HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

FACo出展メーカーの本音。

2010-06-29 20:27:13 | Weblog
 そして、取り組み発表が2社しかないというのはどういうことか。FACoにどんな目的で出展し、どんなビジネス展開の手段にしようとしているのか。そんな話がもっとあってもいいはずだ。
 発表した一社は「エルエイトレーディング」で、昨年と同様。ブランド「ラブジャンキー」の状況報告。新しく加わったのはイベントの展開だけ。もう一社は「イオン九州」。こちらはGMS低迷の元凶が「衣料品の不振」であること。特に「イオンスタイル」は全く売れていないだけに、FACoブランドのような「量販」「チープ」「タレントコラボ」は、ヤングの集客を図る上では願ったりだったようだ。
 ところが、今年参加した「ジェイエーシートレーディング」や「ベルアパレル」、ヤマトドレス系の「フリッジ」など、新人デザイナー各位の発表はなぜ行なわれなかったのか。特に新人デザイナーこそ、その活動内容がクローズアップされてもいいし、フォローアップもしてあげるべきだろう。
 来年は博多駅に阪急百貨店が開業するため、企画運営委員長は来年のFACoで同社とのタイアップを示唆した。しかし、阪急が狙うのはミセス(中高年)層になるはず。天神とヤングマーケットを引っ張り合っても勝ち目はない。その辺は満を持しての九州進出だけに市場調査は十分しているはず。だとすれば、20~30代を対象にするFACoにどう関わるのか。もし、阪急が商品の売場を提供するなら、これまで協力した博多大丸を袖することになる。
 ほかにも問題を上げると枚挙にいとまがない。極めつけはこの4月から運用されている「ファッションサイト福岡」(https://fashionsitefukuoka.jp/ja/tp/tp010)について一切触れなかったことだ。これは昨年9月、県の中小企業振興課が公募したもの。制作費は国の緊急雇用基金約2700万円が当てられている。企画書のみの提出で、プレゼンは無し。選考は推進会議が行ない、地場のWEB制作会社に発注されている。
 このコラムでも書いたが、正直、このサイトはデザインもコンテンツも最悪の出来だ。WEBが一般化している今日、こんなレベルのサイトを見たことがない。だからだろうか。アピールして参加者に見られると、逆に他の発表内容がかすんでしまうというのか。せっかく多くの参加者がいてヘアサロンのページもわざわざ設けているのだから、アピールしても良さそうなものだ。それとも、2700万円も使っておきながら「このザマ」というのを、業者選定した推進会議は承知しているということか。
 昨年のフォーラム終了後、業界紙の「繊研新聞」が7月10付けの同紙に「福岡のコレクション」というタイトルで以下のようなコラムを掲載した。そこには「主催者の思いとは裏腹に、出展メーカーにはもやもやした不満がある。メーカーを交えた総括会議が開かれた様子はなく、例えば発表された『福岡ブランド』を売る際に、なぜネット販売が優先され、メーカーは解禁日までまたなければならないのか、あるいはネットやオフィシャルショップでの売上げがどうだったのか、など知りたいことが明らかにされていないという。(中略)少なくともコレクションに出展したメーカーが『自分たちの意見は無視された』と感じた運営方法には改善の余地があると思う」と、業界メディアとして冷静に推進会議や企画運営委員会の問題点を指摘した。そう、ファッション業界としてはこれが正論なのだ。
 今年も総括会議が開かれたケースはなく、推進会議や企画運営委員会のやり方は疑問と疑惑だらけ。それが解消される様子もなく、4ブロックに渡って書いてきた有り様である。それらが晴れない限り、「推進会議とFACoは企画運営委員長とその学校、放送局、イベント会社にとっての目的と手段」と断じざるを得ない。

