折しも雪、昨夜の天気予報の「暴風雪」というコトバに驚いた。
雪じたいに驚いていても仕方がない。年間何ヶ月も雪に包まれたままでいる地方もあるのだ。問題はこちらの生活エリアに雪への備えがないということである。予定調整、家屋や道路の雪への対応もついつい遅れてしまう。
もちろんこの雪の中にも放射能は含まれているだろう。
都知事選については、いくらか記してきた。
私も「わからない」からではあった。前回の選挙前に私に声をかけてきた人たちの大半も今回は「わからない」ところからスタートしたようだが、できれば「当選する可能性のある候補」を推したい、という声がよく聞かれた。
確かにそういう考えも出てくるだろう。しかし、皆にとって「当選してほしい候補」と「当選する可能性のある候補」は、なぜそうも初めから違ってしまうのか。
「当選する可能性」を度外視するならなおさらだが、推すなら、めざましい根拠がほしい。それはわかる。
「脱原発」も大切だが、本当にそれのみを課題にされても困る。
私は2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催は避けた方がいいと思っているが、「主要な候補者」でそう思っている人はいないのだった。「オリンピック中止」のみを謳う候補もいるようだが、それだけでも困る。
開催するしかないにしても、新国立競技場の建設計画については、各候補にはっきりと個人差が出た。ただむやみに新しい物、必要以上に大きい物を作ればいいという話ではない。そこに考え方の違いは表われるし、それぞれの意見はほぼ予想通りだった。
一昨夜のテレビのニュース番組「報道ステーション」に「主要候補者」四人が出ていた。
もちろん「脱原発」が話題になる。「福島の原発周辺は放射能的に危なくない」「韓国も中国も使っているのに、日本だけ止めたってどうにもならない」と狂気の持論を展開する人がいて、さすがに司会の古館氏や他の候補者にも批判されていた。
古館氏はどの候補者にも公平というか厳しめであった。
マスコミには最有力とされている、桝添候補。にも関わらず、駅構内でJR職員に「公職選挙法を勉強し直せ!」と怒鳴ったり、「女性」「老人」を蔑視する発言を非難されそれが世界中に紹介され、銀行から借りた2億5000万円を税金が原資の政党助成金や「立法事務費」で違法に返済したのではないかと疑惑を持たれ、有権者に五輪バッジを配布した件が選挙法違反ではないかと問題視されていたりする、いわば世間から見れば絶体絶命の立場にある彼の、決死の(?)作り笑いにも、古館氏はにこりともしないで対応していた。
このニュース枠の前任司会者・筑紫哲也さんのことを少し思い出した。ぜんぜん違うキャラクターだが、「古館色」が出ているからこそ、受け継ぐということは、ちゃんと自分流を発見するということなのかもしれない、と思った。
「原発ゼロ」にはこだわるべきだが、都知事選の結果と「実現」についてはまた別な問題だ。政府が「そこに向かっている」と称しさえすればいくらでも遅延を許しかねないし、「すぐには無理でも徐々に」と言っている保守陣営と変わらなくなる。安倍政権にダメージを与える、というが、幾つかの具体提案は出たものの、まだまだイメージ戦略で言っていることが多いようで、実はそれはマスコミ型の思考に囚われていることでもあるということが、多くの人にはわかっていない。政策は具体的でなければならない。
日本の長所たる、戦後培ってきた郵政や保険の仕組みを幾つも潰してアメリカの言うなりにし、原発を推進し、自衛隊を戦争に参加させ、社会的経済的弱者を排斥し、靖国に参拝してきた人物(以上をやってないとは言わせない)である小泉氏を信用するかどうかという問題については、その人物がまず自分のもともといた党の内部を改革するつもりがないしそもそもなかったらしいということをどう考えるかが肝要であろう。どういうことか答えられますか? その人がそれだけの人物なら自分で自分の党をぶっ壊した後に、きちんとした新しい党が作れているはずでしょうが。派閥の力が弱くなったことが成果? それが国民の利益になっていますか?
