おかずブログ

ここでは主に撮影画像を発表します。
近場で撮影した植物などがメインとなります。

焦熱の日々

2015年08月25日 | 歌稿

焦熱の日々                     

一人居の家も逃さず押し寄せる熱の繚乱部屋に満ち充ち

一人織る錦のひと日暮れなずみまた重ねたる時の衾を

待つこともなく言霊は消えて行く還ることなき日々のあけくれ

ちろちろとあるかなきかの燠の火は燃え盛りたる大の字をして

送り火に思いを託し祈りおり六十六度目の朱の夏往く

鳰の海鳥は見えねど億万の生まれしものの歴史孕んで

湖もまた炎熱地獄限りなく蒸気は昇る視界くもらせ

庭の面にポツリポツリと孔のあり短き命生きよと告げる

空蝉は蝉の命の置き土産梢の末の飾りとなりて

眼を醒まし夜毎の夢の懸け橋を空に探して小窓を開く


画像がないと寂しい気もするので、関係ない植物画像二枚と
蝉の写真を二枚です。









七回忌

2015年07月25日 | 歌稿


七回忌                     

部屋の中飾る写真に在りし日の時をとどめて満面の笑み

生きてきた歴史を秘めるかんばせに安らぎ受けてはや七回忌

巡る日は夢幻の世界奔り行く七つの年は瞬時に来たる

篁のごとく行き来を繰り返し異界通信折にふれ聞く

乗り継いで帰りし邑は濃い霧の幕の向こうにそっとたたずむ

棄てられたように静かな集落を囲む道路は新らしけれど

霧を抜け帰り着きたる育ち家に待ち人不在つのる寂しさ

宇和の海見下ろす墓所にたたずめば空晴れたまま小雨そぼ降る

棄てたのか棄てられたのか古里は世過ぎ身過ぎの道筋離れ

一抹の寂しさ孕み帰り着く梅雨のさなかの京の都に

 


栄の風

2015年05月24日 | 歌稿

栄の風

                       

雪を抱く山から降りる風寒く信濃栄は春まだ浅し

長い冬閲し桜や水芭蕉卯月終わりに萌えて咲きおり

栄にて積もる年月重ね来た我が血族に訣別悲し

栄村自然の中に伯母は生き日々の刻印しるして終える

四国伊予生を受けおり故郷を離れ栄に終える剛さを

時は行き人の命のはかなさにまだ熱き骨拾う悲しさ

亡き人を栄の風に偲びおり天翔けかけて伊予に向かえと

今はただ笑顔の満ちるかんばせにまたの世家にお逢いしたしと

繋がれる輪廻の糸を解きほぐし君の命に付き添いたしも

庵のある京の都に舞い戻る 栄の風が吹きすぎて行く

 画像は苗場山

 


早春賦

2015年02月26日 | 歌稿


早春賦                        

冥界の使いのように雪は降る淡い明かりにしじまも浮かぶ

春の色しのばせ落ちる寒の雪しらじら夜に拍子木の音

降り積もりほのかに灯る常夜灯蕗のさみどり出づる日こがれ

如月も末にしなれば土筆出る時のあわいの小さき墓碑銘

寒空に耐えて立ちたる裸樹に花は咲き出で人を動かし

さまざまのきざはしはあり日を次いで定めのままに春の足音

見えもせず触れもできずにきざはしを老いのまにまに危うく昇る

人住まず塵の積もれる古家に電気や水道請求書のあり

昔日に役目を終えた古家にかすかに残る生の残骸

まぼろしを背負いきざはし昇り来て見上げてみれば春の青空


稲村ケ崎

2015年01月27日 | 歌稿


稲村が崎                       

午後の海稲村ケ崎に潮満ちてうねりも低き波の満ち引き

この海につるぎ捧げて義貞は潮よ引けよと一心の祈り

むきだしの命をまとに奔る日々祈りの剣浪遠ざかれ

勝てば生き負ければ死すの定めの世覚悟を強いて時は過ぎ行く

昔日の稲村ケ崎の伝説は童のこころ騒がせ続け

知りそめし童の頃のざわめきを引きずり生きて六十路も半ば

夕まぐれ輝き強め日輪は相模の海を染めて移ろう

陽光は我が足跡も照らしおりたどりし道の真実あばき

落日を見入る幸せ知りもせず呆けたままにたたずみ見入る

責めもせず問うこともせず淡々と西に沈んで闇の訪れ


14年師走

2014年12月27日 | 歌稿

 

