HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

コレクションが目的という本音。

2010-08-07 01:06:34 | Weblog
 そもそも、ファッション業界で言う「コレクション」とは何か。最近、その価値や目的があまりにも軽んじら
れてきたきらいがある。それは、神戸コレクションや東京ガールズコレクションといった「一般消費者」向けの
ファッションイベントが登場してきたことが原因だ。
 パリコレに代表されてきたコレクションとは、メゾンと言われる老舗ブランドがシーズンごとのトレンドや、
コンセプトを内外のバイヤーやファッション雑誌編集者に公開する(広報)ことで、世界中に情報発信を行い、
消費者の購買を促す(プロモーション)ものだ。90年代は巨大コングロマリットがその資本力にものを言わせ、
メガブランド、メガショー、メガ広告、メガストアを展開し、世界中のファッション好きをドキドキ、ワクワ
クさせた。
 コレクション期間中はバイヤーなど業界関係者が世界中から集まり、ファッション誌の編集者やカメラマン
が何百人も殺到する。パリという魅力ある都市で、1年前のテキスタイル展で選びぬいた最高級の素材を使い、
デザイナーのインスピレーションとアイデアソースに、伝統に裏打ちされた職人芸を駆使して出来上がった服
を、有名モデルが着てランウエイを闊歩する。そこに世界中からの注目が集まるのだ。
 ここ数年は世界的不況により、各メゾンブランドとも売上げが激減し、数億円とも言われるショーの採算を
とることが難しくなった。中堅ブランドの中には、ショーの資金が乏しいため、展示会や記者発表という形に
変更するところもでてきている。「たった15分程度のショーのために半年間もかける意味を感じなくなった」
と、不況による売上げ減と経費負担の重さの狭間で悩み、撤退を決意したデザイナーもいる。
 そうは言っても、やはりパリコレはパリコレだ。世界中のメディアの注目はケタ外れ。世界中のファッショ
ン関係者が新たなトレンドを待ち望んでいる。
 翻って、福岡アジアコレクションはどうだろうか。地場のアパレルメーカーの既製品やデザイナーの作品を
合同で披露するもので、各ブランドに詳しくスポットが当たる(露出する)ことは少ない。SPAですでに商品
化されているものは、流通ルートは確立済み。でも、個人デザイナーの試作品でMDへの流れがないものは、
バイヤーやファッションメディアが注目することはほとんどない。
 すでに2回の実施で参加ブランドの顔ぶれが決まり、内容に変化が乏しくなってきている。今回の秋冬コレ
クションが持ち上がった理由はそれもあるだろう。しかし、参加を呼びかけて簡単に集まるようなブランドや
メーカーで、ファッションそのもののロイヤルティがあるのだろうか。そこを考えずにショーをやろうとする
ところに、最初にイベントありきの魂胆が垣間見える。
 回数をこなせば、コレクション自体の知名度は上がるだろうが、各メーカーやデザイナーのブランド力があ
がるとは限らない。なのに主催者側は「コレクションは福岡ファッションをアジアへ発信!」のお題目で、コ
レクションのブランド力アップが福岡の情報発信力アップにつながると声高に叫ぶ。それが、ひいては福岡フ
ァッション産業の振興につながるかの如く。そして、常套句の「FACoはその手段に過ぎない」を繰り返す。
 某プロデューサーは周囲に「本当はNBでやりたい」と語っているという。この言葉がショーイベントそのも
のが「放送局の目的」だということを如実に表している。
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味を占めたか。手詰まり感か。

2010-08-07 01:03:06 | Weblog
 このほど「2010 秋冬FACo 福岡アジアコレクション A/W」の開催が発表され、参加ブランドの募集があった。
しかし、メールで概要が告知されたのは8月3日なのに、応募締め切りは8月16日、そして開催日は9月25日だ
った。この強行スケジュールには、正直驚かされた。
 ファッション業界で、アパレルメーカーやデザイナーがコレクションを開催するには、少なくとも、最低半年
