学生の就職内定率はメディアも積極的に取り上げるので、嫌が上でも注目してしまう。リクルートキャリアによると、2018年春に卒業した大学生の内定率は96.7%。19年春卒業予定の学生も今年の4月1日時点で19.9%と、対17年比で5ポイント以上アップし、好調な出足だ。高校生は文部科学省がまとめた17年10月時点(18年春の卒業生)では、男女平均で76.95%と、こちらも対前年同期比で2.4ポイント増加している。
一方、専修学校(2年程度就学の専門学校)の2018年卒業時点の内定率は、68.9%(前年同期比1.8ポイント減/厚労省、文科省調べ)。景気回復と人手不足で大学生、高校生の内定率が向上する一方、専門学校生にとって目指す専門職は狭き門のようだ。
と言うか、そもそも専門職は営業マンやエンジニアのように新卒・一括採用ではない。欠員が出た場合など不定期・通年で採用されるケースが多く、学生が学校を卒業する時の内定率が就職の好不調を表しているとは限らない。率をあげるなら内定というより、就職といった方が正確だろうか。
では、専門学校生の内定率が下がっているのは、何が原因なのだろうか。頑に専門職を目指し、一般的な仕事には就きたくない学生が増えているのか。さらなる技術の習得に励むために学業を続ける傾向が強いのか。それとも就職そのものをしないで卒業するのか。はたまた学校が大学編入にシフトし、就職より進学を選択する学生が増えているのか。確実に言えるのは、専門学校生の就活は大学生のような企業説明会や求人サイトを経由して就活〜面接〜内定とは進んではいかないことだ。それもあると思う。
まず、専門学校生のみを対象にした会社説明会はほとんどない。学校に来る専門職の求人情報を頼りにエントリーするのが一般的だ。また、面倒見のいい講師が就職先を紹介するケースもある。いわゆるコネというやつだ。そのため、実際にどれくらいの求人数があるかは把握しづらいし、学校側が内定率や就職先を公開したにしても、そこには一般企業に内定した学生も含まれるから、厳密に専門職での就職とは言い難い。
厚労省、文科省が公開した内定率の68.9%にもたぶん、一般企業、一般職が含まれている。だから、厳密に就職した専門職となると、さらに数値は下がるということである。
かつて専門学校の売りには、就職率99.9%なんてのがあった。だが、学校によっては「家業を継いでも、アルバイト就業でも就職にカウントしている」と、現役の学生から聞いたことがある。さすがに今はそこまではできなくなったにしても、大学や高校と比べると内定率の公開データについて、曖昧な点があるのは確かである。
ところで、専門学校生が目指す職業(国家資格が必要な職業を除き)とは、どんなものか。デザイナー(ファッション、グラフィック、Webなど)、パタンナー、アタッシュ・ド・プレス、カメラマン、ゲームクリエーター、CGアーチスト、イラストレーター、映画監督、俳優・タレント、 声優、 漫画家、アニメーター、 CA(客室乗務員)、スタイリスト、ヘアメイク(美容部員)、 エステティシャン、ネイリスト、 インテリアコーディネーター、アナウンサー、ナレーター、パティシエ、トリマー、スポーツトレーナー、プロ釣り師等々。
ざっくり言うとこんな職種だろうか。どれも夢があるというか、自己実現させたいというか。高校を卒業した18歳の若者たちが憧れる仕事には違いない。そうした職種のリクルーティングはどうなっているのか。筆者が仕事をしている業界から見てみよう。
まずファッションデザイナーやパタンナーは、アパレルメーカーが企画職として募集するケースがある。しかし、会社説明会で一般の大学生と一緒に求人されるケースは少ない。専門学校に直接求人(作品添付も条件)があり、応募したい学生は個別にエントリーするなどの手続きを踏むことになる。
次にグラフィックデザイナーについては、大手広告代理店でも新卒を募集する。会社説明会や企業サイトで一般職として「アートディレクター補」として求人する企業もあるが、新卒では4年制以上の芸術系大学の学生が対象で、専門学校生には応募資格がない。美大出身であっても、学校や教授の推薦が必要とされる場合もある。それは佐野研二郎氏が卒業したタッタ多摩美でも変わりない。
アナウンサーはキー局、ローカル局とも一般職採用の中に枠を設けているが、新卒では4年生大卒、大学院卒が条件なので、端から専門学校生は対象になっていない。
