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正式にジェネシスを脱退した後にリリースされた作品で、何はともあれ私はこのアルバムのB面が大好きなのだ。曲の切れ目がない中でハケット風の幽玄な音楽世界が展開する。1曲目、ランディ・クロフォードが歌うHoping Love Will Last。ハケット先生が書いた曲の中で1、2を争う名曲だと思う。シンプルなピアノなどの伴奏にまるでテープの逆回転のようなサスティーン・ギターがからむ、その中で歌うランディのソウルフルな声。ランディ・クロフォードと言えば、フュージョングループのザ・クルセイダースと共演したことで当時話題になっていたが、まだそれほど知名度は高くなかったと思う。その彼女の声が実に曲調に合っている。特に間奏後のサビでのシャウトは鳥肌もの。学生時代、夕暮れ時の電車の中、ウォークマン(カセットテープ式)でこの曲を聴いていたら、目の前に見える黄昏の光(Afterglow)と曲がとても調和して一人感動したことを覚えている。この一曲だけでも聴く価値のあるアルバムだが、続くはお馴染みPlease Don’t Touch。今も演奏されるハケット先生お気に入りの一曲。聞くところによると、当初この曲はジェネシスの中でリハーサルされたそうだが、モノにならなかったらしい。でも、ここでのフルートのアルペジオが聞かれるバージョンは絶対に良いと思うし、ドラマティックだ。その後ナイロンクラシカル・ギターに導かれ、フィナーレのリッチー・ヘヴンスが歌うIcarus Ascendingに続く。アルバムの最後を飾るにふさわしい重厚で劇的な曲。そしてこの曲では間奏部分でいくつかのパターンのギター奏法が聞かれるのがとても面白い。こんなギターも弾くんだねぇ、と単純に驚いたものだ。やがて曲は大団円に向かい感動的に幕を閉じる。
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ランディ・クロフォードやリッチー・ヘヴンス(残念ながら今年4月に死去)のようなアメリカ人ヴォーカリストとスティーヴ・ハケットの共演、当初意外であり驚きだったが絶妙にマッチしているではないか。そもそもリッチーはジェネシスのオープニング・アクトを飾った人だったそうだし、そういえばチェスター・トンプソンがジェネシスのツアーメンバーになるなど、英米混合の下地は整っていたのだろう。
私とってこのB面は何度も聴きたくなる。そして何度も感動する。A面もNarniaやリッチー・ヘブンスによる別曲How Can I? など遊園地のような気持ちにさせてくれるバラエティに富んだ曲と構成になっているのだが、B面の魅力が強すぎてあまり言葉が見つからない。ジャケットや中袋のイラスト、レタリングもこの寓話世界を作り上げるのに役立っている。とりわけ、ジャケ裏のハケット先生のお姿、とってもカッコイイと思いませんか?