豪雨に襲われた梅雨もようやく明け、ようやく本格的な夏に入った。お向かいさんのコムデ・ギャルソンは数日前から秋物第1弾を展開。ウィンドウにはフェルト素材のウエアが飾られ、コレクションラインを身近で堪能できる。
ただ、シーズンMDは企業の営業方針で各社各様だから、気候に反して秋物を販売してもそれで収益が確実に上がれば、異論を挟む余地はない。問題は目下行なわれている夏物バーゲンで、各社が確実に在庫が消化しているのか、である。
大手百貨店が主導したバーゲン2週間後ろ倒しも、ふたを開けてみれば駅ビルや百貨店、大手アパレルの数社が賛同したくらいで、業界全体を巻き込むほどの潮流にはならなかった。
では、バーゲンを後ろ倒しして、いったい誰か得をする(した)のだろうか。言い出しっぺの大手百貨店が夏物商品をプロパーで確実に販売できたのなら、売上げも積め荒利もとれるだろうから非常に喜ばしいことである。
しかし、売場をチェックしてみると、ゴールデンウィーク明けから特にブランドのハコでは夏物をすべて出尽くし、売れ筋を外した商品はバーゲンまでずっと在庫が残っているところが多い。
平場は多少入れ替えはあったようだが、定番的なアイテムばかりで、 盛夏という実需対応する品やリゾートウエアはほとんど見当たらない。これではプロパーで売る「タマ」がないのだから、バーゲンを後ろ倒しにしたところで、売上げはとれないのではという印象だ。
専門店はどうか。九州にはルミネがないため、専門店が入居する商業施設はほぼ例年通りバーゲンに突入。アミュプラザ博多、ヴィオロ、天神ビブレが6月30日と一番早く、次いでイムズ、ソラリアプラザ、天神コアが7月1日、一番遅い福岡パルコでも7月5日にスタートしている。
これらをリサーチをした印象では、知名度のあるセレクトショップやヤング向けの人気ブランドにおける値引率は、大半の商品が20%~30%、大手セレクトショップでは盛夏品はセール対象外だから、バーゲン全体の盛り上がりは決して高くないようである。
しかも、昨年JR博多シティがオープンし、人気セレクトショップは市内2店、3店態勢になり、希少性も無くなった。冬のセールで奏功したショップオリジナルのアウター投入も、レイヤードしない夏場では投入できず、こちらも強力なタマがない有り様だ。
それ以上にヤング専門店はトレンド不在で新鮮味に欠け、オーバーストアで店頭にはまだまだ夏物在庫を残す店舗が少なくない。7月末時点で売れない商品は、8月のクリアランスで70%~80%OFFにしても厳しいと思う。
結果的に百貨店では先にセールを始めた店舗が、魅力のないプロパーを引っ張る店舗より売上げを積めたのは間違いないだろう。ただ、後ろ倒しした百貨店と共通するアパレルブランドはセール対象外となっていたため、この数量が微妙に売上げに影響したのは想像がつく。要は取引先アパレルとのバランスの問題だ。
逆に後ろ倒しした百貨店はオンリーブランドを除き、盛夏対応品、リゾートウエア、晩夏向けの先物が見当たらない点では、売場サイドはセール先行店にお客さんを奪われ、2週間胃が痛い思いをしたのではないか。お客さんが他店で先に買ってしまえば、遅らせたのは逆効果になるはずだ。
百貨店にテナントで入っている専門店は、顧客向けにシークレットセールを行なっているようで、後ろ倒しに関係なくセール売上げは立ったと思われる。ビルインの専門店についてはほとんど一斉にバーゲンに突入しているので、例年と大差ないだろう。
このコラムを書いている7月25日時点で、各社のバーゲン数値はでていないので、細かな状況はわからない。ただ、各社とも店頭スタッフから大盛況という声は聞こえては来ない。だから、バーゲンを2週間後ろ倒しにしても、大して誰も得をしていないというのが筆者の見方だ。
そもそもバーゲン後ろ倒し論が浮上した背景には、夏物はどうしてもプロパーで売る時期が短いため、時期を遅らせて少しでも消化率を上げようという大手小売り業のご都合主義がある。
しかし、時期を遅らせても売れない物は売れないわけだし、中小の専門店は資金繰りから例年通りセールをやらざるを得ず、デザイナーブランドのように一切バーゲンせず、アウトレットで消化するところもある。つまり、ショップやブランドによってセールの実態は、様々なのだ。
仮にアパレル側がバーゲン時期を遅らせてほしいと言い出しても、各メーカー、各ブランド毎にMDも営業スケジュールも違うのだから、統一なんてできるはずがない。パリのようの法律を定めても、必ず抜け道がでてくると思われる。
先日、とある専門店の部長がこんなことを言っていた。「セールなんて店側の都合で勝手にやっているだけ。小売りはまずお客さんの利益を考えないと。前日に正価で売った商品が翌日に値下げされれば、信用をなくすのは目に見えている」と。
小売り、アパレル、ブランド、それぞれで営業のやり方は違うのだから、商品の売れ行きが芳しくないのであれば、品揃えや商品企画を修正するのが先だろう。特に百貨店は自社の立ち位置をわきまえ、適正な原価を見直して、百貨店らしい商品を調達すべきである。
また、小売りにもアパレルにも言えるのは、アウトレットが定着する中で専用品の問題を考えるきっかけにすべきだ。アウトレットの原点、プロパー業態の残品やレアなブランドの値引き販売、バーチカルな商品消化に向かわなければならない。
最終的にお金を出して商品を購入するのはお客さんだ。この人たちを業界が裏切ってはならないのである。魅力のない、買いたくない商品がいくら値下げされても、お客さんは財布の紐を緩めない。それは業界がいちばん学習しているはずだから。
