今回ご紹介するのは「県庁おもてなし課」(著:有川浩)です。
-----内容-----
とある県庁に生まれた新部署「おもてなし課」。
若手職員の掛水史貴は、地方振興企画の手始めに地元出身の人気作家・吉門に観光特使を依頼する。
が、吉門からは矢継ぎ早に駄目出しの嵐―
どうすれば「お役所仕事」から抜け出して、地元に観光客を呼べるんだ!?
悩みながらもふるさとに元気を取り戻すべく奮闘する掛水とおもてなし課の、苦しくも輝かしい日々が始まった。
地方と恋をカラフルに描く観光エンタテインメント。
-----感想-----
この小説の舞台は高知県です。
高知県は「観光立県」を目指しています。
県外観光客を文字通り「おもてなし」する心で県の観光を盛り立てようということで、高知県庁観光部に「おもてなし課」が発足。
主人公の掛水史貴が入庁3年目、25歳の時でした。
おもてなし課には課長の下元邦宏40歳、掛水の2年先輩に当たる近森などがいます。
序盤から土佐弁での会話が面白かったです。
「いや、そこまでは……自治体によるがやないですか?」
「割引きらぁてケチなことしたらバカにされますろう。ここは太っ腹に無料で行かなぁ」
「それもそうやにゃあ、じゃあ観光施設はどこにするで」
こんな感じで、「○○ろう」や「○○にゃあ」など、豪快さとほのぼのさが合わさったような方言が特徴的で楽しかったです。
掛水たち「おもてなし課」の面々は「観光特使制度」を始動させ、県出身の著名人達に特使になってもらい、高知県の観光名所の無料クーポン券付きの「特使名刺」を配布してもらおうとするのですが…
そのうちの一人、関東在住の県出身作家、吉門喬介(きょうすけ)にいきなりダメ出しされてしまいます。
そのダメ出しとは「特使制度の実効について」でした。
このやり方ではほとんど効果がないのでは?と疑問をぶつけられていました。
その後も吉門からはたびたびダメ出しの電話が掛かってきて、掛水はそのたびに竦み上がっていました。
『高知の男はこの「男らしくない」というワードに弱い』というのは、何となく納得しました。
坂本龍馬のふるさとでもありますしね。
吉門がダメ出ししていた中で言っていた「民間感覚」とは何か、みんなで考えるが分かりません。
やがて一年が経ち、吉門が予告していた時期になると、特使の人達からおもてなし課に苦情の電話が殺到。
吉門が指摘していた民間感覚のなさが招いたものでした。
掛水は藁にもすがる思いで吉門にアドバイスを求めます。
すると「課に一人、外部の人間をスタッフとして入れろ。公務員じゃないのが絶対条件」とアドバイスをしてくれます。
そしてもう一つ、「パンダ誘致論を調べてみたら?古い職員を当たれば出てくるはずだ」と意味深なアドバイスもしてくれました。
やがて明神多紀というアルバイトの子の調査により、かつてパンダ誘致論を唱えていたのは清遠和政という人だということが分かります。
清遠和政は画期的なアイデアを次々と出す県庁では異端の存在で、それがお役所的な仕事を好む県庁では煙たがられ、閑職に追いやられて既に県庁を辞めていました。
また、多紀は清遠和政の現在の消息まで調べてくれていました。
掛水は多紀をおもてなし課のスタッフとして採用することを考え、了承されました。
吉門の言っていた条件にピッタリ合う子でした。
多紀は掛水の3つ年下の23歳とのことでした。
清遠和政には佐和という娘がいます。
佐和は25歳、和政は55歳です。
掛水と多紀は清遠のところに行くのですが、佐和がすごい剣幕で立ちはだかります。
佐和にとって県庁とは、父を迫害し、家族をばらばらにした憎むべき敵でした。
県庁を辞めた後に清遠は妻とも離婚し、進学で東京に行っていた佐和の兄もそれと関連する事情により高知には帰ってこなくなりました。
また、佐和は吉門喬介について何か知っているようでした。
ちなみに清遠について「いかにも高知の男、いごっそう」と描写があったのですが、いごっそうとはどういう意味か調べてみたら、
いごっそうとは、「快男児」「酒豪」「頑固で気骨のある男」などを意味する土佐弁。ならびに高知県男性の県民性。
とのことでした。
また、かつて清遠が唱えた「パンダ誘致論」は興味深かったです。