専門学校生でも公募でエントリーが可能なのは、航空会社が採用するCAや化粧品メーカーが募集する美容部員がある。専門教育を受けたことが条件となるし、ルックスや器量が重視されるので、こればかりは学歴重視とはいかない。あとはコンピュータ系の専門学校生を対象にしたシステムエンジニアやプログラマー、ゲームクリエーターくらいだろうか。
他の職種ではほとんど一般公募、新卒採用はない。欠員が出たときや離職率が高い職種での中途採用だ。それでも、専門職は若者には人気が高く、大学生までが受験すると、競争倍率は高くなる。それゆえ、専門学校の内定率が70%を切っている実態、実際にははるかに低い専門職の就職率を学校側はどう受け止めるのか。高卒よりも内定率が低いという現実を見れば、はたして専門学校は就職へのポテンシャルは高いのか。学生や親の意識も変わらざるを得ないのではないかと思う。
ところで、繊研PLUSでは6月20日付けニュースで、「服飾系専門学校の入学者は? 18歳人口減『2018年問題』」とのタイトルで記事を配信した。https://senken.co.jp/posts/2018problem-fashion-school-180620
それによると、ファッション専門学校は18歳以下の人口が減少していく2018年問題に直面しており、18年4月の入学者数が増加した学校は35%(前年から11ポイント増)、減少したは35%(同6ポイント減)だった。(全国の服飾系専門学校対象 アンケート調査/有効回答44校)
ただ、内容を精査すると、「減少した前年からの反動による増加」や「周囲の学校の募集停止」「留学生の増加」から入学者が増加した面があるという。日本は少子高齢で、18歳の総人口は17年10月時点で121万人(総務省統計局)。2000年から何と80万人も減少している。これを大学進学や就職とで奪い合うわけで、就職内定率の減少はますます学生募集に影響するのは間違いない。
若者が夢を追うのを否定するつもりはない。しかし、専門学校側の教育には問題が少なくない。例えば、講師は基本的に非常勤で1コマいくらのギャラで契約し、授業を実施しているところが大半だ。一応、カリキュラムやシラバスは学校側がチェックするが、授業内容や指導法はほとんど講師任せになる。ファッションやグラフィックデザインの専門学校は、学校を掛け持ちしている講師もいて、学校で授業レベルに差があるかかどうかも疑わしい。
ファッション専門学校に限って言えば、未だに洋裁学校の延長線上のところもあるわけで、そこで教えているおばちゃん講師たちが果たして時代や業界の変化をどこまで切実に感じているのか。それを理解して授業内容を変化、進化させているとは思えない。確かに学生に基本技術を身につけさせ、理屈をわからせるのは大事だ。しかし、それを高々2年程度で習得できるのか。とても時間が足りないような気がする。
一方で、学校側は学生数の減少からコスト削減に踏み込み、1コマあたりの授業時間を90分から75分に短縮していているところもある。それも名目上は科目を増やし、授業全体が充実したように見せかけたに過ぎない。1科目あたりの年間の授業数を19回から14回まで下げているところもある。学生数の減少という問題に授業時間の削減で対応しているのだ。
4月に入学してもオリエンテーションやら模擬授業やらで時間を稼ぎ、本格的な授業開始はゴールデンウィーク明けという学校もある。さすがに「まだ、授業が始まっていないの」と、大学生の友人から怪訝に思われた学生もいる。かつては年間の授業時間を800時間と謳っていた学校もあったが、今ではまともにそんな授業数を提供していたら、コストが合わないはずである。
あるファッション専門学校の講師には「学生を育てたい」と、堂々と開き直る御仁がいた。実に都合のいい言葉だ。学生が学校を卒業し専門職どころか、まともな仕事に就いていなくても、「育てたい」と言い放っておけば、講師自身は正当化される。
また、別の講師は「海外研修にも連れて行っている」という。だが、実態は旅行代理店に丸投げした御上りコースの観光ツアーに出かけているだけ。おまけに最低催行人員を賄うために他学科の学生までかき集められている。クリエーターの工房を訪れて作業風景を見学・学習したり、トランクショーや生地見本市に出向いて商品や素材に触れるなどは皆無なのである。
そもそも海外に出向く前に、海外に行く目的の設定をしていない。どこが研修なのだろうか。その割に学校側は「何かを掴んで来なさい」と平気で送り出すのだから、片腹痛くてしょうがない。 まさに学校や講師陣には「学生が育ってないなら、あんたらの負けだぞ」と、突っ込みどころはいっぱいである。