ほどの準備期間を要する。いくら、トレンドと売れ筋が読みづらく、短サイクルで商品が作られているとはいえ、
「コレクション」というからには「展示会」とは、次元が違うのだ。
 筆者がプレス会社で手がけたコレクションのスケジュールは、以下の通りだ。まず、コレクション向けの商品
づくりは、ブランドやメーカーの事業計画や全体予算をもとに、商品全体の組み立てとアイテムのおよその型数
を割り出すことから始める。そしてデザイナーや営業、プレスが加わり、シーズンテーマやコンセプトを決定。
その後、デザイナーは流行色や素材トレンド、生地サンプル、世界情勢などを下敷きに、自身のアイデアソース
を加えながらデザインを考え、スタイル画を描いていく。
 パタンナーはデザイン画をもとに型紙を起こし、シーチングで縫製したものをトルソーに着せて、デザイナー
とともにトワルチェックを行なう。そこでデザイナーは自分のイメージと実際の違いを判断して修正を行ない、
パタンナーはサンプル作製を依頼。サンプルが出来上がると、エージェントのカタログをもとにイメージ合った
モデルを人選し、コスチュームチェックやショースタッフを交えて演出方法など(場所決めは数ヶ月前)を打ち
合わせた後、コレクション当日を迎えるという流れだ。どう考えても1~2ヶ月で準備できるものではない。
 今回のFACo秋冬コレクションは、参加募集から開催日まで1ヶ月半しかない。商品さえあれば、あとはモデ
ルに着せて簡単にショーが開催できる程度の認識なのか。ファッション業界のスケジュールなど全く無視したや
り方には、正直あきれかえる。主催は福岡アジアコレクション実行委員会とうことだが、連絡先が福岡アジアコ
レクション事務局(某放送局コンテンツ開発部内)ということを見ると、おそらく放送局の思惑だけで一方的に
企画実施されているようだ。
 もっとも、背景には「最初にイベントありき」という放送局のビジネス優先主義が見える。また、過去2回の
FACoによりイベント会社に丸投げするのではなく、自社でもコレクションのノウハウを身につけたいのかもし
れない。そして、競合放送局の「ラブコレクション」が気になり、それより先に開催しておこうという狙いもあ
るだろう。少なくともお客が集められて、映像ソフトが手に入るイベントなら、中身はファッションではなくて
もいいというのが本音ではないか。とにかくショーを開いて、事業収益をあげたいのだ。
 ローカル放送局はリーマンショック以降のCM収入の減少、キー局の視聴率低下に伴うネット手数料の減額、
インターネットや衛星放送との多チャンネル競争、地デジ放送設備の投資回収など、経営課題は山積みだ。
 それゆえ、収益が安定するイベント事業に力を入れたいのはみえみえ。ならば、自社で勝手にスポンサーをつ
けるなりして、格好だけのファッションイベントをやったらいい。タレントやモデル見たさのお客を集めれば、
事業目的は達成するのだろうから。「福岡をアジアファッションの発信源に!」が聞いて呆れる。
 福岡県や福岡市が一私企業の振興が強い事業に税金を使って、肩入れするのもおかしい。キャパも小さな会場
で、業界無視したスケジュールと、話題も目玉も無いようなイベントで発信機能があるはずないのだから。推進
会議側もどうせ「福岡アジアコレクションのブランド力をさらに上げる」なんて御託を並べるだろうが、こんな
ちんけなイベントしか企画できないところに無策ぶりがうかがえる。…続く。
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素材頼みのユニクロに先はあるか。

2010-08-05 07:16:50 | Weblog
 このほど、ユニクロと繊維メーカーの東レは、提携関係を進化させると発表した。これまでにも両社は、
01年秋冬に大ヒットしたフリースをはじめ、汗がべたつかないドライ、保温下着のヒートテックと数々の
ヒット素材を開発し、提携力を見せつけてきた。
 今回は、「素材開発から製品供給まで一体化を進めて、さらに競争力を高める」ということだが、ユニ
クロが標榜する「ファッションベーシック」と東レとのコラボレーション型SPA強化によって、商品開発
にさらに磨きをかけ、時代やシーズンごとのトレンドを過不足なく、盛り込んでいこうというものだ。
