なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

血液培養の結果

2020年03月22日 | Weblog

 外科(血管外科)で末期腎不全の55歳女性を診ていた。内シャント造設が間に合わず、内頚静脈から透析用カテーテルを挿入して透析導入された。

 先週高熱が続き、肺炎などは否定的で、血液培養1セットとカテーテル先端の培養からMRSAが検出された。カテーテル関連血流感染と判断されて、カテーテルが抜去された。その後は解熱して、炎症反応も改善してきた。発熱後にセフトリアキソンを開始して、カテーテル抜去後も続けていたが、解熱して炎症反応も軽減して中止にしていた。

 抜去しても透析は継続になるので、大腿静脈から透析用カテーテルが再挿入された。内シャント造設まではカテーテルを使うことになる。菌血症の状態で血管内にカテーテルが留置されるのはやむを得ない。

 血液培養から菌が検出されたので、AST(抗菌薬適正使用)会議で報告された。月1回来ている大学病院の感染症専門医の先生と相談した。

 血液培養は2セット採取が必要で、末梢血管から1セット+カテーテルから1セット、あるいは末梢血管から2セットになる。カテーテル先端は出さなくていいと言われたが、ここは賛否両論で出すのもありらしい。

 血液培養再検で菌陰性化を確認して、その後他の部位(心内膜炎・脊椎炎など)に感染巣を形成しなければ、14日以上の抗MRSA用抗菌薬投与なので、型通りにコメントを入れることにした(AST活動を証明するため電子カルテに記載=AST加算をとるため)。

 実際はそのままでも無事に経過するのかもしれない。カテーテル抜去で解熱軽快して終了となっていたりするが、それは患者さんが免疫力で頑張った結果になる。

 

 別の内科の先生が診ている93歳女性は、急性腎盂腎炎で入院して軽快治癒していた。退院を予定していたが、尿路感染症が再発した。尿培養でStaphylococcus hemolyticus(メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌MRCNS)が検出された。尿カテーテルが留置されているので、起炎菌かどうか解釈が難しい。

 ASTから血液培養採取を勧めて、血液培養2セットが提出された。結果は2セットから想定外のCandida albicansが検出された。尿培養でも出ていたが、これも解釈が難しい。すでにバンコマイシンと併用で抗真菌薬が開始されている。(中心静脈カテーテルは挿入されていない)

 この症例も相談したが、2セット出ていると無視はできないが、という。血液培養再検による菌陰性化確認とカンジダ眼内炎チェックのコメントを入れることになった。

 

 

 

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緊急透析のはずが

2020年03月21日 | Weblog

 昨日(春分の日)は日直で病院に出ていた。ここ1か月くらい、新型コロナウイルスの問題で発熱してもすぐには受診しないようになっているせいか、受診数は少なかった。

 腎臓内科外来(大学病院から)に通院している72歳男性が、当日からの呼吸困難で受診した。嘔気も続いていた。酸素飽和度が室内気で80%台なので、すぐに酸素吸入を開始した。血圧は170/100と高値だった。

 昨年9月に他の病院から末期腎不全で紹介されていた。糖尿病はないが、末期腎不全での紹介なので腎生検はしていないから、慢性腎炎なのか高血圧症による腎硬化症かはわからない。11月には入院して透析用の内シャント造設をしていて、次週の外来で透析導入日を決めることになっていた。

 胸部X線で心拡大・肺うっ血・水腫を認めた。腎不全の悪化(尿毒症)で心不全そのものか鑑別になるので、すぐに心電図をとった。3月9日に腎臓内科外来で行った心電図と比べたが、波形は同じだった。V5-6の軽度ST低下は以前からある。ST上昇はなかった。

 透析に来ている腎臓内科医(大学病院から)に連絡して、緊急で透析を開始してもらうことにした。救急室からストレチャーでそのまま透析室に運ばれた。

 その後に血液検査の結果が出て、BNP1483・トロポニン12657と高値を認めていた。CK692・CK-MB125・AST48・LDH335と確かに心原性酵素は高値だった。冠動脈疾患(急性心筋梗塞)が疑われて、心臓血管センターのある専門病院に救急搬送となった。

 透析の先生から搬送の連絡が来て、改めて心電図を確認したが、やはり異常を指摘できなかった。(胸部X線は左が3月20日、右が3月9日)

 

