HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

業界紙も斜陽の時代か。

2010-11-08 19:05:10 | Weblog
 11月1日、ファッション業界紙の日本繊維新聞が事業を停止した。繊研新聞と並んで業界紙の双璧をなす新聞が休刊するのは残念でならない。
 同新聞との出会いはもう20数年前の大学時代になる。千駄ヶ谷のマンションメーカーでアルバイトをしていた時、社長が繊研と並んで読んでいたのが、同紙だった。最初は「へぇ~、こんな新聞があるんだ」と思いつつも、当時はそれほどファッションビジネスの奥行きまで関心がなかったので、トレンド情報や広告のキャッチコピーの方に興味があって、仕事の合間にペラペラめくる程度だった。
 ファッション業界で仕事を始めてからは、朝日新聞の販売店が一緒に届けてくれる繊研の方を読み始めたため、繊維新聞はずいぶんご無沙汰になった。ただ、一度だけ思いもかけないところで同紙と接点をもった。1988年11月、アパレルメーカーのライカが青山の根津美術館隣にNYのジャスクラブ「ブルーノート」の日本1号店を開業することで、そのレセプションパーティに呼ばれ、同紙の記者さんと本場のジャズ談義で盛り上がったのだ。
 「NYではブルーノートでジャズを聴くのはおのぼりさん」と言うと、「そりゃ、いかにもの常套句ですね」と突っ込んできた。その後は、ビレッジゲートやスウィートベイジルなんかのライブの話で盛り上がり、「ライカのメンズは、ヤートラファッションですね」と締め、楽しい一夜は終わった。実はその翌年の秋、出張でNYを訪れた際に実はブルーノートで「サラボーン」のライブを見たのだ。「おのぼりコース」と言った自分が主人公になったのだが、サラボーンは翌年死去したので、記念になった。
 
 活字離れと言われながら、I-Padで本や雑誌が読めるのは人気を集めるなど、情報入手の方法はどっちに向かっているのか。新聞は別に宅配してくれなくても、ネットで読めれば十分という読者が増えているのは確かだ。
 でも、業界紙になるとどうだろう。やはり、特別な情報をそれほど求める人間が少なくなったのかもしれない。情報は一般のものとの差がなくなり、そこまで深い情報は要らないと思うようになったのではないか。いよいよ業界紙も斜陽の時代に入ったようだ。それでも、業界紙は業界で仕事をする、したい人間は、必ず目を通して損はないと思う。
 とあるファッション業界雑誌がやはり購読者不足で、数年前に大胆なリニューアルを行なった。それはファッションジャーナル誌からマニュアル誌への大転換である。そっちの方がファッションビルやデベロッパー、専門学校に大量購入してもらえるからだろうが、何度も執筆してきた人間としては最近の誌面は何か物足りない。読者に媚びているような編集企画ばかりで、面白みや挑戦がなくなったのだ。
 まあ、ファッション業界の不況、デフレが影響して、繊維新聞社も某雑誌も主な収入である広告が減っているのだから、しょうがない面はある。メジャーな全国紙ならともかく、マニアックな業界紙は、読者も限られているから、広告のレスポンスが上がらなければ、出稿されなくなるのは当然だ。
 ちなみに日本繊維新聞の最高部数は12万4000部だったというから、マス広告出稿基準の10万部はクリアしていたことになる。

 でも、新聞は「ニュース」を提供する媒体だから、情報の速効性は雑誌とは比べ物にならない。パリコレの情報は新聞でチェックするに限る。その意味で何とかネットメディアに移行するなりして、復活してほしいものだ。
 パソコンやI-Phoneで読むことができるなら、ひと月の購読料も下げられるかもしれないし、全く新聞を読まない昨今のファッション専門学校生にも少し身近になると思う。そして、読者に媚を売らず、ファッションジャーナリズムとして独自の編集方針も貫いてほしいものである。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする