持ち顧客相手に余裕綽々と見せて、「結局は芯が気弱(=ドジな相方と腐れ縁)」が透けて見えるのがいい。

仮面ライダー経験俳優さん(劇場版『仮面ライダーTHE NEXT本郷猛役)の起用法として、ちょっとseason 6“この胸の高鳴りを”における松田悟志さんを思い出したりもしました。良きにつけ悪しきにつけ、臆病系の“強くない”人物にするというね。

暴力団がらみの射殺事件とあって捜査一課トリオも珍しく颯爽と聞き込みに立ち回り、庁内で残業中の組対5課「暇か?」の角田課長&大小コンビにも軽く見せ場があったし、ラストは神戸くんの「おや?もしかして(たまきさんのデートを)妬いてます?」に右京さんの「キミもおかしなことを言いますねぇ(微硬直)」で締めて、952、めでたく事件解決。冒頭CM提供ベース→Bパート導入を映画『カサブランカ』の『As time goes by(時の過ぎゆくままに)』ピアノソロにしたり、“今日はリラックスして観てね”のお遊び心メッセージがそこかしこから流れてくる。

放送開始10周年の世界観・キャラ造形積み重ね分厚さを武器にした、いまの『相棒』でなければできない作りのエピソードでした。先週(1日)放送“暴発”のビター硬派さの直後週だけに好みは分かれるだろうけれど、番組としてのフトコロの深さが感じられて、月河は嫌いじゃないな、こういうの。

犯人の意外さや、事件、状況、動機などのせつなさといったメインディッシュのお味より、盛り付け=叙述法のユニークさで引き込み引っ張る、これはすでに築き上げられた世界観が磐石に分厚いからこそ可能。

あと、脚本徳永さんは、キャラの中で結構捜一ヤング芹沢くん(山中崇史さん)がお気になのかもしれない。season 7“髪を切られた女”同様、“まじめなコメディリリーフ”が冴えました。裏階段から雲隠れをはかる容疑者に立ちふさがり「どちらにお出かけですかァ?」まではいいとして「こんなこともあろうかと…」と誰もいない大向こう向いて見得切ろうとしてんじゃないっつうの。まだ伊丹先輩の似顔絵、ノートに描いてんのかな。

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かまわぬ

2010-12-07 19:43:36 | ニュース

市川海老蔵さん、飲むと「人を怒らせる天才」なんて評もあるようですが、いろんな媒体がいろんな噂話昔話、蒸し返してほじくり返してプレゼンするごとに思うのは、「伝統芸能御曹司として、死に急いでるだけじゃないか」。

同じ芸能人、スターと言っても、ポッと出のアイドルやイケメン俳優といった、水のように流れる浮気な世間的ブーム次第の人気商売ではなく、何をやっても汚れても、“腐っても鯛”で一生安泰が約束されている出自です。背いても背いても反故にされない、反故にすることが許されない約束。生まれた瞬間から、死ぬまで雁字搦めに締結されている、身分保証という名の拘束。

ウソか本当か、脚色何パーセントかわかりませんが、「オレは人間国宝になる男」「60歳まで国から2億円もらえる」発言は、普通に直球なオレ様天狗ビッグマウス、あるいは単純なそこらの酒癖悪ゴロツキ兄ちゃん(33歳だけど)というより、“がんじがらめ特権出自から、泥まみれ失墜したい”願望のあらわれな気もします。

単純に酒好き、飲んでホラ吹いてバカ騒ぎが好きなだけなら、あの世界の人たちにはちゃんと親子何代もの“御用達の店たち”があるし、ムチャやってもなだめたりいさめたり取りなしてくれたりする取り巻きも、二重三重にいるのだと思う。でも海老蔵さんは、“御曹司さまチヤホヤ”という、親代々馴染みのお手盛りワールドの中では、ハメはずした気がしないし、楽しめないのでしょう。だから、人間国宝とか年俸ウン億円とか、庶民と四つに相撲とる必要なんかはなから無い御曹司らしからぬ、誰だってムカッパラ立てるに決まっているオレ様暴言も出る。これはホラではなく、「どんなもんだい」の鼻高々でもなく、たぶん彼なりの、苦くイタく屈折した、しかしいささか幼稚な自虐なのでしょう。