高知県にはカツオ人間がいますが、パンダとカツオ人間なら、全てにおいてパンダのほうが上回っているのではと思いました。
ただカツオ人間もなかなか見所のあるキャラです。
参考 カツオ人間
「多紀はおもてなし課が唯一持っている「民間」の視点。これを徹底活用しない手はない」と掛水は考えています。
そして、県は変わることができるのか。
苦労してついに掛水と多紀は清遠和政本人に接触。
清遠は民宿「きよとお」を経営しつつ、観光コンサルタントの仕事もしています。
そしておもてなし課に、県の観光に、力を貸してもらえることになりました。
掛水と多紀が仁淀川の堤防でアイスクリンを食べていたのですが、これは今まで食べたことがなかったかも知れません。
シャーベットとアイスクリームを足して2で割ったような冷菓とのことです。
そして清遠がおもてなし課にやってきます。
おもてなし課から観光コンサルタントの依頼を引き受けた清遠は「県の観光をプロデュース」ということで持ってきた案を出していきます。
まず、高知県についてみんなで意見を出し合っていくと、
高知には自然が多い。そして自然しかない。
ということが見えてきます。
海、山、川、仰げば自然を見下ろす空と、何でもあります。
高知は「自然を剥がしたら価値がなくなる土地」、ならばその自然を最大限生かすのがベストと清遠は説きます。
そしてキーワードとして出てきたのが
「アウトドアスポーツ&ネイチャーツアー」
「グリーンツーリズム」
さらにもうひとつ、
「高知県まるごとレジャーランド化」
余計な開発は入れず、素の自然環境と元からある設備を利用して県全体をアウトドア関係のレジャーランドにしてしまおうという発想です。
高知県の自然にはそれだけのものが揃っているということです。
そして今まではそれに気付かず、観光資源として上手く活用できていませんでした。
この「高知県まるごとレジャーランド化」を目標におもてなし課は動いていくことになります。
高知県の定番観光コースの話題になった時、「はりまや橋は日本三大がっかり名所の一つ」とありました。
たしかに、ずいぶんと小さな橋ですしね
残りの二つは何だろうと思って調べてみたら「札幌の時計台」と「長崎のオランダ坂」とのことです。
高知の食べ物の話では、高知は何でも寿司にするのが好きとあり、これは興味深かったです。
タケノコやこんにゃくも寿司にするとありました。
また、高知の寿司は寿司飯にゆず酢を使って白ごまなどの薬味を忍ばせているところが独特とあり、地域色の出た珍しい寿司になっているのだなと思いました
「日曜市」も面白かったです。
県庁から徒歩数分、毎週日曜日に高知城下の大通りである追手筋(おうてすじ)を二車線閉鎖して開かれる露店の市場で、300年の歴史を持つ南国風の大きな市です。
そこで「イモ天」というのが出てきました。
これはおかずとしての天ぷらではなく、衣が揚げパンのようにふかふかしていて甘い、お菓子のような食べ物とのことです。
また、「天ぷら」もゴボウや野菜を練り込んだ魚のすり身を素揚げしたものを指していました。
高知で天ぷらというと、状況によって一般的な天ぷらとすり身の天ぷら、どちらを指すか変わり、イモ天も状況によってお菓子タイプ、おかずタイプどちらを指すか変わるとのことで興味深かったです。
日曜市にはそういった面白い食べ物を始め、農産物、海産物、衣料品、日用品、植木や花、雑貨、菓子、軽食、手作り小物、鍬やチェーンソーなど、何でもあります。
この独特な雰囲気の市をもっと売り出すべきだと掛水は考えます。
また、日曜市が立たないのは年明け2日までとよさこい祭り中の日曜日だけともありました。
そのよさこい祭りの踊りのフレーズで「高知の城下へ来てみいや~」という有名なのがあります(以下の動画の2:40頃を参照)。
参考 ’ひとひら’2012年
そこでこの高知の城下とはどんなものかと、まず高知城の画像を探してみると、以下のをはじめ多数ありました。
なかなか貫禄と風情があって良いですね
この城下町に日曜市が開かれている追手筋もあるようです。
「高知の城下へ来てみいや~」の後は「じんばもばんばもよう踊る~鳴子両手によう踊る~」と続きますし、よく踊る明るい県民性なのでしょうかね