 腎臓内科の先生が当院循環器科の先生に電話で連絡して、救急搬送の指示とNPPVの指示が出た。V60でのNPPVが開始された。そのままでは救急車で継続できないので、結局ドクターカーで迎えに来てもらうことになった。

 腎臓内科の先生(バイト)は勤務時間が終わって帰ったので、ドクターカーで来た専門病院の若い先生には当方が申し送りをした。

 

 

 

 

 

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脳底動脈瘤、くも膜下出血

2020年03月20日 | Weblog

 こちらも同じ日(一昨日)に内科の若い先生に相談された77歳女性の症例。嘔吐・発熱で搬入されて、救急当番の外科医が肺炎として内科に入院依頼となった。

 意識障害が続き、翌日に頭部CTを行うと、椎骨脳底動脈が著明に拡張して、内腔が解離していた。解離性動脈瘤の一部が破裂して、右側頭葉から後頭葉にかけてくも膜下出血をきたしていた。

 もともと地域の基幹病院脳外科で椎骨脳底動脈瘤を指摘されていて、破裂した時は予後不良と言われていた。家族に説明すると、病状(さらに)悪化時はDNARの方針となった。おそらく意識障害はそのまま続き、末梢からの点滴で経過をみるだけになる。

 ここまで巨大な脳動脈瘤(それも椎骨脳底動脈で)は初めて見た。内科の若い先生は3月末で勤務を終えるので、その後は当方たちが引き受けることになる。1年間地域医療枠として勤務してもらったが、DNARの取り方が上手な?先生だった。

 

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脳出血

2020年03月19日 | Weblog

 昨日内科の若い先生に相談された。認知症で施設入所中の90歳男性が嘔吐後の発熱で、10日前に当院に救急搬入されていた。

 胸部X線・CTで粒状影が散布していた。もともと白血球数が1万くらいの方で、搬入時の白血球23300・CRP16.8と高値だったが、抗菌薬投与で白血球11500・CRP1.0と順調に改善していた。

 搬入時から呼びかけで開眼するくらいだったが、施設職員の話では「いつもくらいです」ということだった。肺炎改善後も意識レベル変わらず、食事摂取もできない。左右差・麻痺はない、というか判別しがたい。

 頭部CT検査を行ったところ、右頭頂葉に皮質下出血を認めた。これは救急搬入時からあった、さらには嘔吐した時からあったのではないか。

 脳委縮が目立ち、脳圧亢進・脳ヘルニアの心配はまずない。神経内科医に画像を見てもらったが、処置はなく経過をみるしかないという。(10年前に当院を受診した記録はあるが、その後は内科医院に通院していた。10年前の脳画像と比較して脳委縮が進行していて、水頭症かどうか気になるとも言われたが)

 施設職員の「いつもと違う」は有意な指摘として対応するが、「いつもと同じ」をそのまま受け取ってはいけないということになった。

 

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高齢者の結腸癌

2020年03月18日 | Weblog

 内科の若い先生(専攻医)が担当している尿路感染症の85歳男性は最近泥状便が続いていた。肺炎の有無や尿路系の状態を見るために行ったCTでS状結腸に腫瘤を認めた。

 抗菌薬投与で解熱した後に、造影CTを行った。S状結腸壁が全周性に不正に肥厚して、周囲のリンパ節腫脹もあり、S状結腸癌で間違いない。大腸内視鏡も通過できないので、消化器科に依頼して浣腸くらいの前処置で生検してもらうことした。

 外科でも診てもらったところ、切除もできそうという見込みだった。狭窄部位を通過した泥状便が少量出ている状態なので、最低でも人工肛門造設をしないと腸閉塞に陥る。

 クリニックから貧血精査で紹介された87歳男性は横行結腸に癌があった。近接する肝臓に直接浸潤が疑われる腫瘤像もあった。腫瘍浸潤そのものか、結腸癌の穿孔して膿瘍形成した可能性もあると解釈された。消化器科で大腸内視鏡検査が行われて、後は外科手術の検討になる。

 

 

 どちらの症例ももう少し若ければ治療内容も最善を尽くすことになるが、高齢でリスクがあると、それを考慮した選択になる。前者は経済的な問題も大きく、その点も考慮する必要があった。 

 