祭り上げられた人は「脱原発」だし瓦礫処理で堤防造りに乗り出すこともいいと思うが、じつは憲法は少しは変わっても仕方がないと思っているようでは、どこまで信じていいかわからず、どうしようもない。
「都知事選が脱原発の最後のチャンス」という言い方もどうかと思う。ほんとに。
「脱原発」は正しいことなのだから、「打倒××」とか、何かの代償行為に使うのはどうなのか。向こうは「相手していません」というポーズをいくらでも取れるのだから。
事実として個別の問題で勝ち、追い詰めるしかないのではないか。
「開会式」など興味ないがたまたまソチ五輪でスタジアム建設までの過程を自慢する映像が式中に流れるのを目にした。なるほど立派なスタジアムを作ったのが自慢なのだ。
2020年の東京オリンピックの新国立競技場建設計画は見直しすべきだと私は思う。行われるとなったとしても現在の国立競技場をオリンピック用に直せばいいだけである。無駄はしないほうがいい。
そもそもこの間の経済の動き、株価の世界じゅう軒並み下落でアベノミクスの化けの皮が剥がれそうなことについて、もっと言及されていいと思うのだが。
ソニーのパソコン事業は営業赤字に陥り、VAIOブランドが売却された。たいへんなことだと思う。だが周囲にはあまり驚いている様子がない。
「ヤバイ」と思っている人が少なすぎないか。
このまま現状に寄りかかっていていいはずはないという認識を共有して持ち得ていなければ、世の中はそうそう変わらないということか。
それにしても新聞社での拳銃テロ事件を称賛し問題となっている埼玉大名誉教授の長谷川三千子NHK経営委員が、1970年の「三島事件」について称賛し、三島由紀夫が「日本の国柄というものは、本来、国民が天皇のために命を捧げる、そういう国体」であることを自らの行動(割腹自殺)で示したと主張していたという。もちろん憲法の中心である国民主権を否定している。政教分離にも反している。罷免しない方がおかしい。
彼女を真っ先にクビにすべき立場の籾井勝人NHK会長自身が就任会見での問題発言でボロボロである。「個人的見解」として発言を取り消したのは、従軍慰安婦問題、特定秘密保護法、靖国神社参拝、番組編集権(彼は番組について「私の了解を取ってもらわなきゃ困る」と言った)、国際放送等々についての5項目ということだ。
取り消したらすむのかよ、であり、本人も問題を起こした委員も、責任取ってまとめて役職を離れなければならないはずだ。
マスコミの追及は甘くないか。このまま居座ったら認めてしまうことにならないのか。自分たちの姿勢も問われているのだ。どんどん責め続けてくれなければ困る。あなた方も当事者なのだ。
「発言を撤回」といったって、五項目もである。こんなに撤回しなくちゃならないんじゃ会見した意味がない、っていうか、不適任だろう。
そして、「内心は思っているけど言わなきゃいいんだ」ということになってしまっていいのか。教育上悪くないのか。「道徳」の授業を義務化とか言っている場合だろうか。子どもたちが真似したらどうするのだ。そして思っている以上、今後もそれに基づいて振る舞うだろうし、言っても差し支えなさそうだったら次は言うつもりなのだ。安倍首相ののように。
安倍首相は参議院予算委員会で、特定秘密保護法をめぐるメディア報道について不満を吐露している中で、自分に批判的なメディアの実名を取り上げて露骨に批判するという挙に出た。朝日新聞を取り上げて「安倍政権打倒が社是と(聞いた)そんな新聞だと考えながら読んでいる」と話したのだ。
具体的な事象の事実関係の確認を越えて、特定メディアを「ある思想の持ち主」として非難したのだ。
自分と近いNHK経営委員、新会長の暴言を庇うかのような、彼らの人選をちっとも反省していないという証左だ。
少なくとも三十年前だったら、これらの件だけで彼らを潰せるはずだ。
今の日本は戦後でいちばん良くない、おかしい。それは、一部の人たちや指導者層がヘンなのだ、ということ(だけ)ではない。この国の圧倒的多数の人々が、よくなさそうだとわかっていながら、それを受け入れてしまっているようにも見えるから、なのである。そこをよく考えなければならない。
以前の私たちが、「こんな国がある」と現在の日本の詳細を聞いたら、信じがたい、何か悪い冗談と受け取るしかないような出来事に満ちている。そうなってから久しい。「トンデモ国」であり、そこを支配しているのは「愚かさ」である。
都知事選の話題に戻る。