ただ、シーズンMDは企業の営業方針で各社各様だから、気候に反して秋物を販売してもそれで収益が確実に上がれば、異論を挟む余地はない。問題は目下行なわれている夏物バーゲンで、各社が確実に在庫が消化しているのか、である。
大手百貨店が主導したバーゲン2週間後ろ倒しも、ふたを開けてみれば駅ビルや百貨店、大手アパレルの数社が賛同したくらいで、業界全体を巻き込むほどの潮流にはならなかった。
では、バーゲンを後ろ倒しして、いったい誰か得をする(した)のだろうか。言い出しっぺの大手百貨店が夏物商品をプロパーで確実に販売できたのなら、売上げも積め荒利もとれるだろうから非常に喜ばしいことである。
しかし、売場をチェックしてみると、ゴールデンウィーク明けから特にブランドのハコでは夏物をすべて出尽くし、売れ筋を外した商品はバーゲンまでずっと在庫が残っているところが多い。
平場は多少入れ替えはあったようだが、定番的なアイテムばかりで、 盛夏という実需対応する品やリゾートウエアはほとんど見当たらない。これではプロパーで売る「タマ」がないのだから、バーゲンを後ろ倒しにしたところで、売上げはとれないのではという印象だ。
専門店はどうか。九州にはルミネがないため、専門店が入居する商業施設はほぼ例年通りバーゲンに突入。アミュプラザ博多、ヴィオロ、天神ビブレが6月30日と一番早く、次いでイムズ、ソラリアプラザ、天神コアが7月1日、一番遅い福岡パルコでも7月5日にスタートしている。
これらをリサーチをした印象では、知名度のあるセレクトショップやヤング向けの人気ブランドにおける値引率は、大半の商品が20%~30%、大手セレクトショップでは盛夏品はセール対象外だから、バーゲン全体の盛り上がりは決して高くないようである。
しかも、昨年JR博多シティがオープンし、人気セレクトショップは市内2店、3店態勢になり、希少性も無くなった。冬のセールで奏功したショップオリジナルのアウター投入も、レイヤードしない夏場では投入できず、こちらも強力なタマがない有り様だ。
それ以上にヤング専門店はトレンド不在で新鮮味に欠け、オーバーストアで店頭にはまだまだ夏物在庫を残す店舗が少なくない。7月末時点で売れない商品は、8月のクリアランスで70%~80%OFFにしても厳しいと思う。
結果的に百貨店では先にセールを始めた店舗が、魅力のないプロパーを引っ張る店舗より売上げを積めたのは間違いないだろう。ただ、後ろ倒しした百貨店と共通するアパレルブランドはセール対象外となっていたため、この数量が微妙に売上げに影響したのは想像がつく。要は取引先アパレルとのバランスの問題だ。
逆に後ろ倒しした百貨店はオンリーブランドを除き、盛夏対応品、リゾートウエア、晩夏向けの先物が見当たらない点では、売場サイドはセール先行店にお客さんを奪われ、2週間胃が痛い思いをしたのではないか。お客さんが他店で先に買ってしまえば、遅らせたのは逆効果になるはずだ。
百貨店にテナントで入っている専門店は、顧客向けにシークレットセールを行なっているようで、後ろ倒しに関係なくセール売上げは立ったと思われる。ビルインの専門店についてはほとんど一斉にバーゲンに突入しているので、例年と大差ないだろう。
このコラムを書いている7月25日時点で、各社のバーゲン数値はでていないので、細かな状況はわからない。ただ、各社とも店頭スタッフから大盛況という声は聞こえては来ない。だから、バーゲンを2週間後ろ倒しにしても、大して誰も得をしていないというのが筆者の見方だ。
そもそもバーゲン後ろ倒し論が浮上した背景には、夏物はどうしてもプロパーで売る時期が短いため、時期を遅らせて少しでも消化率を上げようという大手小売り業のご都合主義がある。
しかし、時期を遅らせても売れない物は売れないわけだし、中小の専門店は資金繰りから例年通りセールをやらざるを得ず、デザイナーブランドのように一切バーゲンせず、アウトレットで消化するところもある。つまり、ショップやブランドによってセールの実態は、様々なのだ。
仮にアパレル側がバーゲン時期を遅らせてほしいと言い出しても、各メーカー、各ブランド毎にMDも営業スケジュールも違うのだから、統一なんてできるはずがない。パリのようの法律を定めても、必ず抜け道がでてくると思われる。
先日、とある専門店の部長がこんなことを言っていた。「セールなんて店側の都合で勝手にやっているだけ。小売りはまずお客さんの利益を考えないと。前日に正価で売った商品が翌日に値下げされれば、信用をなくすのは目に見えている」と。
小売り、アパレル、ブランド、それぞれで営業のやり方は違うのだから、商品の売れ行きが芳しくないのであれば、品揃えや商品企画を修正するのが先だろう。特に百貨店は自社の立ち位置をわきまえ、適正な原価を見直して、百貨店らしい商品を調達すべきである。
また、小売りにもアパレルにも言えるのは、アウトレットが定着する中で専用品の問題を考えるきっかけにすべきだ。アウトレットの原点、プロパー業態の残品やレアなブランドの値引き販売、バーチカルな商品消化に向かわなければならない。
最終的にお金を出して商品を購入するのはお客さんだ。この人たちを業界が裏切ってはならないのである。魅力のない、買いたくない商品がいくら値下げされても、お客さんは財布の紐を緩めない。それは業界がいちばん学習しているはずだから。