ユナイテッド・アローズが立て続けにCMを投下している。まず、ヤングファミリー向け業態のUNITED ARROWS GLR(グリーンレーベルリラクシング)で、「恋するレーベル」の3パターンを3月12日からオンエア。続いて、ヤング向けカジュアル業態のビューティ&ユース ユナイテッドアローズでも、イメージCMを目下放送中だ。
GLRは若手女優の成長株の吉高由里子を前作に続いて起用。業態のメーンターゲットに比べると、やや下のエージだが、ユナイテッドアローズ本体には手が届かない若いOL層に対し、コストパフォーマンスのいいGLRで、将来の顧客を青田買いしておこうという狙いが感じられる。
また、 B&Yバージョンは、ニューヨークのダウンタンをアップテンポな曲に乗って闊歩する男女を通して、コンセプトである「FREEDOM:STANDARD」の世界観を訴え、ブランドイメージを確立しようという意図が見られる。
大多数の消費者がU.Aは、セレクトショップと思っている。だが、GLRはもちろん、ビューティ&ユースはオリジナルの比率が相当高いのも事実だ。厳密な数字はわからないが、店頭の見る限りでおそらくGLRは8割、B&Yで6割くらいは行っているのではないだろうか。
とすれば、もはや品揃えや編集力を目的とするセレクトショップの領域を脱し、SPAバイイング型として商品調達やブランディングに重点が置かれるのは言うまでもない。要はセレクトショップなら他店にも同じ商品があるが、SPAはその店にしかない商品を打ち出すってことだ。
U.A自身は、セレクトショップの看板を捨てたわけではないと思う。ただ、商品づくりが「ユニクロと同じようなシステム」と消費者に受け取られてしまうと、ブランド力もイメージも一気にがた落ちになる。CM投下はU.Aの独自性を確立するための格好の手段というわけだ。
もっとも、同社の好調な業績を見ると、急激なSPA化も否定はできない。平成23年3月期連結決算は、売上高906億1200万円(対前年比8.5%増)、営業利益64億900万円(同29.7%増)、純利益22億8300万円(同62.7%増)だったが、24年度3月期見込みは、売上高1012億7200万円(同11.8%増)、営業利益95億5000万円(同29.3%増)、純利益51億6700万円(同43.7%増)と、ともに大幅な伸びを示す。
23年度は各社が東日本大震災の影響で売上げを落とす中、U.Aはこれほどの好業績を上げた理由を「収益に応じたコストコントロールをきめ細かに行なうことにより、収益性を高めたこと」と分析する。
つまり、セレクトショップ=小売業として、仕入れのコストを下げるくらいではたかがしれている。GLRは50店舗以上が展開され、B&Yも30店舗に迫る勢いなのだから、コストコントロールや収益アップにはやはりSPA化が最適だったということだろう。
オリジナルを開発することでコストを削減し、70%程度の値入れ率を確保。ロスを抑えるのは初期に売場のフェイスに効率的に商品を配分し、期中はスポットや追加の商品を徐々に加えながら、最適な在庫量を調整する。余剰ストックはオンラインストアで消化しつつ、残りはセール用商材にまわせば、さらに収益が増すというわけだ。GLRやB&Yの売場には、そうした構図が透けて見える。
こうしてコストとロスを抑えると、調達原価率がかさ上げできるので、クオリティの高い商品を開発できる。そこにU.Aのブランド力やイメージが加わるので、商品はバリュウ競争力をもつ。こうしたビジネスモデルに磨きをかけたことが今期の好調な業績に表れているのだ。
U.Aは3月23日、竹田光広取締役兼副社長執行役員が4月1日付けで「代表取締役兼社長執行役員」に就任する役員人事を発表した。竹田新社長は中堅商社の兼松江商(現兼松繊維)の出身。05年にU.Aに入社し、B&Yなどの統括責任者を務めてきたが、繊維系商社出身だけに商品の開発調達はお手の物だ。
執行役員というポストも、商品企画から資素材の手配、生産、在庫コントロールまで一手に権限を握れるという点で、同社のSPA化では有効に機能したはずである。
もちろん、U.A本体やアナザーエディションは、仕入れの率も高いから、完全SPAになることはないと思う。 成熟していないアジアの新興市場に出るにしても、まだまだ時期尚早との考えだろう。 それだけにSPA型バイイングセレクトとして、当面は国内市場をがっちり押さえていくということだ。
