HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

Yohji、何を語るか。

2011-02-20 10:46:15 | Weblog
 デザイナー山本耀司が自らを書いた著書「MY DEAR BOMB」の日本語版が発売される。
これまでFashion memoirやTALKING TO MYSELFなど、作品やコレクションのフォトブックは
見ていたが、こみ上げるクリエーションや洋裁の基本技術、生地やシルエットなどにも斬り
込んでいるというから、初の自伝的著書としては読むのが楽しみだ。

 一昨年、ヨウジヤマモトという企業は、経営不振に陥り耀司氏自ら経営の一線を退いた。
元来、ヨウジヤマモトはDCアパレルメーカーであり、多国籍企業であり、世界のファッション
業界としては別段珍しくはなかった。

 ただ、他社と違うのは耀司氏がデザイナーであり、社長も務めながら、こと経営に関しては
指示したり、財務に関わったりしなかったこと。あくまでクリエーターであり、マーケットとか
売上げとかは結果論に過ぎないということで首尾一貫していた点だ。

 それが80年代のようにDCブランドが売れていた時期は良かったが、世界的な不況や
ファッション後進国の経済成長で、機能しづらくなったのは間違いない。耀司氏自らは
身売りの記者会見で「裸の王様だった」と語り、経営面で注視していなかった点を詫びている。

 でも、耀司氏はあくまでクリエーターだから、彼一人の責任ではないだろう。
経営の最前線にいるスタッフがもっと舵取りをきちんとする必要があったのかもしれない。
自叙伝を通じて耀司氏がその辺の葛藤や機微を自らの言葉でどう語るか。実に興味深い。

 DC世代として、耀司氏のデザイン、カラー、素材、シルエットはずっと好きだった。
昨今のマスマーケット攻略やグローバルファッションの見地からみれば、厳しいのもわかる。
ただ、懐が広い世界的なSPA企業も台頭していることだし、クリエーションを維持しつつ、
新たなビジネスモデルを作ることはいくらでもできるはずだ。
 自叙伝出版を機に、新しいヨウジヤマモトに期待したい。
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一業種一社のルール無視。

2011-02-19 12:44:24 | Weblog
 昨年、6月に開催されたサッカーW杯の南アフリカ大会。マスメディアは日本代表のベスト16進出ばかりに終始したが、W杯の成功は放映権料やスポンサー収入抜きには語れない。
 世界的なイベントにこれほど企業が協賛するのようになったのは、82年のW杯スペイン大会に遡る。それまでのW杯では組織委員会は大会ごとに独自にスポンサーをつけ、スタジアムに自社の看板を出す、あるいは会場で商品を販売する権利を独占して得るには、実に煩雑な作業が必要だった。

 スポーツマーケティング会社の「ウエスト・ナリー」社は、スペイン大会でこうした課題を解決するために画期的なシステムをあみ出した。それはFIFAが看板をはじめとするコマーシャル権利をもち、開催国、組織委員会は大会運営だけを行なうというものだ。W杯や欧州選手権などインター・サッカー4をワンパッケージ、4年間としてひとつのサイクルとして売り出したのである。

 その時の条件が「スポンサーは一業種一社」だった。マーケティング会社なり、広告代理店なりがスポンサーを獲得する上で、同時に2社以上の同業を担当すれば、競合他社の製品の購買も促すことになる。こうした企業間の矛盾を起こさず、国際社会のモラルを守っていくには一業種一社は不可欠で、すでに世界的な常識になっている。

 ところが、日本の広告代理店に限った場合、このルールがほとんど守られていない。電通は競合の自動車メーカーや食品メーカーのCMを担当しているし、博報堂にしてもしかりだ。今は電通に一本化されているが、ADK(アサツーデーケー)も一時は、海外ラグジュアリーブランドの雑誌広告を何社も扱っていた。
 結果として、主要な広告代理店がテレビや新聞、雑誌などの媒体を抑えて自由競争がなくなるどころか、代理店自体の国際競争力も低下させている。それはスポンサー企業にとってもマイナスである。
 
 イベントにスポンサーが付くのは、世界的スポーツのみならず、ミュージシャンのコンサートから俳優のミュージカルまで様々。記者発表のフォトセッションからスポンサーづくめである。
 日本でも谷町、ご贔屓という意味では、問題山積の相撲界をはじめ、歌舞伎など古来からある。ファッション業界でも資金に乏しい中堅以下のデザイナーがコレクションを行なうには、ユダヤ人実業家やアラブの王様などが谷町に付くのが恒常化している。その場合でも一業種一社の不文律は守られているはずだ。

 翻って、3月20日に開催される福岡アジアコレクション。そのホームページを見て驚いた。スポンサーには、百貨店の「博多阪急」と「大丸」、ショッピングセンターの「アミュプラザ博多」「福岡パルコ」「キャナルシティ博多」と、競合企業が堂々と名前を連ねている。

 こちらのプロデュース企業も先の広告代理店同様だ。ルーチンで事業を入手し、企画競争力の欠片もないから、スポンサー営業も頭打ちになる。まあ、スポンサー側にしてみれば「福岡発展のためには、競合より共生が必要だ」とお決まりの言い訳もできるだろう。しかし、競争がないところに発展はないわけで、それは共生はでなく、談合なのである。
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