なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

CareNeTV GMカンファランス2019 横浜市立大学

2020年03月08日 | Weblog

CareNeTV

GMカンファランス2019
第2回 横浜市立大学からの3症例

症例4 眼の腫れ、のどの痛み、顔の腫れを訴える23歳女性

主訴:眼の腫れ、のどの痛み、顔の腫れ
現病歴:受診11日前、全身倦怠感、のどの痛み、微熱が出現。市販の風邪薬で様子を見ていたが、その後も微熱が持続した。
受診6日前、両目のむくみと頸部の腫れが出現。
受診4日前、内科を受診。血液生化学検査で異常なし。
受診2日前、皮膚科を受診。アレルギーの診断で抗ヒスタミン剤を処方された。同日の夜から38℃の発熱が出現。のどの痛みも悪化し、勤務先ERを受診。丹毒の診断で抗菌薬と解熱剤が処方された。
顔全体が腫れぼったくなったため、当科外来を受診した。
既往歴:ブドウ膜炎(原因不明)、花粉症、アトピー性皮膚炎
家族歴:一人暮らし、血縁に特記事項なし
アレルギー:特記事項なし
薬剤:アモキシシリン750mg分3、カロナール600mg分3、フェキソフェナジン(60)2錠分2
生活歴:職業看護師、未婚
身体所見:意識清明
血圧114/53、脈拍77/分整、呼吸数16/分、SpO2 98%、体温36.6℃
眼瞼浮腫(外側)、扁桃軽度腫大・白苔付着なし、口蓋に点状出血なし(Forchiheimer spotなし)
両側前頚部リンパ節、両側後頸部リンパ節を複数触知
呼吸音異常なし、心音異常なし
検査:WBC7100(好中球21.0%・リンパ球51.0%・異型リンパ球24%)、Hb12.7g/dl、MCV91、AST24、ALT16、LDH314
EB-VCA-IgG40倍EB-VCA-IgM10倍EBNA0.2(陰性)
抗核抗体160倍、C3 124mg/dl(65-135)、C4 30mg/dl(13-35)、抗SS-A抗体陰性、抗SS-B抗体陰性、IgG 1573mg/dl、IgE 1279mg/dl
顔面・頚部に皮疹→アミノペニシリンの副作用

診断:伝染性単核球症

単核球症症候群(mononucleosis syndrome)
・EBV以外のウイルス
HIV、CMV、HHV type6、ムンプス、風疹、インフルエンザ、肝炎ウイルス、アデノウイルスtype12、コクサッキーウイルス、ポリオウイルス、HTLV-1
・ウイルス以外の病原体
トキソプラズマ、百日咳、ねこひっかきびゅう(Bartonella hensae)
・薬剤性

Hoagland sign
・EBVによる伝染性単核球症の約30%にみられる
・成因の詳細は不明だが、涙腺炎症説、リンパうっ滞説など諸説あり
・比較的早期に消失する
 S状の上眼瞼腫脹「右眼では~の形」

Take Home Message
EBVによる伝染性単核球症では両眼瞼浮腫をきたす。(Hoagland sign
涙腺が腫脹する時は、上眼瞼縁がS字状を呈する
・後頸部リンパ節の腫脹は、咽頭・扁桃炎の鑑別に重要である。

会場から:若年者の腫れは、EBウイルス、SLE、ラーメン二郎の食べ過ぎ、を考える
生坂先生から:ラーメン二郎の場合は、朝腫れて、夕方には改善する

症例5 左下腹部痛を繰り返す58歳男性
主訴:下腹部痛
現病歴:3年半程前、床に座ってソファにもたれかかっているとき、急に臍左下2-3cmにナイフが突き刺された感じが出現、数秒で治まった。同様の痛みが1-2か月に1回繰り返すようになり、かかりつけのB内科に相談。腹部エコー、上部・下部消化管内視鏡検査を行ったが異常なし。
 2年前にA病院消化器内科を受診。腹部CT、下部消化管内視鏡、血液検査をおこなったが、原因不明。Cクリニックへ紹介。大腸憩室炎が疑われたが、腹痛出現時の腹部超音波でも異常所見なく、1年通院後、当科へ紹介となった。

症状分析
P:立ち上がる動作時に起こることが多い。食事とは無関係
Q:ナイフで刺された感じ
R:悪心なし。排尿との関係なし。ピンポイントの痛み。
S:仕事はできる。日常生活問題なし。
T:1-2か月に1回、1日に何度か起こることがある。

Key Wordをまとめると「体動時の片側性下腹部の発作性電撃痛」
体動時の筋骨格系の関与
片側性一側の「単」
発作性電撃痛神経痛
⇒腹壁神経の絞扼!