繊研新聞は、今回の記事でも「学生が働きたくなるような企業や産業の姿を示すことができれば、服飾系専門学校を目指そうとする学生を増やすことにもつながる。今こそ、産・学が連携して取り組むことが求められている」と、呪文のような結論を述べている。
しかし、専門学校自体が授業数を削減しているのは事実である。そうした実態に対しては何ら問題提起をしていない。入学者数の減少で物理的に学習量を減らせば、教育機関として疑問符が付くのに、やみくもに専門学校を目指せという理屈は全く白けてしまう。
メディアは簡単に産学連携を語るが、消費者が服飾にかける金額はどんどん減り、衣料品の98%が海外で生産される中で、国内におけるファッションの雇用環境が改善される見通しは立たない。衣料品の消費構造が実店舗からどんどんECに軸足を移しているのも事実で、販売スタッフの雇用すら変わっていかざるを得ないのである。
従来のような洋裁学校の延長線上にある服飾教育のみでは、通用するはずがない。第一、そこで教えているおばちゃん講師たちがまず専門学校にでも通ってITから勉強しないといけないのだ。自らはリ・スタディにコストをかけず、 昔取った杵柄のみで手っ取り早く講師のギャラを稼ごうという魂胆がある以上、どだい無理な話である。
数々の人財を輩出している文化服装学院、学生の作品づくりでは群を抜くモード学園といった高度な教育ノウハウをもつ専門学校が残れば、もう十分ではないだろうか。それでもファッション教育を続けたいというところは、経営実態はもちろん、教育レベル、専門職への就職率まで公開し、第三者機関による格付けが必要ではないかと思う。それでDランク以下になれば、潔く学校を閉じる。ファッション教育の市場も縮小均衡されてしかたないと思う。
学生側も本当に専門職、スペシャリストを目指すのであれば、義務教育を終えた直後の高校から学んだ方が確実に成長できるはずだ。そのためにはアパレル企業などのバックボーンは少ない地方都市ではなく、東京もしくはパリ、ミラノ、ロンドン、ニューヨークの学校に通った方が自己実現に近づけると思う。本当に産学連携を叫ぶなら、企業やメディアが試験を行い、優秀な学生には奨学金を出せばいいのである。
数字は嘘をつかない。内定率の減少は業界の今を表す。変化も進化もとげないファッション専門学校と講師陣は、淘汰されてしかるべきである。
一方、専修学校(2年程度就学の専門学校)の2018年卒業時点の内定率は、68.9%(前年同期比1.8ポイント減/厚労省、文科省調べ)。景気回復と人手不足で大学生、高校生の内定率が向上する一方、専門学校生にとって目指す専門職は狭き門のようだ。
と言うか、そもそも専門職は営業マンやエンジニアのように新卒・一括採用ではない。欠員が出た場合など不定期・通年で採用されるケースが多く、学生が学校を卒業する時の内定率が就職の好不調を表しているとは限らない。率をあげるなら内定というより、就職といった方が正確だろうか。
では、専門学校生の内定率が下がっているのは、何が原因なのだろうか。頑に専門職を目指し、一般的な仕事には就きたくない学生が増えているのか。さらなる技術の習得に励むために学業を続ける傾向が強いのか。それとも就職そのものをしないで卒業するのか。はたまた学校が大学編入にシフトし、就職より進学を選択する学生が増えているのか。確実に言えるのは、専門学校生の就活は大学生のような企業説明会や求人サイトを経由して就活〜面接〜内定とは進んではいかないことだ。それもあると思う。
まず、専門学校生のみを対象にした会社説明会はほとんどない。学校に来る専門職の求人情報を頼りにエントリーするのが一般的だ。また、面倒見のいい講師が就職先を紹介するケースもある。いわゆるコネというやつだ。そのため、実際にどれくらいの求人数があるかは把握しづらいし、学校側が内定率や就職先を公開したにしても、そこには一般企業に内定した学生も含まれるから、厳密に専門職での就職とは言い難い。
厚労省、文科省が公開した内定率の68.9%にもたぶん、一般企業、一般職が含まれている。だから、厳密に就職した専門職となると、さらに数値は下がるということである。
かつて専門学校の売りには、就職率99.9%なんてのがあった。だが、学校によっては「家業を継いでも、アルバイト就業でも就職にカウントしている」と、現役の学生から聞いたことがある。さすがに今はそこまではできなくなったにしても、大学や高校と比べると内定率の公開データについて、曖昧な点があるのは確かである。
