しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「神はサイコロを振らない」 大石英司  

2006年03月15日 | 読書
1994年8月15日、乗員乗客68名を乗せて、報和航空402便は消息を絶つ。
墜落の痕跡はいっさい見つからなかった。
それから10年、2004年8月12日、402便は羽田に姿を現す。
乗っていたのは10年前と同じ姿の68名だった。
しかし、この事を量子力学からマイクロ・ブラックホールが原因と予測した元東大の教授・加藤は、乗客は3日後にはまた元の時空に戻されて本来の墜落に合い消滅する事も予言した。
乗客は機内から降ろされ、その事実と現在の身内の様子を知らされる。
その後、本人の希望を飛行機会社が優先して、乗客は3日間の時間を過ごす事になる。

乗客は宮崎から飛行機に乗って羽田に着いただけの時間しか感じていない。
しかし、家族や周りは確実に10年の歳月が流れていた。
その間に、阪神淡路大震災やオウムの地下鉄サリン事件が起きている、日本にとって激動の10年だった。


遭難したかも知れない飛行機を捜す、緊迫した場面から始まる話だが、その後は、
何人かの3日間の行動が細かく書かれ、わりと淡々と話しは進んで行く。
本当に3日後に消えてしまうのか、半信半疑の乗客は、あまりその事を深刻に考えてはいない様に感じられる。
だから、あまり悲壮感などは感じられなく淡々と感じられるのかも知れない。
「残された3日間をどう過ごすか?」とは、違う感覚がある。

そして、周りにとらわれずに、自分が今まで続けて来た事をそのまましようとしていた人が多い。
テニスプレーヤーの高千穂、チェロ奏者の後藤瑠璃子。自衛官の祝迫、政治家の小里、日向・霧島のカップルも。
そして、負の方に進んでしまった、タレントの阿川沙耶や、ミスターXも同じだろう。
ただひとり、神降は、地震とサリンで家族が被害を受けたのをなんとか阻止したいと10年後に戻った瞬間に、その事を知らせる方法を探っていた。

タイトルの「神はサイコロを振らない」、は歴史は変えるべきではない、神は博打はしない。「そのまま受けいれるべきだ」と言う事かと。
「人生は『神様のレシピ』の通り」と言っているのは、伊坂幸太郎さん。
あるがままに無理せず自然に流れて行くように、が大事なのか。

これは、残された人達に奇跡がもたらされた物語。
死んだ人の魂がお盆の時に還って来たのと同じ感覚になるだろうとあるが、その通りなのかも知れない。
現実でも、死を前にした人に託された思いは重みを増す気がする。
消え去る場面は寂しく悲しいけれど、何となく、心に温かく、爽快感を残してくれる話だった。
世の中は、生きている人の為にあるものなのだとも感じた。
だから、生きている事を真面目に感謝して、生きていると言う事を喜んで、生きていきたい。


これは、今テレビドラマで放送している。
自分は観ていないが、テレビの宣伝を見てこの話を知り、面白そうと思い手にした。
ドラマの方は分からないが、小説は良かった。



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1 コメント

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ドラマもよかったです(^^) (hohyuhn19)
2006-03-19 01:23:49
私は原作を読んでいませんので、比較は出来ないのですが、ドラマもよかったですよ

設定もところどころ違うようですね。

そのうち原作も読みたいですね。(今「白夜行」読んでます)
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