CM投下の背景にはそうした戦略が見て取れる。でも、一連のCMからセレクティングのイメージは感じられない。バイヤーが世界中で商品を買い付ける魅力が伝わらないことに、少し寂しい思いがするのは筆者だけだろうか。
GLRは若手女優の成長株の吉高由里子を前作に続いて起用。業態のメーンターゲットに比べると、やや下のエージだが、ユナイテッドアローズ本体には手が届かない若いOL層に対し、コストパフォーマンスのいいGLRで、将来の顧客を青田買いしておこうという狙いが感じられる。
また、 B&Yバージョンは、ニューヨークのダウンタンをアップテンポな曲に乗って闊歩する男女を通して、コンセプトである「FREEDOM:STANDARD」の世界観を訴え、ブランドイメージを確立しようという意図が見られる。
大多数の消費者がU.Aは、セレクトショップと思っている。だが、GLRはもちろん、ビューティ&ユースはオリジナルの比率が相当高いのも事実だ。厳密な数字はわからないが、店頭の見る限りでおそらくGLRは8割、B&Yで6割くらいは行っているのではないだろうか。
とすれば、もはや品揃えや編集力を目的とするセレクトショップの領域を脱し、SPAバイイング型として商品調達やブランディングに重点が置かれるのは言うまでもない。要はセレクトショップなら他店にも同じ商品があるが、SPAはその店にしかない商品を打ち出すってことだ。
U.A自身は、セレクトショップの看板を捨てたわけではないと思う。ただ、商品づくりが「ユニクロと同じようなシステム」と消費者に受け取られてしまうと、ブランド力もイメージも一気にがた落ちになる。CM投下はU.Aの独自性を確立するための格好の手段というわけだ。
もっとも、同社の好調な業績を見ると、急激なSPA化も否定はできない。平成23年3月期連結決算は、売上高906億1200万円(対前年比8.5%増)、営業利益64億900万円(同29.7%増)、純利益22億8300万円(同62.7%増)だったが、24年度3月期見込みは、売上高1012億7200万円(同11.8%増)、営業利益95億5000万円(同29.3%増)、純利益51億6700万円(同43.7%増)と、ともに大幅な伸びを示す。
23年度は各社が東日本大震災の影響で売上げを落とす中、U.Aはこれほどの好業績を上げた理由を「収益に応じたコストコントロールをきめ細かに行なうことにより、収益性を高めたこと」と分析する。
つまり、セレクトショップ=小売業として、仕入れのコストを下げるくらいではたかがしれている。GLRは50店舗以上が展開され、B&Yも30店舗に迫る勢いなのだから、コストコントロールや収益アップにはやはりSPA化が最適だったということだろう。
オリジナルを開発することでコストを削減し、70%程度の値入れ率を確保。ロスを抑えるのは初期に売場のフェイスに効率的に商品を配分し、期中はスポットや追加の商品を徐々に加えながら、最適な在庫量を調整する。余剰ストックはオンラインストアで消化しつつ、残りはセール用商材にまわせば、さらに収益が増すというわけだ。GLRやB&Yの売場には、そうした構図が透けて見える。
こうしてコストとロスを抑えると、調達原価率がかさ上げできるので、クオリティの高い商品を開発できる。そこにU.Aのブランド力やイメージが加わるので、商品はバリュウ競争力をもつ。こうしたビジネスモデルに磨きをかけたことが今期の好調な業績に表れているのだ。
U.Aは3月23日、竹田光広取締役兼副社長執行役員が4月1日付けで「代表取締役兼社長執行役員」に就任する役員人事を発表した。竹田新社長は中堅商社の兼松江商(現兼松繊維)の出身。05年にU.Aに入社し、B&Yなどの統括責任者を務めてきたが、繊維系商社出身だけに商品の開発調達はお手の物だ。
執行役員というポストも、商品企画から資素材の手配、生産、在庫コントロールまで一手に権限を握れるという点で、同社のSPA化では有効に機能したはずである。
もちろん、U.A本体やアナザーエディションは、仕入れの率も高いから、完全SPAになることはないと思う。 成熟していないアジアの新興市場に出るにしても、まだまだ時期尚早との考えだろう。 それだけにSPA型バイイングセレクトとして、当面は国内市場をがっちり押さえていくということだ。
CM投下の背景にはそうした戦略が見て取れる。でも、一連のCMからセレクティングのイメージは感じられない。バイヤーが世界中で商品を買い付ける魅力が伝わらないことに、少し寂しい思いがするのは筆者だけだろうか。