HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

「パルコ×しまむら」の広告は十分ありだ。

2012-06-27 13:19:37 | Weblog
 ファッションビルを運営するパルコがついに「しまむら」をリーシングする。店舗は同社では郊外店に位置づけられる千葉県の「パルコ津田沼店」。出店場所はパルコB館2階になる。パルコを渋谷イメージの都市型ファッションビルと思っている諸兄からすれば、「えっ、あのパルコにしまむらが出るの!?」って不思議に映るだろう。
 パルコ=都会=おしゃれ、しまむら=郊外=ダ◯いと考えがちだから、無理もない。もし、渋谷と同じなら地元に住むヤングはわざわざ渋谷まで出かけなくて済むという考え方もできるが、若者がはたして津田沼店を渋谷と同じ次元で捉えているかである。逆にヤング以外の地元住民はパルコで買物したくても、欲しい商品がないと感じているはずだ。マーケットの買物人口を見た時に、どちらが有益か。当然、後者になるだろう。
 現にA館にはニコアンド、TK、B館にもジーユー、ページボーイ、無印良品など郊外ショッピングセンターでお馴染みのテナントが顔を並べる。これはパルコのイメージを守りながら、少しは地域のマーケットニーズも対応しようということである。
 7月4日に津田沼店にオープンする「ファッションセンターしまむら」は、売場面積こそレギュラー店の半分くらいだが、それでも200坪程度の規模を誇り、パルコが通常リーシングする20~30坪級のテナントとはケタが違う。
 商品構成もフルラインで、ウィメンズ、メンズ、キッズから寝具まで揃うというから、完全に周辺に展開するイオンショッピングセンター、イトーヨーカドーを意識し、GMSよりのMDを加味する狙いがあるのかもしれない。
 ここまで書くと、「あのパルコもそこまでやらないと厳しい」「若者向けの高感度テナントを誘致する不文律は過去のもの」「空きスペースを埋めるためには四の五の言ってられない」。だから、集客力があって販売効率も高いしまむらを誘致したと、結論づけられそうだ。
 しかし、今回はさらにその先まで考えてみたい。しまむらを店づくりやレイアウトだけで捉えれば、確かにパルコのテナントには不釣り合いである。ただ、同社はこのところティーンズなど若年ラインのMDも強化している。さらにsoup.やJELLY、Popteenなど雑誌を利用したプレス活動にも積極的だ。
 もはや「シマラー」などいう一時のブームではなく、彼女たちのライフスタイルに完全に食い込もうとしているのだ。それをパルコがいち早く察知したとすれば、さらにその先を考えてのことだろう。昨今のパルコが力を入れているイベント戦略である。
 パルコとしまむらがタイアップして、ティーンズを対象としたミニファッションショーなどが企画できるかもしれない。それに地元の女子高生を参画させれば、顧客の青田買いが出来なくはない。彼女たちは車の免許を持たないから、郊外SCに奪われることもない。
 学校帰りにショップの商品で引きつけ、週末にイベントを展開して相乗効果を発揮できれば、既存のテナントでは捕捉できなかった10代のマーケットが開拓できる。むしろ、彼女たちの発想を積極的に活用していかないと、デベロッパーやアパレル小売業の論理だけで、新たなムーブメントは起こすには限界が来ている。
 プロモーションについては、パルコの十八番だろう。「パルコ×しまむら」なんてキャッチコピーは十分考えられる。断っておくが、これはクリエーター諸氏を小バカにしているわけでも、自虐ネタで卑下しているわけでもない。
 マーケティングが混沌としている中で、時には玉石混淆のクリエイティブ戦略もありではないかということだ。むしろ、今はそうした表現の方が消費者の目を引く。パルコ=先端、しまむら=ど◯くさなんて、切り口で語っている人間こそ、遅れているのではないかと思う。
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形骸化した「会議」は何も生まない。

2012-06-20 14:40:11 | Weblog
今年も実効性を欠く企画内容

 福岡アジアファッション拠点推進会議が開催している「福岡ファッション拠点推進フォーラム」が、今年も7月9日(月)16時~に開催される。
 プログラムは、昨年度の活動報告及び今後の取り組み、講演会、福岡アジアコレクション(FACo)に出展した地元ブランドによる取り組み発表。前回とほぼ同じプログラムである。

