映画『チェイス!』を観る。
名作『きっと、うまくいく』で有名な大スター、アミール・カーンを主演に据えたインド製アクション大作。
シカゴのアコギな銀行に、家業のサーカス団をつぶされたどころか、そのせいで目の前で父親が自殺するという悲劇に直面するサーヒル少年。
時は流れ、大人になったサーヒルはインド大サーカスを率いるスターに成長するが、その裏では復讐のため、自分たちをどん底に追いやった銀行に忍びこみ、金庫破りに血道をあげる。
犯人に翻弄されるシカゴ警察は、現場に残された恣意行為的な証拠から、インド系の犯行と推測。
ムンバイからジャイ刑事とアリー刑事に応援を頼むが、大胆不敵なサーヒルは自ら彼らの前にあらわれて……。
開幕からここまでテンポよく進み、インド映画らしいノリの良い娯楽作な雰囲気が芬々。
その間、アミール・カーンの大アクションや、ヒロインの華麗で激しいダンスあり、ジャイとアリーのゆかいな掛け合い(この映画の原題は『DHOOM3』で、この実はこの2人が主役のシリーズ第3作だそう)ありで、大いに期待が高まる。
ストーリーとしては、プロのマジシャンで、アクロバットの達人であるサーヒルと、いかにもデコボココンビな刑事とのかけ引きや、サーヒルたちの「家族の絆」などが主な流れになるわけだが、やはり楽しいのはダンスとアクション。
特にバイクを使ったカーチェイスは迫力満点なうえに、そのギミックが少年マンガ的なバカ発想(超ほめ言葉です)で大爆笑しながらもアツい!
ピンチになると「ガチャ、ギー、ガチャ!」って変形しますねんで! これで燃えなきゃ、男の子やない!
いやー、マジでどこの国の宇宙刑事やねん、と。
スローモーション多用の演出も、そのあか抜けなさが、かえって味ともいえる。特撮魂やねえ。
インド映画といえばのダンスも、もちろんのこと健在。
オープニングタイトルのナンバーはタップ好きな私には応えられないし、オーディションシーンのカトリーナ・カイフによる大ダンスも妖艶ですばらしい。
インド美人はいいなあ。
あと、「人間消失」のトリックをテーマにした作品としては、ネタ的にモロ、クリストファー・ノーランの『プレステージ』と被るんだけど、そのトリックに対する接し方の違いを、くらべるのもおもしろい。
「ノックスの十戒」を持ち出すまでもなく、もう、
「このトリックにこの仕掛けを、なんのてらいもなく出してOK」
という時代なんですね。
むしろそれに対して演者が「どう対峙するか」がテーマになってくる。「アンフェア」とか、もう野暮なんだな、きっと。
『プレステージ』は『空手バカ一代』。『チェイス!』はたぶん、われわれにも共感できる、もうちょっと浪花節なテイスト。
全体的に見て面白い作品で、おススメなんですが、ひとつ気になったのが、最初に出てくる女刑事が全然活躍しないこと。
わりと大事な役どころのように見えて、途中いないも同然だし、アリー刑事のツッコミ役にもなってなくて、どういうことだったんでしょう。
うーん、最初は目立つ役だったけど、アミール・カーンともめて、途中から干されたのかな(笑)。