四万十川と仁淀川の話が出てきて、仁淀川は「日本最後の清流」の四万十川に比肩するクラスの川とありました。
仁淀川は以下の写真の川です。
これは素晴らしい景色だと思います。
たしかに高知県の自然は観光資源として凄い可能性を持っていると思いました。
「佃煮のゴリ」というのも出てきました。
これもどんな佃煮なのか知らず、調べてみたらゴリとは小さな淡水魚のようでした。
四万十川の川漁師さんが捕まえた天然ゴリで作った佃煮はなかなか美味しいようです。
吾川スカイパークというパラグライダーの飛行場の話も興味深かったです。
ここは県の財政が厳しくてお金がないため、何と一般の利用客がインストラクターをやったり、山頂までの送迎の車を出したりしているとのことです。
せっかく良い観光スポットになり得るのに惜しいなと思いました。
ただ、「設備は作れるが地形は作れない」という言葉は印象的でした。
高知はその地形を持っているという点でやはり観光地としてかなりの力を秘めていると思いました。
馬路村(うまじむら)という県下有数のゆずの産地で、掛水は高知県の目指す観光のヒントをもらいました。
旅先でお仕着せのキレイなお膳が出てきてもつまらない、やはりその土地ならではのものを食べたいとか、少ないバスや電車に都合を合わせて動くことさえ旅の楽しみのうちだと思わせてこそ、不便なイナカに客が来るなど、目指すものが見えていたようでした。
高知は海・山・川・空、全部あるやん。あらゆる種類のイナカが選び放題やん。それ、きちんと自覚してプロデュースしたらすごい武器だよな。
中途半端に都会を意識するより、田舎であることを最大限生かしてプロデュースしていくということで、良いやり方だと思います。
開放感のある自然の中でゆったり過ごしたいと思っている人はかなりいるでしょうし、「高知県まるごとレジャーランド化」が上手くいけば、高知は全国に名を馳せる「観光立県」になれるのではと思いました。
この物語から何年か経った後の物語も読んでみたくなるような作品でした
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-----内容-----
とある県庁に生まれた新部署「おもてなし課」。
若手職員の掛水史貴は、地方振興企画の手始めに地元出身の人気作家・吉門に観光特使を依頼する。
が、吉門からは矢継ぎ早に駄目出しの嵐―
どうすれば「お役所仕事」から抜け出して、地元に観光客を呼べるんだ!?
悩みながらもふるさとに元気を取り戻すべく奮闘する掛水とおもてなし課の、苦しくも輝かしい日々が始まった。
地方と恋をカラフルに描く観光エンタテインメント。
-----感想-----
この小説の舞台は高知県です。
高知県は「観光立県」を目指しています。
県外観光客を文字通り「おもてなし」する心で県の観光を盛り立てようということで、高知県庁観光部に「おもてなし課」が発足。
主人公の掛水史貴が入庁3年目、25歳の時でした。
おもてなし課には課長の下元邦宏40歳、掛水の2年先輩に当たる近森などがいます。
序盤から土佐弁での会話が面白かったです。
「いや、そこまでは……自治体によるがやないですか?」
「割引きらぁてケチなことしたらバカにされますろう。ここは太っ腹に無料で行かなぁ」
「それもそうやにゃあ、じゃあ観光施設はどこにするで」
こんな感じで、「○○ろう」や「○○にゃあ」など、豪快さとほのぼのさが合わさったような方言が特徴的で楽しかったです。
掛水たち「おもてなし課」の面々は「観光特使制度」を始動させ、県出身の著名人達に特使になってもらい、高知県の観光名所の無料クーポン券付きの「特使名刺」を配布してもらおうとするのですが…
そのうちの一人、関東在住の県出身作家、吉門喬介(きょうすけ)にいきなりダメ出しされてしまいます。
そのダメ出しとは「特使制度の実効について」でした。
このやり方ではほとんど効果がないのでは?と疑問をぶつけられていました。
その後も吉門からはたびたびダメ出しの電話が掛かってきて、掛水はそのたびに竦み上がっていました。
『高知の男はこの「男らしくない」というワードに弱い』というのは、何となく納得しました。
坂本龍馬のふるさとでもありますしね。