 福岡ファッション拠点推進フォーラムは今回で4回目になるが、いったい何を目的に行なわれているのか、未だに良く判らない。なぜなら、フォーラムの第一部である昨年度の活動報告及び今後の取り組みは、たった30分しかない。これには福岡県知事、福岡市長他の挨拶も入っているため、実質は20分程度だ。
 しかも、内容は主催者側が一方的に語るだけで、事業の実効性や成果などに不明確な点が多い。また地場メディアにも参加要請をしている割に、質疑応答や疑問点を指摘できる機会は、全く設けられていないのである。
 二部の講演会は毎年、違ったテーマや講演者になることはしかたないが、推進会議の事業目的からすれば場当たり的で、旬のテーマ性を欠く。初回が博多大丸のメンズ課長、2回目がタレントのIKKO、昨年が山本寛斎である。今回は雑誌CanCamの嶋野編集長で、テーマも「アジアでも大人気!Can流ファッション講座」(ゲスト:CanCam専属モデル 近藤しずか)であるからからだ。

 雑誌メディアが取り上げるテーマはアパレルや小売りがすでにマーケティングをやって、アジア向けの商品づくりや業態展開を行なっているからこそ特集できるわけである。CanCamはそうした情報を取材して編集したに過ぎず、しかも講演内容は一般読者向けだろうから、地場業界に取って有益なものなのかは、甚だ疑問である。
 まして、専属モデルの話なんて現地でのショーの裏話や観客の反応など、だいたい大筋は読める。ミーハーなモデル志望ならいざ知らず、これを地場のファッション業界関係者が聞いて何のためになると言うのか。
 三部のFACoに出展した地元ブランドによる取り組み発表も30分程度で、出展者すべてが発表するわけでない。税金の恩恵を受けてブランドや商品のプロモーションが出来ているのに、1~2社が代表で発表し、お茶を濁すにはいかがなものか。
 しかもショーへの出展はFACo主催者の審査に合格して可能となる。よって企業活動なり、商品企画やデザインなり、売上げ実績なりと選ばれる何らかの理由があるはずだ。それら選考理由がディスクローズされないのは、かえって審査方法に対する疑問が涌く。

 もっとも、明らかに主催者側が意図しているような部分もある。フォーラムの期日が「月曜日」であることだ。これは推進会議の参加団体であるFUBA(福岡美容生活衛生同業組合)の組合員が「店休日」で、主催者側が参加動員をかけやすいからなのは明らかである。
 参加者の数が多ければ多いほど、主催者側は費用を拠出する福岡県や福岡市に対し、「今年もこれだけの参加者がありましたよ」と、示しが付く。県や市の部局には書類で報告が上がるだけだから、上層部は「数字」のみをチェックし、議会への報告もそのまま素通りできる。
 フォーラムがいくら稚拙な企画内容であろうと、参加者がさくらに近い動員であろうと、主催者側が責任を追及されることはない。つまり丸く収まるわけだ。
 しかし、冷静に考えると、本来フォーラムの対象となるべき地場ファッション業界関係者が月曜日の16時という中途半端な時間に仕事をそっちのけで、参加できるだろうか。明らかに配慮を欠くスケジューリングだし、過去のプログラムを見ても、とても業界に役立つようなものは何一つない。もし、主催者側がそこまで計算していて、月曜日にしているのなら、明らかに確信犯である。


公職と私的活動の混同は許されない

 昨年の講演者は、ファッションデザインの第一線からほぼ退いている山本寛斎氏だった。ただ、推進会議の企画運営委員長Y氏が校長を務めるファッション専門学校がその後に学生のファッションイベントを開催し、寛斎氏をプロデュース・演出に起用している。はたしてこれは全く偶然の一致なのか、それとも芸能界でよく行なわれる「バーター取引」が介在していたのか。
 真実のほどは別にしてもファーラムという公共事業と、一専門学校の私的事業があまりに近づいているのは、尋常ではない。過去にもY校長の専門学校は推進会議の各事業に参画し、自校の活動も事業を通じてアピールしている。3年前に福岡県が国の緊急雇用基金2700万円を投じて開発したポータルサイトの「ファッションサイト福岡」の制作にも、自校を参画させている。  
 緊急雇用事業の対象となる失業者でさえ厳しく審査されるのに、基金事業の発注業者を選考する企画運営委員長という立場があれば、利害関係者をフリーパスで参画させるというのは納得がいかない。
 以上のことを鑑みると、今回のCanCam編集長の講演についても、自校への何らかの波及効果を考えてのことではと勘ぐられても仕方ないだろう。

