世界の中心で吉熊が叫ぶ

体長15センチの「吉熊くん」と同居する独身OLの日常生活

桜の季節の6年生

2006年03月29日 23時52分53秒 | Weblog
慢性的に忙しい。
仕事が。
落ち着けるのは、きっと総会が終って向日葵が咲く頃だと、静かに確信した…。

「あれもしなくては…
あの件はまだ先でも良いから、やはりこれを先に片付けようか…
でも待てよ。まずは他部署とリンクしているものを優先させるべきなんではなかろうか…嗚呼、何から手をつけたら良いのだろうか?」

ぶつぶつ言いながら、社内を歩いていると、リクルートスーツの軍団と擦れ違った。

新卒研修が始まっているようだ。

22歳の彼等は、薄暗い社内に眩いばかりのオーラを燦々と放っていた。
月並みだが、「私にもあんな時代があったのね」と、己の歴史を顧みてしまう。
私が新卒研修を受けたのはかれこれ6年前。
「これからどんなことが起こるんだろう」
不安も多かったが、同時に独り暮らしという新たな生活環境も手に入れたこともあり、非常にワクワクしていた。
ワクワクしすぎて、研修中、隣に座っていたコと「ねぇ、いま喋っている人、タイムボカンに出てくる女の人に似てね?」など、下らない筆談をして、ついには吹き出してしまい、怒られたのも良い思い出だ。

あれから6年。
泣いても笑っても6年が過ぎ去ってしまったのだ。

6年間といったら、ピカピカの一年生が、算数の「確率」の問題を解くことが可能になる時の長さである。

この6年間、自分はこの会社にどのように貢献できたのだろうか。もしかしたら貢献というのは奢りで、結局私は会社の利潤追求を阻んでいる存在なのかもしれない。そうだとしたら問題点は何だろう。打開策はあるのだろうか?…。

稟議箱を片手に、悶々と俯き加減で社外を歩く。
ふと視線を上げると…もうすぐ満開になる櫻が風の中で歌っていた。

四季の移り変わりに鈍感になりがちな独身独り暮らしライフだが、薄紅色に彩られた年度末には、社内での自分の歴史を知らず知らずに紐解いてしまう。


「決められたことをただ単にやるのは作業人。
そんなのつまらないじゃん。
だろ?
自分の仕事なんだからさ、楽しくやれるように努力しなくちゃダメだよ。」

普段、仕事における精神論云々をあまり語らない吉熊上司だが、
いつか上記のようなことを言われた。それも何年か前の桜の季節に。

桜はただそこに佇むだけで皆に喜ばれ、存在自体が付加価値である。

そんな桜に肖りたいと願う、入社6年目の春の日だった。
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