「脱原発都知事選候補に統一を呼びかける会」の実体は、宇都宮陣営に対して、細川陣営の「勝手連」が、細川陣営に「一本化」するよう要求していたのであり、公正中立ではなく、非合理な要求である。
宇都宮候補は、大江健三郎さんらと早くから「脱原発」の運動に参加し、前回の都知事選でも「脱原発」を掲げ97万票を得た人である。「脱原発都知事を実現する会」の第1回の申し入れは告示前の1月13日。このとき既に出馬表明していた宇都宮選対は、「オープンな場での話し合いに応じる用意がある」「公開の場での討論を通じて有権者に判断してほしい」という趣旨の回答をしたが、話し合いが実現しなかったのは、ひとえに細川陣営側の問題である。細川氏正式出馬表明の前だから「脱原発都知事を実現する」ことが究極の目的なら、公約のはっきりしない細川氏でなく、その段階で宇都宮氏を「脱原発」の統一候補とすれば良かっただけなのである。
ここにきてまた妙な誤解を呼ぶ言い方が飛び交っているが、宇都宮氏は決して「二位争い」をしているわけではない。勝たねばならないと思っているはずだ。
二回目の呼びかけは告示後で法的にも不可能であり、期日前投票をした有権者の意思が無視される。それでも宇都宮氏はきちんと返事をした。
その「回答」があまり世間の人の目に触れていないらしいので、あえて紹介する。
______________________
脱原発都知事選候補に統一を呼びかける会からの、都知事選候補一本化を呼びかける申し入れ書について、本日、(宇都宮氏側が)以下のように回答致しました。
______________________
2014年2月6日
(宛先)脱原発都知事選候補に統一を呼びかける会 世話人 鎌田慧様 希望のまち東京をつくる会
都知事選候補一本化を呼びかける申し入れ書について(回答)
貴会から2014年2月3日付「2014年東京都知事選挙候補統一に関しお願いの件」を受領し、慎重に検討を行いました。貴会のみなさまの記者会見の様子も確認させていただきました。貴会に集まられた皆さんの脱原発政策実現にかける熱意、安倍政権の危険な暴走に対する深い懸念について、私たちも心から賛同します。しかし、残念ながら選挙終盤の現時点では、このような申入れを受けることはできないという結論に達しましたことをお伝えします。
理由は以下の通りです。
ï 前回申入れ時とは状況が違う
前回(1月13日)、「脱原発都知事を実現する会」から同様の申し入れをいただいたときは、告示前の状況であり、当方からは、オープンな場での話し合いに応じる用意があるという趣旨の回答を致しました(別紙)。それにもかかわらず、結局のところ、この話し合いは実現しませんでした。なお、「脱原発都知事を実現する会」は細川支持の勝手連として活動されているものと理解しています。
今回の申し入れは、すでに告示後であり、いったん立候補した後に立候補を辞退できるのは、届出期間中(告示日の午後5時まで)に限られています。既に、期日前投票もはじまっているという状況下である点が前回と大きく異なります。
いまこの申入れを受け入れることになれば、宇都宮候補にすでに期日前投票してくださった支持者のみなさん、応援してくださっている多くの支持者のみなさん、寝食を忘れて選挙活動を手伝ってくださっているボランティアのみなさんの想いを裏切ることになることとなる点、どうかご理解ください。
2.政策が一致していない
細川候補が正式に出馬を表明し、政策を公表されたのは、告示前日の夕方であり、政策のすりあわせなどは到底不可能でした。細川候補と宇都宮候補は脱原発政策の一部において一致するものの、他の多くの基本政策において見解を異にしています。たとえば、貧困、雇用、福祉、教育などの都政の根本にかかわる政策、さらに国家戦略特区、憲法、集団的自衛権、秘密保護法、TPPなども、本来国政の課題でもありますが、都知事としての姿勢が問われる重要な分野についてです。
脱原発が極めて重要な喫緊の課題であることはいうまでもありません。一方で、貧困に苦しみ、追い詰められている生活困窮者や、ブラック企業の被害に遭っている若者、保育所の入所を認められない保護者などの多くの都民は、貧困・雇用・福祉さらには首都圏直下型地震に対応する防災等の政策の充実を待ち望んでいるのです。東京が抱えるこれらの切実な問題に、私たちは目を背けることはできません。
3.必要とされるのは公開の場での議論
東京が抱える問題や、それを解決するための政策について、公開の場で、徹底的に議論することこそが必要なのではないでしょうか
