さる9月3日、ディスカウントストア「DSイズミうきは店」が福岡県の吉井町にオープンした。イズミは1996年から
SC「ゆめタウン」を50店以上展開するが、リーマンショック以降の景気低迷で、業態変更を余儀なくされた形だ。
イズミ側は、様々なローストオペレーションで、食品は既存のGMSより1~2割安くできたと語る。しかし、デフレが
蔓延している昨今、それくらいのディスカウントではちっとも安さを感じない。それに低価格、中収益のPBも数量は少な
く、競争力には?がつく。出店意図は圧倒的な安さより、顧客の囲い込みのようだが、こと食品に関してはほかのスーパー
でも十分いいやという印象である。
これに対して、衣料品は“圧倒的に安い”。オープン特価ではメンズビジネススーツの4,980円をはじめ、レディスコーデ
ィネートが3,180円、子供コーディネート2,310円。プロパーのデイリーウエアも乳児から大人まで370円~970円と格安。
もともと、イズミはゆめタウンで百貨店の平場にも劣らないファッション衣料をリーズナブルな価格で販売してきた。
OEM系アパレルや商社を使って、100%買い取りと独自企画のVMDを前提にしたことで、そこそこのクオリティと感度、
提案力をキープしつつ、リーズナブルな価格を実現できたのだ。今回のDSではこうしたノウハウが生かされ、競合店を完全
に駆逐するレベルの商品を並べている。実際、オープン直後は、「売れに売れた」とイズミ広報担当の後藤郁生課長は語っ
ている。
振り返れば、量販系ファッションはGMS低迷の原因でもあったことから、ずっと改革が叫ばれてきた。ダイエーは靍木邦
夫社長の陣頭指揮のもと、衣料品改革に着手したがあえなく失敗。「ごはんがおいしくなるスーパー」と、実質はSM戦略に
シフトした。
ジャスコはデザイナーの永澤陽一氏を起用してPB「トップバリュ」のファッション性を高め、価格志向から転換した。し
かし、単品感覚のMDから抜けきれず、それが価格の割高感を生んで苦戦を続けている。
イトーヨーカドーもセブン&アイ生活デザイン研究所を設立し、元伊勢丹バイヤーの藤巻幸夫氏などを迎え、企画・開発
から売場運営、プロモーションまで一貫した製造小売り体制とブランディングを志向した。百貨店感覚の洗練された商品を
量販店プライスで提供できたところは良かったが、GMS領域の5割程度しかカバーできず、消費者にインパクトを与える
までには至っていない。
このように量販系ファッションは、マーケットの中でそのポジションを確立しづらいことから、なかなか改革が緒につか
ないままだ。その間、ユニクロやしまむらの台頭、さらに外資系ファストファッションの登場で、ますます窮地に追い込ま
れている。
もっとも、イトーヨーカドーのように企画から販売まで一貫した製造小売体制を志向するなら、ユニクロのような完全
SPAのほうがはるかに効率がいい。店舗や売場が作りやすいし、何よりブランド力を上げられ、消費者の目を引くからだ。
一方、しまむらやフォーエバー21のようなOEM調達型なら、アパレルの企画提案をロット買いすれば良く、小刻みなトレ
ンド提案と小ロットが可能になるが、それにはブランドを強力にアピールする“販売員”が欠かせない。
いまのファッション市場は、NB、DCからセレクト、SPA、そしてファストファッションまで勢揃いしている。それゆえ、
消費者が最も求めるのは、トレンドがいかに値ごろ感で提案されるか、またはレイヤード、着回しの利くベーシックな単品
衣料が低価格か、である。特にヤングファッションほど品質や完成度を犠牲にしても、“ロープライス&スピード”に徹しな
ければ勝負にならず、主戦場は完全に「価格」と「素早さ」に移ったと言わざるを得ない。
当然、量販店が今のマーケットを開拓したいなら、OEM調達型のバイイング、さらに企画提案のODM型でなければ勝ち
