HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

FACoの真価が問われる。

2009-09-14 19:44:20 | Weblog
 翻って09年から始まったFACo(福岡アジアコレクション)はどうだろう。地元のファッション
産業の振興や人材の育成を目的に始まったのだが、コレクションショーそのものは、TGCのスタイ
ルを福岡流に焼き直したものになっている。
 博多織や久留米絣といった素材を使用した商品のお披露目を除けば、地元メーカーやSPAが生産
するメイドインアジアのチープな商品を旬のタレントやモデルに着せて、ランウエイを歩いてもら
う部分もTGCと寸分違わない。お客も一般客を対象とし、商品のインターネット販売や即売まで、
TGCのやり方を踏襲している。
 TGCが全国区になっているので、それで人気が出たモデルやタレントを起用すれば、なおさら動
員効果は高いだろうから、他に企画する必要もなくてプロデュースする側もいたって楽だ。それゆ
え、お客の方もFACoの名前より、TGCの福岡版といった感覚の方が強いのではないだろうか。
 ただ、FACoが始まった目的は何か。地元のファッション産業の振興や人材の育成のはずである。
これが達成されなければ、イベントをやる意味はない。主催者側はこれについて一方的なデータを
公表するだけで、出展メーカーを交えた総括会議を開催した様子は全くない。
 だから、単なるTGCのアレンジ程度でイベントの目的が達成できているかは疑わしいのだ。まし
て、TGCが中国の上海や北京で開かれ人気を博しているのだから、アジアへの発信基地をめざす福
岡のポジションが危うくなっているのは、言うまでもない。
 さらに昨年、西日本鉄道が創業100周年を記念して、「ラブコレクション」というファッション
イベントを開催した。これはインターネット販売や即売はないものの、ショーそのものの企画・演
出はタレントや旬の雑誌モデルを使い、TGCを模した一般客を対象としたエンターテインメント。
 こちらもデザイナーによる新作クリエーションのお披露目というもではなく、バイヤーやプレス
を対象としたコレクションでないことだけは確かである。今年も10月に開催されるようだ。だとす
れば、FACoのアイデンティティや存在感はますます薄くなる。
 うがった見方をすれば、ラブコレが福岡における秋冬向けのイベントで、FACoが春夏向けのイ
ベントで棲み分ければいい。そのようにそれぞれの主催側が陰で談合していくのではとさえ思えて
くる。それが当たらずとも遠からじなら、地元ファッションの振興や人材の育成なんてどうでもい
いということではないか。これから、ますますFACoの真価が問われてくる。

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タレントに着せて売れればいい。

2009-09-14 19:41:57 | Weblog
 なぜ、TGCがここまでお客を引きつけるのか。それはファッションの新作お披露目=業界人向
け(バイヤー、プレス)だったものを、いち早く一般人向け、プラス即売に結びつけたからだ。
 世界で開催されている多くのコレクションはまずは、オンシーズンの半年前に商品を仕入れる
バイヤーに見てもらい、あるいはファッション雑誌の編集者に評価してもらい、修正を加えなが
ら実需の商品を生産していく。また、コレクションの仕掛けとしてスーパーモデルといわれるマ
ヌカン、舞台装置や音響照明といった演出で、ステージをより際立たせていく。
 こうしたトレンド発信の手法が流行の変化が激しい日本市場では、もはや通用しなくなってい
るということだ。SPAが手がける中国を中心にしたメイドインアジアの買いやすいチープな商品
を揃え、テレビ等で見かけるタレントがそうした商品(主催者側はこれをリアルクローズと一方
的に解釈しているが)を着てランウエイを歩く方が、実際に商品を買うお客に対するメッセージ
性や実需効果が高くなる。お客にとっては自分が好きなタレント、あるいは芸人が着てくれる方
が好感が持てるからである。
 外し崩しのファッションコーディネートが当たり前の現在、デザイナーのスタイリングより自
分流の着こなしで構わない。スーパーモデルより旬のタレントを見たいのだから、ウォーキング
の善し悪しなんてどうでもいい。コレクションのあり方がここまでくれば、プロが仕掛けるステ
ージなんて事実上形骸化していると言わざるを得ない。
 出演するタレントもテレビや映画が振るわず、CM制作も激減し、芸能界でのメーンの仕事は
少なくなっている。プロダクション所属のモデルもファッション雑誌が頭打ちの現状を考えると、
タレント寄りで仕事の幅を広げないと食っていけない。事務所側もTGCに登場するブランドで知
名度を上げれば、ひいてはファッションのプロデュースの仕事につながると考えるのは当然だ。
 酒井法子のケースがあるのだから、ファッションにタレントを起用するのは非常にリスクが高
いのだが、万一の不祥事を割り引いても旬のタレントでこれだけの効果があればそちらを選ぶ。
今の日本のファッション業界にじっくりブランドを育てるような余裕はないようだ。…続く。