選挙戦での公開討論会やTV討論は多くの有権者に政策を訴え、フェアな議論を通じて、自らの考えに近い候補を選ぶための重要なプロセスです。宇都宮候補は、これを重視し、他の予定はすべてキャンセルして、すべての公開討論に出席するという方針でスケジュールを組んで臨んでいました。1月28日までに、キャンセルされた公開討論企画と番組は合計15件に及びました。これについては、1月28日に私たちとして声明をだしておりますので、ご覧ください。
私たちは、宇都宮候補の掲げる政策に自信をもっています。多くのボランティア・スタッフが、人格、識見、政策実行力において秀でた宇都宮候補こそが、都知事に適任であると考え、日夜精力的に活動しています。
候補の一本化=立候補の取り下げは、公開の場で政策を議論し、有権者が考える機会と選択肢を都民から奪ってしまうものであると考えます。
4.脱原発の結束のために
貴会の記者会見で落合恵子さんなども指摘されていましたが、私たちはこの間の「一本化」をめぐるさまざまな論争が、脱原発に関わる市民運動に亀裂を生み、将来に禍根を残すことの危惧については私たちも共有しています。今回の申し入れを受けて、両選対同士で話し合いを持ち、今後の選挙運動において、このような事態を生じないようにしようということを確認しました。
細川・宇都宮両陣営に加わった脱原発を願う市民が、これらの論争で生じたかもしれないわだかまりを解消し、強固な結束により、原発事故の被害者の支援と全国の原発の再稼働に反対し、原発ゼロを実現する取り組みをともに続けていくことを心より希望するものです。そのような活動の一環として、この選挙の終了後に、選挙結果にかかわらず、両候補の胸襟を開いての懇談の場を設けることも両選対の間で合意されたことを付け加えます。
以 上
______________________
都知事選投票率は、無党派層の比重が強まる「50%台後半」に達するかが勝負の分かれ目という意見がある。
二十代の投票が増えてほしい。我が家にも一人いるが、初めて投票する新成人も、進んで投票を体験してほしい。
若い層にもいろいろな人たちがいる。先行世代に対する意見も様々だ。……時代は戦争に向かっている、先行世代は逼迫感乏しく見える、という者。先行世代は社会的な正義を信じているようで、左翼的になりがちなのはどうかと思う、という者。「戦後民主主義」の直接の恩恵をイメージできない世代にも、そんな真逆の二種類が共存しているということを、忘れてはならない。
明日は雪はやみ、午後には晴れ間が出るという。投票率アップを信じたい。
ついでに。「舛添に投票する男とセックスしない女達の会」というのも困ったものだ。わかるけど。これも海外紙を賑わせているようだ。舛添氏のことが知れ渡り、万が一彼が都知事になったら、世界の女子選手はオリンピックをボイコットするんじゃないかという意見には、「笑えないなあ」という笑いしか返せない。
と思ったら、「市民連帯の会」(代表・三井環元大阪高検公安部長)は、個人演説会で来場者に「五輪バッジ」を配っていたとして、舛添本人と演説会の受付スタッフを、公職選挙法違反(寄付の禁止)の容疑で、8日警視庁に告発状を送付したという。
例の公金での借金返済問題もあるから、この人は猪瀬と同じことになるのか、こんどは選挙中だから仕方がないとして、庇われることになるのか……。
さて。
選挙対応でここしばらく長々と書いてきてしまったが、この先、当分は、こんなに長くは書きません。
…………
別な話題。
交響曲「HIROSHIMA」で知られる佐村河内守氏が、実は自分で作曲していなくて、「ゴーストライター」と呼ばれる実際の作曲者が桐朋学園大学講師・新垣隆氏であった問題が、音楽界のスキャンダルとしてメディアを賑わしている。
知己の、私より年少の音楽家T君は、かつて佐村河内守氏を紹介するテレビ番組を見て驚愕したのだという。「これは、もう僕は作曲をやめようかと思うような体験でした」というのを聞いて、どうにも罪作りなことだと思った。
正直に名乗り出た新垣氏を評価する声も多い。もちろん責任も重いし問題も多いと思う。しかしこの人を社会的に抹殺していいのかどうかは、また別な話だ。
この人がどうやら、社会に向けて、自分から表明しなければならないと思ったということが、大切な気がする。未来や、若者に対しての義務としての表明であるなら、むしろその問題意識を共有してゆく必要もあるのかもしれない。
…………
雪の中での訃報。