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不公平なインターンシップ。

2010-06-29 20:24:54 | Weblog
 福岡アジアファッション拠点推進会議の活動報告には、問題点だらけである。まず「インターシップ」は「昨年、15名ほどが参加した」との報告があった。「では、どの学校の学生がどれくらい参加した」かは一切公表されていない。これは明らかにおかしい。推進会議の発足当初の企画書には「専門学校、大学、短大から毎年平均800名の学生を輩出している」と書いてあった。だからこそ、事業として公金が拠出されたのではないか。
 なのに「参加した学校がどこか」か、公表されないのは大問題。というよりも一部の学校だけが恩恵を受け、全くフェアな制度になっていないことだ。今年に入り、公募制となったようだが、今度は「オファーが全くない」という学校が少なくない。制度の不備というより、誰かが得をする不公平な制度としかいいようがない。
 人材育成の一環という「エフスタイル」も問題がある。まず、出店先の「ヴィオロ」が適正だったかどうか。このビルを運営する東京建物グループは、ファッションデベロッパーではない。そのため、ノウハウや企画力が乏しく、06年の9月のオープンからずっと苦戦を続けている。それを証明する事例として、店長会議で堂々と「5階をメンズフロアにしたい」などと宣ったという。メンズのブランドメーカーやテナントからすれば、「バッティング」の問題があって、そんなことできるはずがないのに。テナントの間からは「正直、呆れた」という声があがっている。
 だから、エフスタイルのオープンは商工会議所からのオファー、期間限定の展開、空きスペースの穴埋めという点で、デベロッパーとしては「それなら」と了解した程度だろう。テナントを真剣にインキュベートする力など、あるはずもない。
 展開する商品はジュンヤタシロの「ヒミツキチ」は、すでにセレクトショップに卸しをしており、バッティングの関係から大々的な展開されていない。本人はもっとブランド力をアップさせるために一等地に直営店を展開したいだろうが、それには莫大な資金が必要になる。岩谷俊和の「DRESS33」に資金を出した興和のような谷町がつけばいいが、福岡では厳しいだろう。
 その興和でさえ、岩谷俊和のスポンサーを撤退した。事業にするならマーケットの狙いとビジネスモデルを見れば、将来性のある投資か、ドブに金を捨てることになるか。資金を出す側は判断しなければならないのである。
 一方、「クオンタイズ」は、ドレスメーカーのため、受注生産がメーンになる。一部の商品は展開していたが、こちらのスタンスからすれば、「既製服」や「量産」はなじまない。他に3ブランドも限られたアイテム。テイストやコンセプトはすべてバラバラだから、ショールームの域を出ない。このビルでは大手にセレクトショップでさえ、苦戦を強いられているのにこの程度の品揃えではフェイスも飾れず、MDが際立つはずがない。それより、地道に「卸し先」を獲得するための展示会やインスタレーションにもっと手を貸してやるとか、一層のことクリエーション重視でバイヤーやプレス対象のコレクションをやるべきではないか。
 企画運営委員長の常套句を借りれば、仮に「エフスタイルでの展開がきっかけで、仮に大手セレクトやメーカーからオファーがかかる」ことになっても、ブランド名とデザインだけ採られて中国工場で量産されるのがおち。それはデザイナーたちがいちばんわかっているはずだ。…続く。

