三日目。十時半小屋入り、幾つか確認、稽古、今後の打合せ、ばたばたしているうちに開演。昼公演のみだが、あたふたと終わる。劇場の外に出ればまだ五時だというのに真っ暗だ。知らない間に(てことはないのだが)、もう十一月後半になっているのだ、無理もない。暗いとはいってもまだ酒を飲む時間でもないし、遊んでくれる人もいないので、自転車でとことこ帰宅。……溜まっている書き仕事や校正等を消化しようということになるが、腹が減ったので沖縄名物コンビーフハッシュ(ジャガイモの粒々入りコンビーフ)とタマネギの極薄切りを炒めグラタン皿に入れチーズを載せて焼くというおそろしく簡単な料理を作って食べる。胡椒以外の調味料は使わないのだが、うまい。意外なことに主役はタマネギである。タマネギを炒めた時のあの甘みというのはなんなのだろう。それにしても家で夕食を食べるなんてどのくらい久しぶりだろう。……そんな中、世の中ではいろいろなことが起きている。……パレスチナの状況を撮り続けてきた映画監督の土井敏邦さんが、エルサレムにいながら、そこから百数十キロほどの距離にある連日激しい空爆が続くガザに行けないでいる。朝日新聞やNHKの特派員たちはすでに現地から報道を続けているのに、土井さんにはイスラエル政府発行のプレスカードが申請を拒否されている。拒否はもう5度目、「長年パレスチナ、とりわけガザを追ってきたジャーナリストとして、言葉に表せないほど悔しく、情けなく、苦しい」という。何かできることはないだろうか。……それにしてもパレスチナは、国連総会で「国家」に格上げが決議されるだろうか。……イスラエルによるパレスチナへの空爆はもともとの軍事的な応援に加えて、オバマ大統領がお墨付きを与えた。ハマスのロケット弾を迎撃するアイアンドームの予算やらはアメリカから出ているので、「金がかかる兵器だがドカスカ撃てる」のだという。他国の悪行をアメリカがガイドしているわけだ。それを聞くと宮城康博の今日の発言「世界で起こっていること、沖縄で我々が直面し続けていること、それらのリアリズムを考えると、日本国の政治はどれほど陳腐で愚かしく恐ろしいか。鎖国してるんだろ、アメリカ様の庇護のもとで」というのも、あらためて、もっともだと思う。アメリカの提言に対して真似というか言いなりになってしてしまった施策で、日本は取り返しのつかない蒙昧に陥っている。問題は、その鎖国状態に対して自覚がないことだ。……神奈川県は財政再建の一環として県立図書館2か所を廃止する検討を始めたという。そりゃあないよ。図書館に行かずウィキペディアを見たりグーグルで検索すればすむという理屈なのか。こういう「合理化」は、政府や自治体が公共の仕事を別団体を作って任せ、予算がなければ事業の廃止を促し、自分は手を汚さずに「切り捨て」を行い、「格差」「貧困」をうみだす仕組みである。これもアメリカ指導下の政策によるもので、結局、今や「アメリカの影」が及ばぬ部分はない、この国なのである。
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