吉門がダメ出ししていた中で言っていた「民間感覚」とは何か、みんなで考えるが分かりません。
やがて一年が経ち、吉門が予告していた時期になると、特使の人達からおもてなし課に苦情の電話が殺到。
吉門が指摘していた民間感覚のなさが招いたものでした。
掛水は藁にもすがる思いで吉門にアドバイスを求めます。
すると「課に一人、外部の人間をスタッフとして入れろ。公務員じゃないのが絶対条件」とアドバイスをしてくれます。
そしてもう一つ、「パンダ誘致論を調べてみたら?古い職員を当たれば出てくるはずだ」と意味深なアドバイスもしてくれました。
やがて明神多紀というアルバイトの子の調査により、かつてパンダ誘致論を唱えていたのは清遠和政という人だということが分かります。
清遠和政は画期的なアイデアを次々と出す県庁では異端の存在で、それがお役所的な仕事を好む県庁では煙たがられ、閑職に追いやられて既に県庁を辞めていました。
また、多紀は清遠和政の現在の消息まで調べてくれていました。
掛水は多紀をおもてなし課のスタッフとして採用することを考え、了承されました。
吉門の言っていた条件にピッタリ合う子でした。
多紀は掛水の3つ年下の23歳とのことでした。
清遠和政には佐和という娘がいます。
佐和は25歳、和政は55歳です。
掛水と多紀は清遠のところに行くのですが、佐和がすごい剣幕で立ちはだかります。
佐和にとって県庁とは、父を迫害し、家族をばらばらにした憎むべき敵でした。
県庁を辞めた後に清遠は妻とも離婚し、進学で東京に行っていた佐和の兄もそれと関連する事情により高知には帰ってこなくなりました。
また、佐和は吉門喬介について何か知っているようでした。
ちなみに清遠について「いかにも高知の男、いごっそう」と描写があったのですが、いごっそうとはどういう意味か調べてみたら、
いごっそうとは、「快男児」「酒豪」「頑固で気骨のある男」などを意味する土佐弁。ならびに高知県男性の県民性。
とのことでした。
また、かつて清遠が唱えた「パンダ誘致論」は興味深かったです。
高知県にはカツオ人間がいますが、パンダとカツオ人間なら、全てにおいてパンダのほうが上回っているのではと思いました。
ただカツオ人間もなかなか見所のあるキャラです。
参考 カツオ人間
「多紀はおもてなし課が唯一持っている「民間」の視点。これを徹底活用しない手はない」と掛水は考えています。
そして、県は変わることができるのか。
苦労してついに掛水と多紀は清遠和政本人に接触。
清遠は民宿「きよとお」を経営しつつ、観光コンサルタントの仕事もしています。
そしておもてなし課に、県の観光に、力を貸してもらえることになりました。
掛水と多紀が仁淀川の堤防でアイスクリンを食べていたのですが、これは今まで食べたことがなかったかも知れません。
シャーベットとアイスクリームを足して2で割ったような冷菓とのことです。
そして清遠がおもてなし課にやってきます。
おもてなし課から観光コンサルタントの依頼を引き受けた清遠は「県の観光をプロデュース」ということで持ってきた案を出していきます。
まず、高知県についてみんなで意見を出し合っていくと、
高知には自然が多い。そして自然しかない。
ということが見えてきます。
海、山、川、仰げば自然を見下ろす空と、何でもあります。
高知は「自然を剥がしたら価値がなくなる土地」、ならばその自然を最大限生かすのがベストと清遠は説きます。
そしてキーワードとして出てきたのが
「アウトドアスポーツ&ネイチャーツアー」
「グリーンツーリズム」
さらにもうひとつ、
「高知県まるごとレジャーランド化」
余計な開発は入れず、素の自然環境と元からある設備を利用して県全体をアウトドア関係のレジャーランドにしてしまおうという発想です。
高知県の自然にはそれだけのものが揃っているということです。
そして今まではそれに気付かず、観光資源として上手く活用できていませんでした。
この「高知県まるごとレジャーランド化」を目標におもてなし課は動いていくことになります。
高知県の定番観光コースの話題になった時、「はりまや橋は日本三大がっかり名所の一つ」とありました。
たしかに、ずいぶんと小さな橋ですしね
残りの二つは何だろうと思って調べてみたら「札幌の時計台」と「長崎のオランダ坂」とのことです。