ところで、専門学校生が目指す職業(国家資格が必要な職業を除き)とは、どんなものか。デザイナー(ファッション、グラフィック、Webなど)、パタンナー、アタッシュ・ド・プレス、カメラマン、ゲームクリエーター、CGアーチスト、イラストレーター、映画監督、俳優・タレント、 声優、 漫画家、アニメーター、 CA(客室乗務員)、スタイリスト、ヘアメイク(美容部員)、 エステティシャン、ネイリスト、 インテリアコーディネーター、アナウンサー、ナレーター、パティシエ、トリマー、スポーツトレーナー、プロ釣り師等々。
ざっくり言うとこんな職種だろうか。どれも夢があるというか、自己実現させたいというか。高校を卒業した18歳の若者たちが憧れる仕事には違いない。そうした職種のリクルーティングはどうなっているのか。筆者が仕事をしている業界から見てみよう。
まずファッションデザイナーやパタンナーは、アパレルメーカーが企画職として募集するケースがある。しかし、会社説明会で一般の大学生と一緒に求人されるケースは少ない。専門学校に直接求人(作品添付も条件)があり、応募したい学生は個別にエントリーするなどの手続きを踏むことになる。
次にグラフィックデザイナーについては、大手広告代理店でも新卒を募集する。会社説明会や企業サイトで一般職として「アートディレクター補」として求人する企業もあるが、新卒では4年制以上の芸術系大学の学生が対象で、専門学校生には応募資格がない。美大出身であっても、学校や教授の推薦が必要とされる場合もある。それは佐野研二郎氏が卒業したタッタ多摩美でも変わりない。
アナウンサーはキー局、ローカル局とも一般職採用の中に枠を設けているが、新卒では4年生大卒、大学院卒が条件なので、端から専門学校生は対象になっていない。
専門学校生でも公募でエントリーが可能なのは、航空会社が採用するCAや化粧品メーカーが募集する美容部員がある。専門教育を受けたことが条件となるし、ルックスや器量が重視されるので、こればかりは学歴重視とはいかない。あとはコンピュータ系の専門学校生を対象にしたシステムエンジニアやプログラマー、ゲームクリエーターくらいだろうか。
他の職種ではほとんど一般公募、新卒採用はない。欠員が出たときや離職率が高い職種での中途採用だ。それでも、専門職は若者には人気が高く、大学生までが受験すると、競争倍率は高くなる。それゆえ、専門学校の内定率が70%を切っている実態、実際にははるかに低い専門職の就職率を学校側はどう受け止めるのか。高卒よりも内定率が低いという現実を見れば、はたして専門学校は就職へのポテンシャルは高いのか。学生や親の意識も変わらざるを得ないのではないかと思う。
ところで、繊研PLUSでは6月20日付けニュースで、「服飾系専門学校の入学者は? 18歳人口減『2018年問題』」とのタイトルで記事を配信した。https://senken.co.jp/posts/2018problem-fashion-school-180620
それによると、ファッション専門学校は18歳以下の人口が減少していく2018年問題に直面しており、18年4月の入学者数が増加した学校は35%(前年から11ポイント増)、減少したは35%(同6ポイント減)だった。(全国の服飾系専門学校対象 アンケート調査/有効回答44校)
ただ、内容を精査すると、「減少した前年からの反動による増加」や「周囲の学校の募集停止」「留学生の増加」から入学者が増加した面があるという。日本は少子高齢で、18歳の総人口は17年10月時点で121万人(総務省統計局)。2000年から何と80万人も減少している。これを大学進学や就職とで奪い合うわけで、就職内定率の減少はますます学生募集に影響するのは間違いない。
若者が夢を追うのを否定するつもりはない。しかし、専門学校側の教育には問題が少なくない。例えば、講師は基本的に非常勤で1コマいくらのギャラで契約し、授業を実施しているところが大半だ。一応、カリキュラムやシラバスは学校側がチェックするが、授業内容や指導法はほとんど講師任せになる。ファッションやグラフィックデザインの専門学校は、学校を掛け持ちしている講師もいて、学校で授業レベルに差があるかかどうかも疑わしい。