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大本営発表とFACo。

2010-06-29 20:22:36 | Weblog
 今年の「福岡アジアファッション拠点推進フォーラム」も昨年同様、企画運営委員会の「大本営発表」に終始した。また、しんがりの取り組み発表もメーカー2社に止まり、全く中身の薄いものだった。
 内容は講演目的で参加した異業種の方々なら「へえ~」と思うかもしれない。でも、ファッション業界関係者にとっては、今年も手合いのいい「ごまかし」で、うまくお茶を濁したなと受けとれる。
 まず、活動報告がパワーポイントとコメントの報告で、内容をまとめた「リリース」は一切配布されていない。企画運営委員長が壇上にあがって、スクリーンに映し映し出された項目を口頭でフォローするだけ。広報体制としてはあまりに不備だ。ペーパーレスを考えているというなら、せめてWEB上でも詳しくディスクローズしてもらいたい。
 まず、FACoは日本の4大コレクション(東京コレクション、東京ガールズコレクション、神戸コレクション、残りがFACo)の一つに入るとの報告だったが、そうした客観的データが何も示されていない。また、今年のFACoの結果報告では、着実にアジアとのビジネス交流が生まれたような報告がなされた。
 これについても北京や上海で開催しイベント、ブランド共に認知されている東京ガールズコレクションや神戸コレクションならともかく、FACoは現地で行なっていないのだから、そのポジションはあいまいと言わざるを得ない。それゆえ、ファッションビジネスの視点がぼけている。福岡としては中国を始めとするアジアを「マーケット」にするのか、それともアジアから福岡に「お客を呼ぶ」のか、である。活動報告ではそうした結果説明と事業経過が極めて中途半端だった。
 福岡のファッション産業では、FACoに出展したアパレルメーカーの100倍以上を専門店(セレクト含む)の売上げが占める。つまり、産業の根幹はショップ、いわゆる「小売業」なのだ。だから、買い物客が増えないとファッション産業はぜったい盛り上がらない。しかし、FACoではほんの数社アパレルメーカー、SPA側にメリットがあるだけで、個人のデザイナーや地元の専門店へのフォロー、フィードバック機能ほとんどない。
 しかも出展ブランドの半数が「NB(ナショナルブランド)」というから、福岡独自では限界があることを露呈している。「福岡」を強調しておきながら、半分が他都市のブランドで何が「情報発信」というのか。ここにも活動報告の矛盾がある。
 逆に出展したアパレルメーカーにしても、工場という生産拠点(これが大連などの中国アパレルの生産エリア)ならアジアでもいいだろう。
 しかし、進出するとなると話は別だ。FACoに参加したアパレルメーカーが卸しをするなら、コレクションだけでは不完全。展示会を行って現地の小売り店と取引することになるだろうし、直営店展開ならSPA機能が必要になる。店舗展開では法的な問題はもとより、出店コストや人材確保などハードルが高い。中小零細のメーカーにとっては、どだい無理な話なのである。これについては取り組み発表で、エルエイトレーディングの担当者が本音を漏らしていた。
 企画運営委員長は、FACoは「目的ではなく、手段」と強調した。それは地場ファッション産業界にとって、振興や情報発信、人材育成などを行なう手段ということだろう。しかし、今年のFACoではパルコとのタイアップから、シンデレラコンテスト、新人モデルのオーディションなど、一部の利害関係者にとっては、「目的」ではと思える部分ばかりが目立つ。
 まあ、企画運営委員長にとっては、自校の学生獲得に利用できるだろうし、RKBにとっては、丸投げによる高荒利事業や映像ソフトの確保、芸能プロダクションに恩を売るという点では、「手段」だろうが。…続く。

