Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

TPPはオリンピックではない

2014-02-19 | Weblog
本格化する、環太平洋経済連携協定=TPP交渉をめぐる日米協議について、甘利明経財相・TPP相は「日本が聖域・関税維持をめざす農産品5項目の品目数=586品目を一品残らず守るのは難しいと、多くの人が認識しているだろう」「一つ残らず微動だにしないということでは交渉にならない」「双方が歩み寄るという大原則に沿って、お互いが歩み寄る」「明日からお互いにカードを何枚か切るだろう」と明言。
米国は全ての品目の関税撤廃を求めている。
日本は農産品、米国は自動車の輸入関税でお互いに譲る案を示して妥協点を探るというが、合意は容易ではない。
「カードを切る」というのは、具体的には農産品の重要5項目の中でも、特に米国側が輸出を増やしたい牛肉・豚肉の関税引き下げや撤廃について「譲歩案」を出すかもしれないということ。一定の歩み寄りはやむを得ないとの見方が日本政府内に出ている。
コメや牛肉・豚肉などの重要5項目は「段階的な関税撤廃も認めない」とする昨年4月の衆参農林水産委員会決議を裏切ることになる。
いや、そもそも自民党はかつての選挙公約を裏切っている。
甘利経財相は「日本が米側の主張に一方的に歩み寄ることはない」とも述べているが、何の根拠もない。
斎藤健農林部会長は「交渉戦術上まずい」。「地元で重要品目の関税は大丈夫と言っていいのか」と若手議員立ちも足下がぐらついていることを認めている。鳩山邦夫元総務相は「日本の輸入実績が全くないものを(聖域から)外すくらいと思っているが、それ以上の譲歩はありえない」とけん制するポーズを示したつもりらしいが、日本側がそんな交渉術を持ち合わせているとは思えないし、本人が動けているわけでもない。無責任きわまりない。
具体的に農産品5項目を作っている人たちの具体的な労働と実績について、イメージができているとは思えない。
日本の農業はこれ以上縮小してはいけないぎりぎり限界を既に下回っている。
どうやっても日本側が不利であり、不当な負担やペナルティーを科される未来予測が、とことん隠されている。
今週末からシンガポールで開くTPP閣僚会合の地ならしを急いでいる日米両政府の駆け引きは露骨で、米側は4月のオバマ大統領来日までの妥結をちらつかせ「安倍晋三首相が重い決断を下すことを望む」と、やんわりと脅しを掛けてきている。

オリンピックシーズン故にマスコミからもとんちんかんな質問が出てくる。「TPP交渉で金メダルを取れるか」と問われた甘利経財相の回答が奮っている。「どの国も金メダルは取れないが、どの国も入賞する」という。
いずれかの国が一人勝ちする内容では交渉の決着は難しいため、各国が譲歩することで交渉をまとめ、それぞれが利益を得ることが重要、ということだそうだ。
そんなオリンピックは見たことがない。
アメリカの一人勝ち状況に向かっている現実をなぜ誤魔化すのか。既に日本側の「譲歩」は既定路線のようだ。
私はほとんど目に触れることができずにいるが、表面的に景気よさげな五輪についての報道は、TPP交渉に向けて視聴者の国際感覚を麻痺させることに役立っているのかもしれない。

個人的には、私が真っ先に思い浮かべるのは、奄美・沖縄の黒糖造りである。
TPPで「譲歩」すれば、コミュニティそのものが立ち行かなくなるケースがある。自然と共に生きる人たちのライフサイクルである。
そもそも彼らは誰かに勝つために生きているわけではない。
コメント
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