読書日和

お気に入りの小説やマンガをご紹介。
好きな小説は青春もの。
日々のできごとやフォトギャラリーなどもお届けします。

「ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~」三上延

2012-04-18 22:59:19 | 小説
今回ご紹介するのは「ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~」(著:三上延)です。

-----内容-----
鎌倉の片隅でひっそりと営業をしている古本屋「ビブリア古書堂」。
そこの店主は古本屋のイメージに合わない若くきれいな女性だ。
残念なのは、初対面の人間とは口もきけない人見知り。
接客業を営む者として心配になる女性だった。
だが、古書の知識は並大抵ではない。
人に対してと真逆に、本には人一倍の情熱を燃やす彼女のもとには、いわくつきの古書が持ち込まれることも。
彼女は古書にまつわる謎と秘密を、まるで見てきたかのように解き明かしていく。
これは”古書と秘密”の物語。

-----感想-----
というわけで、前回の「舟を編む」から勢いに乗ってもう一冊読んでみました。
今回ご紹介する「ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~」は2012年本屋大賞ノミネート作品でもあります
そしてこの作品は文庫書き下ろし作品なのですが、文庫本が本屋大賞にノミネートされるのはかなり珍しいようです。
それだけ作品が面白いということでしょうし、期待しながら読んでいきました^^

ビブリア古書堂の事件手帖の舞台は鎌倉です。
鎌倉といえば「古都・鎌倉」という言葉が示すように、和の雰囲気の落ち着いた街というイメージがあると思います。
私も紫陽花の季節に何度か鎌倉を訪れていてフォトギャラリーも作っているので、ご覧になる方はこちらをどうぞ。

この作品によれば、ビブリア古書堂があるのは北鎌倉駅を降りてすぐの場所のようです。
紫陽花を見に行った時にこの駅で降りたことがあるので何となくイメージがつきます。
そこでひっそりと営業しているこの古本屋、店主は篠川栞子(しのかわしおりこ)という人なのですが、なんとこの人、足を骨折して病院に入院しています。
そんなとき、ひょんなことからこの「ビブリア古書堂」で働くことになったのが五浦大輔という男で、物語はこの二人を中心に進んでいきます。
「ビブリア古書堂」では大輔と栞の妹の文香(あやか)が店番をし、お客さんから古本の買取を頼まれた時は大輔が本を病院にいる栞子のところに持っていき査定してもらいます。
だいたいそんな感じで普段の業務は進んでいきます。

副題にある「~栞子さんと奇妙な客人たち~」が示すように、店に来るお客さん達は、何かの古本にまつわる謎を持ってくるといったことがよくあります。
その謎を解明していくのが、古書に対して並外れた知識を持つ栞子というわけです
大輔が助手で、栞子が名探偵といった感じのコンビです。
栞子はかなりの人見知りではありますが、しかし本のこととなれば人見知りはどこへやら、力強く生き生きとした言葉で古本にまつわる謎を解いていきます
病院に入院しているのに、大輔から話を聞いただけでまるでその場にいるかのように推理できるのは凄いなと思いました。
ものすごい洞察力です。

序盤で「せどり屋」という言葉が出てきたのはちょっと嬉しかったです。
「せどり屋」とは、古本屋で売っている本の中から価値のありそうなものを買い、その分野を専門で扱う別の古本屋に売って利益を得る人のことで、かつて三浦しをんさんの「月魚」という小説にも登場しました。
※「月魚」のレビューをご覧になる方はこちらをどうぞ。
たしかにこの作品は「古書」を巡る物語なので「せどり屋」が出てきても不思議はないんですよね。
ちなみに栞子は「せどり」の名前の由来について、以下のように言っていました。

背表紙を見て棚から本を取るので『背取り』と呼ばれている

なるほどなと思いました。
「月魚」のときは名前の由来までは触れていなかったので、今回それが分かって良かったです。

物語の終盤、なぜ栞子が足を骨折したのかが明らかになり、一気に緊張感のあるミステリーになっていきました。
実は単に階段から足を滑らせたわけではなかったのです。
栞子が持つ極めて高価な古書を狙う輩の影がちらつき、終盤はその犯人との対決でスリリングな物語が展開されていきました。
このあたりのミステリータッチなところは読んでいてドキドキするので面白いです^^
あまりにも希少価値の高い古書は時として人を狂気にしてしまうんだなと思いました。
続編も出ているようなので、機会があればそちらも読んでみたいと思います


※図書レビュー館を見る方はこちらをどうぞ。

※図書ランキングはこちらをどうぞ。