 本来、公共事業の企画運営委員長という立場は「公職」である。それを私的な活動のために利用するというのは、職権を逸脱した行為である。それに対し、何ら異議を申し立てない、またどこかで握りつぶされているのなら、「福岡アジアファッション拠点推進会議」は、民主的な「会議」の体を成していないことになる。
 参加する関係団体も、単なる事業予算獲得のために頭数に揃えられているだけではと、言われても仕方ないだろう。一方で地場メディアは事業の実効性や問題点について、認識はあるはず。なのに黙殺しているのは多少の利害があるからだろうか。県議会にしても自ら課題を問い質そうとしないのは、明らかに不作為である。
 昨年も同コラムで福岡ファッション拠点推進フォーラムの問題点を取り上げた。すると、「あなたはなぜここまで書くのですか。…批判は弱虫の証拠」と、奇特にも拙書なんぞにコメントしてくださった方がいらっしゃった。
 この方がどんな立場の方か存じ上げないが、問題点があるから批判をしているわけで、反論したいのなら、きちんと論拠を示していただきたい。もし、この方が利害関係者だとしたら、この程度のレベルで事業に参画していることが情けなくなる。

 よくコラムで評論していると、「批判も問題定義”も結構ですが、打開案を示して実行さているのとは違うご様子」なんてコメントをいただく。こちらは問題点があるから指摘をするわけで、それを解決しようとせず、こちらに打開策を出せというのは、筋が違うのではないか。
 自分たちの論理に行き詰まると、伝家の宝刀のごとく「批判をしても何も生まない」とのロジックで反論される方々がいらっしゃるが、それで自分たちの「無作為ぶり」が正当化されるはずもないことを、まず先に自戒すべきである。
 福岡アジアファッション拠点推進会議がきちんとした議論の場を設けていただけるのなら、いくらでも意見を述べ、企画提案するのは吝かではない。推進会議の真の事業目的である「地場産業の振興」「人材育成」に対し、当方はファッション業界人として十分なアイデア、ノウハウを兼ね備えているからである。
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外国人の採用評価は諸刃の剣でもある。

2012-06-14 16:16:40 | Weblog
 ユニクロやセオリーを展開するファーストリテイリングは、日本の正社員に適用している制度に統一する「全世界共通の人事制度」を1年以内に導入するという。まず、ユニクロはじめ、セオリー、 コントワー・デ・コトニエなど国内外の正社員候補の約5000人を対象に、「業績」に応じて大まかに5つのランクに分け、適切な評価を加えて個人の適性や希望などをみながら人材配置を行なっていくようだ。

 ファーストリテイリングはここ数年、グローバル化、世界標準などを声高に叫んでいるのとは対照的に、アパレルを志望する若者の間では人気が凋落。「働きたいアパレル企業ランキング」(ファッション販売)でも、10年度は4位だったのに対し、11年度は30位まで激降している。
 また、一般大学生が選ぶ「2012年就職人気企業ランキング」(ダイヤモンド・ビッグ&リード社調べ)でも、文系男子で150位、文系女子で100位、理系男子で99位、理系女子で30位のすべてに入っていない。同じくグローバル化、世界標準に直面し、競争激化に晒される商社や金融、メーカーが名を連ねているのとは対照的だ。
 メディアの過熱報道が一段落した今、優秀な大学生があの店舗での仕事ぶりを見た時、「大学を出てまでやる仕事じゃない」と感じたとすれば、無理もない。実際はその先にMDやSV、マーケティングなどの仕事もあるのだが、大学生にそこまで理解させられない企業ブランドなのだから、何とも皮肉な話である。

