しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「緑衣の女」  アーナルデュル・インドリダソン

2016年09月16日 | 読書
「緑衣の女」  アーナルデュル・インドリダソン  東京創元社     
 GRAFARPOGN     柳沢由実子・訳

アイスランドのレイキャヴィク。
住宅建設中の穴の中から人骨が発見される。
70年ほど前の物と推測された。
その地はかつて、サマーハウス専用の土地で付近にはイギリス軍やアメリカ軍のバラックがあったと言う。
過去にあったサマーハウスの存在は分かったが、住民登録はされていなかった。
レイキャヴィク警察犯罪捜査官のエーレンデュルは、人骨の指が上に向かって広がられている事から生きたまま埋められたと思った。
過去の事件として、捜査はエーレンデュルのチームだけが行う事になる。
同僚のシグルデュル=オーリは、犯罪だとしても犯人も死んでいる可能性が高く意味のないことだと言う。
調べるうちに、サマーハウスの持ち主や、住んでいた人たちの情報が少しずつ明らかになる。
同時進行で、3人の子供のある家族の話が語られる。
暴力を振るう夫で、妻は子供を守りながら生活していた。










現在の物語と交互に語られる、ある家族の物語。
それは少しずつシンクロして来る。
エーレンデュルのチームたちより先に、その人骨の真相にたどり着けそう。
その人骨が、グリムルであって欲しいと言う思いも。
ところが意外な事実も出てきて、二転三転の様相が。
これは骨の発掘がなかなか進まない事から起こるのだが。
まるで遺跡の発掘のような、骨の取り出し。
エーレンデュルと考古学者スカルプヘディンのやり取りも面白い。
刑事たちの私生活での問題。
色々な要素は、メインの物語を邪魔することなく、かえって深くするかたちで入って来る。
謎解きよりも、そんな人間関係がメインの物語。

この物語の主人公は、最後に名前の分かる、マルグレットだろうか。
丁寧に描かれる心理に、たくさんのことを考えてしまう。
決して生きることを諦めない強さ。しかし、悲惨すぎる。
現代も無くなることなく問題になっているドメスティック・バイオレンス。
なぜそんなことが起きるのか、そこまで考えて行かなければならない問題。
最後にグリムルの言葉に、人間の深さと不可解さを思った。

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