「殺人！ザ・東京ドーム」 岡嶋二人

ひとり、ひっそりと虫の写真を撮ることが好きな、久松敏彦は伊豆の山で突然声を掛けられ驚く。
「マッチかライターを貸していただけませんか」と声を掛けた２人組は、勝本清一と児玉啓三。
児玉がアマゾンの奥地から内緒で持ち込んだ猛毒の「クラーレ」を試す為だった。
毒でリスを殺した時、２人は過って穴に落ちる。
その様子を見ていた久松は落ちていた「クラーレ」を持ち去る。
帰りがけに犬にその毒を使い、効果を試した久松は生まれて始めて自信が湧き上がってくるのを感じる。
近くのクリーニング店の珠美に思いを寄せる久松は、珠美が「巨人・阪神戦なんて、どうしてあんなに騒がなきゃならないの」と言うのを聞き、「クラーレ」の付いた矢を飛ばす道具を作り上げ、東京ドームに向かう。


東京ドームで行われる、殺人。
犯人は始めから分かっている。
そして、その動機も。しかし、その動機が一般的ではないから恐ろしい。
よくある、心の闇と同じものなのだが、久松の場合は、それほど深く書いてある訳ではないのだが、悲しいし不気味だ。
現代がこういう人達を作り出しているのかも知れないと言う恐怖がある。
「あいつを殺せ」と声がした、と言っている人達の犯罪と似ている感じ。
でも、久松は知能的にはどうだったのだろう。本当に低いのだろうか。
解説にあったが、「サイコサスペンス」だと。
確かに心理的な恐怖を書き立てるサスペンスだが、他のものとはちょっと違う、感じだった。
２次的な事件が起こった時の久松の反応も予想外だった。
裁判になったら、精神鑑定で揉めるだろう。