私が一年だけ在籍していた大学劇研の先輩で、東映に就職された、南太郎さん。
大学一年の最後、私の初演出作に主演してくれた。
一年生が演出するなんて前代未聞だったが、応援してくれたのだ。
自由ヶ丘のやきとん居酒屋のバイトは、彼の後を受け継いだのだった。
大昔だが、南さん新婚の千歳烏山への引っ越しを手伝った。
その時いただいた冷蔵庫は、今も梅ヶ丘BOXで使用している。
私たちはナンタローさんと呼んでいた。
ご冥福をお祈りいたします。
雪じたいに驚いていても仕方がない。年間何ヶ月も雪に包まれたままでいる地方もあるのだ。問題はこちらの生活エリアに雪への備えがないということである。予定調整、家屋や道路の雪への対応もついつい遅れてしまう。
もちろんこの雪の中にも放射能は含まれているだろう。
都知事選については、いくらか記してきた。
私も「わからない」からではあった。前回の選挙前に私に声をかけてきた人たちの大半も今回は「わからない」ところからスタートしたようだが、できれば「当選する可能性のある候補」を推したい、という声がよく聞かれた。
確かにそういう考えも出てくるだろう。しかし、皆にとって「当選してほしい候補」と「当選する可能性のある候補」は、なぜそうも初めから違ってしまうのか。
「当選する可能性」を度外視するならなおさらだが、推すなら、めざましい根拠がほしい。それはわかる。
「脱原発」も大切だが、本当にそれのみを課題にされても困る。
私は2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催は避けた方がいいと思っているが、「主要な候補者」でそう思っている人はいないのだった。「オリンピック中止」のみを謳う候補もいるようだが、それだけでも困る。
開催するしかないにしても、新国立競技場の建設計画については、各候補にはっきりと個人差が出た。ただむやみに新しい物、必要以上に大きい物を作ればいいという話ではない。そこに考え方の違いは表われるし、それぞれの意見はほぼ予想通りだった。
一昨夜のテレビのニュース番組「報道ステーション」に「主要候補者」四人が出ていた。
もちろん「脱原発」が話題になる。「福島の原発周辺は放射能的に危なくない」「韓国も中国も使っているのに、日本だけ止めたってどうにもならない」と狂気の持論を展開する人がいて、さすがに司会の古館氏や他の候補者にも批判されていた。
古館氏はどの候補者にも公平というか厳しめであった。
マスコミには最有力とされている、桝添候補。にも関わらず、駅構内でJR職員に「公職選挙法を勉強し直せ!」と怒鳴ったり、「女性」「老人」を蔑視する発言を非難されそれが世界中に紹介され、銀行から借りた2億5000万円を税金が原資の政党助成金や「立法事務費」で違法に返済したのではないかと疑惑を持たれ、有権者に五輪バッジを配布した件が選挙法違反ではないかと問題視されていたりする、いわば世間から見れば絶体絶命の立場にある彼の、決死の(?)作り笑いにも、古館氏はにこりともしないで対応していた。
このニュース枠の前任司会者・筑紫哲也さんのことを少し思い出した。ぜんぜん違うキャラクターだが、「古館色」が出ているからこそ、受け継ぐということは、ちゃんと自分流を発見するということなのかもしれない、と思った。
「原発ゼロ」にはこだわるべきだが、都知事選の結果と「実現」についてはまた別な問題だ。政府が「そこに向かっている」と称しさえすればいくらでも遅延を許しかねないし、「すぐには無理でも徐々に」と言っている保守陣営と変わらなくなる。安倍政権にダメージを与える、というが、幾つかの具体提案は出たものの、まだまだイメージ戦略で言っていることが多いようで、実はそれはマスコミ型の思考に囚われていることでもあるということが、多くの人にはわかっていない。政策は具体的でなければならない。
日本の長所たる、戦後培ってきた郵政や保険の仕組みを幾つも潰してアメリカの言うなりにし、原発を推進し、自衛隊を戦争に参加させ、社会的経済的弱者を排斥し、靖国に参拝してきた人物(以上をやってないとは言わせない)である小泉氏を信用するかどうかという問題については、その人物がまず自分のもともといた党の内部を改革するつもりがないしそもそもなかったらしいということをどう考えるかが肝要であろう。どういうことか答えられますか? その人がそれだけの人物なら自分で自分の党をぶっ壊した後に、きちんとした新しい党が作れているはずでしょうが。派閥の力が弱くなったことが成果? それが国民の利益になっていますか?
