香が散る

本を読むのが大好き、少し前からノロノロですが走るのも好き
そんな、代わり映えのしない、でも大切な日々を書き綴っています

つばさよつばさ

2011-07-10 20:58:03 | 本のこと
JALの機関誌「SKYWARD」に連載された
浅田次郎さんのエッセイをまとめた
『つばさよつばさ』


大好きな作家さんのエッセイを続けて読みました
でも、まあ当然のことながら、全然違う面白さです
浅田さんは自分自身のことを、とても遠くから冷静に見ていて
ハゲで見栄っ張りの江戸っ子と称してから語り始める
もうそこで、単純なわたしなんか近しい人と勘違いしちゃう

JAL機関誌ということで、旅にまつわるエッセイなので
読んでいると、どこか旅に出たくなる(単純ですから
丁度『中原の虹』を執筆されているころ訪れた中国で黄砂にあい
その過酷さに若き火の張作霖の姿が浮かぶところは身震い

南アフリカやチュニジアを旅していてみた住居から
中国の四合院、そして日本の住居の話は
建物の歴史というか、人の暮らしの歴史が語られ
どこまで博識なんだとびっくり、憧れ

浅田さんは旅に出て名所や美術館などに行っても
メモもとらず、写真の1枚も撮らないという
おのが目で見、耳が聴き、心に感じた印象のほかは
のちに筆をおろすときに物を言わない
わたしなんかは、すぐにバシャバシャと写真を撮るけど
静かにその風景の中に身を置いて、何かを感じることって
大切だな、そういう時間を持ちたいなと思うのでした

真面目な話ももちろんたくさんだけれども
とにかくユーモアに満ちた面白エピソードも満載
「タキシードを着て赤い絨毯の上を歩いてみたかった」
ゆえに、映画祭に原作者として同行したって・・・その理由
自宅近くに「多摩肛門科」という病院があり
看板には名前と電話番号だけが載っている
「実に潔い。義のあるところに火をも踏む。という
決意さえ感じさせる大看板である。」
と語ったあと、思い立ってやったことが
「多摩肛門科があるのなら、茨城県の県庁所在地には
水戸肛門科があるのではないか」と104に電話したという
いたるところで笑わされました

この本の最後の「星を狩る少年」のナジャの
「ダメじゃないと思えばなんでもダメじゃない」行動に
浅田さん同様、わたしも”すごい”と感動しました

エッセイが2作と続いたので、そろそろ小説に・・・
とも思ったのですが、もう1冊、気になるエッセイがあるのですよねぇ