目は無い。それにはアパレルの企画提案をロット買いするバイイングパワー、売場づくりや販売力(スタッフという意味
ではない)、商品を展開するVMDが必要。アパレル側にも小刻みなトレンド提案と、小ロット対応の企画力や機動生産力
が求められる。
要はビジネスに至るには、量販側は100%買い取りで、最初に売価や利益ではなく、付加価値に対する卸価格でアパレル
を評価すること。アパレル側にはそれを実現するAMS(Apparel Manufacturing Service/企画開発機能を持ったアパレル
受注生産業者)のノウハウと、製造と商業の両面から見たコスト計算、そして適正規模の卸価格の設定が必須条件なのだ。
ただ、ことは簡単に進まない。昨年6月、ウォルマート傘下の西友がウォルマートPBの「ジョージ」を、日本仕様のファ
ストファッションとして売り出した。こちらもウォルマートのODM調達網を駆使しして、企画開発したはずだ。しかし、
ネット販売はともかく、肝心の店舗で売上げを取らなければならないのに当の西友は改革のただ中。ウォルマートジャパン
としても、M&Aによる出店拡大が並行して進まなければ、ブランドの認知度や販売力はあがらない。
イオン九州の「ROUTE80」にしても然り。イオンスタイルさえ、軌道に載せられていないのだ。今回も量販発想で最初
に価格、利益なら、アパレルを苦しめるだけだし、何より売場づくりや販売力が不可欠。アパレルやデザイナー側も、まず
AMSノウハウが必須条件になる。これらが合致しない限り、絶対に成功はあり得ない。
すでにバロックジャパンの「アズール・バイ・マウジー」やフリーズインターナショナルの「フリーズマート」がODM
調達で、着実にマーケットを開拓している。競争相手は実力者揃いなのだ。
企画をプロデュースする側が単なるスポンサー・ブランドとして仕掛け、ローカル放送局も情報番組における「生コマ」
のアカウント狙い程度なら、それは全くファッションビジネスをバカにしたド素人発想と言わざるを得ない。
SC「ゆめタウン」を50店以上展開するが、リーマンショック以降の景気低迷で、業態変更を余儀なくされた形だ。
イズミ側は、様々なローストオペレーションで、食品は既存のGMSより1~2割安くできたと語る。しかし、デフレが
蔓延している昨今、それくらいのディスカウントではちっとも安さを感じない。それに低価格、中収益のPBも数量は少な
く、競争力には?がつく。出店意図は圧倒的な安さより、顧客の囲い込みのようだが、こと食品に関してはほかのスーパー
でも十分いいやという印象である。
これに対して、衣料品は“圧倒的に安い”。オープン特価ではメンズビジネススーツの4,980円をはじめ、レディスコーデ
ィネートが3,180円、子供コーディネート2,310円。プロパーのデイリーウエアも乳児から大人まで370円~970円と格安。
もともと、イズミはゆめタウンで百貨店の平場にも劣らないファッション衣料をリーズナブルな価格で販売してきた。
OEM系アパレルや商社を使って、100%買い取りと独自企画のVMDを前提にしたことで、そこそこのクオリティと感度、
提案力をキープしつつ、リーズナブルな価格を実現できたのだ。今回のDSではこうしたノウハウが生かされ、競合店を完全
に駆逐するレベルの商品を並べている。実際、オープン直後は、「売れに売れた」とイズミ広報担当の後藤郁生課長は語っ
ている。
振り返れば、量販系ファッションはGMS低迷の原因でもあったことから、ずっと改革が叫ばれてきた。ダイエーは靍木邦
夫社長の陣頭指揮のもと、衣料品改革に着手したがあえなく失敗。「ごはんがおいしくなるスーパー」と、実質はSM戦略に
シフトした。
ジャスコはデザイナーの永澤陽一氏を起用してPB「トップバリュ」のファッション性を高め、価格志向から転換した。し
かし、単品感覚のMDから抜けきれず、それが価格の割高感を生んで苦戦を続けている。