どっちに余分に非があるにせよ、怪我して手術までした人に酷な言い方だけど、この人は顔面崩壊して歌舞伎役者生命失ったほうが幸せだった。隈取りが描けないボコボコの顔にされて、見得も切れずニラミも二度とできなくなり、自分の才能、才覚、根性っきりで勝負するしかない境遇に放逐されたとき、初めてこの人は自虐から自由になって、生来の個性を発揮できるのではないでしょうか。

持ちたかったら自分で戦って奪い取るしかない、大多数の“持たざる者”からは普通に羨まれるだろうけれど、先祖代々の持てるものを、持てるままに受け継ぐのは、ラクなようでいて、持てる血筋に生まれてきた人なら誰でも、黙っててもできるというものではないのです。

徒手空拳で戦い、おのれ以外に味方のいない状況で、ゴツゴツガツガツぶつかりながら生きて行くほうが合っている、傍から見て「しんどそうだなあ」「安らぐ暇がないなあ」と思える試練の荒野でこそ輝ける星回りの人もいる。そしてそういう人が、たまに“持てる者”ばかりの世界に、ポコッと生まれてくることもある。

「ホラ、水が合わないだろ、安閑過ぎて息苦しいだろ」という、それは神様が、試練の似合う人のために愛をこめて与えた、最初の試練のプレゼントかもしれない。

だから月河は、一連の報道を小耳にはさむたび、「もっと嫌ってやれよ、叩いてやれよ、干してやれよ」と思うのです。

…いや、人として、とりあえず大事に至らず怪我が全治したらいいなとも思いますけどね。顔のケガって、殴られたんじゃなくても、痛いし、景気よく血が出るしね。

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人間酷崩になる男

2010-12-04 23:14:16 | ニュース

前回の記事で、『相棒 season 9“暴発”での天涯孤独の麻取潜入捜査官役・山口祥行さんを見ていて、ふと若い頃の本田博太郎さんにこれ的な役を演ってほしかったなと思った…という意味のことを書いていて、後から自分で読んで笑ってしまいました。山口さんと本田さん、まるっと『仮面ライダーカブト』ZECTつながり。

“暴発”のような、『相棒』の中でもとりわけビターに深読みし甲斐のあるエピソードの、こういう鮮烈な役どころを充てられる俳優さんと、視聴していて想起する俳優さんの両方がレギュラーで出ていたのだから、仮面ライダーシリーズ侮るべからずですな。

『カブト』ZECT関係では、弓削智久さんが昨年season8元旦SP“カナリアの娘”で、レッド・ドラゴンばりのタトゥー姿を披露しているし、ワーム関係では悲しきウカワーム・麗奈役だった三輪ひとみさんがseason 4“七人の容疑者”で出演済みですね。

英国名家の本流なのになぜか末裔がコッテコテの日本人という不思議な神代家のじいや役梅野泰靖さんは、season 2“殺意あり”で、医療過誤を恨まれて遺族に殺される金持ち院長を演じておられます。梅野さんならいつseasonの何エピの誰役で出ていてもおかしくないほどのベテランさんですが。

“麗奈”で思い出しましたがカブト組の佐藤祐基改め智仁改めやっぱり祐基さんは(思い出し方がヘンか)、事務所関係とか身辺が落ち着いたら必ず『相棒』にゲストインしそうな空気はあります。『相棒』って基本的に、“おっさんもしくはおじさまワールド”なドラマなので、ゲストも年齢の若い役はそもそも“椅子”の絶対数が少なく、出るとしても明るく楽しくカワイかっこいいいまどきの若者ではなく、何かのひずみや影、疵を背負った人物であることが求められるので、若手陣もクセ者寄りのほうが起用されやすいかも。永遠の兄貴・徳山秀典さんなんか大いに来そうですが、今季は年明けから放送開始の昼帯があるしね。こちらはまた別建てで楽しみ。

