しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「祈りの幕が下りる時」 東野圭吾

2014年03月21日 | 読書
「祈りの幕が下りる時」  東野圭吾   講談社    

刑事、加賀恭一郎の行方知れずの母親が死亡する。
田島百合子と名乗り、仙台のスナックで働いていた。
連絡をくれたのは雇い主の宮本康代で、加賀のことは、百合子が親しくしていた客の綿部俊一が教えてくれたと言う。
綿部と言う人物についてはほとんど分からなかった。
それから十数年後。  
葛飾区小菅のアパートの一室から、女性の絞殺体が発見される。
女性は彦根のハウスクリーニング会社で働く、押谷道子。
そのアパートの住人は越川睦夫で、2人の接点は分からず、越川も行方知れずになっていた。
同じ頃、新小岩の河川敷で、ホームレスが殺された事件があった。扼殺された後、焼かれていた。
捜査にあたる、加賀の従兄弟の松宮刑事は2つの事件に繋がりを感じていたが、具体的な物はなかった。
調べるうちに、道子は中学校時代の同級生で今は女優で演出家の角倉博美、本名浅居博美に会いに行ったことが分かる。
その角倉博美と加賀は、昔、剣道を通じて知り合っていた。








殺人事件と、加賀の母親の物語の2本立て。
その2つが、繋がりがあると言う、その部分が分かってくる面白さ。
謎の人物、行方不明の人物の正体が分かる、パズルが合う時に面白さ。
そんな面白さはある。
しかし、物語の本筋はどこかで読んだことがあるような感じで、あまり新鮮味はない。
避けようのなかった殺人と、それを隠すために重ねる罪。
それは自分の為ではなく、愛する人の為。
しかし、その心情があまり納得行かない。
それぞれの人生や、歩んで来た道の重さに対して、殺人が軽い。
他人を巻き込んで、自分たちの幸せを追及するだけの気持ちが伝わって来ない。
と言うか、そんな人生を歩んで来た人が、そんなに簡単に人を殺してしまうものだろうか。
心情に訴える物語なので、その辺りももう少し納得したかった。
『異聞・曾根崎心中』に当てはめたのも、少し意味合いが違う気がする。
今の自分の位置を、変えたくないという思いが見える気がする。
何が1番幸せなのか。それは生きていると言う事ではないのだろうか。
加賀の方の物語は、これで一応決着が付いた感じがする。
小出しだったので、何となく感情移入がしづらかった。
最後の手紙を読んで、どう感じるのだろうか、という興味はある。


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