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IKKOとFUBAと参加動員。

2010-06-29 20:19:58 | Weblog
 さる6月25日、第2回の「福岡アジアファッション拠点推進フォーラム」が開催された。内容は推進会議の活動報告、講演、参加企業の取り組み発表と、昨年同様。ゲストがタレントのIKKO氏ということで参加者は大幅に増えたが、ここには主催側のカラクリが垣間見える。ゲストの講演に比重が置かれ、推進会議への矛先がかわされた感があるからだ。
 昨年は主催者も参加人数が予測できなかったためか、商工会議所の「正会員」にも動員がかけられている。担当者にとっては麻生県知事や吉田市長、橘高九州経済局長が挨拶するのに、参加者が少ないのでは洒落にならない。でも、ファッション拠点推進会議とは関係ない者にとっては、何の役にも立たないのは明白である。
 現に商工会議所から参加を誘われたという正会員は、「ヤングファッションや百貨店の話をされても。私たち商店主が聞きたいのは、今の商売をどうしていくか。そんな話は一切無かった。この間も商工会議所の研修で岡山の商店街に行ったが、そちらも過去の体験ばかり聞かされ、まったく無意味だった」と憤る。
 この商店主は自分が参加者動員の頭数に加えられたことは知らなかった。でも、フォーラムの内容が自店にとって有益ならば、まだ参加した甲斐はあっただろう。
 そして、今年はどうか。IKKO氏がゲスト呼ばれたのは、昨年の反省やFACo参加との絡みがあるだろう。しかし、理由はそれだけではない。同氏は「福岡美容専門学校」のOB。この学校はFUBA(福岡美容生活衛生同業組合)が設立したもので、同組合は推進会議のメンバーであるからだ。
 もともと、「福岡アジアコレクション」は、1998年にFUBAが始めた。この時の真の目的は「組合員の獲得」と言われている。コレクションというステージをヘアメイクアーチストへのデビューの場として用意することで、これから独立するだろう若いスタッフの青田買いを考えたのだ。まあ、FUBAはサロンド・ヤスモリの故安森会長が権力を振った団体だけに、これくらい考えても不思議ではない。
 FACoにもFUBA関係者が参画しているのは周知のことだが、組合員獲得がどれほど達成できているかは定かではない。でも、今年のフォーラムではIKKO=FUBAのシンクロで3分の1から半数は、動員がかけられたのではないだろうか。断っておくが、現在の「福美」はいたって質素に美容教育に励んでいる(豪華な入校案内は除いて)。そのため、IKKO氏の講演や参加者動員にはかんでいないようだ。むしろ、同氏との蜜月は「企画運営委員長の某専門学校の方が強い」と美容関係者の間からは聞かれる。
 冷静に考えるとフォーラムの目的は何か。それは推進会議の昨年度の活動報告ではないか。またフォーラムというからには質問や意見の場が設けられてもよさそうだ。でも、それらはすべて排除されている。なのに参加動員を増やしたいがためにゲストを呼んで体裁を整えるのは、本末転倒と言わざるを得ない。…続く。

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ブランド休止で、考えること。

2010-06-17 21:21:11 | Weblog
 ファッションの世界はいたって単純である。1枚の布があってデザインを考え、それを組み合わせて縫製し、
商品にして売る。それだけだ。でも、単純だから参入障壁は低く競争も激しい。そこで差別化するブランド化、
そのためのプロモーションが欠かせない。1枚の布や縫製という安い原価だけに、高い売値が付けられるブラ
ンドは、それだけ儲けも大きくなる。言い換えれば、ブランド化は収益獲得には欠かせない政策なのである。
 デザイナーはクリエーションだけでは、ブランド力がつかないのでコレクションに打って出る。そして、メ
ディアの反応が高いと卸しから小売り進出、ブランドショップの展開に行き着く。ここまで来ると商品を卸し
た利益だけでは賄えないので、スポンサーの出番が求められるという構図だ。
 一口にショップと言っても、凝れば凝るほど内装費はバカにならない。銀座や青山といった一等地だと、敷
金や家賃のコストも嵩む。そして人件費がさらに重みになる。結局、売上げ以上に経費がかかり、軌道に乗れ
ないまま閉店と言うケースが後を絶たない。岩谷俊和氏が手がける「DRESS33」がブランドを休止したケー
スやユナイテッドアローズが仕掛けた「フランクウィーンセンス」も同じだ。
 「売上げ不振は不景気だから」だけが理由ではない。1975年、快進撃を続けていた「ビギ」のデザイナー、
菊池武夫も同じように独立したが、すぐに事業に失敗した例がそうだ。今より、カッコいい服が売れていた時
期ですら、デザイナーが思い通りの服を作っても売れなかった。つまり、マーチャンダイジングやビジネスモ
デルを確立しなければ、ブランド事業は決して軌道に乗らないのだ。
 そこで、昨今のメゾンブランドは、パリやミラノのコレクションの前に「プレコレクション」を開催してい
る。これは実際に商品化されるアイテムの受注展示会で、ここで売上げをプールしているのだ。ただ、単なる
「売れ線狙いではない」。「クリエーション然」としてなおかつ「着たくなる」デザイン。クリエーションと
ビジネスの「間」の取り方が実にうまい。だから、世界中のバイヤーやメディアの反応もいいし、お客も期待
を寄せて購入する。中国製の安もんを二流のタレントやB級モデルに着せて売るのとは、大違いだ。
 こんなもんに行政が巨額の税金を投入するくらいなら、技術も経験もある企業デザイナーによる「プレコレ
クション」的な展示会の方がよっぽどいい。事業資金の一部を利用して経費を見てやり、「服好きが着たくな
る上質の服を自由に作って」と持ちかければ、デザイナーだってモチベーションは上がるだろう。
 マス市場には出回らないクリエーションが展示会で発表されれば、バイヤーも、メディアもきっとエキサイ
トするに違いない。その結果が産業の活性化や隠れた人材の発掘になるのだ。まあ、こんな発想はファッショ
ン音痴で、ショーさえイベント会社に丸投げしている、どこかの放送局にはできないことだろうが。

