しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「さよなら妖精」 米澤穂信 

2011年06月04日 | 読書
「さよなら妖精」 米澤穂信     東京創元社

1991年4月、地方都市藤柴市。
高校3年生の守屋路行と太刀洗万智は、ユーゴスラヴィアから来た17歳の少女マーヤと出会う。
マーヤは、あてにしていた滞在先が駄目になり、途方に暮れていると言う。
2人は、同級生の白河いずるを紹介する。
いずるの家は民芸旅館『きくい』で、マーヤは旅館の手伝いをしながら滞在する。
マーヤは、メモを取りながら日本のことを何でも知ろうとする。
同時に、ユーゴスラヴィアのことを守屋たちに話す。
2ヵ月後、マーヤは内戦の始まったユーゴへ帰って行く。




ユーゴスラヴィアは、名前を聞いてたことがあるようなと言う程度の守屋たち。
1984年に、冬季オリンピックが開催されたのだが、それは記憶にないのか。
7年前なら、多少は覚えているような気がするが。
開催地サラエボは、激しい戦地となった。
あの時のジャンプ台。内紛の後、廃墟のような姿を見て悲しい気持ちになった。

日本と世界の違いを、友人になった外国の少女から聞く。
その心の動きが丁寧に書かれている。
もっと若い時に読んだら、もっと心を動かされたかも知れない。
マーヤは政治家を目指し、色々な国のことを知ろうとしている。
何でもメモをして知ろうとする姿は微笑ましい。
しかし、こんなことも役に立つのかと、疑問に思ったりもする。
政治家になるなら、もう少し、社会の仕組みなどにも目を向けたらいいのにと思う。
マーヤは、少し幼く感じる。
小さな謎解きが出来るような話題が、いくつか散りばめられている物語。
最後に、マーヤがどこから来たかを推理するのが、最大の謎解き。
読み始めて、ずっと気になっていたのは、マーヤはどこから来たか。
何故誰も聞かないのだろうと不思議に思っていた。
ユーゴの国のことを聞いたら、それが1番知りたいことだと思うのに。
少々不自然だが、それは最後に謎を残すためだったからか。

ラストは、やるせない気持ちになる。
もう過ぎてしまった歴史だから、何となく嫌な予感はした。
初恋の淡い気持ちを含んだ、青春物語。
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