◆事前確率の高い疾患仮説形成が終了!
◆次は、身体診察で確認する(特異度の高い所見を得る)
・腹壁の痛みであることを証明する
→カーネット徴候
・神経の障害であることを証明する
→感覚障害の有無をチェック

腹壁の痛みを診る
Carnett sign(カーネット徴候)
陽性:自発痛の増強または圧痛の増強(変化なし)腹壁性または心因性の痛み
陰性:圧痛の減弱腹腔内臓器の痛み

Th11の高さ
・腹直筋外側にわずかに圧痛あり
・カーネット徴候陽性
・範囲は直径2-3cm
・同部に痛覚鈍麻あり

診断:前皮神経絞扼症候群(腹壁神経痛)
Anterior Cutaneous Nerve Entrapment syndrome:ACNES)
治療:局所麻酔薬+ステロイドに局注

Take Home Message
腹痛の原因として腹壁由来を忘れない
体動時の痛みでは、筋骨格系の関与を考える
発作性で持続時間が数秒の痛みは神経痛を考える
単神経障害では、絞扼性、血流障害、腫瘍を考える。

症例6 休日診療所から紹介された左上腹部痛を訴える50歳男性
主訴:左上腹部痛
現病歴:9月22日会社の仕事で出張。夜は同僚と飲食した。翌日、帰路の新幹線に乗っていたところ、突然左季肋部痛から臍左の痛みが出現した。痛みが持続するため、地元の湯実診療所を受診し、心電図・検尿を行ったが異常を認めなかった。ブチルスコポラミン(ブスコパン)を静注されたが改善がないため、当院救急外来を紹介受診となった。
既往歴:糖尿病(食事療法・運動療法のみ)
内服薬:なし
アレルギー:なし
身体所見:血圧144/98mmHg、脈拍90/分整、呼吸数18/分、SpO2 97%(室内気)、体温36.2℃
腹部は平坦・軟、左季肋部~臍左に自発痛あり。同部に軽度の圧痛あり反跳痛なし。超完全同音は減弱亢進なし。

症状分析
O発症様式:突然
P増悪・寛解因子:体動での悪化はなし
Q質:鈍痛(重い感じ)
R場所・関連症状:発症時に冷や汗を伴った。悪心・嘔吐なし。
S重症度:これまでの人生で一番痛い
T時間的特徴:ずっと同じように痛い。痛みに波はない。改善傾向なし。

まとめると、
「突然発症で体動で悪化しない片側の腹痛」

突然発症でもどんな病態か?
痛みがピークに達するまでの時間が
数秒以内なら「裂ける」「破れる」
数分以内なら「詰まる」「捻じれる」

突然発症
・血管障害
  秒単位→解離
  分単位→出血、梗塞、塞栓
・外傷
  (秒単位)破裂

「スポーツドリンクを飲んでいる時に痛くなりました」
「しばらく、あまりの痛みのためにスポーツドリンクを飲むことができませんでした」
⇒突然発症完成型でSevere

心電図:特記所見なし
検査結果:WBC 11500、Hb 14.9g/dl、Plt 28.9万
PT-INR1.10、APTT29.2秒、Dダイマー0.4μg/ml、AST24、ALT30、LDH243、ALP177、T.bil0.8、AMY68、BS107mg/dl、CK208、BUN12.5、Cr0.75、Na134、K4.2、Cl101、CRP0.02

腹部ダイナミックCT:
・Free airなし
・大動脈解離なし
・総胆管結石、尿路結石なし
・腎梗塞、脾梗塞なし
・イレウスの所見なし

・腹腔内臓器は髄節支配を受ける
・デルマトームの範囲のどこかに関連痛が生じる

突然発症の左Th8-10に限局
動かしても痛くないが、軽い圧痛がある。
痛みの分類は関連痛
対象臓器は小腸

診断:孤立性上腸間膜動脈解離

保存的加療で軽快し退院となった

Take Home Message
片側性の体動で悪化しない腹痛では関連痛を考える
関連痛はデルマトームで臓器を特定する
裂ける、破れるは秒単位の完成。発症直後の状態をたずねるべし

生坂先生から:圧痛の部位をつまんで痛かったら関連痛

 

 これを見たのがきっかけで(著書を検索した)、横浜市立大学の太田光泰先生の訳された「臨床でよく出会う痛みの診療アトラス」(医学書院)を購入した。これは面白い。この本に気づいたのが一番の収穫かも。

 「Atras of Common Pain Sydromes」の訳本で、同じ著者の「Atras of Uncommon Pain Sydromes」もあるのだった。こちら訳本では出ていない。(ACNESはUncommonの方に記載されている)

 

臨床でよく出合う痛みの診療アトラス

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