博多で生まれ育ち、東京、海外と仕事をしてきて、その違いを感じるのは、博多には美味しいお菓子が多く、しかもほとんど外れがないことだ。特に今年は大河ドラマ「軍師 官兵衛」の影響で、地元菓子舗では関連商品が続々と企画されている。
でも、菓子舗間では「千載一遇のチャンス」「ブームには乗りたくない」と、温度差があるのも確か。どちらにせよ、すでに藩祖官兵衛ロングバーム、官兵衛の赤かぶと、官兵衛の赤合子などが売り出されており、第二、第三の商品も近々発売されると聞く。
いちばんの課題はブームが去った後も、売上げをキープできるか。また、ネーミングやパッケージは変えるとしても、いかに定番化していけるかだろう。これには各社とも、いろいろ熟慮しているようである。
翻って、ファッション業界はどうか。アイテムデザイン、業態開発、出店政策。最近はじっくり企画を練って作り込む商品は、なかなか見当たらない。
業態も海外ブランドのリーシングか、売れ筋テイストの後追いが主流で、手っ取り早く売上げがとれるものに偏っている。出店は都市部、郊外を問わずビルインばかりで、路面展開にはごく一部の個店を除き、ほとんどお目にかかれない。
商品は流行を追いかけ、マス化してブームになった時にいちばん売上げがとれる。所詮、「誰も着ていない服は、着る気がしないし、誰もが着ている服も、着る気がしない」。それが消費者の心理なのだから、しょうがない面はある。
でも、業態についてはオープンからいきなりのロケットスタートは狙わないとか、1年目、2年目と徐々に売上げがつくような開発手法をとっても、いいのではないだろうか。
特に「小売り」、純然たるセレクトショップなら、出店時にMDの完成度を70~80%くらいに止めておく。そして、お客の様子を見ながら修正を施し、時間をかけて作り込むことはできるはずである。
出店政策と絡めば、なおさらだ。大型商業施設の開発計画が持ち上がると、判を押したようにブランドのハコが集められる。そして、出店した以上は、オープンからひたすら売上げを取ろうとする。特にデベロッパー側はその意識が強い。
でも、開業景気が終わった途端に失速していく業態も後を絶たない。グローバル競争に撃ち勝つには「スピード」が不可欠なことはわかるが、拙速で売れ筋狙いの商品企画や品揃え、店づくりでは、同質化は否めない。結果、お客にすぐに見透かされてしまうのだ。
商品開発をブランドで仕掛ける場合、後からテイストを変えるのは難しい。でも、ヤングを狙ったつもりがヤングミセス、あるいはマインドの若い30代を捉えるケースは、往々にしてある。だから、デザインの修正や質感のアップなら十分可能なはずだ。
セレクトショップでは、別注で仕掛けることもできる。品揃えのニュアンスが変われば、そのまま業態の変化にもつながる。店舗のリロケートとまではいかないが、ターゲットが変わっても売上げが伸びると、デベロッパーは残ってほしいはずである。
3月1日、開業3年目のJR博多シティが「アミュウルトラリニューアル」と銘打ち、97店ものテナント入れ替えて再登場する。案の定、ここも開業景気が沈静化した2年目には売上げが下がったわけだが、デベロッパーは想定の範囲内と言い張るかもしれない。
ただ、開業時の顔ぶれを見ると、ファッション業態はNB、有名セレクトショップを中心にリーシングされていた。天神とバッティングするブランドも多く、テイストが被れば開業景気が去ってしまうと、テナント個々の苦戦は免れなかったようだ。
今回のリニューアルで、後背の旧デイトスで永年、独立独歩の営業を行ってきた地元の「某セレクトショップ」が、「アミュプラザ博多」にリーシングされた。リロケートされただけだから、運営が共通するデベロッパーの総売上げに変わりはない。
でも、インポート&別注で構成するMDが特徴のセレクトショップは、「博多の顔」とも言うべきアミュプラザ博多には、なかった業態だ。
デベロッパーにとっては「最初から入れておけば良かった」「しびれを切らした」わけでもないだろう。でも、結果をみれば、紋切り型のNB、SPA化したセレクトにはない秀逸なMDの業態が「喉から手が出るほど欲しくなった」ようにも見てとれる。
地元セレクトショップが大手にはない品揃え&店づくりを提供するのだから、何とも皮肉は話である。これは決して事実誤認ではないはずだ。
このショップは旧デイトスでも以前の業態からずっと好調で、セレクトショップに変更してもそれを維持してきた。今回のリニューアルで博多の顔に移り、名だたるNB相手に勝負を挑むことになる。もしかしたら、さらに売上げがアップするかもしれない。
また、バーゲンセールを一切行わないことでも有名だ。バーゲン期間中に他店が割引一色の中、この業態は淡々とプロパー営業を続ける。デベロッパーはアミュプラザ小倉で経験済みのはずだが、博多を訪れる一見客には意外に映るだろう。