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TGCはどこへ行くのか。

2009-09-14 19:39:52 | Weblog
 さる9月5日、今や国内最大級のファッションイベントとなった「東京ガールズコレクション/
TGC」が、代々木体育館で開かれた。今回はトップショップやキットソンなど、海外ブランドも
参加するなど、9回目にして史上最大の規模となっている。
 コレクションとはいい、新作のクリエーションのお披露目というより、とにかく多くブランド
を旬のタレントやモデルに着せることで、お客への購買喚起=実需を起こそうという方向性が強
くなっているように思える。
 それを証拠に、今回は伊勢丹が仕掛ける「イセタンガール」や洋服の青山の「リクルートスー
ツ」といった既存の売場に並ぶ商品まで登場する始末。もはや、プロデュースする側には「何で
も出して反応を見よう」「協賛してくれるなら拒まず」という思惑が見え見えである。
 商品の売上げも開幕24時間以内の携帯電話やパソコンを使ったインターネット通販と会場内販
売を加えると約5900万円にも及び、過去最高を更新したという。来場者が2万3100人というか
ら、単純計算すると客単価は約2600円となる。これが高いか、安いか意見は分かれるところだ
ろうが、フリーズマートやキットソンスタジオは店売りも大幅に伸びているというから、ブラン
ドやショップによっては実需につながっているのは間違いない。
 ここまで来ると単なるファッションの枠を超え、日本の新たなビジネスムーブメントと言えそ
うだ。ファッションビジネスの構造も素材や色、デザインを発信するクリエーション主体という
より、ブランドやショップをいかにタレントを使って効果的に見せるかに変わってきた。
 もう、日本ではデザイナーによるファッションやクリエーションは必要とされていないのか。
ここまでくれば、世界4大クリエーションの東京コレクションは完全に埋没した感がある。ファ
ッションビジネス検定の問題さえ、変わってくるかもしれない。…続く。

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値入れの改善と荒利益の確保。

2009-09-03 19:34:13 | Weblog
 自主編集売場を作る時、必要なことは値入れ率と荒利益率をどれくらいに設定するかである。
 多店舗化していない百貨店の場合、自主編集売場の管理コストは、商品当たり20%ほどは
かかるだろう。それに商品発注のリスクと売れ残りロスを同20%は見ないと利益は残らない。
これにじっとしてても場所貸しで入ってきた歩合を同20%乗せるとなれば、
値入れが60%以上確保できなければ、場所貸しを上回る儲けにはならない。
 だから、アパレルとタイアップするような政策では利益なんか出ないということだ。
小回りが利く中小のOEMメーカーか、工場直発注しか採算は合わないのである。
 もっとも、百貨店オリジナルだけでは品揃えのバラエティさやコーディネートの楽しさを欠くので、
利益の薄い仕入れ商品も必要になり、その分のリスクやロスをカバーする利益も出さなければならない。
それをメーカー任せでは荒利益が確保できず意味がない。だから、自主編集売場は百貨店が自ら
開発しないと成立しないのである。
 結局、百貨店の自主編集売場とは、派遣社員の人件費や売り残り在庫のリスクなど中間コストを
カットする分、オリジナル開発+αに投資できるということ。ベネトンやザラのような欧米型SPA、
またはユナイテッド・アローズやビームスのようなセレクトショップに近いコンセプト型ショップと
いうことになるだろう。
 百貨店がファッションというカテゴリーで、このようなビジネスモデルを確立すれば、ブランドに
左右されない独自性をもてるし、荒利益率は格段に改善されるはずである。各売場が有機的に結びつき、
販売スタッフの配置など効率化が図られれば、運営コストも下がっていく。
 これなら都心のみならず、郊外SCへの各店舗出店も可能になり、百貨店の新たな市場開拓に展望が開ける。
あの集客力があるのだから、売上げ回復なんか簡単である。
 当然、高い付加価値創造には、企業ブランドや客層が似ている百貨店間の提携も必要である。
(実際にはそうでないところで、経営統合が進んでいるが)
自主編集売場の構築と百貨店間の提携は、現状の百貨店向けアパレルとの関係も根本的に変える。
百貨店は自主編集売場を増やしていけば、百貨店系アパレルは出店先を失ってSPA化し、
独自で店舗展開せざるを得ない。それが長年にわたった蜜月関係やもたれあい構造に終止符を打つのである。
 百貨店が手をつけるべきは、販売チャンネルの拡大ではなく、商品と売場の改革なのである。

