今現在はどういう位置づけなのか、正確には判りませんが、白ワインでは「シャブリ」というと辛口ワインの代名詞でした。
それが証拠に新大陸では「カリフォルニアシャブリ」などと言う辛口白ワインの呼び方がありました。本物とは似ても似つかない大量消費用です。
実際はブルゴーニュ地方の最北のヨンヌ県に位置する産地のシャルドネで造られた白ワインのみがそう呼ばれます。
もう一つ大事なことを付け加えるとキンメリジアンという牡蠣の化石を含む石灰土壌であることが条件になっています。
斜面角度によってプティシャブリ、シャブリ、シャブリ1級、シャブリ特級と段階付られ、味わいやアルコールのボリュームが規定されます。
しかし、前述の人気のお蔭で規定ギリギリの範囲で造られたものは他の地域のブルゴーニュに比べ酒質が褒められたものでなかった、と思われる節も私には感じられました。
しかし、競争相手も増え、新大陸でもその名が使われなくなった今、その質は上がっているようです。
シャルドネというとカリフォルニアやオーストラリアに代表される樽熟したボリューム感のある白、と思われている方も多いと思います。
しかしシャルドネの特徴は「特徴が無いこと」かも知れません。樽も似合うし、酸も似合う。果実味を押し出してもいいが、ミネラルの骨格が前に来てもよい。
てな感じです。
シャブリはその中で酸とミネラルが支えている産地、といって過言ではありません。
樽で寝かせる生産者もありますが、多くはステンレスタンクでの綺麗な醸造で、角は取れているものの豊富な酸がバックボーンになり、ミネラルが体格を構成しているのです。
昔(今でもそうですが)はキンキンに冷やして小さなグラスでサーブする店が多かったのですが、そむりえ亭で今月お出ししているシャブリ.プルミエクリュ.モンマンは2度デキャンタをしてグラスも大きなグラスでお出しすることが多くなりました。温度は10度から12度。場合によっては、やや小さめのグラスという事もあります。前後のワインや料理によっては、という条件付きです。
しかし、ミネラルの持つ芳醇さはデキャンタなしでは「硬さ」をほどくことが出来ませんし、細い小さなグラスでは量は多くても丸さを感じさせる酸を隠してしまいます。
少なくても1級(プルミエ.クリュ)以上のものは、価格に見合った芳醇さを得る為にはデキャンタや大き目のグラスの方が楽しめるのです。
合わせる料理はというと牡蠣と言うのが定番ですが、私はシンプルな鶏料理や鱸のようなしっかりした身質の魚、或いは帆立貝等のようにミネラルがあるが臭みの無い貝類に勧めたいと思います。
牡蠣はもし合わせるなら生より焼きが良い様に思います。
いずれにせよ、過去の歴史によって過小評価されがちなシャブリです。上手にその才能を引き出してあげたいと思います。