 もっとも、同社が昨年9月に発表した事業計画では、アジアを中心に中国100店、韓国50店、シンガポールやインドネシア、マレーシアなどのアセアン諸国100店を出店、さらに欧米にも20店を出店する目標というから、同社にとっては「何も採用する人材は日本人で無くて良い」という逃げも利く。
 当の柳井正社長自身は内心、「なぜ、日本の優秀な学生に人気が無いのか」と、歯がゆい心境だろう。プライドが高い同氏だけに「ならば優秀な学生なら外国人で構わない」と、本心をすり替えた態度表明に出たと考えれば、説明もつく。
 ユニクロの場合、まず店長候補として採用され、店長が最初の目標となるため、日本人が中国やアセアンの僻地に赴任して、文化も習慣も違う現地人をマネジメントするのは容易いことではない。だから、現地事情、母国語に精通した学生の方が向いているはずである。

 問題は異動や昇格を決める「評価」制度だろう。業績に応じて5つのランクにわけ共通の評価を行うというが、これがグローバルスタンダードとして、外国人にも納得できる内容かどうかである。
 ユニクロのキャリアアップは、店長候補が店長に就任すると、次ぎの昇格はラインスタッフの「スーパーバイザー」もしくは「本部スタッフ」のMDや生産、調査・研究開発、マーケティングなど、さらに「ブロックリーダー」、「海外営業」などを経て、「執行役員」に昇りつめるという流れだ。
 優秀な外国人であればあるほど、ジョブマーケットでの自分の価値を重要視している。だから、採用側は「まず、店長というポジションに何が求められていて、何を達成すれば、どのくらいの報酬またはキャリアアップの種がもたらされるのか」ということを明示しなくてはならない。
 ただ、業績に応じた評価をする場合、店長やSV、ブロックリーダーは売上げという目標が設定されているので明確だ。しかし、店長候補といっても新人は配属される店舗では「コレください」的な応対で終始し、一般専門店のような接客販売を行なうわけではない。そのため、個人の売上げが把握しづらく、評価も難しい。

 だから、本社や店舗の目標によって、各自の到達点(数値目標や能力、業務の遂行プロセスなど)を明確に設定し、それらを店長や直属の上司が結果と達成度合いで評価し、本人にも明示するという方法しかないだろう。店長や上司には予算・売上げ管理、在庫コントロールと一緒に、こうした極めて明確な人事評価の能力も必要になってくるのである。
 グローバル評価では、日本的な「あのスタッフはいつも頑張っているからA」といった極めて感覚的なものは通用しない。しかし、到達点が設定され業績評価が公開されると、「自分はこれほど業績を上げているになぜBなのか」と、納得できない外国人が店長や上司と衝突するというケースも出てくるだろう。
 その辺のドライさと日本企業的な懐の深さを両立させた人事評価ができるか。日本企業が優秀な外国人を採用する人事制度は、「諸刃の剣」であることも忘れてはならない。
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業態改造よりも商品の質的向上が先では。

2012-06-09 09:12:09 | Weblog
 ポイントが2015年完結の中期計画で、既存業態を全面改造することを打ち出した。そこでは2010年秋から進める企画生産機能の強化と、SCMの一貫性をもたせるための専門スタッフの増強を大きな柱にするという。
 同社は専門店チェーンからSPAへシフトしていく中で、 ODM業者(企画開発能力を持つアパレル生産業者)を活用し始めた。外部の生産業者がデザイナーやパタンナー、生産管理者を抱え、トレンドファッションを企画提案してくれるから、ポイント側のバイヤーが売れ筋を外さなければ、クイックで商品調達が可能になるというメリットがある。
 この手法では商品の開発期間が短く企画の頻度も高くなるから、市場対応のスピードは早い。しかし、出来合いの素材やパターンが利用されるため、他社と大して変わらないクリエーションとなって、完成度が低くなるデメリットをもつ。
 特にリーマンショック以降、SPAは売上げ不振に伴って収益確保を最優先し、ODMにおける原価率の切り下げが止まらなくなっている。店頭の商品を見ると、明らかに縫製はともかくとして、素材の品質低下が否めないのだ。