祭り上げられた人は「脱原発」だし瓦礫処理で堤防造りに乗り出すこともいいと思うが、じつは憲法は少しは変わっても仕方がないと思っているようでは、どこまで信じていいかわからず、どうしようもない。
「都知事選が脱原発の最後のチャンス」という言い方もどうかと思う。ほんとに。
「脱原発」は正しいことなのだから、「打倒××」とか、何かの代償行為に使うのはどうなのか。向こうは「相手していません」というポーズをいくらでも取れるのだから。
事実として個別の問題で勝ち、追い詰めるしかないのではないか。
「開会式」など興味ないがたまたまソチ五輪でスタジアム建設までの過程を自慢する映像が式中に流れるのを目にした。なるほど立派なスタジアムを作ったのが自慢なのだ。
2020年の東京オリンピックの新国立競技場建設計画は見直しすべきだと私は思う。行われるとなったとしても現在の国立競技場をオリンピック用に直せばいいだけである。無駄はしないほうがいい。
そもそもこの間の経済の動き、株価の世界じゅう軒並み下落でアベノミクスの化けの皮が剥がれそうなことについて、もっと言及されていいと思うのだが。
ソニーのパソコン事業は営業赤字に陥り、VAIOブランドが売却された。たいへんなことだと思う。だが周囲にはあまり驚いている様子がない。
「ヤバイ」と思っている人が少なすぎないか。
このまま現状に寄りかかっていていいはずはないという認識を共有して持ち得ていなければ、世の中はそうそう変わらないということか。
それにしても新聞社での拳銃テロ事件を称賛し問題となっている埼玉大名誉教授の長谷川三千子NHK経営委員が、1970年の「三島事件」について称賛し、三島由紀夫が「日本の国柄というものは、本来、国民が天皇のために命を捧げる、そういう国体」であることを自らの行動(割腹自殺)で示したと主張していたという。もちろん憲法の中心である国民主権を否定している。政教分離にも反している。罷免しない方がおかしい。
彼女を真っ先にクビにすべき立場の籾井勝人NHK会長自身が就任会見での問題発言でボロボロである。「個人的見解」として発言を取り消したのは、従軍慰安婦問題、特定秘密保護法、靖国神社参拝、番組編集権(彼は番組について「私の了解を取ってもらわなきゃ困る」と言った)、国際放送等々についての5項目ということだ。
取り消したらすむのかよ、であり、本人も問題を起こした委員も、責任取ってまとめて役職を離れなければならないはずだ。
マスコミの追及は甘くないか。このまま居座ったら認めてしまうことにならないのか。自分たちの姿勢も問われているのだ。どんどん責め続けてくれなければ困る。あなた方も当事者なのだ。
「発言を撤回」といったって、五項目もである。こんなに撤回しなくちゃならないんじゃ会見した意味がない、っていうか、不適任だろう。
そして、「内心は思っているけど言わなきゃいいんだ」ということになってしまっていいのか。教育上悪くないのか。「道徳」の授業を義務化とか言っている場合だろうか。子どもたちが真似したらどうするのだ。そして思っている以上、今後もそれに基づいて振る舞うだろうし、言っても差し支えなさそうだったら次は言うつもりなのだ。安倍首相ののように。
安倍首相は参議院予算委員会で、特定秘密保護法をめぐるメディア報道について不満を吐露している中で、自分に批判的なメディアの実名を取り上げて露骨に批判するという挙に出た。朝日新聞を取り上げて「安倍政権打倒が社是と(聞いた)そんな新聞だと考えながら読んでいる」と話したのだ。
具体的な事象の事実関係の確認を越えて、特定メディアを「ある思想の持ち主」として非難したのだ。
自分と近いNHK経営委員、新会長の暴言を庇うかのような、彼らの人選をちっとも反省していないという証左だ。
少なくとも三十年前だったら、これらの件だけで彼らを潰せるはずだ。
今の日本は戦後でいちばん良くない、おかしい。それは、一部の人たちや指導者層がヘンなのだ、ということ(だけ)ではない。この国の圧倒的多数の人々が、よくなさそうだとわかっていながら、それを受け入れてしまっているようにも見えるから、なのである。そこをよく考えなければならない。
以前の私たちが、「こんな国がある」と現在の日本の詳細を聞いたら、信じがたい、何か悪い冗談と受け取るしかないような出来事に満ちている。そうなってから久しい。「トンデモ国」であり、そこを支配しているのは「愚かさ」である。
都知事選の話題に戻る。
「脱原発都知事選候補に統一を呼びかける会」の実体は、宇都宮陣営に対して、細川陣営の「勝手連」が、細川陣営に「一本化」するよう要求していたのであり、公正中立ではなく、非合理な要求である。
