菅義偉首相はきょう午前、首相官邸で年頭記者会見を開き、新型コロナウイルスの感染対策として「緊急事態宣言」の「検討に入る」、と表明。土曜の正午発令という見込みらしい。
いま聞こえている範囲では、東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県限定、「感染リスクが高い」と判断された「飲食」狙い撃ちで「限定的に行う」。
劇場・映画館の閉鎖には向かわないようだ。劇場の客席ではいまだにクラスターは発生していないのだから、当然だろう。
小中高校や大学など学校での教育活動も制限しない方針を固めているという。1月16日から始まる大学入学共通テストも予定通り実施、という方向。
とはいえ、各自治体に任される部分も多いはずで、公共、民間、それぞれに向けて、どのような指示やガイドラインになるかは、未知数である。「飲食」が問題と決めつけているのに、イベント開催制限が正式に「要請」されるとしたら、それは筋が違うと思うのだが。明日明後日にはいろいろ固まってくるのだろう。
「緊急事態宣言」でなくてもいいのではないかという意見も巷には多いが、「1都3県の感染者数が極めて高い水準。より強いメッセージが必要」という。ただ、「国民の行動変容」を求められても、心ある人はもうとっくに実践しているはずである。
日本経済新聞社の世論調査で「感染拡大を防ぐため速やかに再宣言すべきだ」との回答が48%を占め、11月調査から9ポイント上がったことも、影響しているのだろう。
会見では産経新聞の記者が「(午後8時までの飲食営業短縮をのまなかった)一都三県が国の要請に応じていれば今の状況は回避できたとお考えか」と、国に迎合的な質問。「経路不明の感染原因の多くは飲食によるもの」として、「1都3県」がその努力をしなかったかのような言いぐさである。4都県の首長が先に「緊急事態宣言」の発動を要求しているのに、である。テレビのワイドショーのパネラーたちも、「忘年会をやっていた市民」のせいにしようとしている発言が聞こえてきて、うんざりしてチャンネルを変えた。
4都県の首長に対しては、以前は西村経済再生相が相手しているが、なんで「経済再生」カテゴリーの問題にされてしまうのかも、不思議である。
やがて始まる通常国会で新型コロナに対応する特別措置法が改正され、時短要請を受け入れる店舗への「給付金」と従わない場合の「罰則」をセットで盛り込む方針という。アメとムチによる支配であるわけだが、はたしてどのような「罰則」が用意されるのだろう。国家というものは、民間を縛って支配したいという欲望があるものなのかもしれない。とにかく、将来的に「ワクチンを受けなかったら罰則がある」という事態になるなら、それは御免被りたい。
緊急事態宣言は全国区でないと効力はないのではないかという気もするし、「補償」については全国一律でなければ矛盾が起きるのではないかという気もしてくる。
ガースー氏の態度は、あまり本気な感じがしない。「緊急事態宣言」という言葉に対する、「実感」のなさ。出すと言った以上は出すのだろうが、彼はオリンピック・パラリンピック開催をあきらめていないようだから、ガス抜きのつもりなのかもしれない。だが、この宣言を出さねばならなくなった事態については、年末に期間を限定したものの、しぶとく「Go To トラベル」をあきらめなかったご本人には、責任はないのだろうか。
ここ数日のコロナ感染の、検査したさいの陽性率の著しい上昇は、確かに脅威である。だが、この対応でいいのかと言われると、釈然とはしない。
去年の今頃は、オペラ『イワンのばか』の稽古が始まっていた。たいへんだったけれど、充実していた。一年前と今の違いに、愕然とする。(写真は、こんにゃく座『イワンのばか』、昨年2月の本番)