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絞扼性腸閉塞

2020年03月17日 | Weblog

 土曜日の日直の時に、腹痛の86歳男性が救急搬入された。

 10日前から心窩部の違和感があり、糖尿病で当院している診療所(地域の基幹病院のサテライト)でPPIの処方を受けた。その後も症状は続いていたそうだ。

 その日は午前5時から強い心窩部痛が続いていた。搬入されたのは午前10時半近いので、我慢していたがしきれなくなったのだろう。

 50年前に十二指腸潰瘍で胃切除術を受けて、2/3を切除したと答えた。年齢の割にはふだんは認知力・体力にまったく問題ない方だと思われた。それほど腹部は膨満していないが、搬入後に1回嘔吐した。

 術後の癒着性腸閉塞が疑われたので、頑張ってもらって立位で単純X線撮影をした。完璧ではないがニボーがあるようで、やはり腸閉塞だった。我慢強い方でかえって所見がとりにくいが、腸管虚血の程度をみるためと他疾患の可能性もあるので、腎機能を確認して造影CTを行うことにした。

 CT撮影中に若い放射線技師さんが、「何だこれは」と声を上げた。他と比べてあまり造影されない拡張した小腸が描出された。癒着性なのか内ヘルニアをきたしているのかわからなかったが、絞扼性腸閉塞だった。骨盤内に腹水貯留もあった。

 外科当番の先生に確認してもらったが、当院では麻酔科の関係で時間外の緊急手術ができなくなっている。緊急手術できる病院に搬送するしかなかった。外科の先生が地域の基幹病院に連絡すると、幸いに受け入れてもらえた。

 

 

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胆嚢管に嵌頓

2020年03月16日 | Weblog

 土曜日は内科日直で病院に出ていた。78歳男性が心窩部から右季肋部の痛みが続いて、救急外来を受診した。

 4日前の昼に刺身(マグロ・タコ・エビ)を食べて、その日の夕方に嘔吐して、腹痛が断続的に続いた。翌日には1回だけ下痢をした。一緒にきた妻も同じものを食べたが何ともないという。

 その後、嘔吐・下痢はなく、同部位の痛みだけが続いていた。常にある程度の痛みがあり、断続的に増強するという。前日の金曜日はかかりつけの医院で点滴を受けていた。

 腹部は肥満で膨満しているが、これはふだんと変わりない。確かに心窩部から右季肋部に圧痛があった。食事の影響ではなく、原因は別にあるようだ。部位からは胆石疑いになる。

 腹部エコーでは胆嚢は腫大しているが、緊満とはいえない。腹部CTで確認すると、胆嚢内の結石の他に、胆嚢管への移行部に結石があり、嵌頓している。

 発熱はないが、白血球10500・CRP5.0と炎症反応が軽度に上昇していた。肝機能は正常域で、総胆管の拡張はない。

 アセリオ1000㎎点滴静注でいったん腹痛は軽減したが、検査しているうちに、また強い腹痛を訴えた。当番の外科医が院内にいたので相談した。

 胆嚢管への結石の嵌頓で腹痛が続いているので、ドレナージをしないと腹痛は軽減できないと判断された。日当直のバイトで大学病院からきていた若い外科医といっしょにPTBGDを行った。週明けに手術するという。

 ちょうどPTGBDのできる先生がいてくれて助かった。 

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精神科病院に入院していた

2020年03月15日 | Weblog

 高血圧症・慢性心房細動で内科外来に通院していた87歳男性が、心不全で精神科病院から紹介されて循環器科に入院していた。

 昨年の12月の外来日に受診していなかったが、認知症の悪化で精神科病院に入院していたのだった。外来には家族といっしょに通院していたが、本人はもちろんだが、付き添いの家族からも認知症の症状で困っているという話はなかった。笑顔で体調の話をされるので、認知症とは認識していなかった。

 記憶力などを確認するような質問もするべきだったのだろう。ふだんから認知症の症状があったが、急激に介護困難な状況になっていたようだ。

 ちょっと遠方の精神科病院だが、当地の精神保健にかかわっていた。別の患者さんで徘徊・介護への抵抗で家族が困っている方がいて、その病院の先生から「困ったときはいつでも引き受けます」といわれたそうだ。(患者さんは行く気はまったくないが)

 外来ではダイアート30㎎・リクシアナ30㎎などを処方して、精神科病院でもほぼ同様の処方を継続していたが、心不全症状が悪化していた。入院時に両側胸水貯留・肺うっ血があったが、その後しだいに軽快している。

 喫煙の既往があり、ふだんの胸部X線では肺気腫を認めるが、心不全とはいえなかった。今回の心エコーでは、EF 72%と良好だが、TR Ⅲ°でTRPGが高く、肺性心はあったようだ。