宇都宮候補は、大江健三郎さんらと早くから「脱原発」の運動に参加し、前回の都知事選でも「脱原発」を掲げ97万票を得た人である。「脱原発都知事を実現する会」の第1回の申し入れは告示前の1月13日。このとき既に出馬表明していた宇都宮選対は、「オープンな場での話し合いに応じる用意がある」「公開の場での討論を通じて有権者に判断してほしい」という趣旨の回答をしたが、話し合いが実現しなかったのは、ひとえに細川陣営側の問題である。細川氏正式出馬表明の前だから「脱原発都知事を実現する」ことが究極の目的なら、公約のはっきりしない細川氏でなく、その段階で宇都宮氏を「脱原発」の統一候補とすれば良かっただけなのである。
ここにきてまた妙な誤解を呼ぶ言い方が飛び交っているが、宇都宮氏は決して「二位争い」をしているわけではない。勝たねばならないと思っているはずだ。
二回目の呼びかけは告示後で法的にも不可能であり、期日前投票をした有権者の意思が無視される。それでも宇都宮氏はきちんと返事をした。
その「回答」があまり世間の人の目に触れていないらしいので、あえて紹介する。
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脱原発都知事選候補に統一を呼びかける会からの、都知事選候補一本化を呼びかける申し入れ書について、本日、(宇都宮氏側が)以下のように回答致しました。
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2014年2月6日
(宛先)脱原発都知事選候補に統一を呼びかける会 世話人 鎌田慧様 希望のまち東京をつくる会
都知事選候補一本化を呼びかける申し入れ書について(回答)
貴会から2014年2月3日付「2014年東京都知事選挙候補統一に関しお願いの件」を受領し、慎重に検討を行いました。貴会のみなさまの記者会見の様子も確認させていただきました。貴会に集まられた皆さんの脱原発政策実現にかける熱意、安倍政権の危険な暴走に対する深い懸念について、私たちも心から賛同します。しかし、残念ながら選挙終盤の現時点では、このような申入れを受けることはできないという結論に達しましたことをお伝えします。
理由は以下の通りです。
ï 前回申入れ時とは状況が違う
前回(1月13日)、「脱原発都知事を実現する会」から同様の申し入れをいただいたときは、告示前の状況であり、当方からは、オープンな場での話し合いに応じる用意があるという趣旨の回答を致しました(別紙)。それにもかかわらず、結局のところ、この話し合いは実現しませんでした。なお、「脱原発都知事を実現する会」は細川支持の勝手連として活動されているものと理解しています。
今回の申し入れは、すでに告示後であり、いったん立候補した後に立候補を辞退できるのは、届出期間中(告示日の午後5時まで)に限られています。既に、期日前投票もはじまっているという状況下である点が前回と大きく異なります。
いまこの申入れを受け入れることになれば、宇都宮候補にすでに期日前投票してくださった支持者のみなさん、応援してくださっている多くの支持者のみなさん、寝食を忘れて選挙活動を手伝ってくださっているボランティアのみなさんの想いを裏切ることになることとなる点、どうかご理解ください。
2.政策が一致していない
細川候補が正式に出馬を表明し、政策を公表されたのは、告示前日の夕方であり、政策のすりあわせなどは到底不可能でした。細川候補と宇都宮候補は脱原発政策の一部において一致するものの、他の多くの基本政策において見解を異にしています。たとえば、貧困、雇用、福祉、教育などの都政の根本にかかわる政策、さらに国家戦略特区、憲法、集団的自衛権、秘密保護法、TPPなども、本来国政の課題でもありますが、都知事としての姿勢が問われる重要な分野についてです。
脱原発が極めて重要な喫緊の課題であることはいうまでもありません。一方で、貧困に苦しみ、追い詰められている生活困窮者や、ブラック企業の被害に遭っている若者、保育所の入所を認められない保護者などの多くの都民は、貧困・雇用・福祉さらには首都圏直下型地震に対応する防災等の政策の充実を待ち望んでいるのです。東京が抱えるこれらの切実な問題に、私たちは目を背けることはできません。
3.必要とされるのは公開の場での議論
東京が抱える問題や、それを解決するための政策について、公開の場で、徹底的に議論することこそが必要なのではないでしょうか
選挙戦での公開討論会やTV討論は多くの有権者に政策を訴え、フェアな議論を通じて、自らの考えに近い候補を選ぶための重要なプロセスです。宇都宮候補は、これを重視し、他の予定はすべてキャンセルして、すべての公開討論に出席するという方針でスケジュールを組んで臨んでいました。1月28日までに、キャンセルされた公開討論企画と番組は合計15件に及びました。これについては、1月28日に私たちとして声明をだしておりますので、ご覧ください。
