経済の波がもたらすもの

2011年09月09日 | 社会 -

水の都、ベニス(ヴェネチア)。

一度は行ってみたいと思う ・・・ 観光写真では惹きつけられる
イタリアの美しい街である。
だた、実際には・・・、“そぞろ歩き”が 大好きな私にとっては、
街中に迷路のようにある水路の「水の浄化が完全ではない」という
致命的な面もかかえている・・・と、感じている。

年毎にあがる水位に脅威を感じている筆頭の観光名所でもあろう。


私は、ベニスでも、有名な歴史的なホテルに滞在したが・・・
ベニスから水上バスに乗って移動する“避暑地”として有名な島、
リド島のホテルを(ほとんど)常宿として、数週間滞在した。
この島は、とても小さく、親近感を覚える街であり、たくさんの
個性的なホテルや、店などが並んでいる落ち着く街並みがあった。
それに、現地のどのレストランでも、美味しい料理がいただける。


現在、リド島で、「第68回ヴェネチア映画祭」が開催されているが、
主賓が宿泊してきた象徴的な名門ホテル「ホテル・デ・バン」が、
アメリカ資本によって買い取られ、マンションとして売り出されるようだ。
ルキノ・ヴィスコンティ監督の映画「ベニスに死す」の舞台になり、
お値段も高いが、内部も美しく、毎年映画祭のメインホテルとして
使用されているだけに、このニュースには非常に驚いた。

映画好きの私は、先日の英国滞在時にも、ロマン・ポランスキー監督が、
「ドラキュラ」を撮影した場所である神秘的な城(キャッスルコッホ)を、
興味深くチェックしてきたところだった。




このような経済の大きな波が、文化的な場所や、歴史的な足跡が残る
名所を、奪い去っていくのは、非常に切ない現実だ。
それでも、せめて名残りでも残っていればよいけれど・・・・最近は、
跡形もなく改装されることもあって、壊滅的な現状を目の当たりにする。

「いつかは行ってみたい」と思っていた旅行者にとっては、本当に
夢を奪われるようなものだろう。
そして、私のように、映画や物語の舞台をめぐるのが好きな人にとっても
心痛いニュースだ。
私自身は、リド島に訪問していたものの・・・・・このような傾向は、
世界的に広がっていて、「資本」だの「経済」だの・・・そういう・・・
目に見えないモノが、大きな勢力をつけて、美しい景観を奪っている。
大げさに言えば、人類が構築してきた歴史的な建造物や文化そのものを
奪っているとも言えるのではないだろうか。
もちろん、「経済」を優先して、人々が健康的な生活が送れる社会を
つくりあげていくことは大切なポイントであるけれど・・・・
私が納得できないのは、人々のためではなく、一部の資本家や経済人の
利潤追求のために、これらの事業が行われていることが多いという点である。



お金とは、何なのだろう。
商品の価値や交換手段として社会に流通し、また「富」の象徴としての
価値をはかるもの・・・・・本当に、それだけだろうか。
だとしたら、もしかしたら・・・
「富」への執着が、人々の心の奥底に蔓延っている怪物なのだろうか。

多くの人々がこだわり、手に入れようとする「お金」というものの巨大化!
ドイツの童話作家が書いた「エンデの遺言ー根源からお金を問うことー」を
再び読み返してみたいという欲求に、突然かられてしまった。

私にとっては、食べ物を買うために使う “紙っぺら” でしかないが・・・
それが、現在は世界で一番のパワーを秘めているものとなってしまっている。

人々は、その幻影と、自らの欲望の矛先に、打ち勝つことができず・・・
歯止めのきかない過剰な経済活動に 埋没していくのだろう。


地方都市に暮らす自給自足生活をしている人々を、“浮世離れした人”だと
感じてしまうことが(時々)あるが・・・
実は・・・、一番、自然で、心豊かで、無理のない人たちなのかもしれない。
そんな感情にさえなってしまう 現代の経済循環の価値観には、少なからず
疑問を感じずにはいられない。