最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

未納の健康保険、督促状は時効を中断させる

2020-07-01 18:49:27 | 日記
令和1(行ヒ)252  国民健康保険税処分取消請求控訴,同附帯控訴事件
令和2年6月26日  最高裁判所第二小法廷  判決  その他  東京高等裁判所

 被相続人に対して既に納付又は納入の告知がされた地方団体の徴収金につきその納付等を求める旨の相続人に対する通知は地方税法(平成29年法律第45号による改正前のもの)18条の2第1項1号に基づく消滅時効の中断の効力を有しない

報道機関からのものはないようなので、事実認定から見ていきます。

1 加須市長が,国民健康保険税及びその延滞金の滞納処分として,上告人の預金払戻請求権を差し押さえ,取り立てた金銭を上記国民健康保険税等に係る債権に配当する旨の処分(以下「本件配当処分」という。)をした。
2 上告人が,上記債権は時効消滅して
いたなどと主張して,被上告人を相手に,本件配当処分の一部(上告人が延滞金として納付義務を認めている額を超える部分)等の取消しを求めるとともに,当該部分に相当する額の金員の支払を求めた。


最近yahooオークションやらで官公庁のオークションが出ていますが、これですね。

(1) 地方税法(平成23年法律第115号による改正前のもの)18条1項は,地方税の徴収権(地方団体の徴収金の徴収を目的とする地方団体の権利)は,法定納期限等の翌日から起算して5年間行使しないことによって,時効により消滅する旨を定める。同条2項は,この場合には,時効の援用を要せず,また,その利益を放棄することができない旨を定め,同条3項は,地方税の徴収権の時効については,別段の定めがあるものを除き,民法の規定を準用する旨を定める。地方税法(平成29年法律第45号による改正前のもの。以下同じ。)18条の2第1項は,地方税の徴収権の時効は,納付又は納入に関する告知(1号),督促(2号)等の処分の効力が生じた時に中断する旨を定める。また,民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)147条は,時効の中断事由として,差押え(2号),承認(3号)等を掲げている。

これに対して
ア 上告人は,平成20年9月21日,埼玉県北川辺町が行う国民健康保険の被保険者の資格を取得・・・同月23日,近隣の市町と合併して被上告人となった。・・・加須市長職務執行者は,平成22年4月1日頃,上告人の父であり,上告人を被保険者とする国民健康保険につき世帯主として国民健康保険税の納税義務を負うAに対し,平成20年度分の税額を25万1500円(納期限は同22年5月31日),同21年度分の税額を27万8700円(納期限は同22年4月30日)と決定し(以下,これらの決定を「本件各決定」といい,これにより課された国民健康保険税及びその延滞金に係る債権を「本件租税債権」という。),その旨の通知をした。

ちょっと待ってくださいよ、加須市長職務執行者とは市役所職員ですか?職員の息子?娘?が払わなかったので、親父さんが子供に払えよと通知を出したということでしょうか。

イ 上告人は,平成22年8月4日,被上告人を相手に,本件各決定の取消し等を求める訴訟を提起したが,同24年5月31日,上記取消しに係る訴えは異議申立てを前置していないため不適法であるなどとしてこれを却下する判決が確定した。

異議申し立てもさせないでいきなり召し上げるとはひどいと訴えを起こしたようですが、そういう制度はないと却下されたようです。

ア 被上告人は,平成23年1月26日,Aに対し,本件各決定に基づく国民健康保険税について督促状を発した。
イ Aは,平成23年11月18日に死亡した。
ウ 上告人は,平成24年1月24日,被上告人に対し,本件各決定により課された国民健康保険税のうち平成20年度分の5万9700円及び同21年度分の4万1300円を納付した(以下,この納付を「平成24年納付」という。)。


市役所は払えよと通知を出したが、子供は死んでしまいました。それでも相続人は2年分を払いました。

エ Aの相続人である上告人及びその姉は,平成24年3月20日,Aの遺産につき,その債務の一切を上告人が承継する旨の分割の協議を成立させた。

遺産相続人が決まりました。そこに、市は不足分を払えと通知を出しました。

(4) 加須市長は,平成29年1月10日,本件租税債権につき,同日時点で第1審判決別紙「滞納明細書」の「未納額」欄及び「延滞金」欄記載のとおり合計62万4700円の滞納金があることを前提に,その滞納処分として,上告人の預金払戻請求権を差し押さえ(本件差押処分),第三債務者である銀行から62万4700円を取り立てた上,同月13日付け配当計算書に従って,その全額を本件租税債権に配当する旨の本件配当処分をした。

かなりの金額をため込みましたね。

(5) 本件訴訟において,上告人は,上記滞納金のうち,延滞金3万9100円については納付義務を負うことを認める一方,その余の58万5600円に係る債権(以下「本件係争債権」という。)は時効消滅しており,本件係争債権に基づいて行われた滞納処分は違法であると主張して,本件配当処分のうち本件係争債権に係る部分等の取消しを求めるとともに,被上告人に対し,本件係争債権相当額の金員の支払を求めている。

要するに、民放の時効に従って5年を超える分は知らないよと訴えたようです。

また,地方団体の長による納付又は納入に関する告知は,私人による催告とは異なり,地方団体の徴収金に関する徴収手続の第一段階として,法令の規定に基づき一定の手続と形式に従って行われるものであることから,同法18条の2第1項1号は,これについて特に消滅時効を中断する効力を認めることとしたものと解される。

行政の場合は内容証明でなくてもいいのでしょうか?

相続があった場合には,その相続人が被相続人の納税義務を承継するところ(地方税法9条),これに係る地方団体の徴収金について,被相続人に対し納付又は納入の告知がされているときには,その効力も相続人に引き継がれるというべきであるから,徴税吏員は,相続人に対して直ちにこれに続く徴収手続を進めることができ,改めて相続人に同告知をする必要はないものと解される。

この点に関しては通常の民放と同じで、相続人は負債も引き継ぐ、で充分だと思います。

被相続人に対して既に納付又は納入の告知がされた地方団体の徴収金につき,納期限等を定めてその納付等を求める旨の相続人に対する通知は,これに係る地方税の徴収権について,地方税法18条の2第1項1号に基づく消滅時効の中断の効力を有しないというべきである。

全員一致でした。
裁判長裁判官 菅野博之
裁判官 三浦 守
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美

至極当然の結果だと思います。ただ、もう少しと催促をする手順と要件をしっかり論じて欲しいとは思いますが。