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手をつけるは商品と売場の改革。

2009-09-03 19:02:48 | Weblog
 そもそも百貨店のファッションが何で売れないのか。それは商品自体に魅力がないからである。
価格、デザイン、素材感、スタイリング、そして価値。外資系SPA、国内セレクトショップなど
ファッションビルの方がいい商品がいくらもあるからだ。
だから、販売不振のファッションで改革すべきことは、高い付加価値の確立。つまり、かつて
中途半端で終わってしまった自主編集売場を本格的に自社で開発することに尽きる。
 自主編集売場を広げることは、決して難しいことではない。それができれば、ブランドの
インショップと対峙できるくらいの付加価値を創造できるのである。
 まず、自店でブランドメーカーが行っているような企画、仕様開発、生産ラインと素材の確保まで
踏み込む。それによって価格に対する価値はもちろん、商品リスクまでカバーできる値入れを確保できる。
これまでのように納入掛け率の高い百貨店系アパレルと取引するのでは無理かもしれないが、
中小のアパレルにも目を向ければやり方はいくらもある。1社の規模で無理と思うなら、
統合した百貨店のスケールメリットをいかせばいい。
 自社企画とはデザイナー等の企画スタッフを抱えることではない。中小アパレルで小回りが利く
OEM(相手先ブランド生産)メーカーや細かな仕様まで対応してくれる工場を利用すれば、
百貨店のバイヤーレベルでも商品開発は容易である。
 ヤングに人気のあるセシルマクビーは、販売スタッフが絵型を描き、出来上がったサンプルで
細かな修正等の試行錯誤を繰り返しながら、求める仕様に近づけている。
 商品開発が面倒というバイヤーならいざ知らず、若手スタッフならみなやってみたい仕事のはず。
こんな時にこそ経営トップが「任せるから、やってみろ」と、トップダウンの決断を下してもいいのでは。
若手社員が集まって、センスがいいのか悪いのかよくわからない地元のスタイリストを使い、
2週間交代で売場のコーディネートするような時間と金があるなら、商品改革の方に手をつけるのが先だ。
 もう少し、具体的に説明すると、課題は百貨店の商品の価値である。例えば、商品価格を
1万円とした場合、通常、その原価率は百貨店が20%、ユニクロが30~40%と言われている。
つまり、同じ価格ならユニクロの方が価値が高いということになる。これをバイヤーは認識すべきだ。
 なぜ、こうなるかはユニクロなどのSPAやユナイテッド・アローズなどのセレクトショップが
ファッションビルに出店する時の家賃と、百貨店の納入掛け率との差が影響している。
価値を上げるには原価率を見なさなければならないのだが、それが難しいからこそ、自主編集
売場づくりが重要なのである。
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売上げ回復とネット販売。

2009-09-03 18:55:46 | Weblog
 不況と顧客離れが相まって販売不振に歯止めがかからない百貨店。
それから1日も早く脱却しようと岩田屋が9月2日、新戦略を打ち出した。トレンドの
ファッションを集めたインターネットショッピングサイト「スタイルエディション」がそれだ。
これまでギフトや食品のサイトはあったが、ネットショッピングが急速に拡大?していることも
あって、岩田屋もようやく重い腰をあげたようだ。
 というより、売上げ回復のためならもう四の五の言ってられない。少しでもビジネスの可能性が
あるなら何でもやるということだ。ただ、「溺れる物は藁をも掴む」ということわざがあるが、
ファッションビジネスで考えると、それは「遅きに失した」と言わざるを得ない。
 なぜか。ネットショッピングはすでに大手が市場を席巻し、後発の業者との激しいシェア争いを
繰り広げている。市場規模は数兆円あるものの、各社とも売上げは頭打ちの状態になっている。
特にファッション系ショッピングのコンバージョンレート(消費者がアクセスした数に対して実際に
購入した比率)は、10%程度と限界値にきていると言われる。
 ニッセンのような通販企業も、かつてのような倍々で伸びる時代ではないと言い始めているし、
ヤフーは今年に入り出店数の伸びが減速していることもあって対策に追われている。
つまり、消費者はネットショッピングというチャンネルを特別ものとは思わなくなってきたのだ。
ネットで商品を確認して、実際は売場で試着して商品を買う、そういう購買行動に移ってきている。
だから、後発の岩田屋がネットショッピングに入ったところでどれほどの効果があるのか。
投資以上の売上げが得られることは正直難しいと言わざる得ない。
 そもそも、岩田屋を始めとする百貨店のファッションがなぜ売上げ不振に陥ったのか。
それを担当者はわかっているのだろうか。バブル崩壊後、百貨店は高級品が売れなくなったことで、
MD(商品政策)の見直しを打ち出した。しかし、結果的にMDは売れ筋偏重になり、
他店との商品の同質化を招いてしまった。そこで、今度は「自主編集売場」の構築を
声高に叫び始めた。自らリスクを抱えて、商品を仕入れ販売するという戦略である。
 しかし、百貨店は販売員の8割は、メーカーなどの取引先からの派遣社員で、品揃えや価格の決定権、
在庫の最終処分のリスクは取引先が負う消化仕入れ構造でずっとやってきた。それが長い商慣習だった。
 実際に作られた自主編集売場はほんの一部で、買い取り比率は売上げで1%程度。
軌道に乗せられところも伊勢丹のような人材が豊富なところに限られた。岩田屋のように買い取り、
自主販売に踏み出したはいいが、単なる買い取りではリスクに見合う高い値入れが確保できず、
逆に人件費率のアップで荒利益が下がるという惨憺たる結果を招いたのは、周知の通りである。
販売効率も収益性も消化仕入れの水準に達しないため、結局、自主編集売場も拡大されないまま、
今日まで来てしまったということである。
 だからといって、すでに踊り場に来たネットショッピングではないだろう。百貨店のファッションが
売れない原因は何か。それを突き詰め、商品改革に手を付けるのが先決だ。これから先は話が
長くなるので、後段で述べることにする…続き。

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