ファッション専門学校に限って言えば、未だに洋裁学校の延長線上のところもあるわけで、そこで教えているおばちゃん講師たちが果たして時代や業界の変化をどこまで切実に感じているのか。それを理解して授業内容を変化、進化させているとは思えない。確かに学生に基本技術を身につけさせ、理屈をわからせるのは大事だ。しかし、それを高々2年程度で習得できるのか。とても時間が足りないような気がする。
一方で、学校側は学生数の減少からコスト削減に踏み込み、1コマあたりの授業時間を90分から75分に短縮していているところもある。それも名目上は科目を増やし、授業全体が充実したように見せかけたに過ぎない。1科目あたりの年間の授業数を19回から14回まで下げているところもある。学生数の減少という問題に授業時間の削減で対応しているのだ。
4月に入学してもオリエンテーションやら模擬授業やらで時間を稼ぎ、本格的な授業開始はゴールデンウィーク明けという学校もある。さすがに「まだ、授業が始まっていないの」と、大学生の友人から怪訝に思われた学生もいる。かつては年間の授業時間を800時間と謳っていた学校もあったが、今ではまともにそんな授業数を提供していたら、コストが合わないはずである。
あるファッション専門学校の講師には「学生を育てたい」と、堂々と開き直る御仁がいた。実に都合のいい言葉だ。学生が学校を卒業し専門職どころか、まともな仕事に就いていなくても、「育てたい」と言い放っておけば、講師自身は正当化される。
また、別の講師は「海外研修にも連れて行っている」という。だが、実態は旅行代理店に丸投げした御上りコースの観光ツアーに出かけているだけ。おまけに最低催行人員を賄うために他学科の学生までかき集められている。クリエーターの工房を訪れて作業風景を見学・学習したり、トランクショーや生地見本市に出向いて商品や素材に触れるなどは皆無なのである。
そもそも海外に出向く前に、海外に行く目的の設定をしていない。どこが研修なのだろうか。その割に学校側は「何かを掴んで来なさい」と平気で送り出すのだから、片腹痛くてしょうがない。 まさに学校や講師陣には「学生が育ってないなら、あんたらの負けだぞ」と、突っ込みどころはいっぱいである。
繊研新聞は、今回の記事でも「学生が働きたくなるような企業や産業の姿を示すことができれば、服飾系専門学校を目指そうとする学生を増やすことにもつながる。今こそ、産・学が連携して取り組むことが求められている」と、呪文のような結論を述べている。
しかし、専門学校自体が授業数を削減しているのは事実である。そうした実態に対しては何ら問題提起をしていない。入学者数の減少で物理的に学習量を減らせば、教育機関として疑問符が付くのに、やみくもに専門学校を目指せという理屈は全く白けてしまう。
メディアは簡単に産学連携を語るが、消費者が服飾にかける金額はどんどん減り、衣料品の98%が海外で生産される中で、国内におけるファッションの雇用環境が改善される見通しは立たない。衣料品の消費構造が実店舗からどんどんECに軸足を移しているのも事実で、販売スタッフの雇用すら変わっていかざるを得ないのである。
従来のような洋裁学校の延長線上にある服飾教育のみでは、通用するはずがない。第一、そこで教えているおばちゃん講師たちがまず専門学校にでも通ってITから勉強しないといけないのだ。自らはリ・スタディにコストをかけず、 昔取った杵柄のみで手っ取り早く講師のギャラを稼ごうという魂胆がある以上、どだい無理な話である。
数々の人財を輩出している文化服装学院、学生の作品づくりでは群を抜くモード学園といった高度な教育ノウハウをもつ専門学校が残れば、もう十分ではないだろうか。それでもファッション教育を続けたいというところは、経営実態はもちろん、教育レベル、専門職への就職率まで公開し、第三者機関による格付けが必要ではないかと思う。それでDランク以下になれば、潔く学校を閉じる。ファッション教育の市場も縮小均衡されてしかたないと思う。
学生側も本当に専門職、スペシャリストを目指すのであれば、義務教育を終えた直後の高校から学んだ方が確実に成長できるはずだ。そのためにはアパレル企業などのバックボーンは少ない地方都市ではなく、東京もしくはパリ、ミラノ、ロンドン、ニューヨークの学校に通った方が自己実現に近づけると思う。本当に産学連携を叫ぶなら、企業やメディアが試験を行い、優秀な学生には奨学金を出せばいいのである。
数字は嘘をつかない。内定率の減少は業界の今を表す。変化も進化もとげないファッション専門学校と講師陣は、淘汰されてしかるべきである。