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10億円投資して、や~めた!

2010-06-17 21:18:11 | Weblog
 一時は若手デザイナーの有望株と言われ、小泉元総理大臣の前でショーを行なった岩谷俊和氏。
彼がける「DRESS33」がブランドを休止することになった。名古屋に本拠を置き、もとは紡績会
社だった興和が全額出資したブランド運営会社「ディーエスファクトリー」が事業から撤退する
ことが引き金のようだ。要はスポンサー企業が「儲からないから、もう金は出さない」と最後通
牒を突きつけたのである。
 DRESS33は、岩谷氏がDRESS CAMPのデザイナーとアトワンズ社退社後、自分の年齢を冠に
つけて設立した。09年春夏のパリコレでデビューし、09年春夏、10年春夏と出演。09年10月に
は東京コレクション・ウィークの一環として東京ミッドタウンでもショーを開催している。
 ただ、どのコレクションも作品は見せる要素が強く、どちらかというと「ゲイ」に好かれるアン
グラなデザイン。華があってミューズ受けするラインとは一線を画していた。それが仇になったか
もしれない。
 パリコレに1回参加するだけで、少なくとも1~2億円はかかる。作品の輸送費、旅費や滞在費、
会場費。何よりモデルやヘアメイクなど現地スタッフの人件費が大きく嵩む。これまで3回のコレ
クションを開催しているから、少なくとの興和は「10億円程度」は出資した計算になる。おそらく、
もう1シーズン引っ張っていたら、さらに数億円の赤字が出たに違いない。
 しかし、それだけの投資に対して、どれだけのリターン(効果)があったかといえば、正直10%
にも満たないのではないだろう。そこで、ファッション業界が抱える永遠のテーマが、「クリエー
ション」と「ビジネス」をどうすり寄せるかである。デザイナーはいつの時代でも自分の思い通り
の作品を作りたいと願っている。そして、その作品が世に受け入れられ、名声を博すことを夢見て
いる。
 しかし、企業側からすれば、夢や名声だけを追ってしまうと、今回のように「やけど」する。そ
れが小さいうちはいいが、拡大すると企業自体の生命を揺るがしかねない。だから、どんなブラン
ド事業もマーケットの狙いとビジネスモデルを見れば、将来性のある投資か、ドブに金を捨てるこ
とになるか。資金を出す側は判断しなければならないのである。
 このほど、ドルガバのカジュアルライン『D&G」も日本市場から撤退すると発表された。日本国
内売上100億円の内、D&Gは30億円程度に過ぎず、主力はファーストラインの「ドルチェ&ガッバ
ーナ」だから、この措置は納得はいく。ファッションを「事業」として口にするなら、民間の経営
者はもちろんだが、行政だってトレンドの勢いや空想に惑わされてはならない。今この瞬間にも行
政が資金を出す愚にもつかぬファッション事業は行なわれている。一部の既得権者による稚拙なプ
ランニングは、永年業界で仕事してきたクールな頭からすれば、愚の骨頂と言わざるを得ない。
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人気だけでは生き残れない。

