連日の稽古で雨の中、ようやく帰り着いた夜、演出者協会でお世話になった大先輩・中村哮夫さんご逝去の連絡を受ける。
ああ。
5月28日、老衰のためだった。91歳という。
中村さんは数年前より施設に入られていたが、2021年夏、そこから抜け出して、星陵会館まで、私の演出・出演した『悪魔をやっつけろ』を、観に来てくださった。松元ヒロさんとのアフタートークもあった終演後、ロビーに残ってくださっていたので、コロナ禍の中だったが、かなり長くお話しした。信じられないくらいの大絶賛をいただいた。
彼が演出した商業演劇の代表作、『ラ・マンチャの男』をかなり特別な感じで見せていただいたことも、昨日のことのように覚えている。この頃のことは、面白すぎて、あるいは、せつなすぎて、なかなか記せないのである。いやはや。
いつも励まし、応援してくださった。私を特別扱いしてくださる方だった。
苦しいことがあっても、いつも明るく振る舞われていた。演出者協会が「仲間たちの会」であることを、体現されていたのだ、と思う。
本当にありがとうございました。
・・・・・・・・・・・・・
中村哮夫さん プロフィール
中村哮夫さんは、1931(昭和6)年9月15日生まれ、東京都出身。
慶応義塾高等学校在学中に、新任の英語教師として赴任した加藤道夫氏に出会う。
1951年、慶應義塾大学文学部を卒業。久保田万太郎氏から学ぶ。
1954年、東宝撮影所助監督になり、黒澤明監督に師事。
1962年に東宝演劇部に移籍し、劇作家であり東宝演劇担当役員の菊田一夫に師事し、菊田一夫演出作品の多くで演出補を担当する。
1963年5月、山口瞳の『江分利満氏の優雅な生活』を演出。
10月には、初めてのミュージカル『カーニバル』を演出。
ミュージカル『心を繋ぐ6ペンス』(1966年芸術座、1967年帝劇)、『ファンタスティックス』(1967年芸術座他)、『王様と私』(1968年~1999年 帝劇他)、『ラ・マンチャの男』(1969年~2001年帝劇他)ミュージカル『歌麿』(1972年)等多くの東宝ミュージカル、帝劇歌舞伎などの演劇作品の演出を手掛ける。(年は中村さんの演出担当年)
東宝作品以外では、小劇場ジァン・ジァン版『ファンタスティックス』、『その男ゾルバ』(新宿コマ劇場他) 『アテルイ』(わらび座)、『銀河鉄道の夜』(2004年)がある。
日本演出者協会では、理事・監事・評議委員を歴任。長野県清里や飯田での演劇大学でミュージカル講座を担当。日本の近代戯曲研修セミナーでは、久保田万太郎、加藤道夫氏らについて取り上げられています。国際演劇交流セミナーでは、開始した1999年のハンガリー特集においてモルナールの『リリオム』のレクチャーを担当されています。
1997年に、永年のミュージカルにおける演出の功績に対して、第二十二回(1996年度)菊田一夫演劇賞特別賞を受賞。
長年、青二塾にて講師を務める。
著書に、『久保田万太郎-その戯曲、俳句、小説』。
「春灯」同人。俳号は中村嵐楓子(らんふうし)。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます