ヒロヒコの "My Treasure Box"

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思い出のプログレ・アルバム#8 ムーヴィング・ウェイヴス/フォーカス

2013年06月17日 | プログレ
 オランダのバンド、フォーカス。思い出のプログレアルバム紹介の中から彼らを外すことはできない。

 私が初めてフォーカスを知ったのは高1の頃の3作目Focus3紹介の雑誌記事だった。それを読む限りはオランダのジャズ・ロック的なバンドのイメージだったのだが、直後に彼らの2作目Moving Wavesを聞いてそれにはとどまらない、クラシック的要素も兼ね備えた高度なテクニックを持つバンドなのだということがわかった。特にヴォーカル・フルート・キーボードのタイス・ヴァン・レアー(という読み方で良い?)の希有な存在感とギタリスト、ヤン・アッカーマンの抜群のギターテクニックは特徴的である。

 高校時代に結成したプログレコピーバンドで皆の一番のお気に入りはPFMの「セレブレイション」、そしてフォーカスの「フォーカスII」で、最初にその2曲ばかりを練習したものだった。結局そのバンドではフォーカスの曲がレパートリーとして一番多く、みんなフォーカスが大好きだったのだ。(Focus II, Anonymous II, Eruption(抜粋), ハーレム・スカーレム、ストラスブルグの聖堂など。)私はフルートを必死で練習した。その意味でも今も私にとってフォーカスは存在感の大きなバンドである。

 とりわけMoving Wavesは大傑作である。これほど密度の濃い楽曲と演奏が1枚のアルバムに凝縮されているとは驚きだ。冒頭の「悪魔の呪文」で驚異的なヨーデル・ボイスとハードロック並みのギターが聞かれたかと思うと、2曲目はナイロンギターによるクラシカルで美しい「ル・クロシャール」。A面最後の「フォーカスII」は美しくかつドラマチックな名曲(この曲はタイスの初期のフルートによるソロアルバムIntrospection にも収録されているが、そちらのバージョンもまるでクラシックの楽曲のように美しく演奏されている。一聴の価値あり)。 さらにB面全体を使った組曲「イラプション」は5つのパートから成るクラシックとジャズとロックが融合した大作である。確かバルトークの管弦楽の一節が引用されていたはず。途中の「トミー」はメロトロンをバックにギターが泣く名曲中の名曲で、我が敬愛するハケット先生もアルバムBeyond the Shrouded Horizon の中でカバーしていた。そしてクライマックスとなる中間のアドリブ部分ではハモンドオルガンとギターの音が炸裂し、実にスリリング。ベースもドラムもメインの二人をしっかりサポートしている。がっちりと作られた部分と自由な部分がバランスよく組み合わされた音楽、そんな印象を持つアルバムだ。

 この後フォーカスは、よりアドリブ性を充実させたFocus 3を発表。そのアルバムにはヒット曲「シルビア」が収められている。そして、さらなる大作Hamburger Concertoを発表した後、Mother Focusという力の抜けたフュージョン+ポップ風のアルバムを発表し賛否両論、話題となるが、結局私は気に入っている。さらにアウトテイクを集めた Ship of Memories (中のFocus Vは秀悦) 発表時にはアッカーマンも脱退しており、私も彼らから遠のいてしまった。しかし、今もアルバムがリリースされているのはタイスが頑張っているからなのだろう。

 ヤン・アッカーマンのソロについて触れるならば、3作目「流浪の神殿」でリュートを使ったバロック風な作品とティム・ボガード(b)とカーマイン・アピス(ds)を招いたバリバリのロック演奏の両面を展開し、私はこのアルバムも大いに気に入っている。