今年も早いもので一月が過ぎた。漫才のネタではないが、あと11カ月もあっと言う間に過ぎていくかもしれない。歳を重ねる度に時間が経過するスピードは、ますます早まっていく。
業界メディアでは、一斉にこの冬の景況が報道されており、セールの動向や百貨店、ファッションビルの売上げが連日、紙画面を賑わせている。ただ、アパレルについて言えば、ミクロとマクロでは、どうしても見方は変わって来る。
確かに売れているブランド、ショップは一部にはあるが、全体的に見ると流行を追うものはますます厳しさを増している。百貨店のレディスはデイリーに着られるコモデティ的なアイテムでないと売れづらいようである。だから、何のこだわりもなく、ただブランドにあぐらをかくだけでは、なかなか売れないということだ。
じゃあ、ファッションビルやSC系のブランドが総じて売れているかと言えば、セールで何とか冬商戦の帳尻を合わせたというのが、本当のところではないかと思う。端境期で寒さが増しているので、店頭を薄手の春物に変えたところで、簡単に商品は動かない。
それでなくても、個人的には地方百貨店やSCの店頭では、「これは」という素材やデザインに出会うことがほとんどなくなってきた。ネット通販を探せば企画に力を入れたものが見つかる公算は高いが、それとて現物を試着することができるわけではないので、実際に見たイメージとのギャップや返品の面倒さを考えると、購入する決断は店頭よりブレてしまう。
この秋冬のファッション衣料も、地元店では一切購入することなく終わりそうだ。というか、2000年くらいから全く購入しないシーズンが確実に増えている。逆にレディスでは企画に携わったものを撮影用に購入したり、ショッピングサイトを見て海外から取り寄せたこともあるくらいだ。その手の趣味、志向があるわけではないが、レディスの方が「イイな」と感じるものがまだまだ身近にある。結局、自分が着たいアイテムが、地元では衝動買いすらできなくなったということである。
年間の衣料購入予算が決まっているわけではない。使わなかった分を数年間プールして10万円くらいを貯まると、東京や海外に出かけた時にまとめて使うことになる。それでも、その時にお気に入りのアイテムに出会う公算は低く、何も買わなくて帰って来るシーズンの方が多い。一昨年の冬なんか、今年こそ上質なジャケットでも買うぞと計画したものの、結局気に入ったものに出会うことができず、その分の予算を全部「松茸」に費やしてしまったほどだ。
「じゃあ日頃、何を着ているの」と聞かれるが、自宅のワードローブには新しくて10年物、一番古いものは20年物がストックされているので、それを着ているだけである。 古着を買っているわけではないので、ユーズドという表現も当たらない。タンスの肥やしどころか、旬は過ぎたがヴィンテージとまでいかないシロ物。 物持ちが良いというより、それらが非常に上質かつ丈夫で着心地が良いから、ついつい大事に着てしまうのである。
某有名SPAが外国人デザイナーと契約したシリーズのジャケットやパンツ、セレクトショップのヤング向けのレザーやコートは何点か購入したが、端から仕事の資料として素材や縫製を見るためだった。だから、試着程度のまま1シーズンでリサイクルショップに持ち込んだので、現状ではストックは1着もない。
ここ20年くらいのトレンドを振り返ってみると、フリースもプレミアムライトダウンも買わなかった。ヒートテックも静電気恐怖症と暑がりゆえに着たことは一度もない。ジャージはあくまでジムやランニングの時に着るものという認識である。一昨年、昨年とセレクトショップがこぞって企画したレザーもライダースジャケットも、あまりに露出が多くマス化してしまったので、買うまでには至らなかった。
タンス在庫ばかりを着ていると、中にはトレンドに合わなくなったアイテムもある。ここ数年、メンズでもタイトなシルエットが続いていた。当方はもともと太めのアイテムが好きだったことから、細身のトレンドではジャケットもパンツの幅を細くお直しした。太すぎて野暮ったく見えるのが避けられ、細すぎて窮屈に感じることもない。ちょうど良い塩梅に着こなせている。微調整のために細かくピンを打ち、こちらのセンスに合わせてお直ししてくれるリフォーム屋さんには全く感謝している。
今、このコラムを書いている時の普段着は、トップスが黒でウール100%のリブニット、ボトムが同色のパンツ。ニットは99年頃のコムサ・デ・モードのミドルゲージ、パンツは2005年頃に発売されたギャップの厚手のコットンパンツである。