 

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コロナウイルスに過敏な医療機関

2020年03月14日 | Weblog

 現時点で県内のコロナウイルス感染症の発生は、「クルーゼ船に乗っていて、コロナウイルスのPCR検査陰性で帰宅となり、県内に戻ってから発症した1例」だけになっている。


 各医療機関ではコロナウイルスに対して過敏になっており、保健所から当院に診察依頼があった症例はいずれも「コロナウイルス検査の適応はないが、他の医療機関で診療拒否されたので、診てほしい」というものだった。
 これまで4例が紹介された。1例は「出かけた先で中国人を見かけたかもしれない(単なる思い込み)」、2例は「東京から帰ってきてから発熱した」、1例は「長距離トラックの運転手なので東京に行くこともある」というものだった。これらの発言により、医療機関が診療拒否をしていた。
 このうち3例は単なる感冒で当院受診時には解熱軽快していた。1例(トラック運転手の若い男性)は急性化膿性扁桃炎で、普通にペニシリンで軽快した。
 
 コロナウイルスのPCR検査は「コロナウイルス感染者と明らかに濃厚接触している」患者さんで、保健所に連絡して許可をとらないとできない。(民間の検査会社も委託なので、保健所の許可が必要で、検体搬送もしない。)発熱のある患者さんに片っ端からやる検査ではないので、今のころはそれでいいのだろう。

 濃厚接触歴がなければ、単なる発熱・上気道症状だけでは検査の対象にならないので、胸部X線・CTでコロナウイルス感染症らしい肺炎像(両側肺に多発するすりガラス様陰影?)を証明しなければならない。


 保健所から「コロナウイルス感染症の患者さんと濃厚接触しているので、コロナウイルス感染症の疑いがあり、診察してPCR検体を提出してほしい」という依頼は今のところない。
 当院での検査は平日時間内としており、現時点では時間外の対応はしないことしている(担当はICD1名・ICN1名なので)クラスター感染が発生すればそうもいっていられないが。

 

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粘液水腫性昏睡・肺胞低換気

2020年03月13日 | Weblog

 2月半ばに自宅で動けなくなって救急搬入された85歳女性のその後。

 搬入時は意識障害・浮腫・低体温・低血圧・低ナトリウム血症を呈していた。当直の外科医(大学病院からバイト)が低体温そのものによる症状と思ったらしい。加温して明日まで点滴をしていきますと連絡が入った。

 その後に追加した甲状腺機能で著明な低下症を認めて、夜間にチラーヂンS50μgを内服させていた。朝早めに大学へ行ってしまうので、直接の申し送りはなかった(早朝の当直分は外科常勤医がカバー)。

 粘液水腫と心不全による浮腫があった。体温・血圧も上がってきて、少しずつ改善するかと思われた。食事も介助で食べ始めていた。ところが、入院して1週間目にCO2ナルコーシスになった。

 病棟でその前の日の夕食が食べなかったという報告を聞いて病室に見に行くと、呼吸が弱い。血液ガスをとると呼吸性アシドーシスを呈していた。みるみる呼吸が弱くなって、アンビュバッグでゆっくりと補助呼吸を開始したが、そのままほとんど呼吸停止になった。

 気管挿管・人工呼吸を開始するしかなかった。SIMV+PSで経過をみて、自発呼吸が見られたが弱かった。2週間経過して、続けるとすれば気管切開をするしかない。それでもがっかりするほど、わずかしか改善しない甲状腺機能がなんとか上がってきた(まだ低下症)。

 いきなり抜管では不安なので、NPPVに切り替えて経過をみることにした。フィリップスのV60を使用したが、これは使いやすい。内科専攻医の若い先生方は普通に使用しているが、当方はV60は初めてになる(BiPAPの世代)。

 心配になるほどうまくNPPVに乗っていた。自発呼吸が思ったよりあるので、日中は外して夜間に使用するなど、離脱を目指してやってみる。

 抗サイログロブリン抗体・抗TPO抗体陽性で橋本病だった。副腎不全ではなかった。

 腎性代償作用が働いていて、PaCO2が低下しても重炭酸イオンが高いので、慢性的なCO2上昇で経過していたはずだ。粘液水腫の影響はあるが、機序としては肥満低換気症候群なのだろうか。入院後ちょっとだけ良くなりかけてから悪化したのがわからない。

 

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