やはり、「身内カラオケ」で『若い力』はハズせない。
カラオケで盛り上がる曲は、人様々である。
今なら、優里『ベテルギウス』やYOASOBI、Adoの『うっせぇわ』などが人気。
われわれ世代だと、スピッツにドリカム。
私が歌うのはミッシェル・ガン・エレファント『バードメン』『リリィ』に、筋肉少女帯『サボテンとバントライン』。
ザ・ハイロウズ『不死身のエレキマン』とか『木枯し紋次郎』の主題歌『だれかが風の中で』といったところか。
そんな定番以外では、「内輪ウケ」の曲というのも楽しい。
アイドルファンやアニソン特ソンなど「しばり」の入った会だと、外では受け流されても、仲間内では大盛り上がりというケースもあるのだ。
私の場合、この「身内ウケ」の曲が「若い力」。
といっても、知っている人はコアなゲームファンだけだと思われるが、これはゲーム会社セガの社歌。
これぞまさに「身内ウケ」ゲーム『セガガガ』で有名になったが、これが友人とのカラオケ会では、まあハネるハネる。
作曲は歌謡曲から、『ハングマン』『世界名作劇場』に『ヒカルの碁』と幅広いジャンルで活躍されていた若草恵氏。
曲の方は、社歌らしく、いわゆる甲子園で流れる校歌みたいな感じなのだが、その大仰な歌詞やメロディーが、カラオケという舞台に妙にハマる。
では、なぜにてセガの社員でもないわれわれが、「若い力」を熱唱するのかと問うならば、これが話は高校時代までさかのぼる。
当時、某文化系クラブに入っていた私は、そこできわめて気の狂……個性的な先輩たちと出会い、かわいがっていただいた。
そのメンツというのが、ゲーマーがいて、SFファンにミスヲタがいて、特撮ファンがいて、TRPGのゲームマスターがいるという、文化系オタク男子の梁山泊だった。
そういう系の部活ではなかったし、女子部員のほうが多いキャッキャした環境なのに、なぜにてそんな人選がかたよっていたのか今でも謎だが、ともかくも私のようなボンクラ生徒にはメチャクチャに楽しい部室であったのだ。
そらまあ、部室で『ダンジョンズ&ドラゴンズ』やったり、テレビとビデオデッキ持ちこんで、稽古の合間に『特攻野郎Aチーム』とか『フルハウス』観てたもの。
そういや、オレの青春ってこんなんだったなあ。
でだ、そこによく遊びに来ていた、ナガホリ先輩という人がいたわけだ。
ゲーマー担当だったナガホリ先輩は大学進学の準備をしながらも、プログラムの知識も深く、あわよくばそのままゲーム業界に就職しようと、たくらんでいたのだ。
その流れで、何人か業界人とも接触したそうだが、そこでなぜかもらってきたのが、「若い力」のカセットテープ(!)。
これが、部室で大ウケにウケた。
さもあろう。まだネットなどギリない時代。こういうレアなアイテムは手に入らないどころか、存在自体知りようもない時代だ。
今のような、検索でポンという天国でないころ、こんな「業界っぽい」ものが見られるとなると、興味津々である。
で、聴いてみると、これが予想以上にいい味である。
聴いてみましょう(→こちら)
「世界の創造、命に代える」
という歌詞に、ゲーム業界らしいブラックなノリを見、
「人社一体、みなぎる闘志」
に社畜風味を感じる。実にそれっぽい。
これ以降、われわれはカラオケに行くと、かならずこの「若い力」を全員で合唱するのが決まりになった。
当時は機械に入ってないから、仕方なくアカペラだが、それがまた「愛社精神」(!)を高める感じで心地よい。
周囲からすれば、セガの社員でもないのに、なんでそんなもん歌っているのか謎だったろうが、
「こんな変なもん持ってくるナガホリ先輩の、イカれた人生を超リスペクト!」
という意思の表明であり、つまりはこの後も、われわれに死ぬまでつきまとうであろう「酔狂」という心意気への、賛歌の証なのである。