江森盛夫さんが亡くなられたという。
彼の演劇批評には、私はいろいろ違和感もあった。でも、面と向かって言って、それを話せる人だった。「初日通信」にも、いいところと批判すべき所があった。でも、そんなの当たり前のことで、話せることの健全さがあった。
拙作では『くじらの墓標』を最高作と思っておられて、ありがたくもあったが、別な挑戦を色眼鏡無しで観てくれていないな、と思うことも、しばしば、あった。
江森さんは子役出身なのである。だから演劇や演じることについて、わかっていることもあり、独断な所もあり。だから彼の視点を通した批評は、面白いし、役に立った。
でも、とにかく、彼は、この街で、少しでも惹かれる要素があればなんでも見てみよう、として、数十年の演劇を、観てこられた。そこで共有している要素は多いし、とにかく、彼は、演劇批評家がそうであるべき、すぐれた「街の人」、だった。
とてもとても、残念です。演劇は、観ていただいて、始まるものです。あなたに観てほしかった。あなたをぎゃふんと言わせたかった。そういうことなんです。