イトーヨーカドーもセブン&アイ生活デザイン研究所を設立し、元伊勢丹バイヤーの藤巻幸夫氏などを迎え、企画・開発
から売場運営、プロモーションまで一貫した製造小売り体制とブランディングを志向した。百貨店感覚の洗練された商品を
量販店プライスで提供できたところは良かったが、GMS領域の5割程度しかカバーできず、消費者にインパクトを与える
までには至っていない。
このように量販系ファッションは、マーケットの中でそのポジションを確立しづらいことから、なかなか改革が緒につか
ないままだ。その間、ユニクロやしまむらの台頭、さらに外資系ファストファッションの登場で、ますます窮地に追い込ま
れている。
もっとも、イトーヨーカドーのように企画から販売まで一貫した製造小売体制を志向するなら、ユニクロのような完全
SPAのほうがはるかに効率がいい。店舗や売場が作りやすいし、何よりブランド力を上げられ、消費者の目を引くからだ。
一方、しまむらやフォーエバー21のようなOEM調達型なら、アパレルの企画提案をロット買いすれば良く、小刻みなトレ
ンド提案と小ロットが可能になるが、それにはブランドを強力にアピールする“販売員”が欠かせない。
いまのファッション市場は、NB、DCからセレクト、SPA、そしてファストファッションまで勢揃いしている。それゆえ、
消費者が最も求めるのは、トレンドがいかに値ごろ感で提案されるか、またはレイヤード、着回しの利くベーシックな単品
衣料が低価格か、である。特にヤングファッションほど品質や完成度を犠牲にしても、“ロープライス&スピード”に徹しな
ければ勝負にならず、主戦場は完全に「価格」と「素早さ」に移ったと言わざるを得ない。
当然、量販店が今のマーケットを開拓したいなら、OEM調達型のバイイング、さらに企画提案のODM型でなければ勝ち
目は無い。それにはアパレルの企画提案をロット買いするバイイングパワー、売場づくりや販売力(スタッフという意味
ではない)、商品を展開するVMDが必要。アパレル側にも小刻みなトレンド提案と、小ロット対応の企画力や機動生産力
が求められる。
要はビジネスに至るには、量販側は100%買い取りで、最初に売価や利益ではなく、付加価値に対する卸価格でアパレル
を評価すること。アパレル側にはそれを実現するAMS(Apparel Manufacturing Service/企画開発機能を持ったアパレル
受注生産業者)のノウハウと、製造と商業の両面から見たコスト計算、そして適正規模の卸価格の設定が必須条件なのだ。
ただ、ことは簡単に進まない。昨年6月、ウォルマート傘下の西友がウォルマートPBの「ジョージ」を、日本仕様のファ
ストファッションとして売り出した。こちらもウォルマートのODM調達網を駆使しして、企画開発したはずだ。しかし、
ネット販売はともかく、肝心の店舗で売上げを取らなければならないのに当の西友は改革のただ中。ウォルマートジャパン
としても、M&Aによる出店拡大が並行して進まなければ、ブランドの認知度や販売力はあがらない。
イオン九州の「ROUTE80」にしても然り。イオンスタイルさえ、軌道に載せられていないのだ。今回も量販発想で最初
に価格、利益なら、アパレルを苦しめるだけだし、何より売場づくりや販売力が不可欠。アパレルやデザイナー側も、まず
AMSノウハウが必須条件になる。これらが合致しない限り、絶対に成功はあり得ない。
すでにバロックジャパンの「アズール・バイ・マウジー」やフリーズインターナショナルの「フリーズマート」がODM
調達で、着実にマーケットを開拓している。競争相手は実力者揃いなのだ。
企画をプロデュースする側が単なるスポンサー・ブランドとして仕掛け、ローカル放送局も情報番組における「生コマ」
のアカウント狙い程度なら、それは全くファッションビジネスをバカにしたド素人発想と言わざるを得ない。