 この手法はSPAに限らず、ある程度のスケールメリットをもつチェーン店もとってきたため、同質化による競争の激化は避けられなくなった。ポイントもその波に飲み込まれ、今回の「既存業態の全面改造」「専門スタッフの増強」に舵を切らせたようである。
 さらにそうさせる最大の理由には、「この数年抜け落ちていたブランディングを、海外でも通用するレベルに引き上げる」という課題克服があるという。ただ、はたしてそれでブランディングが可能なのだろうか。
 昨今、クロスカンパニーのように品質と原価率を切り下げ、浮いたコストを有名女優を起用する宣伝費に回し、ブランディングするのが勝ち組のビジネスモデルになっている。しかし、ポイントがブランドを確立するには、それらとは一線を画する「品質向上」や「キャラクターの創出」も必要と思われる。
 「商品が良くなった」「カッコ良くなった」と明らかに変わってこそ、業態も改造できるわけだし、専門スタッフも店づくりやVMDで力を発揮できるからだ。

 同社はグルーバルワークからローリーズファーム、ジーナシス、ヘザーと次々に業態を軌道に乗せてきたが、多店舗化とODM調達によって商品づくりはステレオタイプに、品質は低下してきたのも事実だ。さらにコレクトポイントを出店したくらいから、業態や商品の開発に手詰まり感が見えて仕方ない。
 まず、商品の品質を向上するにはコストアップは否めないから、価格政策の見直しが必要になる。現状のアッパーポピュラーからアッパーモデレートまでを1ランク程度引き上げることが必要だ。まずは同社のトップブランド「トゥルーノジーナ」を利用して、実験してみるのも良い手かもしれない。
 また、上質化を左右するのは、緩やかなインフレシフトもある。幸い、ファストファッションのブームも一段落し、11年以降、専門店チェーンでは客単価が対前年比でプラスに転じている。まだまだ中国生産が主流の中で、コスト上昇は円高の比ではないのだから、インフレ基調を追い風にした「国産回帰」は考えられなくもない。

 デニムは唯一、世界に冠たる三備地区があるし、各産地にも優秀な技術者を抱える工場は存在する。そんな匠が創り出すメイドインジャパンを見直す機運が盛り上がっているのも事実だ。「国内工場は疲弊している」なんて言い訳をする前に、積極的に生産復活に寄与するくらいでないと、アパレル企業としてのポジションも確立できないのではないか。むしろ、それがブランディングの条件に他ならないと思う。
 また、国内生産なら企画スタッフを社内に抱える意味も出てくる。従来のように外部に丸投げするのではなく、時間がかかってもじっくり自社で行なうものはあっても良い。企画担当者やデザイナーが工場まで出かけて行って、仕様を細かく詰めるのだ。国内ならそれができないことはない。

 ODMをとるにしても、自社のデザイナーが外部デザイナーを黒子と位置づけるくらいの体制で、「1言えば、3理解する」くらいの優秀さとコミュニケーション力が不可欠になる。自社デザイナーがデザインとブランドのコンセプトを、説得力をもって外部デザイナーの腑に落とすことができれば、 少なくともキャラクター性の創出は不可能ではない。当然、その先にブランディングが見えてくるのだ。
 すべてのブランドでSCMを目指す効率性追求ばかりでなく、1~2のブランドではビジネスの原点に立ち返った手法をとることも重要ではないか。それが業態改造、専門スタッフの強化に繋がると思うのだが。 
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ズシリ。2年目の反動がのしかかる。

2012-06-02 11:35:21 | Weblog
 ここ数日、立て続けにJR博多駅周辺で働く人々と話す機会があった。まず一人は博多駅筑紫口にあるホテル関係者。二人目は博多駅前に近いホテル裏でバーを営むオーナー。三人目が駅から少し離れた場所にセレクトショップを構えるバイヤーだ。
 三名に共通するのは、新博多駅ビル「JR博多シティ」が開業した昨年は、ここ数年にない好調な売上げだったこと。ホテルは駅ビルの飲食フロア「くうてん」から溢れたお客が一気に押し寄せ、収益の柱であるレストランの売上げが急増。 バーは店近くのホテルにクーポンを設置していたことと、駅ビル内の飲食フロアが深夜まで営業しないため、ホテル近くの飲み屋には有利に働いた。セレクトショップは、「駅ビルに期待したほどのブランドや目新しいテイストがない」と、感じたお客が立ち寄って衝動買い。改めて博多ファッションの威力、地元専門店の強さを見せつけた。