14年師走                          

 いまだにも小春のうちに師も走る世捨ての身にも気持ち急き立つ

 葉書来て今年の別れ数えおり思いはまさる重ねるほどに

 還暦をいくつか越えた年の瀬にさらにも願う安寧の日々

 知り人は山路を越えて還らじの国に旅して師走は寒し

 桜咲く便りとともに届き来た不治の宣告黄泉路の覚悟

 満たしたる憂いを払い花求めおちこち歩き酔いを内にと

 桜花春の盛りの爛漫は散る花びらが我が身に痛く

満たされることは忘れてモミジ葉の朱を探して巡礼の旅

 救われた命を想う紅の散って落ちるは悲しけれども

 出てみれば空気の粒は張り詰めて色付き初むるしののめの空


帰省

2014年11月27日 | 歌稿

帰省                                          

父母も逝きたまさか思う古里は手招き続け人を待ちおり

育ちいし生家に向かう細道に雑草あふれ行く手を阻む

寸毫の流れに道も消え果てる時の重さと残酷教え

父母作り麦芋植えし山畑は森に変わりて時の狼藉

イノシシもマムシも多し森の中我が耕せし残滓も留めず

学齢に満たずに手には鍬や鎌骨身のつらさ思い出のうち

一炊の夢にもしかずちちははの開けき畑元に還りて

空の下山の高みに段々と芋麦植えし頃もありやと

時代とはかくも変わりし一代の事実もおぼろ消え去るばかり

古里はただただよわい重ね着て時の跋扈に捉われたまま


道すがら

2014年10月26日 | 歌稿


道すがら

人の世を掴んで生きた道すがら老いの坂道待つ魔物あり

逃れえぬ手に囚われて嬰児に戻らむ時計あえかに求む

季節過ぎ巡る矢車ただなかを嬰児奔り旅路重ねて

かざす手は陽に透け見える来し方の有象無象を閉じ込めており

皺の寄る掌に地や天や自身にも愧ずべきことの無きを信じて

その部屋に神も仏も振り捨てて恃みなき朝胸を張り入る

あるいはの危惧を収めてはらからの心配顔に眼で応えつつ

無影燈灯るベッドに臥して待つ満ちたりて過ぐ明鏡止水

摘出の痛みも知らず目覚むれば黄泉路迷い路世を隔ており

転移なし医師の言葉に安堵してにわかに戻る乏しき未来


一期の夢の中で

2014年03月26日 | 歌稿


一期の夢の中で                    

夢の中闇路伝いに過ぎ越して六十路半ばを花にむつれて

寒の気がゆるゆるほどけ弥生の日花の元にと逸りて走る

ちちははの墓前に参りご無沙汰の侘びも入れずに花を見ており

頭には狂いの声が響きおり我が宿痾なり花の声する

振り返る月日は走るともし火は風化の波にあらがいもせず

鮮烈な記憶は事実歪めはて思いを込めて事実を創り

つつましくなおつつましく生きおれど花の思いはやみがたく湧き

西行のごとく桜に思い馳せ西や東と巡る幸せ

混沌をはらみ過ぎ行く我がよわい花に淫して送るうれしさ

しかれどもたかが花なりそれゆえに花に淫する哀れは深し


歌稿 如月の日々に

2014年02月25日 | 歌稿


如月の日々に                  

如月の霞の中に春立てばやがて盛りの花も待たれて

裸樹のままに呼ぶ声届きおり花の豪奢を見据えてあれと

いざなわれ弥生卯月の花の道狂いの国にこの年もまた

雪の日を一人命をちぢ込めて盛りの花を待つも嬉しき

絢爛を拒否して生きた道すがらふとかすめるは花の甘美さ

年降りて洗濯ものは多過ぎてまずは命と由布院の宿

清らかな湯に浸かりまた思いはす一世のうちの彩りの道

菅公は左遷のはての大宰府に人は観光恥じ入るばかり

憤激を納めてあるか飛梅は白き花弁を空に広げて

経ることの中にたまゆら人ありて盛りの花を切に待ちおり