 ただ、見方を変えれば、提携強化は最近のユニクロがフリース、ヒートテックに続く、ヒットアイテム
に恵まれていない面もある。理由は世界の大都市を中心にメガストア、いわゆる大型旗艦店を出店してい
るため、商品拡充がうまく行っていないのだ。売場を埋めるために品番を増やし過ぎ、中途半端な商品が
数多く生まれたり、MD計画が煩雑でコントロールが難しくなり、本来力を入れるべきところに入らず、
力が分散してしまっている。
 もともと、ユニクロは商品構成に奥行きがないから、いろんな商品をちまちま売ったところで、販売効
率はあがらない。今年3~6月期の既存店売上高において、前年同期比7.4%減という結果がこうしたMD
戦略の脆弱さを如実に表している。これは柳井正社長も認めるところだ。
 ただ、こうした問題はユニクロがSPAである限り、永遠に背負い続けなければならない重い十字架でも
ある。SPAといっても、ユニクロは小売業のオリジナル戦略の発展系で、「作った商品を売り減らす」い
たって古典的なスタイルに過ぎない。企画から生産段階の価値創造に軸を置くビジネスモデルで、それは
必ずしも流行や消費者の嗜好の変化とは合わず、柔軟なシステムとはほど遠い。
 どうしても長いスパンでのターゲット狙いと、大量ロットのアイテム生産、それに伴うローコスト調達
を行なうプッシュ型で、必然的に消化率や商品回転率は少なくなる。シーズンの大半、同じ商品が並んで
いる売場を見れば、一目瞭然だ。
 要するに、これまでも売り逃しや売れ残りによる在庫過多などをずっと繰り返しているのである。背景
には企業規模が大きくなるにつれ、組織は官僚的になって、リスクを取らなくなってしまったことがある
だろう。当然のことながら、ヒット商品を生みたいなら、リスクを取らなければならない。なのに今のユ
ニクロにハイリスク・ハイリターンを目指し思い切った量を積み上げ、売上げ計画の下ブレによる在庫リ
スクを低減できるスタッフがどれだけいるだろうか。 
 ユニクロのMDは、何万品番にも及ぶアイテムを、いつ、どれだけ製品化し、販売するかという、決定
権をもつ。だが、思うように商品が売れなければ、数十億円単位の売上げが吹っ飛んでしまう。まさに、
ユニクロの屋台骨を支えるだけに、サラリーマンMDにとっては相当のプレッシャーと責任がのしかかる。
 柳井社長が現場に復帰したのは、おそらく大株主である自身しか、この責任は取れないと感じからであ
ろう。だとしても、とある雑誌のインタビューで、「マーケティングやマーチャンダイジングを読んで、
品揃えを決めるのは店長だから、それらを失敗したとしても売上げと利益を取りにいかなければならない」
と公言しているところをみると、自身も「先読みの難しさ」「リスクを張る重圧」は感じているのかもし
れない。
 それゆえ東レとの提携強化には、ハイリスク、ハイリターンのアイテムづくりより、確実性の高い素材
トレンドに力を入れて、売上げの安定的部分を確保しようという狙いが見受けられる。
 柳井社長は2006年に10年「グループ売上げ1兆円」を公言していたが、それを達成できないまま、昨
年9月には2020年に売上高5兆円を発表した。これはユニクロと関連ブランド、さらにM&Aを加えたも
のだが、手法としては06年の構想発表時と何ら変わらない。
 ただ、東レと提携強化するとは言え、現状の店舗&MD戦略でそれが可能かというと、やはり厳しいだ
ろう。なぜなら、先に書いたようにユニクロのビジネスモデルが、「作って売り減らす」古典的なものだ
からだ。
 トレンド商品を多品番企画することは、ユニクロのビジネスとは相容れない。ただ、SPAの世界第一に
躍り出たスペインの「インディテックス」(ザラ)は、短いスパンでのターゲット狙いと小ロット多品種
投入というプル型で、高い消化率と高い回転率を実践してきた。言い換えれば、最新モードやトレンドア
イテムを売りに、それらを中低価格で提供できるビジネスモデルだからこそ、世界トップになり得たので
ある。
 だとすれば、ユニクロが作って売り減らすビジネスモデルと、素材頼みのトレンド戦略で世界トップク
ラス入りが可能かどうか。自ずと答えが見えてくるような気がする。
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