私たちは、宇都宮候補の掲げる政策に自信をもっています。多くのボランティア・スタッフが、人格、識見、政策実行力において秀でた宇都宮候補こそが、都知事に適任であると考え、日夜精力的に活動しています。
候補の一本化=立候補の取り下げは、公開の場で政策を議論し、有権者が考える機会と選択肢を都民から奪ってしまうものであると考えます。
4.脱原発の結束のために
貴会の記者会見で落合恵子さんなども指摘されていましたが、私たちはこの間の「一本化」をめぐるさまざまな論争が、脱原発に関わる市民運動に亀裂を生み、将来に禍根を残すことの危惧については私たちも共有しています。今回の申し入れを受けて、両選対同士で話し合いを持ち、今後の選挙運動において、このような事態を生じないようにしようということを確認しました。
細川・宇都宮両陣営に加わった脱原発を願う市民が、これらの論争で生じたかもしれないわだかまりを解消し、強固な結束により、原発事故の被害者の支援と全国の原発の再稼働に反対し、原発ゼロを実現する取り組みをともに続けていくことを心より希望するものです。そのような活動の一環として、この選挙の終了後に、選挙結果にかかわらず、両候補の胸襟を開いての懇談の場を設けることも両選対の間で合意されたことを付け加えます。
以 上
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都知事選投票率は、無党派層の比重が強まる「50%台後半」に達するかが勝負の分かれ目という意見がある。
二十代の投票が増えてほしい。我が家にも一人いるが、初めて投票する新成人も、進んで投票を体験してほしい。
若い層にもいろいろな人たちがいる。先行世代に対する意見も様々だ。……時代は戦争に向かっている、先行世代は逼迫感乏しく見える、という者。先行世代は社会的な正義を信じているようで、左翼的になりがちなのはどうかと思う、という者。「戦後民主主義」の直接の恩恵をイメージできない世代にも、そんな真逆の二種類が共存しているということを、忘れてはならない。
明日は雪はやみ、午後には晴れ間が出るという。投票率アップを信じたい。
ついでに。「舛添に投票する男とセックスしない女達の会」というのも困ったものだ。わかるけど。これも海外紙を賑わせているようだ。舛添氏のことが知れ渡り、万が一彼が都知事になったら、世界の女子選手はオリンピックをボイコットするんじゃないかという意見には、「笑えないなあ」という笑いしか返せない。
と思ったら、「市民連帯の会」(代表・三井環元大阪高検公安部長)は、個人演説会で来場者に「五輪バッジ」を配っていたとして、舛添本人と演説会の受付スタッフを、公職選挙法違反(寄付の禁止)の容疑で、8日警視庁に告発状を送付したという。
例の公金での借金返済問題もあるから、この人は猪瀬と同じことになるのか、こんどは選挙中だから仕方がないとして、庇われることになるのか……。
さて。
選挙対応でここしばらく長々と書いてきてしまったが、この先、当分は、こんなに長くは書きません。
…………
別な話題。
交響曲「HIROSHIMA」で知られる佐村河内守氏が、実は自分で作曲していなくて、「ゴーストライター」と呼ばれる実際の作曲者が桐朋学園大学講師・新垣隆氏であった問題が、音楽界のスキャンダルとしてメディアを賑わしている。
知己の、私より年少の音楽家T君は、かつて佐村河内守氏を紹介するテレビ番組を見て驚愕したのだという。「これは、もう僕は作曲をやめようかと思うような体験でした」というのを聞いて、どうにも罪作りなことだと思った。
正直に名乗り出た新垣氏を評価する声も多い。もちろん責任も重いし問題も多いと思う。しかしこの人を社会的に抹殺していいのかどうかは、また別な話だ。
この人がどうやら、社会に向けて、自分から表明しなければならないと思ったということが、大切な気がする。未来や、若者に対しての義務としての表明であるなら、むしろその問題意識を共有してゆく必要もあるのかもしれない。
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雪の中での訃報。
私が一年だけ在籍していた大学劇研の先輩で、東映に就職された、南太郎さん。
大学一年の最後、私の初演出作に主演してくれた。
一年生が演出するなんて前代未聞だったが、応援してくれたのだ。
自由ヶ丘のやきとん居酒屋のバイトは、彼の後を受け継いだのだった。
大昔だが、南さん新婚の千歳烏山への引っ越しを手伝った。
その時いただいた冷蔵庫は、今も梅ヶ丘BOXで使用している。
私たちはナンタローさんと呼んでいた。
ご冥福をお祈りいたします。