最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

破綻法的確定後に過払い金確定、でも破綻前の分の会計処理・修正は認めない

2020-07-06 11:46:53 | 日記
平成31(行ヒ)61  通知処分取消等請求事件
令和2年7月2日  最高裁判所第一小法廷  判決  破棄自判  大阪高等裁判所
 過払金返還請求権に係る破産債権が貸金業者の破産手続により確定した場合に当該過払金の受領の日が属する事業年度の益金の額を減額する計算をすることは法人税法22条4項所定の「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従ったものとはいえない。

これも何故か報道ベースに出てこなかったので、事実確認をしていきます。
貸金業の株式会社クラヴィスが破産しました。
同名の繊維系の会社がありますが、別物ですのでご注意。
この会社の破産管財人が、過払い金について不当利得返還請求権に係る破産債権が,その後の破産手続において確定しました。
これに対応する本件各事業年度の益金の額を減額して計算すると納付すべき法人税の額が過大となったとして,本件各事業年度の法人税につき国税通則法(平成23年法律第114号による改正前のもの。以下同じ。)23条2項1号及び同条1項1号に基づく更正の請求(以下「本件各更正の請求」という。)をしました。
更正をすべき理由がない旨の各通知処分(以下「本件各通知処分」という。)を受けたため,主位的には本件各通知処分の一部の取消しを,予備的には上記制限超過利息等に対応する法人税相当額の一部についての不当利得返還等をそれぞれ求める事案である。


厄介ですね。貸金業者に過払い金の返還請求したところ、貸金業者が破綻して法的処理が確定した後に、さらに過払い金の訴えが確定しました。そうすると、それまでため込んでいた税金の金額が変わってしまいます。そこで、税務署に再度申請したところ認めないと突っ返された事件です。

イ クラヴィスは,平成24年7月5日,破産手続開始の決定を受け,被上告人がその破産管財人に選任された。
ウ 上記の破産手続において,一般調査期間内に届出がされた総額555億3373万9096円の過払金返還請求権に係る破産債権(以下「本件債権1」という。)及び特別調査期間内に届出がされた総額3億0119万2185円の過払金返還請求権に係る破産債権(以下「本件債権2」という。)が確定した。


(2)破産管財人は,平成27年6月19日,所轄税務署長に対し,本件債権1が確定したことにより,本件各事業年度における納付すべき法人税の額が過大となったとして,本件各更正の請求をした。その理由は,過払金返還請求権に係る破産債権が破産手続において事後的に確定した場合には,当該請求権の発生原因となった制限超過利息等に係る受領金額を当該受領の日が属する各事業年度に遡って益金の額から減額して計算すべきであるというものであった。

当然ですね。従業員他、支払いが滞っている人に配当しなければなりませんから。ただ問題なのは、法人税は継続事業体を念頭に入れているので、破綻した企業についてはもう少し緩めに見てくれよというところでしょうか。

(3) 所轄税務署長は,平成27年9月14日付けで,被上告人に対し,本件各更正の請求につきいずれも更正をすべき理由がない旨の本件各通知処分をした。その理由は,本件各事業年度において益金の額に算入されていた制限超過利息等の受領が法律上の原因を欠くものであったことが破産手続において確定したとしても,その確定の事由が生じた日の属する事業年度においてこれを損金の額に算入すべきであるというものであった

こういう事件があると、たとえ解釈がおかしくても、税務署は梃でも動きません。税務署は国費で裁判ができますし、専門の部署があるので全く困らない上に、訴えを起こした後論点を後から追加することを認めるのです。これはアンフェアとしか言いようがないのですが、よくあることです。

(1) 一般に,企業会計においては,会計期間ごとに,当期において生じた収益の額と当期において生じた費用及び損失の額とを対応させ,その差額として損益計算を行うべきものとされている。そして,企業会計原則は,過去の損益計算を修正する必要が生じても,過去の財務諸表を修正することなく,要修正額を前期損益修正として修正の必要が生じた当期の特別損益項目に計上する方法を用いることを定め(第二の六,同注解12),「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(平成21年12月4日企業会計基準第24号)も,過去の財務諸表における誤謬が発見された場合に行う会計処理としては,当該誤謬に基づく過去の財務諸表の修正再表示の累積的影響額を当期の期首の残高に反映するにとどめることとし(21項),同会計処理が認められる誤謬の範囲を当初の財務諸表作成時に入手可能な情報の不使用や誤用があった場合に限定している(4項(8))。

要するに、先ほど述べたように企業は数年で潰れることを前提とせず、きちんと継続を前提として法制度が成立していますよ。だから、各会計年度ごとに処理しなければならない事が規則に決まっているのであって、会計上の修正は必要最小限になるべきだと書いています。その上で法人税もそれに合わせて計算すべきだと言っています。
ちなみに財務会計学と税務会計は全く違うもので、財務会計は各事業年度の経営成績の比較可能性を求めるものに対して、税務会計学はいかに税金を安定徴収するかという根本から違う思考で成り立っています。

(2) 法人税法は,事業年度ごとに区切って収益等の額の計算を行うことの例外として,例えば,特定の事業年度に発生した欠損金額が考慮されずに別の事業年度の所得に対して課税が行われ得ることに対しては,青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し(57条)及び欠損金の繰戻しによる還付(80条)等の制度を設け,また,解散した法人については,残余財産がないと見込まれる場合における期限切れ欠損金相当額の損金算入(59条3項)等の制度を設けている。

当該制限超過利息等の受領の日が属する事業年度の益金の額を減額する計算をすることは,公正処理基準に従ったものということはできないと解するのが相当である。

どうなんですかね、以前巨額詐欺事件の時に税務署は被害者救済のために、不当に得た利益であるのでそこから税金を取らずに、被害者救済に回した事件があったような気がします。

(3) これを本件についてみると,本件各事業年度に制限超過利息等を受領したクラヴィスが,これを本件各事業年度の益金の額に算入して行った本件各申告はもとより正当であったといえるところ(最高裁昭和43年(行ツ)第25号同46年11月9日第三小法廷判決・民集25巻8号1120頁参照),上記(2)で述べたところによれば,その後の事業年度に本件債権1が破産手続において確定したことにより,本件各事業年度に遡って益金の額を減額する計算をすることは,本件債権1の一部につき現に配当がされたか否かにかかわらず,公正処理基準に従ったものということはできない。

ところがこの一文を見ると、破綻処理は確定したのだから後出しでああだこうだ言うのは、法的安定性を揺るがすし、過去に似たような判断が出てるから認めないよと言っています。

裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

裁判長裁判官 深山卓也
裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 山口 厚

被害者救済は確定する前の話でしたっけ・・・つまりこの判断からすれば、過払い金請求して買ったにもかかわらず、返金はないということになりますね。