ニットは購入して20年になるが、シーズンオフに丁寧に毛玉を取り、大事に手洗いしてきたせいか、多少の縮みはあるものの、今もジャストフィットで着れる。さすがにオフィシャルに着ていくのははばかれるが、アウターの下なら十分な許容範囲だ。昔からカシミアや梳毛といった組織変化がないニットが好きになれないので、ミドルゲージばかりになっていた。
最近はSPAを中心にメリノウールが主流になっているので、ミドルゲージはほとんど出回らない。かといって、バルキーやカウチンタイプのセーターになると、ヘビーすぎる。ちょうどいい番手のニットがないので、どうしても手持ちというか、タンス在庫を引っ張り出してしまう。
パンツは分厚いコットン素材のメイドインインディア。お得意のマークダウンで3割程度安くなっていたので、2本を大人買いした。サイズはW73×L81で、補正することなくそのまま穿けた。2本を毎冬ローテーションで着用し、トレンドが変わった数年前に両脇を絞って細くしたが、この冬で13シーズンに入ったことになる。
仕事で使うゲージ(マイクロメーター)で生地の厚みを測ると、0.65mm。洗濯で多少は薄くなったのかもしれないが、それでも通常のチノクロスが0.3mm〜0.4mmとすれば、防寒精度は高いと言えよう。こまめにギャップをチェックしているわけではないが、このアイテム以降、コットンでこれほど厚手のパンツを見たことがない。
同ブランドはマークダウンや大幅値引きを行って在庫を減らす戦略を変えるようだ。でも、企画の段階からしっかりした素資材を使って商品を企画すれば、1万円程度でも売れると思うのだが。世界市場を狙う上ではやはり価格しかないのだろうが、値引きする前に価値と価格のバランスを熟考すべきではないかと思う。
そんなこんなで、今年の春もほとんど買うアイテムはなさそうである。4月を過ぎると気候が暑くなるので、新たにTシャツを数枚購入すれば十分だ。秋冬は気に入った素材やデザイン次第だと思う。だた、もうブランドやアイテムを探して買うというより、自分が気に入るまで練りに練って「テキスタイル」「ヤーン」を作り、好きな色と厚みに「革」をなめすことから始めないといけないのかもしれない。
一個人としては、業界のアンタッチャブルに入ってしまうのか。ただ、デザインは自分で自由に考えればいいわけだから、その方が納得いくだろう。究極のウォンツとは何か。時間をかけてじっくり作っていくこともありかと思う。
業界メディアでは、一斉にこの冬の景況が報道されており、セールの動向や百貨店、ファッションビルの売上げが連日、紙画面を賑わせている。ただ、アパレルについて言えば、ミクロとマクロでは、どうしても見方は変わって来る。
確かに売れているブランド、ショップは一部にはあるが、全体的に見ると流行を追うものはますます厳しさを増している。百貨店のレディスはデイリーに着られるコモデティ的なアイテムでないと売れづらいようである。だから、何のこだわりもなく、ただブランドにあぐらをかくだけでは、なかなか売れないということだ。
じゃあ、ファッションビルやSC系のブランドが総じて売れているかと言えば、セールで何とか冬商戦の帳尻を合わせたというのが、本当のところではないかと思う。端境期で寒さが増しているので、店頭を薄手の春物に変えたところで、簡単に商品は動かない。
それでなくても、個人的には地方百貨店やSCの店頭では、「これは」という素材やデザインに出会うことがほとんどなくなってきた。ネット通販を探せば企画に力を入れたものが見つかる公算は高いが、それとて現物を試着することができるわけではないので、実際に見たイメージとのギャップや返品の面倒さを考えると、購入する決断は店頭よりブレてしまう。
この秋冬のファッション衣料も、地元店では一切購入することなく終わりそうだ。というか、2000年くらいから全く購入しないシーズンが確実に増えている。逆にレディスでは企画に携わったものを撮影用に購入したり、ショッピングサイトを見て海外から取り寄せたこともあるくらいだ。その手の趣味、志向があるわけではないが、レディスの方が「イイな」と感じるものがまだまだ身近にある。結局、自分が着たいアイテムが、地元では衝動買いすらできなくなったということである。
年間の衣料購入予算が決まっているわけではない。使わなかった分を数年間プールして10万円くらいを貯まると、東京や海外に出かけた時にまとめて使うことになる。それでも、その時にお気に入りのアイテムに出会う公算は低く、何も買わなくて帰って来るシーズンの方が多い。一昨年の冬なんか、今年こそ上質なジャケットでも買うぞと計画したものの、結局気に入ったものに出会うことができず、その分の予算を全部「松茸」に費やしてしまったほどだ。
