昨日から涼しい日が続いている。
昨日は寒いくらいだった。
今日は、日差しがあるので、多少、暑く感じられるが、それでも涼しいことに変わりはない。
休みが終わり、9月になり、山はもう冬支度だろうか?
涸沢のナナカマドの紅葉は9月の末だっただろうか?
もう、夏を忘れ、秋のことに心が向かうオカブのその移ろいやすさを、わずかに恥じる。
オカブが大学時代は9月は、まだ休暇中だった。長く苦しい夏合宿を終え、さらに、その休みを利用して穂高に岩登りに行った。
3000メートル級の山はもう寒い。セーターを着て岩を攀じ登った。
山行が終わると上高地経由で松本に下山した。
松本では山行きの後の打ち上げが楽しみであった。
駅前に『本陣』という山菜料理屋がかつてあった。ここは学生山岳会を中心として山屋の溜まり場であり、我々も常連だった。
『本陣』の親爺は数々の登山家と知己であり、ここは俺の縄張りだ、と言わんばかりに、いかに学生とはいえ客である我々にも態度がデカかった。我がサークルがヒマラヤ遠征で世話になった山岳写真家の青野恭典氏を呼び捨てにしていた。
しかし、ビールをタタで付けてくれたり、ご飯をお代わり自由にしてくれたり、なにくれとサービスしてくれた。
ただ、後で知ったところによると、このサービスの対価は、個人で松本に寄ったOB連中が後輩をよろしく、と心付けとして既に支払っているものと聞いた。
『本陣』で飯を食った後は『まるも』に珈琲を飲みに行った。松本を代表する珈琲店である。まだ珈琲の味もわからぬひよっ子の学生であったが、いかにも喫茶店通でござい、と気取ってのさばっていた。しかしここで久しぶりに聴くクラシック音楽は心に沁みた。
数十年前に松本も駅前が都市開発され、すっかり様相が変わった。『本陣』も無くなったし、あの態度がデカかった親爺も鬼籍に入ったことであろう。
ところで、信濃と言えば蕎麦である。
かーたんと結婚して翌年に上高地に二泊三日で旅行した。
山らしい山が初めての新婚のかーたんは子供のようにはしゃいでいた。
松本に降りて『こばやし』という蕎麦屋に入った。蕎麦は美味かった。
帰路は高速バスに乗った。車内でかーたんと話すことは無限にあった。未来のことを語った。今では、お互いに、すっかり口数が少なくなっている。
懐かしい思い出である。
新涼やふわと浮く雲ながる風 素閑
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