『カブト』と言えば忘れちゃならねえ、例の“ミスター2000万”にも俳優休業前、若手感満々なうちにぜひ一度ゲストインしてほしかったですね。先々週“最後のアトリエ”にも地味に表紙の名前で登場、意外と息が長かった北之口修一(@season 5“ツキナシ”)役ってのも悪くないけど、season 6“空中の楼閣”で村上淳さんが扮したオレ様作家役なんかもおもしろかったかな。

『相棒』自体東映&テレビ朝日の、スーパーヒーロータイムチーム製作のドラマなので、ヒーロー番組OBの起用は多いです。今週のクライマックス回想場面、鎌田と後藤(大柴隼人さん)が向き合い銃を掴み合うシーンも、実はZECT対メガレッドだったりしますし。

……ところで連日媒体をお騒がせ中の市川海老蔵さん殴打事件。どっちから先に仕掛けた手を出したは別にどうでもいいけど、「現場のビルで複数の血痕を検出」「DNA検査の結果、海老蔵さんのものではない血痕も」とか聞くと、脊髄反射的に「そうか、ルミノール反応が出たか」と思ってしまいますな。「テキーラ入れた灰皿から指紋は取れたのか」とかね。「川浚ったらズボン出てくるかも」「携帯のデータ復旧は米沢さん(六角精児さん)得意だから、半裸土下座画像も見れるかも」なんてね。

「CSIラスベガスならDNA鑑定はグレッグだな」とか。TVの見過ぎ過ぎ

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もうこの辺でいいんじゃないですか

2010-12-02 15:02:42 | 夜ドラマ

1週遅れになりますが、陣川くん(原田龍二さん)の事件吸引力は相変わらずすごいですね(@『相棒 season 9)。

彼個人としてはそんなに、当たるを幸い!とばかりオンナにがっついているわけでもなくて、相手が美人、それも、チャラくなくお仕事頑張っている系の女性だとなるとちょっぴりガードが甘いだけなんですけどね。かかわった女性が全員(season 3で居酒屋バイト遠藤久美子さん、season 6でファンドマネージャー高橋ひとみさん、season 8SNS管理スタッフ原史奈さん)、フタを開けてみれば事件関係者だったという。

先週放送(1124日)の“運命の女性”は、O・ヘンリーの短編や池波正太郎さんの作品にも複数ある“更生したい元・常習犯が、義のために再度、封印した腕をふるう”エピソード。京野ことみさんが、『ショムニ』や『大奥~第一章~』での、気弱めウジウジキャラの印象があるせいか、がらっぱちで侠気のある誇り高き一匹狼女スリ役は、ちょっと台詞回しがカクカクして“らしく”ないかな?と思いましたが、そこがかえっていい感じのいっぱいいっぱい感を醸し出して、一周回ってナイスキャスティング。朝ドラ『だんだん』での男衆さんと恋愛してしまう先輩芸妓役でもそうでしたが、京野さんって何かしら“困りごと抱え性”が似合う。本当に余裕でオットコマエタイプの、たとえば昔の山口智子さんとか、現代なら松下奈緒さん辺りがこの役では、対・陣川くんで圧倒してしまいますからね。

O・ヘンリーの元・金庫破りは、銀行金庫に閉じ込められた子供を“指”で助けてあげて、ひそかに追跡していた刑事が「どなたでしたっけ?」と見逃してくれたんじゃなかったかな。ちょっと再読してみたくなりました。

