読書日和

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「三匹のおっさん ふたたび」有川浩

2014-08-12 23:46:53 | 小説
今回ご紹介するのは「三匹のおっさん ふたたび」(著:有川浩)です。

-----内容-----
剣道の達人・キヨ、柔道の達人・シゲ、機械をいじらせたら右に出る者なしのノリ。
「還暦ぐらいでジジイの箱に蹴り込まれてたまるか!」と、ご近所の悪を斬るあの三人が帰ってきた!
書店万引き、不法投棄、お祭りの資金繰りなど、日本中に転がっている、身近だからこそ厄介な問題に、今回も三匹が立ち上がります。
ノリのお見合い話や、息子世代の活躍、キヨの孫・祐希とノリの娘・早苗の初々しいラブ要素も見逃せません。
漫画家・須藤真澄さんとの最強タッグももちろん健在。
カバーからおまけカットまでお楽しみ満載の一冊です。

-----感想-----
「三匹のおっさん」の続編となります。
あの三匹の活躍をまた見られるのは嬉しいです

三匹とは、剣道の達人で元サラリーマンの清田清一(きよかず)、柔道の達人で居酒屋「酔いどれ鯨」の元亭主・立花重雄、工場経営者で機械をいじらせたら無敵の頭脳派・有村則夫の還暦三人組です。
それぞれ愛称はキヨ、シゲ、ノリ。
今作でも三匹が町内の夜回りを行い、ご近所の悪を斬ります。
また今作では三匹の周辺の人物へもスポットが当てられています。
物語は第一話から第六話までと、ボーナストラックの短編一つで構成されています。

清田清一の家は一階が清一と芳江、二階が健児と貴子、祐希の二世帯住宅
第一話は貴子の話でした。
貴子は「永田精肉店」という肉屋でパートを始めていました。
しかし世間知らずの上品な奥様が気まぐれで始めたパートという扱いで、職場では疎まれてすっかり浮いていました。
ちなみにこの話では、冒頭の清一と祐希の掛けあいが面白かったです。
前作の序盤では全然仲良くなかったこの二人が物語が進むにつれて会話をするようになり、今作では最初から良い感じの祖父と孫になっていました。


第二話は「ブックスいわき」という書店での万引きの話。
重雄は月の初めに「将棋界」という雑誌を買っていて、「ブックスいわき」を利用しています。
店主の井脇から万引きされたコミックがそのまま即古本屋で売られている話が出てきた時、私は「ビブリア古書堂の事件手帖2  ~栞子さんと謎めく日常~」が思い浮かびました。
新品のコミックにはスリップと呼ばれる短冊がページを跨ぐ形で挟まっているのですが、それが挟まったままなのはその本が読まれていないことを意味していて、これはビブリアにも出てきました。
普通はコミックを読む時にスリップを取るので、スリップが挟まったまま古本屋にコミックが持ち込まれる場合、万引きしたものをそのまま持ってきた可能性が高いとのことです。

「ブックスいわき」では万引きが頻発して、重雄がお店の見張りをやることを買って出て、清一と則夫にも声をかけ、三匹で見張りを行います。
井脇からの話で「万引き犯を追いかけて、逃げた相手が車道に飛び出して事故に遭ったりすると、こっちが悪いってことになってしまう」と言っていて、とてもおかしな話だと思いました。
これは神奈川県川崎市で実際にあった事件のことを指していると思います。
万引きという”犯罪”を犯し、さらには”逃亡”するから追い掛けたのに、犯人が車にはねられて死んだりしたらなぜか書店が「人殺し」と責められるという、実におかしな話です。
犯罪を犯しさらには逃亡するほうが全面的に悪いのだということを指摘しておきます。

コミックを一冊売って得られる利益はわずか88円。一冊万引きされたら、その損害を埋めるためには同じ本を五冊売らなくてはならない。

これはとても印象的な言葉でした。
一冊万引きされてしまうと、お店は400円以上の損害を負うことになります。
悪質な万引き犯は一度に何十冊も万引きしていくので、そんなことを毎回やられていたらお店が潰れてしまうだろうと思います。


第三話は則夫の再婚の話。
則夫は奥さんを亡くしていて、娘の早苗と二人で暮らしています。
そんな則夫に山野満佐子(まさこ)さんという人との再婚話が持ち上がります。
満佐子はかつて則夫が賊を退治して助けてくれたことがあって、その時の印象が強く残っていて、何とかもう一度会ってお礼を言いたいと思っていました。
満佐子は則夫のことが好きで、則夫も少し気になっていて、再婚もあり得なくはない雰囲気になっていました。
しかし満佐子の存在が、早苗を嫌な気持ちにさせてしまいます。
珍しく祐希に八つ当たりしたりもして、突然現れた母になるかも知れない人にだいぶ動揺していました。


第四話は清一の話。
嘱託で勤めている「エレクトリック・ゾーン」というアミューズメントパークの敷地内で喫煙をしている中学生グループを見かけ、注意をしました。
すると「関係ねーだろ、ジジイ」といきがったことを言っていました。
いきがりたいのでしょうが、敬語も使えないのは情けないなと思いました。

この話では
「どけよババア」と道で押しのけられて「あらまぁ、生き急いじゃって」と言い返すバーサンは自分の妻以外お目にかかったことがない。
と清一が胸中で言っていたのがウケました(笑)
妻の芳江はやられたらやられっぱなしでは終わらず、生きずりにあてこすられてもすかさず皮肉の一つや二つは投げ返すほどとのことで、清一も芳江には押され気味です

それと祐希が「電車でせっかく席を譲ったのに断られるとけっこう気まずい」と言っていて、これはよく分かりました。
私自身はまだ断られたことはないのですが、断られて所在なげにしていた人を見たことがあります。

そして芳江が「向けられる厚意は素直に頂戴しておくのが愛される年寄りの秘訣」と言っていて、なるほどと思いました。
清一は席を譲られて年寄り扱いされたくないという思いがありましたが、譲ってもらった席には素直に座ってもらえると、譲ったほうとしても気まずくならずに済みます。


第五話は、地域のお祭りの話。
久しぶりに皐(さつき)神社の豊穣祭をやることになりました。
しかしお祭りをするには前回のお祭りで破損していた御神輿の修復費、さらにはお祭りの運営費も必要で、その資金を集めるのがすごく大変でした。
地域の家一軒一軒に「一口2000円」でお祭りの協力をお願いしていくのですが、なかなか思うようにはいきません。
特に町内会長が
「信仰の自由の侵害だ」
という理由でお祭りへの協力を突っぱねたのが印象的でした。
すごいモンスター町内会長だと思いました


第六話は「偽三匹」の話。
三匹のパクリのような三人組も夜回りを始め、何かとトラブルを巻き起こします。
偽三匹の夜回りは強引すぎて相手の反発を買っていました。
予備校帰りの祐希にも最初から怪しい人物と決めつけて高圧的な態度で食ってかかっていて、祐希を激怒させていました。
やがて偽三匹がまずいトラブルを起こしてしまうのですが、そこは元祖三匹の出番。
清一、重雄、則夫の三人の力を見せつけてくれました。


だいぶ前から気になっていたこの作品、今回ついに読むことができて良かったです。
三匹が時代劇的に町内の悪を斬るこのシリーズ、やはり期待どおりの面白さでした


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