読書日和

お気に入りの小説やマンガをご紹介。
好きな小説は青春もの。
日々のできごとやフォトギャラリーなどもお届けします。

「PK」伊坂幸太郎

2014-08-09 17:41:36 | 小説
今回ご紹介するのは「PK」(著:伊坂幸太郎)です。

-----内容-----
その決断が未来を変える。
連鎖して、三つの世界を変動させる。
こだわりとたくらみに満ちた三中篇を貫く、伊坂幸太郎が見ている未来とは-。
未来三部作。

-----感想-----
この作品は以下の三編で構成されていました。

PK
超人
密使

三つの作品には少しずつつながりがあって、伊坂幸太郎さんらしい「リンク」がちりばめられていました。
「PK」に出てきたある話の内容がリンクになっていて、次の「超人」でその話の内容どおりの超人的な能力を持つ人物が出てきたりします。
さらに「超人」と「密使」にも共通するものがあって、中編三部作になっていますがこの三つで一つの作品世界になっているような気がします。
何か巨大な力によって物事が動くことについて、「そういうふうになっている」という言葉が出てきたのを見て、私は「モダンタイムス」が思い浮かびました。
得体の知れない巨大な力が動いているという共通点があります。

「PK」ではサッカーのワールドカップ予選の最終戦で、小津という選手がなぜPKを決めることができたかについてを中心に話が展開されていきました。
なぜか国会議員でしかも大臣を務める人がこの件について調べていました。
この国会議員はかつて議員に当選したばかりの頃、ベランダから転落してきた子供をキャッチして助けたことがあって、これがかなりの伏線になっていました。
続く「超人」に生かされてきます。

「超人」は、殺人を犯す人物が事前に分かるという特殊な力があるため、その殺人を犯す人物を事前に殺している本田毬夫という人物の話。
殺人事件が起きるのを防ぐために殺人をしているというわけです。
実はこの「殺人を犯す人物のことが事前に分かるため、それを防ぐために事前にその人物を殺す」というのは、「PK」からの伏線になっていました。
何気ない会話の中で出てきたのを伏線にしている辺り、さすがに上手いなと思いました。
しかも伏線は二重にあって、本田毬夫という人物の正体にも驚かされました。

「密使」は、未来を変えようという物語です。
今のままではやがて抗生物質も効かない致死性の毒を持つウイルスが蔓延し、世界が大変なことになってしまうため、どうにかしてその未来を変えなくてはなりません。
青木豊計測技師長なる人物の話によると、最初はほんの少しの変化から、ドミノが倒れていくように未来を変えるのが理想とのことです。
タイムパラドックスやパラレルワールドの概念が出てきて、なかなか複雑な話になっていました。

この物語で重要な役割を担うのが三上という人物。
三上には握手をした相手の時間を盗むという特殊能力があります。
本人は「時間スリ」と言っていました。
一人の人間から盗める時間は6秒で、盗まれた人は23時59分の日付が変わる直前に時間が止まり、6秒だけ動かなくなります。
この時間を止める力が、未来を変える上で大きな意味を持ってきます。
さらに、未来を変えるために「密使」を送り込むことになったのですが、それがなんと「ゴキブリ」でした。
何とも突拍子のない密使だなと思ったのですが、実はこれも伏線になっていて、他の話でゴキブリのエピソードがありました。
あのできごとが後々世界の運命を変えることになるのかと、そのできごと自体は大したことではないのですが妙に感慨深くなりました。
本当にこの作品は伏線が巧みに張り巡らされているなと思います
楽しく読ませてもらいました


※図書レビュー館を見る方はこちらをどうぞ。

※図書ランキングはこちらをどうぞ。