んで1週後(121日)の“暴発”は一転、久々に鬼気迫る右京さん(水谷豊さん)を見ることができました。スーパー戦隊で言えば“グリーン主役回”、あるいはいっそデータスくん(@『ゴセイジャー』)、ボンちゃん(@『ゴーオンジャー』)かスモーキー(@『マジレンジャー』)主役回のような、ユーモア&(大人の)童話チック先行の前週の次に、たとえばデカマスターとデカスワンが摩擦して、デカレッドとデカブルーも対立する(@『デカレンジャー』)みたいなゴリゴリのエピソードをやってしまうのが『相棒』のすごいところ。

「銃口の側から、こう掴まなければ、上着の袖に火薬残渣が残るはずはないんです!」と容疑者の両手をつかんで揺さぶる場面は、その容疑者・後藤(大柴隼人さん)になった気分で心底ゾクゾクしてしまいました。

麻薬密売組織構成員でありながら、厚労省麻薬取締部潜入捜査員・鎌田(山口祥行さん)の協力者、つまり“麻取の手先”を仲間に隠れてつとめていた後藤は、鎌田の正体が仲間に露見しそうになる寸前で「一緒に逃げよう」と持ちかけたように、身の危険を冒して一斉摘発に賭けてきた鎌田へのリスペクトや忠誠心も、50パーセントぐらいは持っていたのだと思う。しかし、潜入捜査を企画コントロールしていた麻取の課長・五月女(尾美としのりさん)に「心配するな、殺人で立件はさせないから」とありがたい話を持ちかけられ、他方では思いも寄らぬ“真実原理主義者”の右京さんに「本当は殺人じゃないのか、鎌田から要求された自殺幇助ではないか」と責め立てられて、結局は出所してからの仲間の報復を怖れて「ただの売人として送検してくれ、頼むよ」と五月女にすがり泣きつく命乞いの保身に崩れてしまった。

かかわった誰もが“義”と“情”と“立場”とに引き裂かれて、自分の心の中での勢力分布が、45分のエピソードの中で何度もいろいろに塗り分けられては塗り変えられ、あっちに引っ張られこっちにほだされした挙句、結局は“現行法の範囲内で公的捜査機関がいちばん汚名を着ないですむ決着”に全員殉じることとなった。右京さん、神戸くん(及川光博さん)はもちろん、警察上層部も現場も、もちろん麻取も「これでよかった、万々歳めでたい、メシがうまい」と勝ち誇っている人が誰もいないという、いまの日本のTVドラマでこれができるのは、『相棒』のほかはNHK土曜ドラマぐらいしかないでしょう。

『仮面ライダーカブト』のゼクター田所役の記憶が新しい山口祥行さんの、天涯孤独の潜入捜査員役もよかったけれど、中村吉右衛門さん版の『鬼平犯科帳』第4シリーズ(本放送1992年~93年)の“密偵(いぬ)”での本田博太郎さんをちょっと思い出しました。本田さんは『相棒』ではseason 3(本放送2003年~2004年)で朱雀官房長官として出演(退場)済みですが、黒幕ではなく手先的な役ができたお若い頃に、今回の鎌田的な役で出てほしかった気もしますね。

手先と言えば哀れな協力者・後藤役の大柴隼人さん。“大柴邦彦”時代に朝ドラ『すずらん』(1999年)のヒロイン幼なじみ(←片思い)役で見た後、昼帯『新・愛の嵐』(2002年)の要潤さん子分役、『愛しき者へ』(2003年)の気弱彼氏役を経て、2008年『瞳』で飯島直子さんの部下役として久しぶりに見かけたときに、あまりの“質感”の変わらなさに軽く驚いたものです。1976年生まれ、『すずらん』の頃22歳、現在34歳で、ここまで一貫して“手先感”を全身から表出し続けられる人も珍しい。自分の欲求や欲望、上昇志向のままに行動しているつもりでいながら、実は自分も知らない背後の大きな力に、いつの間にかおどらされ翻弄されている役を演らせたら、実は地味に大柴さん、いま日本のドラマ界で第一人者の域かもしれません。鎌田の鉄壁の意志を振り切れず発砲してしまった後の“こんなつもりじゃなかったのに”顔は出色の出来でした。

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