「じゃあ日頃、何を着ているの」と聞かれるが、自宅のワードローブには新しくて10年物、一番古いものは20年物がストックされているので、それを着ているだけである。 古着を買っているわけではないので、ユーズドという表現も当たらない。タンスの肥やしどころか、旬は過ぎたがヴィンテージとまでいかないシロ物。 物持ちが良いというより、それらが非常に上質かつ丈夫で着心地が良いから、ついつい大事に着てしまうのである。
某有名SPAが外国人デザイナーと契約したシリーズのジャケットやパンツ、セレクトショップのヤング向けのレザーやコートは何点か購入したが、端から仕事の資料として素材や縫製を見るためだった。だから、試着程度のまま1シーズンでリサイクルショップに持ち込んだので、現状ではストックは1着もない。
ここ20年くらいのトレンドを振り返ってみると、フリースもプレミアムライトダウンも買わなかった。ヒートテックも静電気恐怖症と暑がりゆえに着たことは一度もない。ジャージはあくまでジムやランニングの時に着るものという認識である。一昨年、昨年とセレクトショップがこぞって企画したレザーもライダースジャケットも、あまりに露出が多くマス化してしまったので、買うまでには至らなかった。
タンス在庫ばかりを着ていると、中にはトレンドに合わなくなったアイテムもある。ここ数年、メンズでもタイトなシルエットが続いていた。当方はもともと太めのアイテムが好きだったことから、細身のトレンドではジャケットもパンツの幅を細くお直しした。太すぎて野暮ったく見えるのが避けられ、細すぎて窮屈に感じることもない。ちょうど良い塩梅に着こなせている。微調整のために細かくピンを打ち、こちらのセンスに合わせてお直ししてくれるリフォーム屋さんには全く感謝している。
今、このコラムを書いている時の普段着は、トップスが黒でウール100%のリブニット、ボトムが同色のパンツ。ニットは99年頃のコムサ・デ・モードのミドルゲージ、パンツは2005年頃に発売されたギャップの厚手のコットンパンツである。
ニットは購入して20年になるが、シーズンオフに丁寧に毛玉を取り、大事に手洗いしてきたせいか、多少の縮みはあるものの、今もジャストフィットで着れる。さすがにオフィシャルに着ていくのははばかれるが、アウターの下なら十分な許容範囲だ。昔からカシミアや梳毛といった組織変化がないニットが好きになれないので、ミドルゲージばかりになっていた。
最近はSPAを中心にメリノウールが主流になっているので、ミドルゲージはほとんど出回らない。かといって、バルキーやカウチンタイプのセーターになると、ヘビーすぎる。ちょうどいい番手のニットがないので、どうしても手持ちというか、タンス在庫を引っ張り出してしまう。
パンツは分厚いコットン素材のメイドインインディア。お得意のマークダウンで3割程度安くなっていたので、2本を大人買いした。サイズはW73×L81で、補正することなくそのまま穿けた。2本を毎冬ローテーションで着用し、トレンドが変わった数年前に両脇を絞って細くしたが、この冬で13シーズンに入ったことになる。
仕事で使うゲージ(マイクロメーター)で生地の厚みを測ると、0.65mm。洗濯で多少は薄くなったのかもしれないが、それでも通常のチノクロスが0.3mm〜0.4mmとすれば、防寒精度は高いと言えよう。こまめにギャップをチェックしているわけではないが、このアイテム以降、コットンでこれほど厚手のパンツを見たことがない。
同ブランドはマークダウンや大幅値引きを行って在庫を減らす戦略を変えるようだ。でも、企画の段階からしっかりした素資材を使って商品を企画すれば、1万円程度でも売れると思うのだが。世界市場を狙う上ではやはり価格しかないのだろうが、値引きする前に価値と価格のバランスを熟考すべきではないかと思う。
そんなこんなで、今年の春もほとんど買うアイテムはなさそうである。4月を過ぎると気候が暑くなるので、新たにTシャツを数枚購入すれば十分だ。秋冬は気に入った素材やデザイン次第だと思う。だた、もうブランドやアイテムを探して買うというより、自分が気に入るまで練りに練って「テキスタイル」「ヤーン」を作り、好きな色と厚みに「革」をなめすことから始めないといけないのかもしれない。
一個人としては、業界のアンタッチャブルに入ってしまうのか。ただ、デザインは自分で自由に考えればいいわけだから、その方が納得いくだろう。究極のウォンツとは何か。時間をかけてじっくり作っていくこともありかと思う。