2010-06-08 18:22:12 | Weblog
 元はワールドの子会社で、その後に商社の伊藤忠商事の傘下に入り、2007年3月にはトリップホールディングスの
子会社となった「オリゾンティ」が民事再生法の適用を申請した。かつてはフレンチマリンの「マリナ・ブルボン」を
日本に紹介し、山の手のご婦人方やコンサバOLの上品カジュアルとして定着させた。
 また毎年、専門学校生が好きなブランドの上位にランキングする「ヴィヴィアン・ウエストウッド」のインポートや
ライセンスを手がけたのも同社である。
 ファッションビルを中心に展開したブランドSPAのインタープラネットも一時は人気を博し、同社の稼ぎ頭だったが、
インポートのヴィヴィアンはクセのあって高額なブランド故にマスになりにくかったし、ライセンスも売れるのはベー
シックなTシャツくらいだったから売上げの第二の核にはなれないままだった。
 先述したレナウンの子会社だった「ルック」のように日本人向きのテイスト「マーク・ジェイコブス」やバッグブラ
ンドの「イル・ビゾンテ」といったブランドを開拓できなかったことも、今一波に乗れなかった理由だろう。
 ヴィヴィアンでさえ、専門学校生が好きなブランドと言っても、専門学校生が就職できるアパレルの初任給でバンバ
ン買えるようなプライスではない。一部のマニアが金をつぎ込んで買い揃えるまではいいが、次のシーズンは古着店に
持ち込み、その買い取り料金を軍資金に新たなアイテムを購入する程度だから、ファン層の拡大も売上げの伸びもなか
なか進まなかったということだ。
 また、おとどしの秋に起こったリーマンショック以降、急激に景気が冷え込んだことも影響して、オリゾンティはす
べてのブランド、ショップとも売上げが下がり続け、借金の利子を払うことも重荷になって昨年の3月期は2億円の赤
字を出してしまった。不採算のショップをクローズしたり、「ミューゼ・ドゥ・ウジ」の休業などのリストラを進めた
にも関わらず、今期に入っても業績が回復せず、今回の事態に入ったようだ。
 同時にトリップHDも民事再生法の適用を申請したというが、こちらについても書いておこう。同社はSPC(特別目的
会社)という形をとる。日本では一般に親会社が子会社の株をもって、役員を送り込むのが一般的。しかし、運営スキ
ルのない親会社のバランスシートを見ると、設備投資負担が巨額な固定資産としてのしかかり、総資産収益率(ROA
 事業利益/総資産)を低くする一因になっている。
 こうした日本のファッション業界が抱える構造的な問題点を解決する手段として、証券業界から叫ばれ始めたのが
SPC(Special Purpose Company/特別目的会社)だ。
 SPCとは、法律に基づき資産の流動化に対する様々なニーズに応じる特別目的会社を通じて、土地や建物を証券化し
一般投資家による投資を容易にすることで、資産の流動化の促進を図ることを目的とする。ファッション業界において
は、SPCは卸やメーカーの土地や建物を保有するための資金を債権などを発行することで一般投資家から調達。土地や
建物はSPCが保有する。
 卸・メーカーは物件を証券化することで、幅広い投資家から資金を集めることができる一方、投資家にとっても、不
動産に直接投資することにより取引のコストを軽減することができ、卸・メーカーごとの採算性や地理的な資金の分散
を考えた巧みな投資が可能になる。
 もっとも、証券化するには当然情報のディスクローズが必要だ。特にSPCの債権はイニシャルコスト償却の関係から
10年、20年といった長期ものが主流になることを考えると、より透明性の高いディスクローズが必要になる。
 結局、オリゾンティのように投資家から資金を集めて、ブランドビジネスやショップ展開をやっても、景気に左右さ
れ売上げが伸びないと、投資家はすぐに手を引く可能性が高い。短期にリターンを期待する彼らにブランドをじっくり
育てようなんて余裕もないし、流行の激しい日本のマーケットで時間をかけたからとってブランドが育つ保証もない。
 言い換えれば、オリゾンティもトリップホールディングスの子会社となった時点で、金儲けの手段としか見られてい
なかったということ。送り込まれてくる役員にもファッションビジネスを長期的に発展させる気概などないだろうから。

