しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「秘密」  ケイト・モートン    

2018年04月29日 | 読書
「秘密」  ケイト・モートン   東京創元社   上・下巻
 THE SECRET KEEPER         青木純子・訳

1961年夏、サフォーク。
少女だったローレルは偶然、恐ろしい事件を目撃する。
突然現われた見知らぬ男の胸に、母がナイフを突き立てたのだ。
ローレルはショックで気を失ってしまう。
男は死亡し、その正体は当時、近隣に出没していた連続強盗犯と判明。
ローレルの証言もあり、母の正当防衛が認められた。
ローレルは、あのとき男が近寄りながら「やあ、ドロシー、久しぶりだね」と母に声をかけたことを警察には話さなかった。
男は母を知っていたのだ。そして母も男を知っていた。
彼は誰だったのか?
2011年、ロンドン。
国民的女優となったローレルは、死期の近づいた母の秘密をさぐりはじめる。
なぜ、母はあの男を殺してしまったのだろう?
彼と母のあいだに何があったのか?
そして、母の本にはさまっていた写真の見知らぬ女性は誰なのか?
その本に残された署名・ヴィヴィアンとは誰の名なのか?
    <単行本上巻カバー見返しより>

1941年、第二次世界大戦下のロンドン、ローレルの母ドロシー(ドリー)はまだ若く、裕福な一人暮らしの老婦人の屋敷に、メイドとして住み込んでいた。
向かいの屋敷に住む作家の妻は、美しく洗練されていて、ドリーの憧れの的だった。
国防婦人会の活動に参加し、彼女の手伝いをすることが、ドリーの生き甲斐になっていた。
そんなある日、地元に残してきた両親と弟が空襲で亡くなったことを知る。
ひとりぼっちになったドリーだったが、彼女には結婚を約束した写真家ジミーの存在があった。
ふたりは海辺の家で暮らすことを夢見ていた。
だがドリーの運命は急転回する。
ロンドンの空襲、そして……。
2011年、ローレルは、あの恐ろしい事件当時、母に抱かれていた弟とふたりで、母の過去を探りはじめる。
メイド時代の母のこと、写真の女性のこと、高名な作家夫妻のこと……。
さぐりつづけるうちに見えてきたのは思いも寄らぬ母の姿だった。
母ドロシーの過去にはいったい何が隠されているのか?
      <単行本下巻カバー見返しより>










ローレルが母親ドロシーの事を調べる現在、ドロシーの少女時代からの物語、1941年の戦時下のロンドン。
そしてヴィヴィアンの少女時代からの物語。
時代も人物もあちこちと飛ぶ。
それが少々まどろっこしくも感じる。
それは、ラストの秘密が明かされる時の為に必要だったのだと、後で分かる。
ローレルが探る事実より、読者は先にある程度謎にたどり着くのだ。
読んでいて面白かったのは謎を解き明かすだけではない。
戦時下のロンドンの生活の様子がありありと描かれている。
それぞれの登場人物の家族との係り方はその気持ちも、細やかに書かれている。
人間ドラマとしても読みごたえがある。
その人物がどんな性格の人間なのか、ある程度、物語の位置などで先入観が出来るものだ。
そんな事も感じた。
ジミーという、まっとうで善良な人物にホッとするが、なかなかそんな人物はいないだろう、と思ってしまう。
ひとつ、事実から考えてオカシイかなと思う事がひとつ。
これが結構重要なのだが。
殺された男が「やあ、ドロシー」と言うのは不自然なのではないだろうか。

戦時下のロンドン。その生活や空襲場面を読むと『ブラックアウト』と『オールクリア』を思い出す。

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