しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「ある日系人の肖像」  ニーナ・ルヴォワル 

2011年08月04日 | 読書
「ある日系人の肖像」  ニーナ・ルヴォワル    扶桑社ミステリー
 Southland           本間有・訳

1994年2月、ロサンゼルス。
ロースクール3年のジャッキー・イシダは、叔母のロイスの頼みで人探しをすることになる。
それは、10日前に他界した祖父、フランク・サカイの遺言にあった人物、カーティス・マーティンデイル。
フランク・サカイは日系二世で、60年代にクレンショー地区で小さな食料雑貨店を営んでいたが、
1965年に起きたワッツ地区の黒人暴動の後、引っ越していた。
フランク・サカイの遺言は、正式な遺言とは別に、クローゼットにあった箱に仕舞い込まれていた。
1964年に書かれ、店をカーティス・マーティンデイルに遺すとあった。
そして、そこには“店”と書かれた箱があり中に3万8千ドルが入っていた。
ロイスは、この金はカーティス・マーティンデイルのものだと考え、探すことにしたのだ。
やがてジャッキーは、カーティスは1965年の黒人暴動のさなかに、フランクの店の冷凍庫に閉じ込められて命を落とした黒人少年4人のうちの1人だと知る。






日系二世のフランク・サカイと、彼を取り巻く人々の物語。
第二次世界大戦の時代をはさみ、彼らに起こったことや心情が丁寧に書かれている。
その時代の様子なども、よくわかった。
みんな、誰もがそれぞれの物語を持っている。
特に波乱万丈な時代で、移民と言うこともあるから、その物語は深い。
しかし、段々過去になり忘れ去られる物語でもあるのかも知れない。
これは、それを形で残してくれる。
フランク・サカイの人生が、心に深く入って来る。
心に秘めた思いが、熱く伝わる。
しかし、読んでいる時は、もっとストレートに知りたいと思った。
時間や人物がバラバラに出てくるので、自分の中で組み立てなければならない。
振り返って、確認することも多い。
それがまどろっこしく感じた。
しかし、その方がフランク・サカイの人生を、ゆっくりと繰り返し辿ることになり印象深くなったのかも知れない。
読み終わった後、そう思った。

現在のジャッキーの物語もあるが、ジャッキーの恋愛については、なくてもよかったような。
自分には興味がないだけかも知れないが。

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