まあ、一業態くらいでは、セールの問題などでNBに影響を与えるほどではない。でも、こうした業態が博多の顔に登場したことは、駅ビルにとってブームが終わった後が本当の勝負になることを如実に表していると思う。
でも、菓子舗間では「千載一遇のチャンス」「ブームには乗りたくない」と、温度差があるのも確か。どちらにせよ、すでに藩祖官兵衛ロングバーム、官兵衛の赤かぶと、官兵衛の赤合子などが売り出されており、第二、第三の商品も近々発売されると聞く。
いちばんの課題はブームが去った後も、売上げをキープできるか。また、ネーミングやパッケージは変えるとしても、いかに定番化していけるかだろう。これには各社とも、いろいろ熟慮しているようである。
翻って、ファッション業界はどうか。アイテムデザイン、業態開発、出店政策。最近はじっくり企画を練って作り込む商品は、なかなか見当たらない。
業態も海外ブランドのリーシングか、売れ筋テイストの後追いが主流で、手っ取り早く売上げがとれるものに偏っている。出店は都市部、郊外を問わずビルインばかりで、路面展開にはごく一部の個店を除き、ほとんどお目にかかれない。
商品は流行を追いかけ、マス化してブームになった時にいちばん売上げがとれる。所詮、「誰も着ていない服は、着る気がしないし、誰もが着ている服も、着る気がしない」。それが消費者の心理なのだから、しょうがない面はある。
でも、業態についてはオープンからいきなりのロケットスタートは狙わないとか、1年目、2年目と徐々に売上げがつくような開発手法をとっても、いいのではないだろうか。
特に「小売り」、純然たるセレクトショップなら、出店時にMDの完成度を70~80%くらいに止めておく。そして、お客の様子を見ながら修正を施し、時間をかけて作り込むことはできるはずである。
出店政策と絡めば、なおさらだ。大型商業施設の開発計画が持ち上がると、判を押したようにブランドのハコが集められる。そして、出店した以上は、オープンからひたすら売上げを取ろうとする。特にデベロッパー側はその意識が強い。
でも、開業景気が終わった途端に失速していく業態も後を絶たない。グローバル競争に撃ち勝つには「スピード」が不可欠なことはわかるが、拙速で売れ筋狙いの商品企画や品揃え、店づくりでは、同質化は否めない。結果、お客にすぐに見透かされてしまうのだ。
商品開発をブランドで仕掛ける場合、後からテイストを変えるのは難しい。でも、ヤングを狙ったつもりがヤングミセス、あるいはマインドの若い30代を捉えるケースは、往々にしてある。だから、デザインの修正や質感のアップなら十分可能なはずだ。
セレクトショップでは、別注で仕掛けることもできる。品揃えのニュアンスが変われば、そのまま業態の変化にもつながる。店舗のリロケートとまではいかないが、ターゲットが変わっても売上げが伸びると、デベロッパーは残ってほしいはずである。
3月1日、開業3年目のJR博多シティが「アミュウルトラリニューアル」と銘打ち、97店ものテナント入れ替えて再登場する。案の定、ここも開業景気が沈静化した2年目には売上げが下がったわけだが、デベロッパーは想定の範囲内と言い張るかもしれない。
ただ、開業時の顔ぶれを見ると、ファッション業態はNB、有名セレクトショップを中心にリーシングされていた。天神とバッティングするブランドも多く、テイストが被れば開業景気が去ってしまうと、テナント個々の苦戦は免れなかったようだ。
今回のリニューアルで、後背の旧デイトスで永年、独立独歩の営業を行ってきた地元の「某セレクトショップ」が、「アミュプラザ博多」にリーシングされた。リロケートされただけだから、運営が共通するデベロッパーの総売上げに変わりはない。
でも、インポート&別注で構成するMDが特徴のセレクトショップは、「博多の顔」とも言うべきアミュプラザ博多には、なかった業態だ。
デベロッパーにとっては「最初から入れておけば良かった」「しびれを切らした」わけでもないだろう。でも、結果をみれば、紋切り型のNB、SPA化したセレクトにはない秀逸なMDの業態が「喉から手が出るほど欲しくなった」ようにも見てとれる。
地元セレクトショップが大手にはない品揃え&店づくりを提供するのだから、何とも皮肉は話である。これは決して事実誤認ではないはずだ。
このショップは旧デイトスでも以前の業態からずっと好調で、セレクトショップに変更してもそれを維持してきた。今回のリニューアルで博多の顔に移り、名だたるNB相手に勝負を挑むことになる。もしかしたら、さらに売上げがアップするかもしれない。
また、バーゲンセールを一切行わないことでも有名だ。バーゲン期間中に他店が割引一色の中、この業態は淡々とプロパー営業を続ける。デベロッパーはアミュプラザ小倉で経験済みのはずだが、博多を訪れる一見客には意外に映るだろう。
まあ、一業態くらいでは、セールの問題などでNBに影響を与えるほどではない。でも、こうした業態が博多の顔に登場したことは、駅ビルにとってブームが終わった後が本当の勝負になることを如実に表していると思う。