前回(→こちら)に続いて、大森庸雄『ロック豪快伝説』を読む。
ここまではエアロスミスの、
「ツアー先のホテルで、チェーンソー持って大暴れ」
「レコーディングそっちのけで、本物のマシンガンでサバイバルゲーム」
などなど、豪快というか、迷惑極まりないというエピソードを紹介した。
続いてはキッス。
そのベーシストであるジーン・シモンズは、酒もドラッグもたしなまない、ロケンローな世界では天然記念物級に珍しい人である。
では、彼はどこが「豪快」なのかといえば、ジーンは「大の女好き」。
まあそれだけならロックスターにはよくある話だが、ジーンが違うのは、彼は自分が関係を持った女性の記録をすべて残していたこと。
ポラロイド写真に撮り、その枚数は4000枚を越えるという。「春の歩み」ロックバージョンだ。
西のジーン・シモンズ、東のジェームズ三木といったところか。世界一うらやま……ゲスくて、ヒドいコレクションといえよう。
ついでにいえば、ジーンはその行為をビデオで撮影もしていて、そのテープには女の人の写真が貼られていたそうだ。
たしかに、そうしておけば、だれが録画されているか一発でわかる。
クリエイターだけど、事務仕事も得意だね、ジーン! ……て、もはやスターというより、ただのエロオヤジの発想である。
このジーン・シモンズ、女好きと同時にものすごい吝嗇家、「出すものは舌でもイヤ」というドケチであることで有名だそうだ。
が、ものには例外というのはあるもので、歌手でありオスカー女優でもある、シェールとつきあったころ。
このときだけは彼女の魅力にまいってしまったのか、湯水のように貢いだそう。
奮発して、コンコルドのチケットなんてもんもプレゼントしたらしいから、すごいもんだ。
あー、それはちょっと乗ってみたいかも。でも、チケットぴあで売ってるの見たことないけど。
また、デートの演出も凝りに凝りまくっており、誕生日にはなんと戦車にのって迎えに行ったそうである。
どういう根拠でもって、彼はシェールがそれをよろこぶだろうと判断したのだろうか。ふつう、女子は戦車に興味ないやろ!
そもそも戦車で、公道を走ってもいいのだろうか?
車種はなんだったのであろう。レオパルト? 61式? 謎は深まるばかりである。
ミュージシャンである大槻ケンヂさんによると、ジーンの自伝は
「いかにオレ様が金を稼いだか、いかにオレ様がモテたか、いかにオレ様以外の人類が愚かであるか」
という三点だけで構成された、大林監督『尾道三部作』も顔負けの『オレ様三部作』であるそうだ。
カッコよすぎる内容だ。あこがれまくりである。
私も彼のように生きるべく、来週のデートにそなえてハナテン中古車センターに、戦車を買いに行きたいと考えている。