しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「霧越邸殺人事件」 綾辻行人  

2006年01月03日 | 読書
猛吹雪のために密室と化した舘。
難を逃れて偶然に投宿した9人を襲う、北原白秋の童謡『雨』に見立てた連続殺人。

厳しい状況なのだが、霧越(きりごえ)邸の時間は、ゆったりと流れて行く感じがする。
そこに、突然現われる他殺死体。
何となく幻想的な殺人で、連続殺人の怖さは感じない。
霧越邸がもうひとつの主役になっている、ちょっとオカルト的なのもいいと思う。
犯人がいるような、いない様な、それこそ霧に包まれた雰囲気の物語。
外が雪と言うのも、密室の条件であるけれど、綺麗な状況を作りあげる。
しかし、謎解きはきちんと行われて行くし、トリックもなるほどと思わせてくれる面白さだった。

話の中で、登場人物の槍中秋清が語る、『犯罪の本質』が興味深かった。
フランスの社会学者・エミール・デュルケームの引用も入っているが、
「犯罪は社会によって作られるもの。ある行為は、それが犯罪であるから非難されるのではなく、我々が非難するから犯罪になる。この世の中から犯罪を完全になくす為には、法律をなくす事である」
これを読んだ時に、一番に戦争裁判を思った。何が犯罪であるか決めるのは、戦勝国であって、一般論は通用しない。
人間はみんな自分の都合のいいように、世の中を動かそうとしている。

2005年は綾辻行人さんで終わり、そして綾辻行人さんで始まった。
気にいるとその作家の作品を次々読んでしまう。
取り合えず「舘シリーズ」は全部読みたいと思う。
今年はどんな作家に出会えるか楽しみだ。
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