 ところが、今年は各店ともその反動が一気に来ているという。レストランは、くうてんからお客が溢れてもホテルまでは来ず、駅が開業する前の客足に逆戻り。バーは、新幹線を利用する日帰り出張のビジネスマンが増えたため、終電ギリギリまで飲める駅校内の立ち飲み業態にお客を奪われてしまった。
 さらにオーナーは「公務員の飲酒運転も一般客の心理面に影響し、外飲みがかなり敬遠されている」ことも挙げ、モラルを欠く公務員のツケが全うな飲食業者に廻るのは堪らないと。セレクトショップは物見遊山のお客が一気に引く一方、開業景気の混雑を避けたお客が逆に戻っていない状況という。

 各店ともこうした状況はある程度予測し、それぞれ対策を立てていた。レストランはくうてんの高級店に対抗し、輸入ワインを組み合わせたスペシャルディナーを企画。しかし、駅ビル以外の店舗に向かうお客の財布の紐は固く、売上げの中心は利益が取れないバイキング料理という。
 バーはホテルで行なわれる結婚式の2次会向けをアピールし、新規客の獲得を目論んだ。この狙いは間違いではなかったが、「最近の若者は男性でも低アルコール系ばかり注文するので、客単価が上がらない」と、オーナーは嘆く。

 セレクトショップは新規客にハウスカードを勧めるなど顧客管理をきちんと行ない、電話やDMでセールや新商品の案内をこまめに行なっていた。ところが、駅自体が観光地的で一度見れば十分だし、お直しなどの受け取りを考えると地元以外のリピートは難しく、県外からの客足は一気に遠のいている。
 この店はオープンから一環して、専門店系アパレルの商品を中心にMDを構成。あくまでも路面店のスタンスを崩さず、接客によってバイヤーイチオシの商品を販売してきた。ただ、いくら商品に魅力があるとは言っても、「わざわざ新幹線代を使って再来店するお客はほとんどいない」とマネージャーはいう。   
 バイヤーも「駅ビル効果なんて一時的なものというのがよくわかった。うちは地元のファッションリーダー狙いを貫く」と、気持ちを切り替える。

 では、当のJR博多シティはどうだろうか。2012年6月1日の時点で、開業2年目第一四半期(3月~5月)の業績は、発表されていない。だから、ここでは細かな論評は避けたい。そこで初年度実績を見ると、SCのアミュプラザ博多が356億円(計画比119%)、百貨店の博多阪急が380億円(同103%)。アミュプラザ博多は衣料、雑貨、飲食がほぼ均等な売上げで、目標を大きくクリア。博多阪急もデパ地下が100億円以上を売り上げるなど、鉄道系の強さを見せつけたかたちだ。

 ただ、 周辺の状況から類推して、JR博多シティに2年目の反動がないとは考えにくい。特に気になるのが博多阪急だ。新幹線効果などあれだけの集客がありながら、売上げが計画費103%は期待はずれだったのではないか。駅ビルの関係者からも、柳沢興平店長が「坪効率が天神の岩田屋の半分くらいしかない」とこぼしていたとの話しが漏れ伝わってきている。
 先日、地元紙が「高級ブランド、福岡に熱視線/グッチのイベントが大成功し、伝説はフクオカショックとなった」なんて記事を載せ、テレビ朝日のワイドショーもこの記事を取り上げ、天神や「博多駅にはルイ・ヴィトン、エルメスが並ぶ」と、福岡は高級ブランドが売れる市場として紹介した。

 しかし、当の柳沢店長は開業時の囲み取材で、「ラグジュアリーブランドは持ってきていないから」と、阪急梅田店との違いをハッキリ語った。つまり、現場の人間として、メジャー化したルイ・ヴィトン、エルメスでは競争力がないことを十分認識していたのかもしれない。それゆえ、本人が2年目のジンクスを一番気にかけているはずである。
 仮に博多阪急が1ケタ程度の減収なら、アミュプラザ博多が初年度の好調を維持できれば、全体目標はクリアできるだろう。だが、それはアミュプラザ博多が2年目も絶好調という前提での話だ。JR博多シティは周辺への影響を含め、初年度があまりに良すぎた。それだけに2年目の反動がズシリとのしかかっているのは、間違いなさそうである。
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