これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

誰の誕生日?

2016年06月16日 21時41分57秒 | エッセイ
 先週の今日は、六本木で開催されたワインフェスに姉と参加していた。
 赤や白、泡物を何杯もいただき、カヴァ6本、白6本を買ってニンマリした。買い物はもちろん、いろいろな種類を次から次へと飲めるのがうれしい。



 昨日、商品が届いたものだから、ひっくり返って激しくブレイクダンスしたくなるくらいウハウハした。ワインセラーはないけれど、冷蔵庫に入れて冷やしておこうっと。
 さて、今日は夫の誕生日である。
 何回目かはあえて言わないが、高齢者であることには違いない。先日も「炊き込みご飯」という名詞が思い出せず、苦し紛れに「醤油ご飯」などとのたまっていた。
 どんな飯だよ?!
「パパ、今日は誕生日だね。夕飯は寿司でいいかな。最近食べていないし」
「うん」
 夫も、お祝いをしてもらうことを、それなりに喜んでいるらしい。
 主役でもない私ですら、気分が舞い上がって仕方ない。
「ケーキ買わなくちゃね、ケーキ。ラ・メゾンにしようかなぁ」
 浮かれる私の横で、娘が夫に聞こえないようにボソッとつぶやいた。
「プレゼントはどうするの?」
「ギクッ!」
 しまった、自分が飲み食いすることばかりに気を取られ、誕生日プレゼントのことはすっかり忘れていた。なんたる不覚!
「商品券とかでいいんじゃない。セブンイレブンで使えるやつ」
「……適当だな」
 夫はここ何年かで相当なデブ……もとい出不精となり、スーパーかコンビニにしか出かけない。とりわけ、お気に入りがライフとセブンイレブンで、週の半分以上は通っているようだ。
「いらなければ、私たちが使えばいいし」
「ケケッ」
 誰のためのプレゼントなのか、よくわからないまま準備が進み、いよいよ当日を迎えた。
「パパ、お誕生日おめでとう!」
 乾杯に使った飲み物は、冒頭のカヴァである。夫は「豚汁があるからいらない」と言い、娘と2人で乾杯した。



「主役抜きで乾杯って、何か変じゃね?」
 娘は口をへの字に結び、納得していないようだったが、「いーよ、いーよ」と宥めておいた。
 カヴァ、うまいッ!
「今日は蒸し暑かったから、寿司でよかったよ」



 夫は久々の寿司に満足げだった。
 私も寿司は好きだが、もっと楽しみだったのが食後のケーキ。最近、甘いものを控えているので、脳が糖質を欲しがっている。
 結局、ラ・メゾンに行き、「チェリーのクッキークリームタルト」を買った。



 チェリーの下のクッキークリームが、ハーゲンダッツの「クッキー&クリーム」をほうふつとさせる。チェリーには弾力性があり、みずみずしい果汁ともマッチして、今月のタルトにふさわしい出来だ。甘いものを制限していたこともあり、禁断の甘美さに酔いしれた。
「パパ、誕生日おめでとう」
 娘が、夫に商品券を手渡した。



 夫がこれを使うかどうかはわからない。使い道がなければ、私が消費してあげるから、遠慮せずに言ってねと伝えるべきだったか。
「ごちそうさまぁ」
 誕生日ではなかったが、非常に満ち足りた気分になった。もう、もらった気でいるのだ。
 こんなに明るい気持ちになれるなら、父の日も、これとは別にお祝いするべきか。今度は白を飲みたいものだ。
 はてさて、誰のための父の日なんだか……。


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