高知の食べ物の話では、高知は何でも寿司にするのが好きとあり、これは興味深かったです。
タケノコやこんにゃくも寿司にするとありました。
また、高知の寿司は寿司飯にゆず酢を使って白ごまなどの薬味を忍ばせているところが独特とあり、地域色の出た珍しい寿司になっているのだなと思いました
「日曜市」も面白かったです。
県庁から徒歩数分、毎週日曜日に高知城下の大通りである追手筋(おうてすじ)を二車線閉鎖して開かれる露店の市場で、300年の歴史を持つ南国風の大きな市です。
そこで「イモ天」というのが出てきました。
これはおかずとしての天ぷらではなく、衣が揚げパンのようにふかふかしていて甘い、お菓子のような食べ物とのことです。
また、「天ぷら」もゴボウや野菜を練り込んだ魚のすり身を素揚げしたものを指していました。
高知で天ぷらというと、状況によって一般的な天ぷらとすり身の天ぷら、どちらを指すか変わり、イモ天も状況によってお菓子タイプ、おかずタイプどちらを指すか変わるとのことで興味深かったです。
日曜市にはそういった面白い食べ物を始め、農産物、海産物、衣料品、日用品、植木や花、雑貨、菓子、軽食、手作り小物、鍬やチェーンソーなど、何でもあります。
この独特な雰囲気の市をもっと売り出すべきだと掛水は考えます。
また、日曜市が立たないのは年明け2日までとよさこい祭り中の日曜日だけともありました。
そのよさこい祭りの踊りのフレーズで「高知の城下へ来てみいや~」という有名なのがあります(以下の動画の2:40頃を参照)。
参考 ’ひとひら’2012年
そこでこの高知の城下とはどんなものかと、まず高知城の画像を探してみると、以下のをはじめ多数ありました。
なかなか貫禄と風情があって良いですね
この城下町に日曜市が開かれている追手筋もあるようです。
「高知の城下へ来てみいや~」の後は「じんばもばんばもよう踊る~鳴子両手によう踊る~」と続きますし、よく踊る明るい県民性なのでしょうかね
四万十川と仁淀川の話が出てきて、仁淀川は「日本最後の清流」の四万十川に比肩するクラスの川とありました。
仁淀川は以下の写真の川です。
これは素晴らしい景色だと思います。
たしかに高知県の自然は観光資源として凄い可能性を持っていると思いました。
「佃煮のゴリ」というのも出てきました。
これもどんな佃煮なのか知らず、調べてみたらゴリとは小さな淡水魚のようでした。
四万十川の川漁師さんが捕まえた天然ゴリで作った佃煮はなかなか美味しいようです。
吾川スカイパークというパラグライダーの飛行場の話も興味深かったです。
ここは県の財政が厳しくてお金がないため、何と一般の利用客がインストラクターをやったり、山頂までの送迎の車を出したりしているとのことです。
せっかく良い観光スポットになり得るのに惜しいなと思いました。
ただ、「設備は作れるが地形は作れない」という言葉は印象的でした。
高知はその地形を持っているという点でやはり観光地としてかなりの力を秘めていると思いました。
馬路村(うまじむら)という県下有数のゆずの産地で、掛水は高知県の目指す観光のヒントをもらいました。
旅先でお仕着せのキレイなお膳が出てきてもつまらない、やはりその土地ならではのものを食べたいとか、少ないバスや電車に都合を合わせて動くことさえ旅の楽しみのうちだと思わせてこそ、不便なイナカに客が来るなど、目指すものが見えていたようでした。
高知は海・山・川・空、全部あるやん。あらゆる種類のイナカが選び放題やん。それ、きちんと自覚してプロデュースしたらすごい武器だよな。
中途半端に都会を意識するより、田舎であることを最大限生かしてプロデュースしていくということで、良いやり方だと思います。
開放感のある自然の中でゆったり過ごしたいと思っている人はかなりいるでしょうし、「高知県まるごとレジャーランド化」が上手くいけば、高知は全国に名を馳せる「観光立県」になれるのではと思いました。
この物語から何年か経った後の物語も読んでみたくなるような作品でした
※図書レビュー館を見る方はこちらをどうぞ。
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