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厳しさ一段と。でも、さみしい。

2010-06-03 11:19:41 | Weblog
 久しぶりに合同展示会「Gold Rush」を覗いてみた。地場メーカーが中心になり、
数年前から中州のグラナダコートで開催されている。IFFやフロンティアと違って
会場がパーティ用のスペースだけにゆっくり商品をみることができるのがいい。
 反面、小売りの売上げ不振でバイヤーは売れ線狙いやシーズン仕入れに傾いてい
るせいか、客足は芳しくない。業界紙の報道では「結構、盛況だ」そうだが、会場
を見る限りではにわかに信じ難い。最近は東京や関西のメーカーも参加し規模は大
きくなっているものの、ブースを訪れるバイヤーがなく手持ち無沙汰の営業スタッ
フを見ると、かわいそうに思えてくる。
 自分から見て「コレはいい」と思う商品が結構多いのに、バイヤーの立場で見る
と、「クセのあるデザイン」は万人向けせずやはり売りにくいのだろう。メーカー
や卸しにとっては全く受難な時代になってきた。
 営業の現場がそうだから、企画やデザイナーにとってはもっと大変だ。千駄ヶ谷
のマンションメーカーでバイトしていた時は、2ヶ月に1度くらい全国の専門店か
らバイヤーが事務所の一室に集まり、社長と営業と企画が車座になって生地サンプ
ルとスタイル画を見せながら「こんな商品どう」と言うと、「いいねえ~」「お洒
落じゃん」というやり取りがあった。企画スタッフやデザイナーの目は輝いていた
し、営業スタッフも受注がとれると生き生きしていた。
 バイヤーも「コレって思う商品」は惜しみなく付けていたし、リスクを踏んで売
り切る自信をもっていた。それはお客さんにも服に対するこだわりがあったからだ。
だから、今より少ない回数の展示会でもメーカーが思い思いの商品を企画し、ある
いはデザイナーが自由に発想したサンプルをド~ン集め、「どんなもんだ」という
ような展示会が開けていた。
 ところが、今は小売りは在庫リスクを恐れて思い切って付けないし、メーカーも
売れ筋中心の企画で、期中オーダーや追加フォローの営業スタイルに変わってきて
いる。これでは中々デザイナーがクリエーションを発揮しようにも、チャンスさえ
少なくなっているように思う。
 逆にデザインの勉強など全くせずに、ファッションが好きと言う理由で業界に入
り、企画にまわるとヘタウマのスタイル画でメーカーにサンプルを作らせ、それを
短期で生産する商品の方が売れて行く。生地の質感や着心地なんかどうでもいい。
見た目で「カワイイ~」く、ブランドロゴさえ入っていれば、売れるのだ。
 最近はネットの卸サイトも増えてきているので、そのうちコストと時間に制約さ
れる「展示会」なんて必要ないという意見が出始めるかもしれない。その割にチー
プなアジア生産の服を二流のタレントやB級モデルに着せたファッションショーは
花盛りだ。これがマーケットの現状と言えばそれまでだが、あまりにさみしい。
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